第9話夏の国の話

ある晴れた日の悪魔協会総本山…

ちょうどヴァンパイアロードがアークデーモンに話しかけてる最中だった

ロード「アークちゃん支援会社からの通知が来てるわよ」

そう言って手紙をアークデーモンにわたす

アーク「ふむ、ご苦労だ」

手紙を早速開け、中身を確認する。どうやら資金が振り込まれた手紙らしい

その手紙を確認するとアークデーモンは無表情で手紙をしまった

ロード「支援団体の手紙でしょ?」

そう言うとアークデーモンはヴァンパイアロードのほうへ向く

アーク「そうだ。まあまあな額だ。だがこの場所はまだまだ続けられそうだ」

ロード「支援会社って謎よね…嬉しいけど得体のしれない会社だからどういう好意で支援してくれてるのかしら…」

アークデーモンは横に向く

アーク「だな。しかし大手企業なのだからこういう支援はあって嬉しいもの。天使協会総本山もそうだろう」

支援会社は4つの国全てに存在する会社である。どういう成り行きかは知らないが支援してくれるだけいいものだ

アーク「…これだけか?」

そう言うとヴァンパイアロードは笑顔で答える

ロード「うん。これだけよ!」

アーク「そうか。では私は自室へ戻るぞ」

アークデーモンは自室へと戻ろうとしてた

ロード「…」

ヴァンパイアロードは去ったのを確認すると再び悪魔協会の玄関へと向かった

そしてドアを開けるその横にはバラがたくさん入ったブークみたいなものがあった

ロード「ふー。バレずに済んだわね。一応趣味で集めてるバラだけどこれバレたらアークちゃん何言うかわからないしね…」

ヴァンパイアロードはすぐにブーケを持ち、自室へ置こうとしようとしてた

ロード「とりあえず、部下にもバレると困るからさっさと行って…」

アーク「ロード、そのバラは一体なんだ?」

ロード「あっ」

昼のアマリリス高校。光、こうみ、あいりがいつもどおりに昼食を食べてた

今日なんだかあいりの様子がおかしい。光はなんとなく声をかけた

光「あいりちゃん?今日はなんだか変だね?」

そう言われるとあいりは答えた

あいり「…今日はな。野菜では無く肉中心のお弁当になってしまったんだ…」

光「え?そんなことでそこまで気分悪くなるの?」

あいりはしかめっ面で言う

あいり「当たり前だろ!野菜って言ってるのに肉!じゃテンション上がらんだろ!」

こうみ「…そもそもいつもそういうの出してくれるとは限らないじゃない」

言われるとあいりがこうみのほうに向く

あいり「こうみはいいな!肉が好きで!」

こうみ「…そういう姉さんもそろそろ肉に慣れたらどうかしら。大人に近いんでしょ」

光「肉に慣れたらってすごい言葉な気がするよ」

あいり「くそ~~~!もういい。食べるしかあるまい!」

光はちらっとあいりの弁当を確認したがその肉というのは肉巻きで真ん中に野菜があるものだった

いやいやそれでも野菜あるじゃないかと思ったが肉があるだけで嫌な気分になるのだろうか

嫌いな食べ物はパクチーなはずだが肉も苦手ならだいたいの料理が無理なものだと思う…

そんなあいりを見つつ、無言でこうみは肉だらけの弁当を食べていた

そんな時…

?「あ。もしかしてあなた光ちゃん?」

光「え?誰?」

3人がその声に振り向くと笑顔で少女が立っていた

肌は白い。頭に鬼のような角がちょっとだけ生えていた。髪は金色だ。ちょうど光と同じ身長だろうか

光のことを言われたので光はその子に反応する

光「うん。私光だよ」

そう言うとその少女は喜ぶ

?「わあ~~~。やっぱりそうだ!光ちゃん、この学校にいるなんて!」

こうみ「…『この学校』にいる?」

こうみは疑問の言葉でその少女へ言った

?「あ、ごめんね急に言って。実は私のお父さん悪魔協会のスタッフしててね。昨日代表と副代表に気に入られてるヒューマンがいるって!

それを聞いたら光ちゃんの名前が出てね!そう言えばここの学校にいたような気がする!って思ったんだ

そしたら居てやっぱりいた!ってなって話しかけたんだよ~」

光は驚く。まさかこの高校で悪魔協会関係者の娘がいたとは

あいり「そうなのか。だがよくわかったな?」

あいりが言うと少女は更に答える

?「あのね、他にあいりちゃんとこうみちゃんも知ってて最初光ちゃんたちが来たらお父さん代表に向かってなんだその口は!

みたいなこと言ったんだけど代表に黙ってろとか言われてね。その時お父さんこの3人は只者ではないと感じたんだって!

でね、ピットフィーンドさんとシェリルさん含めた5人を後から追ってお父さん代表の名刺をあげたんだよ

そんなことお父さん話してて光ちゃんは代表と副代表のお気に入りでびっくりしたんだって。すごいよね!」

少女がそう言うと3人は思い出す。間違いなくあの悪魔だ

こうみ「…もしかしてあの時の悪魔かしら」

光「…間違いなく悪魔協会に行って最初の場所で出会った悪魔だよね」

そう…その少女はこの前悪魔協会に行き最初の場所で会った悪魔の娘である

最初こそ失礼なやつとは思っていたが気に入られてるのがわかり、これ以上言わなかったのである

もちろん、帰るときに名刺を渡してくれたのもこの少女の父である

(※詳しくは夏の国の話その7をご覧下さい)

あいり「ちなみにあいりっていうのはアタシのことだぞ」

こうみ「…こうみは私のことよ」

そう言うと少女は更に驚く

?「そうなんだ!まさか3人ピッタリで出会えるなんて!嬉しいな~」

光「ってことはあなたも悪魔なの?」

光がそう言うと少女は光のほうに向けしゃべる

?「うん!父はグレーターデーモンで、母はガストっていう不死の一人なんだよ!だから角あるし肌が白いんだ~」

悪魔と不死の組み合わせか…だがそう言うのは普通にいそうである。多分

光「でも、私に会って何か言いたいとかあるのかな?」

少女は答える

?「ううん!別に何もないよ!あくまでも会いたいって思っただけ!でもすごい良さげな3人で良かった!

これからも悪魔協会の支持をよろしくね!お父さんからの言い伝えだよ!」

少女はそう言うと時間を見てはっとする

?「あ!じゃあそろそろ私自分の教室に戻るね!今日は会えて良かった!じゃあね~」

少女は去っていった。去った後、3人はお互いに顔を見合わせた

あいり「…びっくりしたぜ。まさかこんな形であの悪魔の娘に会うなんてな」

あいりはそう言いながら肉巻きを食べた

こうみ「…この世界、割と小さいわね」

こうみは水筒の中身のお茶を飲んだ

光「私…こんなに注目されたんだね。前からそうだったけどここまでびっくりするぐらい名が知れ渡ってたなんて…」

あの少女、割とマシンガントークのような言い方であまりこっちから発言できなかった

あいり「いや、何度も言うがすごいことだと思うぞ光。もう悪魔協会に就職しても大歓迎されそうだしな」

光「うーん…でも、ねえ…人間の私があの場所にいると思うと…」

こうみ「…いいじゃない。人間が居ても、新しい風みたいで。面白いことだと思うわ」

すると学校のチャイムが鳴った。そろそろ昼休み終了である

あいり「あ。まだ完全に食ってないのにチャイムが!まあいい廊下で歩きながら食べるか…じゃあな2人」

あいりは椅子から立ち上がると弁当と箸を持ち、自分の教室へと戻っていった

光「…食べながら歩くってマナー悪いんじゃ…」

こうみ「…全く相変わらずね姉さん」

そんなマナーの悪いあいりを見つつ、光は思った

光(まだ、私の心の中では、決心が付いてないのに…)


夜19時…晩ごはんを食べた光は自室にいた。光は轢沙子に最近ネトゲ会ってないので連絡をしたらそのうちログインするとのことだった

それだけではなくあいりの言った言葉が気になっていた。そう悪魔協会に関してだ

『もう悪魔協会に就職しても大歓迎されそうだしな』

こうみの言った言葉も気になる

『人間が居ても、新しい風みたいで。面白いことだと思うわ』

そんなことしたら果たしてどうなる?だいたい親に言っても喜んで許可をとってくれるか?他の悪魔たちは歓迎してくれるのか?

悩みがつきない。どうしようか…。ふと思いついた

光「そうだ。アークさんの電話番号…あるんだった…」

確か机の中に貰った名刺があった。探してみるとすぐに見つけた。今連絡したら出てくれるだろうか

勇気を出して携帯電話でその番号を入れてみる。ぴっ、ぴっ、番号を入れるたびにドキドキする

そして番号を入れ終えると着信ボタンを押す。緊張が走る

プルルル…プルルル…がちゃ。アークデーモンは電話を出てくれた

アーク「誰だ?」

相変わらず無表情そうで無機質な声をしてた。だが光は次の言葉を言う

光「夜分遅くにごめんなさい。私だよ。光だよ」

光だとわかったアークデーモンは少し柔いだような声をする

アーク「なんだ。光か。どうしたこんな夜に」

光「あのね、私…えーと…」

いくら何度も会ったとは言えどなにせ相手は悪魔協会総本山代表。そして悪魔のトップ。無理のある緊張である

光「私…悪魔協会のこと、気になって…」

そこまで言うとアークデーモンは反応する

アーク「ヒューマンのお前が私たちのことを、気になってしまったのか?」

光「うん…だってアークデーモンさん私のこと気に入ってくれてるし、ヴァンパイアロードさんだって…

部下の人たちはどうなのかわからないけど、ここまで名前が知れ渡ってるから私、悪魔協会のことが好きになりそうで…」

アークデーモンは口調を変えずに答える

アーク「光。私がお前のことを気に入ってるというのは確かだ。もちろんロードもだ

部下たちもまた来たときにはきちんと光を案内しろとは言ってあるから大丈夫だ。安心してここに来い

私たち悪魔協会を好きになる。そのことは私としても嬉しい。だが、少し無理がありそうなら来なくても構わん」

無理がありそうなら…その言葉は少々何かを感じたが、それでも光は言う

光「でも!私、よくわからないんだ…この前もピットちゃんに告られたし、好きとは言ったけど…

ピットちゃんだって立派な悪魔協会の一人だし、こうやって悪魔協会に関する出来事が多くて、私、本当に好きになって…」

そこまで言うと声を詰まってしまった。なぜだか泣きそうになる。だが、少しの空白が流れたらアークデーモンから反応があった

アーク「なるほどな。もしかしてヒューマンとして、悪魔協会のことを好きなってもいいのか?と、光は思ってるんだな?

安心しろ。私は悪魔のトップだがヒューマン共を嫌いにはなったりしない。むしろ、好きになる話も多い

ピットフィーンドに告白されたならそれを受け止めるのが1番だ。好きなのにちゃんと本当の気持ちを伝えてないな?

私も、ヴァンパイアロードに愛してると言われて喜んで受け止めた。好きになるのは、ヒューマンの持つ普通の好きであることには変わりない

お前は立派な悪魔協会の一員だ。そう思ってるぞ」

そう言われると光は気がつくと涙を流してた

アークデーモンとは、本当に悪魔なのだろうか。いや、光にとっては大天使にも近い優しさを感じていた

光「うっ…うっ…アークデーモンさん…ありがとうございます…私…涙が止まらない…」

アークデーモンはかすかに笑ったような声をしてた

アーク「泣いているのか?涙をふけ光。あくまでも私はお前を気に入ってるだけだ。悪魔だからだ…ちょっと変なジョークだな」

アークデーモンが冗談を?それには驚いたが、光は涙をふいた

光「ねえアークデーモンさん…私…まずは何をしたらいいだろう…?」

アーク「そうだな。まずはピットフィーンドにもう一度告白してこい。本当の好きを伝えるんだ

そして、これからも悪魔協会を支持してくれ。それだけでいい。鬼姉妹にも伝えてくれればいいぞ」

光「わかった。今伝えるね。もう外出れないけど、ピットちゃんの家の電話で言うね」

アーク「お前たちの愛を応援してやる。感謝しておけ」

突然の上から目線だが、光は特に動じずありがたい思いでいっぱいだった

光「うん!今日はありがとうアークさん。また連絡していい?」

アーク「いいぞ。いつでもかけてこい」

光「ありがとう!おやすみなさいアークさん!」

アーク「ああ。じゃあな」

そう言うと光は電話を終えた

光「…ピットちゃん…本当の気持ち、今伝えるね…!」

次に光はピットフィーンドの自宅に電話をかけようとした


アークデーモンは自室でさっきの電話のことを思っていた

アーク「面白いな。ヒューマンとは。だから種族の中でも1番心を持ち心を動かされるのはヒューマンなのだろう」

無表情のアークデーモンは静かにほんの少しだけ笑っていた

アーク「おや…私が笑った…。不思議だな」


ピット「…え!?私の愛を伝わってくれるのか!光!」

光「そうだよ!大好きだよ!ピットちゃん!」

ピットフィーンドは受話器越しから光の好きを伝えてくれた

ピット「なんて嬉しいんだ…!前にも好きと伝えたが、あの時はちょっと反応がイマイチで上手く行かなかったなあとは思ったが

本当に心の底から好きと言ってくれて嬉しいぞ!」

光「うん!ピットちゃん!ずっとよろしくね!」

ピット「ああ、いいぞ。好きだぞ光」

光「私もピットちゃんのこと大好き…!」

その後、2人は好き好き言いながら電話を終えた。その様子をシェリルは見ていた

シェリル「ピットフィーンド様、何かあったのですか?光さんからですか?」

ピット「ああ、光が私のことを本当に好きと言ってくれて晴れて私たちはカップル成立だ!」

シェリル「まあ、それは嬉しいニュースですね!おめでとうございます!」

シェリルは嫌な顔せず喜びを感じていた

ピット「ありがとな!…となると次はどうしたらいいのかな」

ピットフィーンドは考えたがシェリルがすぐに提案を持ちかける

シェリル「ピットフィーンド様。まずは携帯電話を持ちましょう。恋人同士なら携帯電話はなきゃいけませんよ」

ピット「うっ、それかあ…うーん…確かに必要になってくるな…よし、明日契約してこよう!」

シェリル「そうですよー。私も付いて行きますから、携帯電話会社に行きましょう。

ところでなんで今まで携帯電話を持たなかったんですか?」

そう言われるとピットフィーンドは困った顔をした

ピット「いや、私は古い悪魔だからこういうの似合わないかなって…」

シェリル「似合う似合わない関係なく、今は持ったほうが便利なことが多いですよ」

ピット「そうだよな。よし、行こう」

そう言うとピットフィーンドは自室へ戻った。その後ろ姿は喜んでいるのがにじみ出ていた

シェリル「…あの、ピットフィーンド様が、こんなにヒューマンの心を持つように…変わりましたね…光さん、ありがとうございます」

光という存在があるから、ここまで変わったのだろう。シェリルは喜ぶと同時に光に感謝をしていた


アマリリス。今は少し寒いがすぐに暖かくなるだろう

新たなカップリングに、祝うべきかもしれない



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