外伝4話

ガブリエル「え!?娘様とヒューマンが付き合ってるって!?しかも女性のヒューマン!?」

ガブリエルは部下の天使からその情報を聞くと驚愕した。あの娘様が?付き合ってる?

天使「はい…しかも代表様は認めたみたいで今後もお付き合いするそうです」

天使がそう言うとちょっと残念そうな顔をする。当然である。しかも男性ではなく女性だからだ

ガブリエルが考える。だが、待てよと。あのミカエル様が認めたんだから強いヒューマンではないかと

自分は恋だの愛だの一切関係なく人生を送ったが、これは一大事以上のことではないかと

ガブリエルが考察したのちに、部下にこう言った

ガブリエル「…いえ、全然構いませんよ。なぜなら娘様の考えあってのことでしょう。あまり騒いではいけません

騒げば騒ぐほど娘様の迷惑になります。ミカエル様が認めたのだから、これ以上は言ってないのでしょう?」

天使「まあ…確かにそうですね…」

部下がガブリエルの反応に少々驚きを隠しながら答える

ガブリエル「とりあえず、そのままにするのがいいでしょう。もう一度言いますが、騒いではいけません」

彼女がそう言うと部下は頭を下げる

天使「ははっ!」

部下がその場を去る。ふと思ったが名前を聞いてなかった。ただわかることは種族がヒューマンだということ

ガブリエルは色々感じることがありつつも独り言でつぶやく

ガブリエル「…いいですねえ恋愛。私は恋愛とか決してそんなことはありませんでしたから…娘様…」

天使協会総本山

今日も朝からありがたい言葉を聞こうと人間その他もろもろの種族が集まる

今日は代表のミカエル直々の言葉なのだから人がいっぱいだ。いわゆる満員。それだけ大天使という存在は大きい

ミカエルとなると大天使を超えた存在でもあるためもはや神レベルである

ミカエルが言葉を述べると最後にこう言う

ミカエル「…みなさん、最後に。私はあなたがたの幸せが私の幸せです。この祝福の術を受け取ってください」

彼女が言うと手を振り回し、術を参拝客に送った。でも実は祝福ではなくちょっと良いことありそうな程度の術である

「おお…有難き幸せ…!」「ミカエル様…ありがたい…!」「幸せになれた気分です…!」

その言葉が飛び交った。だが、ミカエルは笑顔を絶やさず最後の言葉を言う

ミカエル「これにて終了です。どうか、皆さんに幸せの日々を…」

拍手はないが参拝客全員が幸せそうな顔をしながら出ていく。ミカエルは笑顔で全員を見送った

参拝客が誰もいなくなったらミカエルは大広間を出て廊下に出て、休憩室へと向かった

そして…

ミカエル「あーーーーーーーーーーーー!!疲れたーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ミカエルがクッションにどっかり座り愚痴に近い疲れた発言をする。さっきのありがたさが消される

天使1「代表様お疲れさまです」

ミカエル「あーーーーーもうこんな人数聞いてないわよ!最後のほう自分でもびっくりするほど適当だったわ!

あ!お菓子が置かれてる皿にふ菓子ある!たべよ!」

ふ菓子のパックを開けそのままがぶりと食べた。その態度、まるで大天使では無いような態度である

ふ菓子を全くおしとやかもない状態で食べている

ミカエル「…全く…たまには直々に私が説法するって言ったけどなんなのよあの人の数。術も実際適当よ!

そもそも祝福の術は誰にでもかけていいもんじゃないっての。まあアルエルは交際相手の冬美に祝福の術かけたらしいけど」

そう言うとまたふ菓子をほうばる

こんな態度出していたら天界にいる神が怒りそうだが、今は見ていないはずなのでそういう態度である

天使2「いえ、ミカエル様となるとさすがに誰でも来ますから…」

ミカエル「誰でもいいってわけじゃないの。今度は何も伝えずにやろうかしら。そんな気分よ!

ちょっとあんた。今度は私が出るって掲示板にかくのやめてね。かいたら解雇よ」

天使1「は、はあ…」

急に機嫌が悪くなるのは大人数だから嫌だったのか元々の適当さが増したのか…

部下の天使2人がボソボソ声で会話する

天使1「ね、ねえ。この人…私たちの代表で総本山のトップ…よね…?」

天使2「そうだよな…時々わからなくなるよこの人…」

ミカエル「あ?なんか言ったかしら?」

天使1「いえ!!何も!!」

天使2「何も言ってません!!」

ミカエルに聞こえたのか天使2人は改めてびしっと背筋を伸ばした

ミカエル「まあいいわ。じゃ、私の部屋に戻るからあんたたちは仕事してなさい」

天使1と2「ははっ!」

ミカエルは腰を上げ休憩室から出た


ミカエルが代表室に入るとゆっくりと椅子に座る

正直なんとも言えない気分である。ミカエルは自分の適当さよりも人数が多いことに不満を持っていた

ミカエル「ほんと私自らやるのやめようかしらね…」

目をつぶり、ため息が出る。なんだか最近ため息出るようなことばかりだ。ちょっと疲れてるのだろうか

天界へ行き人探しのお願い。そしてアルエルの恋人出来てた報告…。色々ありすぎる

悪魔協会のアークデーモンのほうがまだ人生楽しく生きているんじゃないだろうか。そんなことも考えだす

こんなことならミカエルという大天使以上の名義を捨てて自由に暮らしたい気分である

だが、それは出来ない。アルエルも一応代表の跡継ぎなのだが、あのままじゃ何言い出すかわからない

もしかしたら、愛の逃避行をするかもしれない。それだけは本当に勘弁してほしい

そう考えると更にため息出そうな気分になった。母として、大天使として、考え事が多くなる

ふと、写真立ての写真を見る。まだアルエルが幼いころに写した写真だ。このころはまだ純粋で可愛かった

そして窓を見た。ここは高いビルでもあるから景色がよく見える。家もある。あの家庭は一体どんな家庭だろうか

ミカエル「一般の家のような家庭で生まれたかったわね…」

コンコン…ドアをノックする音が聞こえた

ミカエル「はーい?」

ガチャ…扉を開ける音がしたら、ガブリエルが来た

ガブリエル「ミカエル様、説法、お疲れ様でした」

ミカエル「いいのよあんなの。ところでどうしたの?」

ガブリエル「インキュベータのことでお話が…」

インキュベータ?あ、そうだ。すっかり忘れていた。ミカエルはふと思った

ミカエル「そうだわ。それ忘れてたわ。何か異常はあった?」

ガブリエル「いえ、最近見てないからたまには来てほしいとのことです」

ミカエル「そう…。この前見たときは5ヶ月…今は8~9ヶ月程度かしら。わかったわ。今すぐ行くわね」

さっきの疲れもあるが腰を上げ、インキュベータという部屋へ向かった


天使協会総本山地下1階…ここは厳重な警備の元、赤子を成長させる装置がある部屋…

ミカエルが地下へついた。ほとんど部屋という部屋がない場所だ。ミカエルは迷わず向かう

インキュベータの部屋に入るにはマスクが必要だ。手と身体を消毒して、部屋に入る

装置の中に赤子が。そしてまるでお腹の中にいる赤子がいる

天使「B-1002…異常なし…B-1003…異常なし…」

部下がそう言うと誰か入ってきたことに気づく。ミカエルである。部下が見つけるとお辞儀をする

ミカエル「赤ちゃんはどう?順調に成長してる?」

天使「ミカエル様。はい、特に異常は見当たりません。後2~3ヶ月には産声を上げ、人間となります」

ミカエル「そう。…そう言えばインキュベータって昔は強い戦士を育てるためにDNAを採取して作られたのよね」

天使「そうですね…。まあ、今では不妊症や種族が合わないの人のために育ててる感じですが」

不妊症ならわかるが、種族が合わないというのは種族を超えて結婚したのは全然いいことなのだが

絶対に妊娠できないという組み合わせがあったりする。例えば、天使と悪魔の夫婦。エルフと鬼の夫婦など

昔は戦いのために使われたが、今でこそDNAから採取をしてDNAから赤子を生み出す装置となっている

ミカエル「ええ。そしてアルエルもここで生まれたのよね…」

天使「そう言えば僕もそうですが、天使って基本無精なんですよね」

ミカエル「そうね。だから天使はノンセクシャルとかアセクシャルとかLGBT関連に結びついちゃうのよね」

インキュベータに包まれてる赤子をまた見る。確かに元気に産声を上げるだろう

天使「でも…話を聞いたのですが、娘様に恋人ができたというのは…?」

ミカエル「ああ、あれね。私はGoサインしたけどね。本当のこと言うと失敗だったわ。だって大天使の娘だもの

私の恐れていたのは外の世界を出て、色々な刺激をもらって天使ではないことをしでかすこと。これが怖いの

そういう意味ではまだ悪魔のほうが純粋よ。ま、なってしまったものはもうどうしようもないわね」

天使「わかりました。でも、僕も娘様の恋には応援したいと思っています」

ミカエル「そうしてもらえると嬉しいわ」

2人は何度もインキュベータに包まれてる赤子を見る

天使「…いつか近い将来ここが使われなくなるときが来るのでしょうか…」

部下がつぶやくとミカエルははっきりと言う

ミカエル「そんなことないわよ。もしここがまだ戦いのために使われたなら即廃棄になるだろうけど

赤ちゃんが産みたくても産めない人のために存在するのだから。その時点で有意義な話よ

大丈夫。決してあなたの仕事が無くなるわけでもないわ」

天使「ははっ!ミカエル様!」

部下がお辞儀するとミカエルはそろそろ戻ろうとした

ミカエル「んじゃ、後はよろしくね。しっかり管理を怠らないようにしなさい」

天使「かしこまりました!」

ミカエルがインキュベータの部屋を出た

天使「ふーっ…。やっぱり来てくれると助かるなあ。見てくれるだけでも…。おや…?この赤子…

もうそろそろ産声を上げそうだな…?えーとこの赤子は…あの夫婦か。よし、そろそろ連絡するか」


ミカエルが地上へ出ると何気なく玄関の扉を開ける

そして用事でもないのに門の前に行く。道路で子供が楽しくはしゃいで歩いていた

ミカエルも母なので子供を見るのは好きだ。ひょろひょろヒューマンはほんとに嫌だが

そう言えば懐かしい。まだアルエルが子供だったとき…一緒に手をつないで買い物へ行ってたっけ

でも、今は恋人が出来てその恋人と手をつないで歩いているだろう

天使ですらここまで変わってしまうのだから今の時代は何が起こるかわからない。そうは思っても残念な気持ちはやはりある

涼しい風が吹いた。いよいよ雪が積もる季節になるだろうか。ユキノウエの雪はサラサラして砂のようだ

そんなこと思いつつもミカエルは戻ろうとした。また考え事をしそうになったからだ

ミカエル「…さ、アルエルが帰るうちにいつもの私でいないと」

ミカエルは天使協会へ入った


ミカエル「冬美…蒼い衝動のアルエルをどうか守ってね…」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る