第8話春の国の話

轢沙子はまた夢を見ていた。雲の上…そして轢沙子はまたかと思ったほど

そろそろ慣れてきたのかあまり感情を出さずに一人立っていた。次はなんだ?また誘いか?

しかし今回は違った。巫女が一人立っていただけだった。今回は何か違う。轢沙子はそう思った

轢沙子「あなた一人なの…?」

轢沙子が言葉を発すると、巫女の口が開いた

「…轢沙子…思い出して…」

轢沙子「思い出すも何も、わからないって言ってるじゃない」

否定の言葉を投げかけても巫女は動じることはなく、更に言う

「…轢沙子…あなたと私は…婚約を誓ったわよね…?」

轢沙子「は?こ、婚約!?」

唐突な婚約する宣言されたものだから轢沙子は大声で言ってしまった。巫女は悲しい顔をしながら言う

「…私ね、ダークロードと戦う前に、あなたから指輪渡されたのよ。あなたと私は、すごい仲良かったの

そしてこの戦いが終わったら、本当に結婚して静かに暮らしましょうって…

でも、あなたは先に天界へ行ってしまった…そして私も死んだ後、天界で一緒に暮らそうって決めてたわよね

すごい嬉しかった。でも、あなたは下界へ降りた…まだ結婚してないのよ私とあなたは…」

轢沙子は更に驚いてしまった。自分はこの巫女と婚約?ちっとも覚えていない。いや、記憶がまったくない

巫女は今でも泣き出しそうだ。轢沙子はどうすればいいのかわからなかった。言葉が選べない

轢沙子「あなた…私、全然覚えてないわ。記憶喪失だとしても、私は愛や恋だなんてわからないわよ」

轢沙子はごめんなさいという感じで頭を下げた

「…でも、私のとこへ来たら…きっとあなたは記憶が蘇るはず。約束するわ」

婚約…一緒…約束…轢沙子はますます訳がわからなくなった。そしてまた視界が真っ暗になる


「…轢沙子…本当に思い出して…私たち巫女は…あなたを待ってるのよ…」


ジリリ!!

目覚まし時計が鳴った。轢沙子は起き上がる。そして今見た夢をもう一度思い出した

轢沙子「待って…婚約だなんて寝耳に水だわ…私、恋愛だなんて一切関係ないのに…」

しかし何度も感じたが夢の内容を考えても決して良いことではないと

轢沙子「…っ!」

考えても無駄だ。轢沙子は頭を振り切った。考えるのはやめよう。そう感じた

轢沙子「でも今日はたしか祝日?だったわ。休み確定だし、何をしてようかしら」

シダレカでももちろん祝日というのはある。今日は建国記念の日だ。轢沙子は今日は何してようと考えたら携帯電話から突然着信音が鳴る

轢沙子「朝から突然…」

轢沙子が携帯電話を持ち着信音の相手を見たらデュラハンだった

轢沙子「デュラハン!?こんな朝から何よ…」

彼女が渋々しながら電話をしようとする

轢沙子「もしもし?デュラハン?」

デュラハン「やあ、轢沙子おはよう。調子はどうだい?」

そんなどうでもいいことを伝えたいがために電話してきたのか?と思った

轢沙子「起きたばかりだし普通よ。何?朝から」

ちょっと不機嫌な声で話した

デュラハン「実はね。轢沙子をシダレカ悪魔協会に誘いたいんだ。悪魔協会がどういう風な場所かわかりたいだろう?」

え?なにこれ?いわゆる実家の誘い?と轢沙子は思った

轢沙子「いや、急に言われてもねえ…」

デュラハン「大丈夫、大歓迎するよ。今日は祝日だし轢沙子もお休みだろう?」

轢沙子「そうだけど…」

デュラハン「だから来て欲しい。よろしく頼むよ。じゃ!」

そう言うとすぐに電話を切ってしまった

轢沙子「ちょっと待ってよ…そういうのはある程度仲良くなってからじゃないの…強引ね。ほんと」

だがせっかくの誘いだからそのままドタキャンするのもちょっと心が痛い

少し考えたが、すぐに別の考えが浮かんだ

轢沙子「…なら、今暇してる友軍でも呼んで行きますか」


シダレカ悪魔協会…ここは総本山とは違い黒塗りではなく木造建築のような建物だった

友軍というのはリリ、ネネ、由美子、カイであった。5人で悪魔協会の門に居た

リリ「ねー轢沙子ぉ!悪魔協会だなんて全然知らないし面白くなさそうねぇ!」

若干ならリリはつまらなそうな声をしてた

ネネ「怖いってイメージありましたけど、普通の家みたいですね」

ネネは怖そうにはしてなかった

カイ「カイの近くにも悪魔協会ってあるけど…ここがシダレカの総本山みたいなとこかしら?」

そこまで怖くはなってなさそうだった

由美子「ふぅん、まあアタシは悪魔協会を支持するが…ここは来たことがないな…」

由美子はむしろ楽しみにはしてそうだった

4人がそれぞれの感想を述べた後、轢沙子は言う

轢沙子「ごめんね急に。私1人じゃ絶対怖そうだから援軍呼んだの。つまらなそうだけど…」

轢沙子は頭を下げた。気の合う友人だから謝る必要はないと思ったが、今回ばかりはどうしてでも友人の協力が必要だった

リリ「謝ることないわよぉ!轢沙子のためならなんだってやるわぁ!」

ネネ「私もお母さんと同じ気持ちですよ轢沙子さん」

カイ「カイも平気よ!」

由美子「むしろシダレカ悪魔協会はどんな感じか行きたいとは思ってたがな」

轢沙子「ありがとうみんな。じゃあ、中に入りましょう」

轢沙子がそう言うと門の扉を開けた。悪魔協会の門の先にはちょっとした庭園であった

雰囲気にあった花や樹木があるのかと思ったらそうでもなく花が咲き乱れ、樹木は緑が生い茂る庭園だ

5人は道なりに進んだ。ここは本当に悪魔協会なのか?あまりそうとはおもわなかった

悪魔協会の玄関についた。すぐ横にインターホンもあった。轢沙子は早速押す

ちょっと経つとインターホンから声が来た

「はーい」

轢沙子「私、轢沙子っていうけどデュラハンはいるかしら?」

「轢沙子様ですね?少々お待ちください」

少し経つと玄関のドアが開いた。対応した人ではなく、デュラハン自ら出てきた

デュラハン「やあ!轢沙子よく来てくれたね!…ってあれ、複数の人がいるね」

轢沙子「デュラハン、今日は私1人が心細いから友人を連れてきたのよ。不満かしら?」

そう言うとデュラハンは嫌な顔せず笑顔で答えた

デュラハン「いや!いいよ!むしろ多人数のほうが面白い!その代わり自己紹介してくれないかな?」

4人は玄関で自己紹介した

デュラハン「なるほど。背の高くエイリアンの人がリリ。その娘のネネ。妖魔のカイ。そして亡霊の由美子か

そしてただのその種族ではない、強そうな友人たちだね!僕はデュラハン。シダレカ悪魔協会代表の高位悪魔さ!」

リリ「デュラハンって言うのねぇ!あなたも結構強そうじゃないのぉ!」

ネネ「高位悪魔って凄そうですね!」

カイ「それにとっても好意的!」

由美子「なんだ。なかなか良さげな悪魔だな」

4人はデュラハンの姿を見て感想を述べた

轢沙子「…で、今日はここに来たけど何かあるの?」

デュラハン「ここの悪魔協会を案内しようとしたんだ。さあさあ中に入ってくれ!」

5人はおじゃましま~すみたいな感じで中に入った

悪魔協会には当然懺悔の場所があり総本山と変わりない建造になっていた

ただ違うのが黒塗りの懺悔室ではなく木造で作られた懺悔室であった。木の香りもする。まだ新しいのだろうか

総本山だと威圧のために術を全体的にかけられてるが、雰囲気としては術はなさそうだ

デュラハンが紹介していくうちに発言する

デュラハン「色々と改築したから、普通の人でも安心するような悪魔協会になっている。総本山とちょっと真似てはいるけどね

それに、協会内部のライトは全部明るい電気だ。他の部屋も見てみようか」

懺悔室の横にあるドアへと入った。廊下を出ると早速点灯する

由美子「おいおいもしかして自動反応ってやつか?」

デュラハン「そのとおり。ちなみにこれが一番お金かかったことは内緒の話だよ」

リリ「私の家もこうしたいわねぇ!」

更に奥へ進む

デュラハン「ここが談話室だよ。ゆっくり座ってくれ」

テーブルがあり6人ほど座れる椅子があった。その椅子もふかふかしてて気持ちいい。5人は座った

轢沙子「へーなかなか良い椅子じゃない」

カイ「ふかふか椅子大好きー!」

デュラハン「ははは。よかった。じゃあ、お茶でも用意しよう…ピュー!」

デュラハンが突然口笛を鳴らした。一体誰を呼ぶんだ?そう思ったら突如デュラハンの横に悪魔が現れた

いや、瞬間移動というべきか。そこに立ったのは背の高い、高位悪魔とわかるような出で立ちをしてた

顔こそ綺麗な女性だが、身体の、特に手と足が怖い形をしてた。手は爪が鉤爪になっており

足が分厚い筋肉であった。そして足の爪も鉤爪のような形をしている

悪魔のような羽もあり、常時黒いオーラがキラキラした羽であった。ひと目で半端ない悪魔であることがわかった

5人はその状況に驚く。だが、デュラハンは笑顔で説明する

デュラハン「こちらも紹介しよう。彼女はバフォメット。シダレカ悪魔協会副代表だよ。大丈夫。怖くない」

バフォメット「…どうも」

バフォメットはお辞儀しながら小さい声で発言する

轢沙子「い、今一瞬で来たけどもしかしてその悪魔の術のひとつなの?」

デュラハン「そうだよ。僕の口笛ひとつで彼女はこっちに来てくれる。瞬間移動ができる高位悪魔だよ」

バフォメット「…はじめまして」

デュラハン「バフォメット、彼女たちにお茶を用意してくれ」

バフォメット「…かしこまりました」

そう言うとまた瞬時にバフォメットの姿が消えた

その状況に驚くわけがない。ありえないことが起こって特にネネが多少怖くなってしまった

ネネ「こ、怖いよ…!」

リリ「大丈夫よネネ。怖くないわ。優しそうに見えるわよ」

ネネ「いや、お母さん、瞬間移動っぽいことしてるのが怖い…!」

デュラハン「ん?そうか…それが怖いか…済まなかった」

デュラハンがそう言うと席を立ち、バフォメットがいるであろう場所へ向かうことになった

デュラハン「あ、そうだ轢沙子、君も来てほしい」

轢沙子「え?私も?あなた1人でいいじゃない」

デュラハン「いや、とりあえず来てくれ」

轢沙子「う、うーんわかったわ」

リリ「ネネをあやしておくから行ってきていいわよぉ!」

カイ「轢沙子よろしくね」

2人は恐らくいるであろう給湯室へと向かった


2人は給湯室へ行った。そこにはバフォメットがのんびりお茶を淹れていた

デュラハン「バフォメット。ちょっといいかな。轢沙子も連れてきたけど」

その言葉でバフォメットは振り向く。そして言葉を発する

バフォメット「…あ!デュラハンくんどうしたの~?アタイ今お茶淹れてるんだよ~☆」

轢沙子「…え?」

さっきの態度とは変わって明るい声で驚く轢沙子だった

デュラハン「バフォメット、さっきの小さい子が瞬間移動を怖がってたんだ。次来るとき徒歩で来てくれ」

バフォメット「そうだったの~?ありゃー!アタイとしたことが怖がっちゃったか~☆反省ね!」

バフォメットが舌を出しながら自分で頭をこつっとやった

轢沙子「ちょ、ちょっとバフォメット…あなたの本当の性格ってそんな感じなの?」

バフォメット「そうよ~☆さっきの態度は初めての来客対応の表向きの態度だよ~☆本当のアタイはこんな感じ!」

デュラハン「そうなんだよ。実はバフォメットはこんな性格なんだ。バフォメット、後でその性格を来客に見せてくれ」

バフォメット「おっけ~☆怖いもんねアタイ!」

轢沙子「しかし…その体格で副代表だからそりゃなるにはなるのかもね」

そう言うとバフォメットが轢沙子のほうに向き答える

バフォメット「ん~?でもデュラハンくんには負けるわよ~☆だってデュラハンくんは戦闘能力高いんだから!」

轢沙子「そ、そうなの…」

お茶を淹れてようやく準備が整った。もちろんバフォメットは瞬間移動を使わずに徒歩で歩いた

3人がさっきの場所に戻り、全員にお茶を出した。バフォメットはさっきの態度ではなく本当の態度を出しネネを怖がらせないようにした

バフォメット「は~い☆、アタイ怖くないよ~!アタイの本当の性格こんな感じだよ~☆」

彼女がそう言うとネネはちょっとばかしホッとした表情を見せる

ネネ「ああよかった…すごい良い人そうでよかったです…」

由美子「へぇ、そんな感じなのか。やっぱり悪魔って面白いな」

カイ「天使とはまた違う、変わった性格だらけね!」

7人は談笑してた。不思議と緊張も無くなってた

轢沙子「…でもデュラハンってよく私を強い力を持つ妖怪だってわかったのね」

そう言うとデュラハンよりバフォメットが先に発言した

バフォメット「そう!デュラハンくんってすごいんだよ~☆人を見抜ける力を持ってるんだから!」

デュラハン「ははは。大したことないさ」

バフォメット「そんなことないわよ~!すっごいんだから!」

リリ「どういうふうにすごいのかしらぁ?」

リリが言うとバフォメットは語る

バフォメット「あのね、例えば時々この悪魔協会に面接があるんだけど、その時もちゃんとデュラハンくんが面接官として出るの!

少し喋っただけでこの人は大丈夫とかこの人は駄目とかわかんだよ~☆でね、面接を通過人は確実に長期に渡って働いてるのよ☆

デュラハンくんのそこが総本山にいるアークデーモン様とヴァンパイアロード様とは違うの!

だからデュラハンくんに付いてきて正解だって言う人、多いのよ~☆アタイもその1人なんだけどね~☆」

その言葉を聞いて全員びっくりしていた。そこまで見抜けるのか。改めてその力に驚いた

カイ「す、すごい…!じゃあカイたちのこともすぐに見抜いたの!?」

デュラハンは全員の顔を見合わせて答える

デュラハン「そうだね。リリはまずエイリアンなのはわかった。ネネもエイリアンだろう?旦那さんがエイリアンだからね

カイは海にいる妖魔だろう?由美子は亡霊だがかなり長い間亡霊だったんだね?

そして轢沙子…君は強大な力を持つ妖怪…轢沙子の場合はすぐにわかったね。基本的にちょっとしゃべるだけでわかるんだよ」

全員が驚く。その中でもニコニコしてるのはバフォメットだった

バフォメット「でも、不思議だね?その中で轢沙子さんが気にいるとか?もしかして恋人候補かしら☆なんて!」

轢沙子「こ、恋人!?」

轢沙子が一気に顔が赤くなる。というか夢で轢沙子は巫女に婚約がどうたらという夢を見たばかりなのに

デュラハン「ちょ、バフォメットこれ以上言わないでくれ!あ、ちなみに友人だよ!」

轢沙子「友人候補なのね。あ~よかった…」

轢沙子がホッとしたのか息を吐く

バフォメット「ま~デュラハンくんって友達つくりも得意だからね~☆キャハハ!」

バフォメットは笑いながら言う。デュラハンはやれやれと言った表情になる

ところで「も」とはなんだろうか。デュラハンにも過去に恋人がいたのだろうか


そろそろ帰るころ、5人とデュラハンとバフォメットは玄関口まで来ていた

デュラハン「今日はありがとうみんな。また来て欲しいな」

リリ「面白かったわよぉ!」

ネネ「とっても優しい人たちで私、もう怖くありません」

カイ「良かったわ!悪魔協会が好きになりそう!」

由美子「お前たちみたいな悪魔協会で安心したよ。これからも支持するぞ」

轢沙子「…みんなありがとう。デュラハン、バフォメット、これからもよろしくね」

轢沙子が笑顔で言う。その笑顔でデュラハンとバフォメットは喜んでいた

デュラハン「轢沙子、もし、できるのであれば今度は1人で来て欲しい」

轢沙子「うーん。そうね。わかったわ。あなたが全く変な人でもないしね」

バフォメット「そうよ~☆意外と大丈夫だよ~☆また来てね!」

デュラハン「バフォメット…意外とってなんだい…」

リリ「キャハハハ!」

5人が悪魔協会の門を出て、帰っていった。2人は姿が見えなくなるまで見送った

バフォメット「…行っちゃったね」

デュラハン「ああ。さあ、僕たちも普通の仕事に戻ろう」

バフォメット「でもさ☆デュラハンくんってほんとは轢沙子さんを恋人にしたいんでしょ?」

デュラハン「そ、それは!あのね…そういうわけじゃ…」

バフォメット「じゃあお次は轢沙子さんとアタイのデュラハンくん争奪戦だね~☆」

デュラハン「全然ちがう!これ以上言わないでくれバフォメット!」

2人が言いながら悪魔協会へと戻っていった


シダレカ、今日は温かい陽気

でも、そろそろ秋風がふいて冬になりそうだ


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