第8話夏の国の話

朝が過ぎたちょっと昼に近い時間…

2人は悪魔協会から出ようとしてた。その2人とはアークデーモンとヴァンパイアロードだった

アークデーモンはいつもの服ではなく私服で、ヴァンパイアロードも私服であった

今日は雲ひとつない天気。いわゆるデートみたいな形で行こうとしてた

代表と副代表が一緒にいなくなったら悪魔協会はどうなるのかわからないが、ヴァンパイアロードが行きたいというから行くことになる

ロード「やっぱりアークちゃんの私服可愛い~!」

アーク「別に可愛くはないだろ」

アークデーモンが無表情でロードの言ったことを否定する

ロード「そんなことないわよ!だってアタシはこの前アークちゃんもうちょっとオシャレしたらどう?って言ったじゃない

その言葉を有言実行してくれたのが嬉しいのよアタシ!」

ヴァンパイアロードがそう言うとアークデーモンは少し微笑んだ気がした

アーク「トップに立つ者、そういうファッションも一応気をつけないといけないと思ったからだ」

ロード「あ!アークちゃん今笑った!久しぶりに見たわ!やっぱりアタシに見せる表情が好きなのよ!」

笑ってたのだろうか?自分では無意識にそうなってたのだろうか。アークデーモンは少し考える

アーク「…まあいい。そろそろ行くぞ。1人でも見られたらうるさいだろうしな」

ロード「ええ!アークちゃんとのデート!嬉しいわ~」

ヴァンパイアロードはアークデーモンの腕を自分の腕を絡めた。そして手を繋ぐ

アーク「…こうでもしないとだめなのか?」

また無表情な顔でヴァンパイアロードに言う

ロード「だってアークちゃんアタシのこと愛してるって言ったじゃない。もう恋人以上の存在なのよ!」

アーク「…ふっ、悪くはない」

さっき見せた表情はどこへやら。だが不満は一切なく、2人は恋人同士のような手の繋ぎ方で門を出た

アマリリス高校。今日も授業を行っていた。

相変わらず全員集中して授業を受けている。そして一切私語もなく進んでいた

先生が黒板にかいている。そして言葉を言う

先生「…この国と他の国は未だに開発を進めています。我が国ではアジサイ村から開発を進めてます

しかし、樹木が密集して多く、いちいち伐採して根っこを取り除く必要があるためなかなか進めていません

樹木が採れるため木造建築をするときはいいのですが、中には腐ってる樹木があるため全部とは言えない状況です」

先生の言葉を聞いて光が思った

光(その開発ってまだ続いてたんだ…)

光がそうおもうのは仕方ない。開発があまり進んでないからだ

生徒「先生。他の国はどうなんですか?シダレカあたりは順調そうですが?」

生徒の1人が質問をした。先生は答える

先生「あのね、たしかにシダレカは都会だし色々な機材があるから開発は進んでるけど、残りのユキノウエとヒダンゲは

開発が全然進んでないんだ。ユキノウエは山があったり冬になると猛吹雪で開発中止になるし

ヒダンゲに至っては機材不足でイマイチ進んでいない。これが現状なんだ

4つの国もなるべく平等に開発を進めてはいるものの、いつか不平等なことにはなりそうだね…」

生徒「ありがとうございます」

光(色々な機材あるシダレカのほうが進んでるんだね)

先生が質問に答えるとまた生徒たちのほうに顔を向ける

先生「とりあえず、今のところはそんな感じ。開発に関してはテストに出るかもしれません。しっかり覚えてください」


お昼ごはんタイム。もちろん、あいりが来て一緒に食べる

前にこうみが風邪を引いていたが今は回復して健康になっている。咳も出ていない

光の弁当は色々な食材。あいりは野菜だらけの弁当。そしてこうみは肉だらけの弁当。姉妹なのに好みが全然違う

光は思ったが本当に野菜だらけで力出るのだろうか…とは思っていた。光は話題提供をした

光「この国の開発って全然進んでないんだねえ」

光がそう言うとあいりが答える

あいり「らしいな。そもそもアマリリスジャングルとかいうのあるしその先の開発の場所って鬱蒼としてるらしいぞ

開発した先に遺跡なんぞあったらそこで開発中止になるだろうしそりゃ進まないだろう」

こうみ「…そういえばアマリリスジャングルって伐採は禁止なのよね?」

こうみが言うとあいりは2人に顔を向けて答える

あいり「そうだ。神秘的な場所とされてるから樹木に傷や落書きをつけようものなら罰金とられるって情報だ

もちろん、アマリリスジャングルにいる虫や動物だって勝手に持っていけないしな。値打ちがあるが

特に密猟はかなり厳重に警備されてるからまず無理な話だ。常時警備隊がパトロールしてるぞ」

珍しくあいりが勉強したのか知識を披露してた

光「そうなんだ~。で、あいりちゃんは警備隊と開発隊どっちに行きたい?」

あいり「ん?ん~…。ぶっちゃけどちらでもないんだがな~。てか光はアタシをどっちかに就職してほしいのか」

光「イメージ的に、かな?」

あいり「確かにガテン系みたいな会社に就きたいとはおもうが…アタシは鬼だからってもその2つは厳しそうだな」

こうみ「…確かに毎日同じことしてると飽きてきそうね」

いつの間にかあいりとこうみは既にごはんを食べ終えてた

あいり「まだもうちょっと腹に入れたいな」

こうみ「…私も同意見だわ」

光「じゃあ購買に行く?」

あいり「おっ、そうだな。そうしよう」

3人は購買に向かった

購買の場所についた。生徒たちが既に買ってるのか人のピークはなかった。残りものが売られてあった

あいり「うーんどれにするか…あ、ちょうど野菜だらけのパンあるじゃないか!これ!」

こうみ「…私は焼きそばパンでも買うわ」

光「じゃあ私は甘そうなフレンチトーストにするね」

買うものが決まったみたいだ。購買の人にお金を渡して買った

あいり「残り物には福があるってな。美味しそうだ」

そう言うとあいりは光のほうに顔を向ける

あいり「そうだ光、今日はアタシ部活があるから先に帰ってくれ」

光「うん。わかった」

こうみ「…それと私も用事があるから先に帰るわ」

光「こうみちゃんも?いいよ~」

3人は教室へと戻った


放課後…光とこうみは下校しようとしていた。相変わらず下校する生徒が多い

季節が季節なのか既に夕方に近い時間になっていた。アマリリスでも季節というのは一応ある

夏の国だからと言ってもとりあえずは秋や冬の季節がある

光「最近この時間になると夕日を見ること多いね」

こうみ「…そうね。季節の移り変わりかしら」

光「ところでヒダンゲの夕日って綺麗らしいねえ」

こうみ「…あそこは田舎だから基本的に美しいのよ」

2人が門を出た。しかし門を出たとき、声がした

?「あ、光!おーい!」

光とこうみがその声のほうへと向く。その声は…

光「ピットちゃん!」

ピットフィーンドだった。彼女が2人のほうへ近づく

光「ピットちゃん!今日はどうしたの?」

ピット「いやいや、光はどうしてるかなって思って来たんだ。ま、簡単に言えば暇つぶしってやつ」

光「そうなんだ~」

2人が言うとこうみも言う

こうみ「…あ、ごめん。そろそろ帰るわね。2人でゆっくりしてて」

光「うん!こうみちゃんまた明日!」

こうみが去っていった

ピット「よし、じゃあ光、一緒に海が見える場所まで行こうぜ」

光「え?歩いて?」

ピット「こういう時は光の自転車が役に立つだろうが」

自転車で2人乗りして海へと向かった。漕ぐほうは光、後ろにピットフィーンドが乗っていた

光「でもこれ警察の人に見られたら注意されるじゃん!」

そんなこと言いつつ自転車を漕ぐ。だがピットフィーンドは全然構わず言う

ピット「大丈夫だ!仮に悪魔協会の奴らにも見られても大丈夫!」

光「そ、そうなの!?けど突っ走るね!」

光とピットフィーンドは自転車で突っ走って海が見える場所へと向かった


海に着いた。2人乗りなんて初めてだから光の足がちょっと疲労してしまった

アマリリスの海はとても綺麗であり砂もサラサラ。海も濁りがない。夏になると海水浴の場所として有名だ

おまけに夕日で美しく、映えというのかカメラに写しても綺麗そのものだ

光とピットフィーンドは2人並んで夕日を見ていた

幸い2人乗りしても警察や悪魔協会の人には会わず、そのまま海へと向かうことができた

光「綺麗な夕日だね…」

ピット「ああ。私も夕日が好きだ。そして次は月の光だ」

光「月の光だって綺麗だよね」

ピット「ここは元々空気を汚す工業地帯がないしな。シダレカやユキノウエとは違う、不純物がない空なんだ」

光「ほんと、良い国だよね…」

ちょっと間が空く。だがピットフィーンドはまたしゃべる

ピット「悪魔協会、どうおもうか?」

ピットフィーンドが言うと光は答える

光「とっても良いとこだよ。みんな優しく思えるよ。トップのあの2人だって良い人だし、その部下たちだって良い人だと思う」

ピット「お前がそう思ってくれるなら、私も光と鬼姉妹に会って正解だと思うぜ。シェリルもそう思ってるだろう」

光「でも、アークデーモンさんとヴァンパイアロードさんのことで質問あるけど…」

ピット「なんだ?どんな質問でもいいぞ。色々と知ってるからな」

光は一呼吸置いて、言う

光「アークデーモンさん、デーモンっていうのはわかるけどアークってなんだろ?」

ピット「それか。アークとは『偉大な』とか『支配者』って意味だ。要するに悪魔の支配者って意味だな」

光「トップにぴったりな意味だね…。そういえばヴァンパイアロードさんってロードは君主という意味だし男性の名前じゃない?」

ピット「単純な理由だ。襲名ってわかるか?元々父がそう言う名前だったんだ。で、父の死後、襲名してその名前になったんだ

本当はヴァンパイアクイーンという名前にしたかったらしいが、父を敬愛してたから、ロードのままになったんだよ」

光「父親想いなんだね。それだけでもロードさんの優しさがわかるよ」

ピット「まあキレると怖いが…だが、アークデーモンとヴァンパイアロードは強い絆で結ばれてるからな」

光「強い絆?」

ピット「あの2人は幼馴染同士なんだ。子供ころから知り合ってるし誓いあった仲だからな。普通に恋人同士と言ってもおかしくはない」

光「そうなんだ…いいなあ強い絆って。それだけでも特別な関係というイメージが持つよ」

ザザー…海が波の音をたてて流れる。ちょっと間が空いた。そしてまたピットフィーンドが口を開く

ピット「なあ、光」

光「なに?」

ピット「私のことが、好きか?」

光は一気にドキッとした。急な告白?だが光は考えるよりすぐに答えた

光「う、うん!大好き!助けられたときから好きだったよ!」

ピット「ハッハッハ!やはりそうか!私も好きだぞ。お前がいてくれて私は少しずつヒューマンの心を持ったんだ

何もない、悪魔の心を明るく照らしてくれた光。その名の通りだ。そのヒューマンを好きにならないわけがない。光のおかげなんだぞ」

光「…ありがとう、ピットちゃん。ずっと、一緒にいてね」

ピット「何も言わなくとも私はお前と一緒にいたいしな!…ふふふ、今、ここで誓いのキスするか?」

光「え!?それは…勇気がいるし…」

光が言うとピットは笑顔で海の方向に向いた

ピット「ま、キスだけではないからな。誓いの表現ってやつは。好きと思えるだけで、それだけで嬉しい気分になれるんだ」

光「ピットちゃん…ピットちゃんを好きになって、よかった」

夕日が時を経つにつれじょじょに沈んでいく。月もそろそろ出そうだ

ピット「さ、帰ろう!シェリルも心配してるだろうし光の親御さんも心配するだろう!」

光「そうだね。帰ろう」

2人は海を背にまた2人乗りをして帰っていった


ピットフィーンドの館に着いた。もう夜に近い時間。門の前まで行きピットフィーンドは自転車から降りた

ピット「今日はありがとうな。光の気持ちを知ったし、これからもずっとよろしくな」

光「私からもありがとう。シェリルさん心配してそうだから早く戻るといいよ」

ピット「ああ、またな!光!」

ピットフィーンドが玄関口まで行き、扉を開ける。その光景を最後まで見た

光「私も帰ろう。親には適当に遊んでたって言っておこ」

自転車に乗り、漕ぎ出すときに光はつぶやいた

光「…ピットちゃん。私…ヒューマンだけど、悪魔の恋人になってもいい?」


ピットフィーンドが帰るとシェリルはちょうど夕飯を作っていた

香りからするとカレーだろうか。シェリルはカレーを作っていた

ピット「ただいまシェリル。今日はカレーか」

シェリル「あ!ピットフィーンド様!おかえりなさい。こんな遅くまで何をしてました?」

ピット「さっき言った通り光と一緒に海に行ってたんだよ」

シェリル「そうですか。さっきまで悪魔協会が大変なことになってたんですよ」

その言葉を聞きピットフィーンドの顔が険しくなる

ピット「大変なこと?何があった?」

シェリル「アークデーモン様とヴァンパイアロード様が突然いなくなって…協会員が探してもいなくて…

そしてさっきようやく帰ってきて…いまは2人いますが…」

ピット「…それ、デートじゃないか?」

その言葉を聞きシェリルははっとする

シェリル「あ…!デート…!なるほど…」

ある程度予測できるピットフィーンドは大したことないじゃないかと思った

ピット「あの2人ならそういうこと、やらかすだろ。たまには仕事すっぽかして行きたい気持ちはあるだろ

そんなことでギャーギャー騒くほどでもねえよ。全く協会員はトップがいないと何もできねえのかよ」

シェリル「わかりました。でもデートですか。あのお二方は人間の心を持ってるのですね」

ピット「誓いあった仲だからな。もうこれ以上騒いだらだめだからな」

シェリル「かしこまりました。…あー!カレーが焦げそうです~!」

シェリルが慌てて鍋をかき混ぜる。とりあえず全部やり直しはなさそうだ

ピット「…アークデーモンもヴァンパイアロードも面白いことしだすな。私も光と2人でデートっぽいことしたいな…

…いや、今日がまさにそれか」

ピットフィーンドがそう言うと自室へと戻った


アマリリス、今日は月が綺麗な夜

悪魔協会がちょっと大変なことになってたが、今は大丈夫みたいだ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る