外伝5話

「…ふうん。クリスタルウィンターシティ、最近割と建築物が多いのね…」

一人の女性がそうつぶやく

「さて、ミカエルとか元気にしてるかしら」

ここはクリスタルウィンターシティの真ん中。シダレカのようなビル群ではないがビルが多い

一人の女性はほとんど手ぶらで中心にいた。目的地は天使協会総本山だ

久しぶりに会う友人はどんな感じだろうか。それにワクワクしながら進もうとしてた

いや、この女性は只者ではない女性であった

「天使協会と悪魔協会と色々と巡ったけど、やっぱり総本山のほうが一番よね」

その女性は総本山に行こうとしてた

天使協会総本山…ちょうどお祈りの間にミカエルとアルエルはいた

今日は総本山自体がお休みなのか天使…スタッフがあまりいなかった

二人は今、色々と話してる最中であった。ミカエルが言う

ミカエル「アルエル、あなたは一応説法するときは笑顔を絶やさずに言うのよ」

アルエル「笑顔を作るぐらい、大丈夫ですよ」

ミカエル「そうね。この総本山に来る信者のほとんどが不満を言う人がいないから安心よ」

アルエル「はい。お母様」

説法をするときのことを言ってるのだろう。アルエルがそう言うと玄関のドアが開いた

ミカエル「ん?今日は休みだけど」

開けた人物がドアを閉める。そしてミカエルのほうに向く。するとミカエルは驚くような顔をした

ミカエル「…!?」

アルエル「どうしましたお母様…?」

ミカエルが驚くような人物…その女性は笑顔で立っていた

まず天使の羽があるが一対しか無く、大天使とわかるようなキラキラの羽根をしてた。しかしその羽根は紫に染まってる

ミカエルと同じような身長をしていて、ツインテールの金髪をしてる。瞳の色はアメジストだ

アルエルはその姿を見てただの人物ではないと直感でわかった。悪魔?いや、種族がわからない

?「…相変わらず元気そうね。ミカエル」

ミカエル「…る、ルシファー!?」

その女性はルシファーと言う女性だった

アルエル「ルシファー!?あ、いや。ルシファーさん!?その人は神話の中の人物では…?」

アルエルがそう言うとミカエルはルシファーを見ながら言う

ミカエル「…いえ、ルシファーは神話の中のおとぎ話ではないわ。本当に存在する、堕天使よ!」

アルエル「堕天使…!?」

アルエルは驚く。まさか堕天使という存在が本当にいるなんて。堕天使というのは聞いたことがあるが

アルエルが言う前にルシファーが言う

ルシファー「ええ。私は存在してるわ。堕天使…良い響きでしょ?天使でも悪魔でもない…ちょうどいい存在よ」

彼女が答えるとアルエルは恐怖を感じた。この神聖な場所で何をしに来たのか?

ミカエル「…何よルシファー、あんた、ここにカチコミに来たの?」

ミカエルが今までにない険しい顔をしながら言う。それもそうだ。堕天使という存在なのだから

ルシファー「…ふふふ、ただの見学よ」

ルシファーがゆっくりミカエルのほうに近づく。アルエルは何も手を出せない状態だった

お母様が、危ない…!そう思った…が

ミカエル「…ん、もう!来るときは予約しなさいって言ってるじゃない!」

ルシファー「だって、いつもミカエルって忙しいじゃない。電話出れるの?」

ミカエル「いや、私も電話ぐらい出れるわよ!」

アルエルは思ったが、あれ。なんか仲がいい雰囲気だな。と

アルエル「あのー…お二人はどういう関係で?」

ルシファー「アルエルちゃん心配しないでね。さっきの雰囲気はいつもどおりの雰囲気で、ミカエルとは親友なのよ」

ミカエル「まあ親友というか友達よ」

ルシファー「えー友達並扱いだなんてひどーい」

アルエル「は、はあ」

緊迫した状態はどこへやら。ミカエルもルシファーもすっかり笑顔だった

ミカエル「こんなとこで立ち話するより私の部屋に来ない?」

ルシファー「お、そうしましょう!」

アルエルは状況に理解できないまま代表室へと向かうことになった


代表室…来客用の椅子にルシファーが座ってる

来客のためにアルエルはお茶を用意した。ミカエルとルシファーが対面するように座ってる

ミカエル「…しかしねえ、ピジョン村からここまで来るの大変だったでしょ」

ルシファー「大変も何も、普通に電車で行ける距離だから大丈夫よ」

アルエル「ルシファーさん、ピジョン村に住んでるんですか?」

そう言うとルシファーはアルエルに向く

ルシファー「そうよ。いつもはピジョン村でのんびり暮らしてるの。ミカエルと同じぐらいの立場でもあるのよ」

アルエル「じゃあ、天使協会関係者ですか?」

ルシファーは笑顔で答える

ルシファー「半分正解。たまにピジョン村の天使協会にも来るけど、あまり関わってない感じね」

ミカエル「あなた悪魔協会も支援するって言ってるじゃない」

ルシファー「そうなのよ~。アマリリスへ遠くに行ったときあったけど、アークデーモンはまあ良い人すぎてびっくりしたわ。

あとヴァンパイアロードと気が合って長く喋ってしまったわね」

アルエル「なるほど…堕天使だから、なのですか?」

ルシファー「一応堕天使。とは名乗ってるけど基本的には天使と悪魔両方支援する形で存在してるわ」

ミカエル「堕、とはかくけど天使には変わりないわ。アルエル、ダークロード戦争ってわかってるわよね?」

アルエルはすぐに反応した

アルエル「はい。ダークロードが反乱を起こして、妖怪と巫女が討伐した戦争ですよね

その活躍した巫女さんに会ってお母様、天界へ行ってその妖怪を探すように言われてたんですよね?」

ミカエル「そうなのよ…人探し全然進んでないけどね…」

ルシファーがお茶を飲んで答える

ルシファー「ダークロードって、あいつ勝手に魔王を名乗った不届き者なのよ。アークデーモンっていう魔王がいるのに

それを無視してこの世界を闇に染めようとしたの。悪い奴でしょ?まあ討伐されて当然の結果ね」

アルエル「そうですか…でも、なぜそれを知ってるのですか?」

ルシファー「私、実はダークロード戦争時に既にいた存在なの。ミカエルとはほとんど同期よ」

アルエル「お母様と同期ですか!…でも、今は何を?」

ルシファー「とりあえず支援団体にはいるわ。あと、私ルシファーって名前じゃなくて神崎るしあって偽名使ってるの。

ルシファーじゃわかってる人に指摘されたら面倒だからね。もう一回言うけど天使協会も悪魔協会も支援してるわ」

アルエル「どっちも支援するなんてすごい!」

アルエルに言われるとちょっと照れくさい表情を見せるルシファー

ミカエル「でもそれが理由で天使協会の上に立とうとはしてないの?」

ミカエルが言うとルシファーは頭をポリポリしながら言う

ルシファー「うん、まあ神からはほっとかれてるからね…。おちおち天界へも行けないの」

アルエル「神様に嫌われてるんですか?」

ルシファー「そうじゃないかしらね。どちらでもない、天使と悪魔の中性な立ち位置だからね」

アルエル「だから堕天使。なのですね」

ミカエル「あなたならきっと上の立場になれるはずだけどね」

ミカエルが言うとちょっと神妙な顔でルシファーは言う

ルシファー「うーん…。私、もうあまり位の高い位置にはいたくないから…今の生活で十分満足してるわ」

ミカエル「もったいないわねえ」

ルシファー「いいのよ別に。あ、そうだアルエルちゃん。名刺、渡しておくわね。これよ」

ルシファーからアルエルは名刺をもらった。そこには「支援団体会社アセルス」という名前がかかれてた

「神崎るしあ」という名前の下に住所、電話番号、ホームページのURLがかいてあった。アルエルは見て思ったことを言う

アルエル「ありがとうございます!…支援団体会社アセルスって聞いたことないですね」

ミカエル「実はこの総本山も支援されてるのよ。そういえばアルエルに言ってなかったわね」

ルシファー「まあ、そうね。縁の下の会社だから会社名はそこまで表立って公表されてないのよ。

でもやってることは基本営業と事務ね。普通の会社と変わらないわ。私は営業だけど」

アルエル「でも、失礼な言い方かもしれないですがピジョン村にその会社があるんですか?」

ルシファー「もちろんちゃんとこじんまりだけど会社があるわよ。遠くから来てる人もいるわ」

アルエル「そうなんですか…わかりました」

ミカエル「でもあなたの会社って4つの国全部に存在する会社でしょ?」

ルシファー「意外とね。縁の下なんだけど割と大手企業よこれ」

アルエル「じゃあいつかルシファーさんの会社が表に出るときがあるんですね」

そう言うとルシファーはちょっと首をかしげた

ルシファー「うーん?どうかしらねえ?知る人ぞ知るって会社だから…でも例えば悪魔協会総本山はみんなわかってるかもね!」

ルシファーは喜んで言う。ならシダレカとヒダンゲにもその会社はあるのだろう

アルエル「面白そうな会社ですね」

ルシファー「いやーでもやってることが地味だから特にぱっとした感じもないのよね」

ミカエル「地味とか言わないでよ。大切よ」

アルエルは思ったが、こんな天使協会も悪魔協会も関係無く支援する会社があることに驚いた

もしかしたら2つの協会が長く続いてるのもこの会社の存在があるのだろうと

ルシファーは堕天使だとすると会社の種族はどうなってるのだろう?おそらく色々いるのだろう

その質問はしなかったが、どうしてでももう1つの質問を投げかけた

アルエル「ルシファーさん。堕天使なのはわかりましたが、なぜ羽根が1つしかないのですか?」

ルシファーはその言葉を聞くと自身の羽根を触って答えた

ルシファー「これ?実は生まれたときからこんな翼だったのよ。別にこれが普通だったから何も思ってないわ」

アルエル「生まれたときからなんですね」

ルシファー「だからミカエルのような翼がたまに羨ましく思えるわね」

ルシファーが言うとミカエルの羽根をじーっと見ていた

ミカエル「でもこの羽根も別に意味はないんだけどねー」

しかしアルエルはもうひとつ言葉を言う

アルエル「でも大丈夫ですか?その羽根が堕天使の象徴だったら、ルシファーさんだってバレるんじゃ…」

アルエルがそう言うとルシファーは笑顔で答える

ルシファー「ぜーんぜん大丈夫!そもそも堕天使っていうのはあまり知られてないから!」

アルエル「そ、そうなんですか?堕天使ってあまり見たことも聞いたこともないですが…」

そう言うとミカエルが補足説明を言う

ミカエル「アルエル。堕天使はその存在自体公表されてないの。国家認定もないのよ。ほとんどの人が知らないの。

せいぜいわかる種族は高位悪魔と大天使のみ。架空の存在ではないけど、知らない人が多いのよ」

ルシファー「そのぐらいの種族でわかってくれると話が進むのよね~」

アルエル「また失礼な事言いますが…忘れ去られた…種族なんですね?」

ルシファー「そうそうそれ!だから私のみわかってくれると嬉しいわ」

アルエル「わかりました」

アルエルが言うとルシファーは腕時計を見た

ルシファー「おっと!そろそろ帰らなきゃ」

ミカエル「もう帰るの?泊まってのいいのよ?」

ルシファー「いやー明日会社あるからさー。戻らないとだめなのよ。今昼だけどここからピジョン村まで行くの夕方になっちゃうし」

ミカエル「そうなの。まあ久しぶりにルシファー見れてよかったわ。また来てね」

アルエル「ルシファーさん。今日は色々ありがとうございます」


ルシファーが総本山を離れ帰る。今日は親友と話できただけで十分な収穫だ

まあ彼女曰く親友ではないと発言してたがジョークに近いので別に大丈夫だった

ルシファーは携帯電話のメールを見る。もう次の仕事の内容が届いていた。帰ったら内容をまとめないといけない

支援団体とは言っても国によって忙しさがまちまちだ。ユキノウエは天使協会関連の内容が多い

逆にアマリリスは悪魔協会関連である。だがあまり関係はない

ルシファー「さ、帰ったら明日に備えないとね!」

ルシファーが歩いているとき、一人の女性とすれ違う。同じ天使の羽根がある女性だった

しかしそんなこと関係なしでルシファーはピジョン村へと戻ろうとした

ガブリエル「…?あの人…私と同じ天使のような…?いや、気の所為ですね」

すれ違った女性はガブリエルであった。だがこれ以上気にはせず、ガブリエルは総本山へ戻ろうとした


堕天使ルシファー…

その実態は天使も悪魔も支援する天使とも悪魔ともならない存在であった



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る