第9話秋の国の話

ニケ「今日は数十人の人、集まりましたね!」

ヒダンゲ天使協会…朝のお告げが終わった後、ニケが言う。しかし数十人ではわからない気がするが…

ラファエル「ニケ。そんな適当な人数の言い方ではわからないですよ」

ラファエルに指摘されてニケは改めて言い直す

ニケ「ごめんなさい。約40人ですね!」

だからその約とはなんだろうか。改めて言い直しても適当だったのでラファエルはもうそれで納得するしかなかった

一応ニケはラファエルに付いて行って来た天使だが、本当に大丈夫だろうか…

ラファエル「最近、ここへ通う人が多くなりました。とても喜ばしいことです」

ニケ「ラファエル様、目当てって人多いですよ。ラファエル様は心優しい大天使なので私としても嬉しいです!」

さすがに代表としてラファエルを見ようと多いのは嘘ではなく事実と言った感じ

ラファエル「ふふふ。いえ、私はまだまだですよ。ミカエル様の足元にも及ばないですし、姉のほうがこういうのは上手です」

ニケ「そうですか~?ラファエル様のほうが1番良いと思いますよ?正直ミカエル様よりも!」

やはりニケはラファエルのことを心から気に入ってるらしく、どんなこと言ってもラファエルが1番だと思ってるらしい

良く言えば信用しきってる。悪く言えば盲目。そんな感じである

ラファエル「ま、そんなことよりも今日も頑張って仕事しましょう。ニケ、変なドジしないように」

ニケ「はーいかしこまりました~」

そう言うとニケは持ち場へと戻る。ラファエルは色々と思いつつもニケの後ろ姿を見て思う

ラファエル「もうちょっと真面目にしてくれれば頼れる天使なんですけどね…」

しかし尊敬されるだけ十分かと思いつつラファエルも自室へと移動することにする

今日のヒダンゲの空は晴れのち雲り。今日もしいな一行は遺跡へと向かうことになってるが、今回はちょっとだけ違った

ポヨン川にいた。ここは一級河川とは言えないものの大きい川として有名な川。そして今日は4人に加えレニがいた

今日のレニはいつもの巫女服ではなく私服で来てた。とても可愛らしい服を着ていた

しいな「レニさん今日は来てくれてありがとう!」

レニ「いえいえ、いいのですよ。こうやって大人がいるとどこ行っても大丈夫だと思いますわ」

2人が笑顔で会話してた

マーガレット「なあしいな。今日は先生が言ってた遺跡へ向かうんだよな」

しいな「そうなのよ。ここのポヨン川を上流に上がっていけばあるって話だけど…」


学校の放課後。その時は4人は部室でレポート作成をしていた。4人は大きい紙に文字と写真を貼って作っていた

マーガレット「…よし、今日はしいな手を動かしてるな」

しいな「えーいつも手を動かしてるわよ」

マーガレット「今日は!だろ。いつも命令だけで動かしてないだろ!」

マーガレットがそう言うとりなが言う

りな「え、そうなんですか?」

シャニオン「りなちゃん、あまり突っ込まんほうがええで」

りな「う、うん?」

そんなこと言ってる間にどんどん完成していく

マーガレット「しかしこれだけやってもまだまだこの国には遺跡がめちゃくちゃあるからな」

しいな「そうなんだよね。これ、一部に近いから…」

そう言うと、ドアが開く。八代先生だった

八代「みんな。レポートどう?」

しいな「あ、先生。はい。バッチリですよ!」

そう言うと八代先生はレポートを見る

八代「あなたたちの完成品をいつも楽しみに見るのが日課になってるわ。とても良く出来てるからね

…そうそう、あのね、まだ見てなさそうな遺跡を発見したわ」

そう言うとしいなが目を輝かして言う

しいな「え!私たちがまだ見てなさそうな遺跡!?」

マーガレット「どういうとこですか?」

八代先生は答える

八代「あのね、ポヨン川ってあるわよね?あそこの川を上流から上がっていくと建物の近くに遺跡があるんだって!

噂によると今までとは違う遺跡でなおかつ壁画があるらしいのよ。そう遠くじゃないからあなたたちで行けるわ!」

そう言うと4人は嬉しそうに納得する

しいな「ありがとうございます先生!んじゃあ次に行く遺跡はそこだね!」

マーガレット「ああ。面白そうだな川にある遺跡とか」

シャニオン「今から楽しみですね」

りな「川にある遺跡とか珍しい気がします!…でも今までとは違う遺跡とはなんですか先生?」

りながそう言うと八代先生は言う

八代「私が聞く情報だと、巫女に関する遺跡では無い…って感じかしら」

しいな「ふーん?まあ、行けばわかるね!」

りな「そうですね。行けばわかりますね」

八代「あなたたちのレポートのネタになればいいわ」


しいな「…という感じで今から上流へと向かうことにしましょう」

シャニオン「はい。どんな遺跡でしょうか」

5人は歩くことにした

ポヨン川は元々市民の憩いの場。みたいな形で存在してるため人は多い。歩くと分かる

川で遊ぶ子供。サイクリングで自転車で疾走してる人。犬の散歩で歩く人。釣りをしてる人…

様々な目的でここを使う人が多く、道中人に何度もすれ違っていた

マーガレット「しかし今日はレニさんいるけどなんで今日はいるんだ?」

そう言うとレニが答える

レニ「単純な理由ですわ。昨日しいなちゃんからお誘いが来て今日はわたくし暇でしたので付いていくことになったんですわ」

マーガレット「そうだったのか。だが大人は1人いるだけでも頼れるよな」

りな「万が一のときはレニさんに任せればいいですね!」

レニ「まあ。わたくし荒事はできませんわよ」

そんなジョークも言いつつ5人は更に歩いていた

大体最初の位置から30分歩いただろうか…不思議とすれ違う人が少なくなっていた

しいな「うーん…まだ着かないのかなあ…」

レニ「…うん?もしかして、あの場所ではないですか?」

レニが指をさす場所に何かがあった。建物の側に不自然に森で囲まれた場所が

どうやら目的地に着いたと思っていいらしい。しかしその建物も少し変わっていた

そう思いつつ5人は建物の近くまで歩いた。その隣にはどうも遺跡っぽいものもあった

シャニオン「あれ?これ…悪魔協会…ですね?」

その建物は黒く、悪魔協会特有の悪魔のオブジェがあった

もしかしたらここは悪魔協会が保有してる遺跡かもしれない。そう思うと少しだけ怖くなった

しいな「ちょ…ちょっと悪魔協会とか聞いてないんだけど…!」

マーガレット「なんでこんなとこに悪魔協会が!?」

ヒダンゲは元々天使協会が多いため悪魔協会の数はすくないがドンピシャで悪魔協会があることに驚愕していた

マーガレット「ちょ…しいな悪魔協会の人の許可とれよ」

しいな「えー!嫌よ!」

マーガレット「こういうのって許可無く遺跡見れるわけねーだろ!部長なんだろ!」

しいな「怖いわよ!」

そんなやり取りをすると悪魔協会の玄関のドアが開く。5人はその人物を見た

いや…人物というよりも完全な悪魔であった。その悪魔は…言い方が悪いがデブの姿だった

結構大きく、目が赤く、肌が黄色い。ますます怖くなったが、その悪魔は5人を見て気づく。そして近寄る

悪魔「おや?悪魔協会の前で一体何をしてるんだい?ここは一般人はあまり来ないよ?」

口調は優しいが、その姿は怖くしいなは言いたいことを上手く言えない

しいな「あ、あのー…」

悪魔だから怖いのかあまりの巨漢で威圧感あるからか言葉が言えない。しかし、レニが先に言う

レニ「急にここに来てごめんなさい。実は隣の遺跡を見たいんですの。この子たち、部活で遺跡を巡っていて今日ここに来ました。

ここの地主さんですか?もしよろしければ遺跡を見る許可をいただけませんか?」

ナイスフォローレニさん…!4人はレニに感謝をしつつ、その悪魔の反応を待った

悪魔「なんだそんなことか!遺跡を巡るなんて変わってるねえ!いいよ~案内してあげるよ!」

どうやらすぐに許可がおりた。レニに改めて感謝をした。悪魔が遺跡のほうへ向かった

しいな「レニさんありがとう!」

レニ「いえいえ。わたくしが役に立ちましたね」

りな「けどなんでそこまで怖くないんですか?」

レニ「わたくしのお友達に悪魔いますから。だから平気なのですよ。あれはグレーターデビル…だと思います」

マーガレット「グレーター…もしかすると高位悪魔ってやつか…」

レニ「ですね…さあ、行きましょう」

レニがそう言うと悪魔が向かった先へと向かう

すぐ隣の遺跡に着くと、悪魔が電気をつけようとした

悪魔「待ってね。電気つけるから」

そう言って遺跡内が明るくなった。そこには壁画があった

しいな「ありがとうございます。わあ…なんだか変わってる壁画だね…!」

その変わったというのは今までの巫女や戦争の壁画ではなく、まるで昔の人の日常が描かれた壁画だった

5人はその壁画をよく見る。とてもわかりやすい。いつぐらいの遺跡だろうか。そんなこと思うと悪魔が口を出す

悪魔「…ここはね。昔の人が未来へ伝えるために作られた遺跡なんだよ。日常風景の壁画なんて珍しいだろう?

そしてね、あまり劣化もないんだよ。昔から今まで…この遺跡は存在するんだよ」

悪魔は言うと、5人は納得した

しいな「昔の人がその時の今を伝えるための遺跡なんて、とても珍しいね」

マーガレット「なるほどなあ…こんな形で残してあるなんて…」

シャニオンがカメラを用意して悪魔に言う

シャニオン「写真はいいですか?」

悪魔「ああ、いいよ。たくさん撮りなよ」

シャニオンが壁画をカメラに収めた。本当にネタになりそうな壁画である

りな「不思議ですね。悪魔協会が遺跡を保有してるなんて」

悪魔「実は他の国でもこうやって遺跡の保有というのはあるんだ。ここだけじゃない。天使協会だって遺跡があったりするから」

シャニオン「そうですか。前に行きましたがヒダンゲ天使協会にも遺跡ありましたね」

しいな「そう言えばそうだったわ。つまり自然な形で遺跡はあるんだろうね」

4人は壁画を見て回った

悪魔「どうだい?何か部活のネタになりそうかい?」

悪魔にもう慣れたのかしいなは笑顔で答える

しいな「はい!今までとは違ってすごい面白かったです!」

悪魔「ははは!面白いか!やっぱり君たち変わってるねえ?」

マーガレット「元々遺跡巡りって時点で変わった連中とは言われてるけどな…」

しかしマーガレットは天使だからかあまり悪魔とは接しようとは思ってないらしくちょっと間を開けて発言してた

レニ「あなた1人で悪魔協会にいるのですか?」

悪魔「いや、今日は休みじゃないか?他のスタッフはみんな休み。僕一人で用事があっていたんだよ」

レニ「まあそうでしたか。こんな急に遺跡を見たいだなんて言って申し訳ありませんわ」

レニがそう言うと悪魔は笑顔で答える

悪魔「いやいや大丈夫。ちょうど暇してたから気分転換で良かったよ」

さっき言ったとおりレニには悪魔の友達がいるので悪魔とはそこまで怖がらず普通に接していた

4人は見るのを終える

しいな「十分に収穫できたわ!」

マーガレット「ああ。これでいいな」

シャニオン「写真も十分に撮れました」

りな「斬新な遺跡でしたね!」

5人と悪魔は遺跡から出る。遺跡の空気はちょっと淀んてるが、外に出ると美味しい空気が吸えた

5人は悪魔に向けてお礼を言った。巨漢だからと言っても優しい悪魔で感謝した

しいな「本当にありがとうございます!」

悪魔「いいんだ。いつでもここに来ていいからね!」

レニ「今日はありがとうございました」

マーガレット「あんたみたいな悪魔だと価値観変わるな!」

シャニオン「写真も撮らせていただいて嬉しいです」

りな「怖くない人で安心しました!」

悪魔「ハッハッハ、みんな面白いな!また会えるといいね!」

5人はその場を後にする。悪魔は5人の後ろ姿をずっと見ながら思ってた

悪魔「…たとえ、ヒューマンでも、今は争うことをせず…優しさを忘れるな。そう言ってくれましたね。アークデーモン様…」

そうつぶやいて、悪魔は協会の中へと戻っていった


夜…今日もしいなは牧に連絡しようと固定電話の受話器をとっていた。もちろん、すぐに連絡がとれた

しいな「しいなだよ牧さん」

牧「あらしいなちゃん。今日もまた遺跡へ行ってきたの?」

しいな「うん!今日は悪魔協会側の遺跡へ行ったんだ!」

牧「悪魔協会側の遺跡…ああ、あそこね!ちゃんと許可取れた?」

しいな「取れたよ!でも、不思議。すごい貴重な遺跡っぽいのになんだか寂れた感じがしたわ」

牧「そこねえ、昔の人の生活が見れるという結構珍しい遺跡なんだけど…悪魔協会が近くにあるからって理由で

怖いイメージ付いてしまって見学があまりいないのよ。私たちは全然大丈夫だったけど、他の人がね…」

しいな「レニさんいなかったら私たち、怖くて行ってなかったかもしれなかったね」

牧「レニいたんだ?彼女は悪魔平気だと思うわ」

しいな「デブな悪魔でも普通に接してたね。レニさんすごい大人だなって」

牧「まあそうね…そのおデブちゃんの悪魔は良い人だけど、遺跡調査するためになかなか許可が降りなかったことがあったわね」

しいな「そうなの?レニさんが言ってくれたおかげですぐに遺跡へ行けたわよ?」

牧「今はそうかもね…」

しいな「ふうん…ところでね私、鳥になりたいなって思うときがあるの」

牧「どうしたの急に?」

しいな「鳥になれたらね。ヒダンゲの遺跡全部見れるんじゃないかって。大空を飛んで遺跡を巡って、その目で確かめたいの

マーガレットちゃんだってシャニオンちゃんだってりなちゃんだって、4人で鳥になれたらいいのにねって思うの」

牧「そうね…でも、大丈夫よ。あなたたちはまだ若いわ。鳥のように巡れば、必ず良い方向へと進めるわ」

しいな「そうだね…ごめんね変なこと言って」

牧「いいのよ。たまにはそう思うときがあるわよ」

しいな「それじゃ、今日はこれぐらいにして。またね牧さん」

牧「ええ。おやすみ」

しいなは受話器を置く

さっき言った鳥になりたいとはしいなが思ってた発言であった。3人が言ったわけじゃない

しいな「…鳥のように、巡りたいわ」

そう言うと自室へと戻っていった


ヒダンゲの夜。涼しい季節には変わりない

しいなは鳥のようになれるだろうか?


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