第8話冬の国の話
~
アルエル「じゃあ、お母様、ガブリエルさん。いってきます」
天使協会前の玄関でアルエルは母ミカエルとガブリエルに送られていた
今日の気候はだいぶ涼しい。おそらくそろそろ雪も普通に降るだろう
ミカエルは普通の顔をしながらアルエルを送ろうとしてた
ミカエル「ええ、行ってらっしゃい。今日はバイトあるのよね?」
そう言うとアルエルは笑顔で答える
アルエル「はい。でも、冬美さんと一緒だから全然嫌にもなりません」
ミカエル「そう。なら安心するわね。早く行ってきなさい」
アルエル「はい!」
彼女が言うと早歩きで向かっていった
ガブリエル「…ミカエル様、やはり、気になるのですか?恋人の存在が」
ミカエルはその言葉を聞くとガブリエルのほうへ向く
ミカエル「大丈夫よ。これ以上気にしても意味ないじゃない。さ、私たちもさっさと戻るわよ」
つかつかとミカエルは戻っていった
ガブリエル「…しかしどうも声と心がそうでもなさそうですね。何かあるのでしょうか」
戻ったミカエルの後をついていこうとしたガブリエルだった
~
クリスタルウィンター大学。今日も一日始まろうとしていた
登校する生徒の数は相変わらず多い。男女種族関係なく1限目か2限目の講義に出ようと集まってくる
冬美はその一人でもあり、大学へと向かおうとしてた
冬美「う~寒いわね…。そろそろ冬服が本当に必要になる季節じゃない」
ユキノウエ、クリスタルウィンター大学付近。風が吹いていて体感温度低めの気候であった
冬美「なんていうか、秋になると一気に寒くなるのよねこの国…」
道を見ると散歩中であろうもふもふな大型犬に出会った。飼い主ももふもふな服を着ている
もしかしたらまだ今日は会ってないギン子はもふもふだから冬は平気なのだろうか
しかし、突然その寒さを和らぐような出来事があった
アルエル「ふ~ゆみ~♪」
アルエルが後ろから冬美を抱きついたからだ。急にやられて冬美は驚くが、そこまで嫌ではなかった
冬美「あ、アルエル!?」
腕を少しほどき、アルエルの前へと顔を向ける
冬美「アルエルおはよう。急に抱きつくような人ではないと思うけど…」
アルエル「あら?私だって恋人に甘えたいときあるわ。今日みたいに寒い日は!」
いつからアルエルはこんなに甘えん坊になったのだろうか…
今日みたいに寒い日は。と呼ばれてもちょっと待て、天使は寒いのが大丈夫ではなかっただろうか
登校中の生徒がその姿をちらほら見てる。冬美はちょっと恥ずかしかった
冬美「アルエル…一応ここはもう大学の場所だから…イチャイチャするなら他にしましょう?」
優しく言われてアルエルがはっとする
アルエル「あ!ごめんなさい…!ついつい…周りを見てなかったわ…」
アルエルはすぐに抱きつくのをやめた
冬美「抱きつかれるのは嬉しいけど、これ他の天使学科の人が見たら絶句ものよ」
そう言うとアルエルは慌てる
アルエル「そうだったわ…まあとりあえず見てないことにしましょ!」
冬美「そ、そうなの?」
よくわからないことを言われて冬美もある程度納得するしかなかった
二人は特別手を繋がず、ほどほどの距離をたもちながら大学の校舎へと行く。二人は別々の講義がある
アルエル「じゃあね。冬美!」
冬美「ええ。あなたも講義がんばって」
アルエル「当然よ!ちゅっ!」
アルエルは冬美に向けて投げキッスされた。他の学生は見てないからやったのだろう
アルエルは階段を登った。後ろからだが嬉しそうな歩き方だった。投げキッスは嬉しいのだが、冬美はふと思う
冬美「…投げキッスされたけどこれもまた天使のキッスのように効果はあるのかしら…」
キスに慣れた。というかアルエルの行動に慣れてしまった。というしかなかった
昼過ぎ、今日はギン子、ミサゲ、コークと冬美と仲良し4人が集まっていた
食堂。相変わらずアルエルは別の場所だったが、たまには4人で集まらないとさすがに友達としてはだめだからだ
4人テーブルの席に座り、昼ごはんを食べる。まさミサゲは週刊誌を持ちながら食べてた
冬美「またアンタ読みながら食べてるの…」
ミサゲ「仕方ねえじゃんまた気になる記事あるからよ」
ギン子「ミサゲがだんだん週刊誌読むのが趣味に思えてくるわね」
ミサゲ「だからまた気にある記事があったから読んでんだ!趣味じゃねえ!」
コーク「今度は何を読んでるのミサゲちゃん?」
コークに言われるとミサゲは今読んでた記事を3人に見せる
ミサゲ「よくニュースでたまに取り上げてる土地開発の問題あるだろ?それの記事だ。やべーぞ、この国はちっとも進んでねえ
あとヒダンゲもかなり進んでないらしいな。シダレカとアマリリス、どちらかが進みまくってて不平等が出来てんだとさ
噂によるとあまりに進んでないからここの国王、シダレカへ機材要求もしてるほどだ!あとヒダンゲな」
そう言うと3人は思わず納得してうなずいた
ギン子「確かに…ここの開発する場所って山があるし冬は中止しちゃうんだっけ」
冬美「そうよ。ピジョン村の向こう側が開発地域だけど全然進んでないって聞いたことあるわ」
コーク「ピジョン村ってスキー場あるとこだよね」
冬美「そうね。困りものねえ」
その言葉を聞いたらミサゲは本を閉じた
ミサゲ「ただ…この話は国絡みの問題だからあまり私たちには関係ないかもな」
コーク「そんな土地問題のことで戦争になったらボク絶対反対」
ギン子「さすがにそこまでじゃないわよ。ただ不平等なのはなんとかしないとね」
3人がそう言ってると冬美は周りの人たちを見ていた。アルエルはいるだろうか
…いや、わかる。いる。人が集まってる場所がある。間違いなくアルエルはその中心にいる
相変わらず人気だ。だが、それでも冬美のことは第一に思ってるだろうから安心はしてる
冬美「…アルエル…」
コーク「冬美ちゃん?どうしたの?」
冬美「ん?なんでもないわよ」
しかし、聴力の良いギン子には普通に冬美のつぶやきを聞こえてた
ギン子(前もそうだったけどやけにアルエルのこと言うわね。これって…)
講義がほぼすべて終わりサークル室…冬美は準備をしていた。と言ってもアナログゲームの準備だが
今日はギン子とミサゲとコークは別々の講義に行きバラバラにここで合流する予定だ
おそらくアルエルも普通に来るだろう。どちらかというとアルエルが来るのを楽しみにしてた
冬美「さて…今日は何をしましょうか…」
そうつぶやくとドアからノック音が聞こえた
冬美「はーい?」
ガチャ…開けると冬美の恋人が現れた。アルエルである。彼女が冬美を見ると嬉しそうな顔をした
アルエル「…冬美~~!」
アルエルが冬美のとこまでかけよるとすぐに抱きついた
冬美の顔がちょうどアルエルの胸のあたりにくっつくためちょっと苦しい。だが悪い気分ではない
アルエル「冬美…」
冬美「どうしたのアルエル?」
そう言うとアルエルは頬にキスをした。もう何回目のキスだろうか。これも天使のキッスだろうか
しかし冬美はそれを嫌ともせず、キスされた後見つめ合った
冬美「…ふふふ、何度もキスされると私どうなっちゃうの?」
アルエル「今回は特別な術はないキスよ。これは愛情表現のキスだからね」
冬美「愛情表現…そういうのって、自分で調整できるのね?」
アルエルは抱きつきながら説明しようとしてた
アルエル「そうよ。術は自分で調整できなきゃ覚えたり唱えたりしたらだめなの。これは悪魔の呪術にも言えることよ
素人が勝手に術を使うのはやり方がわからないと魔術の暴走を引き起こすわ。それはお母様によく言われたことなの
祝福の術ですら、暴走するときはあるの…でも、冬美になら何度も祝福の術を使ってもいいけどね…。だって恋人だもん」
説明が終わるとアルエルはまたぎゅっと抱きしめる
冬美「そうなの…私、ただのヒューマンだからそういう術って無理でしょうしね」
アルエル「君は心の強いヒューマンよ。そして、自分で自己管理ができてると思うわ…。ひとつの術を学んでもおかしくはない…
そういう術を教わる学科はあまりないけど、お母様に認められたし冬美なら絶対術を覚えることが可能と思うわね…」
だが冬美は守銭奴という性格があるが術とはあまり関係ないだろうか
冬美「う、うーん。アルエルがそう言うなら挑戦してみたいかもしれないわ」
アルエル「…実はね、もっと簡単な方法で術を覚えることができるのよ」
冬美「え?それって何?」
アルエル「それはね…」
アルエルがそう言うと、何かを感じたのか冬美の身体から離れる。ドアが開いた
コーク「ごめんね冬美ちゃん。あれ、アルエルちゃんもいたんだー」
ミサゲ「よーぉ冬美にべっぴんさん!いつの間にか来てたんだな!」
ギン子「ちょっと時間かかっちゃったわ。2人来てたのね」
3人が来た。アルエルは普段の口調に戻る
アルエル「3人さん!こんにちは。今日もお疲れ様です!さあ、やりましょうか」
冬美「そうね。じゃあ今回は…」
アルエルが元気に3人に挨拶する。冬美もすぐに準備をすることにする
サークル活動が終わり冬美とアルエルはいつもどおりにバイト先へと向かう
アルエルは相変わらず上手く接客できて店長の褒められていた。冬美も負けじと頑張った
そんな中で悪魔のユウは「この2人だけで十分店回るね~」などと言ってたが意味不明なので無視した
今日は長い時間客がいたのが多く、店じまいするときも結構遅くになってしまった。帰るころにはすっかり深夜に近い状態となった
ユウ「じゃあねえ~お2人さん!アタシ自転車だから!」
冬美「ええ。お疲れ様」
ユウがその言葉を聞くとバイバーイと言ってさーっと自転車で帰った。しかし、冬美は困った状況になる
冬美「困ったわ…もう電車は動いてないだろうし…タクシーで帰ろうかしら…ってアルエル?」
アルエルはいつの間にか携帯電話で誰かと喋ってた
アルエル「…はい、そうですそのお店にいます…はい、よろしくおねがいします」
アルエルは携帯電話を切る
冬美「誰かと連絡してたの?」
アルエル「ええ。部下にここまで車で迎えに来て欲しいって言ったわ。でね、冬美。今日は私のとこで泊まらない?」
冬美「泊まることができるの!?いいの?」
アルエルは胸を張って言った
アルエル「安心して!私の権限は強いのよ!まあお母様とは比べられないけどね」
冬美「ありがとうアルエル…」
アルエル「大丈夫よ。だって恋人だもん」
ちょっとすると天使協会関係だろう車が来て部下がドアを開けてくれた
天使「娘様、おまたせしました。さあ乗りましょう」
アルエル「ええ、ありがとうございます。さあ冬美」
冬美「ありがとうね」
2人は車に乗り込み、そして出発した
車の中の2人は後部座席で少し間を空けて座っていた。ここでいちゃつくのは少し恥ずかしいからだ
当然運転してる人もいるため会話はなるべく避けていた
いつの間にか天使協会総本山に着いていた。アルエルは運転手にお礼を言う
アルエル「ありがとうございます」
冬美「こちらこそありがとうございます」
天使「いえいえ、結構ですよ。さあ代表様が心配してるでしょうから行ったほうがいいですよ」
2人は車を降りる。天使協会の玄関まで行くと1人が立っていた
アルエル「あ!ガブリエルさん!」
ガブリエル「娘様、おかえりなさいませ。ところでこの女性は?もしかして冬美さんですか?」
アルエル「そうですよ。冬美、紹介するわね。こちらはガブリエル。副代表なのよ」
冬美「はじめまして。冬美と言います。よろしくおねがいします」
ガブリエル「ええ、どうも。…見た目、確かにミカエル様の言う通り芯が強そうなヒューマンですね」
ガブリエルはふと思ったが久しぶりに娘様がタメで言うのを聞いた。少しびっくりした
アルエル「食事はもう終わってますか?」
ガブリエル「いえ、娘様用にとっておいてます。冬美さんも一緒に食べてもまだ量があります」
アルエル「わかりました!さ、冬美はいろ!」
冬美「ええ。ガブリエルさん、何から何までありがとうございます」
ガブリエル「いえいえ。どうぞごゆっくりしてください」
2人が天使協会へと入る。その後ろからガブリエルが思っていた
ガブリエル「…あのヒューマンが娘様の恋人…娘様はどんなとこがあのヒューマンを気に入ったのでしょうか…?」
まずは手を洗い食堂に行った。今日もシチューであり牛タンシチューであった
そしてパンも追加であった。冬美は恐らくミカエルが使ったパンだろうとわかっていた
冬美「…天使協会ってシチューばかり出てくるの?」
アルエル「そういうわけじゃないけどね…たまたまよ」
とりあえず2人は食べていた。冬美は美味しいと思った
冬美「うん。美味しいわ。パンもあるから最高ね」
アルエル「…冬美、ほら、あーん」
冬美「ふふ、もうアルエルったら」
アルエルの使ってるスプーンを冬美は口に入れる。ちょっとだけ今までより美味しい
そんなことをしてたらドアがガチャっと開く。ミカエルだった
アルエル「お母様!ただいま戻りました!」
ミカエル「はいはいおかえり。冬美も一緒なのね」
冬美「はい。今日は1日泊まることになりました。よろしくおねがいします」
ミカエル「ええ、いいわよ。一応今日だけはアルエル、あなたへ部屋に誰も近寄らせないように部下に言うわ」
アルエル「本当ですか!ありがとうございます!」
冬美「色々とありがとうございます。パン、美味しいですよ」
冬美がそう言うとミカエルは笑顔になる
ミカエル「あら、それはありがとう。んじゃ、あまり夜ふかししないでおきなさい。じゃ」
ミカエルは食堂から出ていった
冬美「…本当にミカエルさん優しい人ね」
アルエル「そうでもないわよ。ただ、気を使ってくれてるだけだと思うの」
食事を終えた2人は風呂場へと行って身体を洗った
そしてアルエルの自室へと向かい、2人はベッドで喋ってた。冬美はアルエルが使ってる部屋着を着ていた
ちょっとぶかぶかするがとりあえず着れるのでよかった。アルエルの香りがする
冬美「いやー風呂場が大きくて最高だったわね。私の部屋の風呂場とは全然違うわ」
アルエル「あまり大きすぎるのも困るけどね。さ、もう寝ましょう」
冬美「そうね。明日もあるし、あまり夜ふかしできないわね」
アルエル「朝食も付いてるわ。おやすみ」
冬美「おやすみなさい」
2人は電気を消して、寝ることになった
そういえば術はもっと簡単な方法で覚えるというのを気にはしてたが特別言う必要はないと思い冬美は言わなかった
深夜…アルエルは起きていた。恋人の寝顔は可愛い。そう感じた。冬美が起きない程度の声で言う
アルエル「…冬美、さっきのね、術を簡単に取得できる方法があるの。今、やるね」
アルエルが言うと、はさみを用意して自分の人差し指を切った。血が流れる
そして寝ている冬美の口をちょっと開き、その血を冬美の口へと入れた
アルエル「…大天使の血ってね、悪魔の血とは違ってすごい貴重とされてるの
血を口か輸血すると自然と術が使えるようになる。だから、あなたはたった今大天使の血筋を引くヒューマンになったわ
いえ、大天使の存在になったのよ。これでオーラが大天使と同じになるの。大丈夫、お母様とガブリエルさんにはバレないわ
冬美…あなたと出会って、本当によかった。これからもずっとよろしくね」
口に血を流すのを終わったのかさっさと血を止めてまた寝ようとしてた
冬美は大天使の血をもらい、ヒューマンながら天使と同じ種族となっていた
ユキノウエ、今日は雲ひとつない天気
月が明るく照らしていた
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