第7話冬の国の話

ミカエル「…何?いつの間にかあなたそんな想い人ができてたの?」

ミカエルがそう言うと不思議な顔をする。ここは代表室の真ん中

アルエルが伝えたいことがありあまり行く気にならない代表室へと行ってた

その伝えたいことと言うのはアルエルに言わば恋人ができたという報告である

もうちょっと後にしておいたらよかっただろうが、今、冬美が天使協会総本山へ行くという約束をしている

アルエルは更に言う

アルエル「はい。冬美さんは、私にとってかけがえのない大切な人なんです。だからどうか許可してください」

ミカエル「あなたね~。今まで他人には興味ないのになんで急にそんなこと言い出すのよ」

ミカエルは少しだけ不機嫌になっている。ミカエルの言う通り今までにない事例だからだ

ミカエル「…で?種族は何?」

アルエル「…はい、ヒューマンです。ですが、ヒューマンとしてはとても強い意思を持ったヒューマンです」

彼女が言うとミカエルは今度は困った顔をする

ミカエル「ヒューマンねえ~。ここに来るヒューマン共って目が死んでるわなんか心が弱そうなのが多いのよ

あなた、ここのシステムわかるわよね?元々神のお告げとか有り難い言葉を送ってヒューマンその他もろもろが元気になるの

本当にその冬美って言う人は強い意思を持ってるの?ここに来るヒューマンのようなひょろひょろだったら承知しないわよ?」

これは威圧の言葉である。だが、アルエルは決して顔も変えず答える

アルエル「お母様。冬美さんはそんな人ではありません!ヒューマンですが、強い心を持っています!」

アルエルが少し怒るような発言をする。ミカエルはそれ聞きため息をしながら答える

ミカエル「はいはい。わかったわ。天使協会総本山に入場するの許可するわ」

半分あたりミカエルはいやいやながら許可を出した。娘だから、というより冬美はそこまで大丈夫なのかという許可である

アルエル「ありがとうございます。お母様の期待どおりの人ですよ」

アルエルは笑顔になる。だが、ミカエルはまだ仏頂面である

ミカエル「わかったわかった。じゃあ、呼んできなさい」

アルエル「はい!」

アルエルはお辞儀すると代表室から飛んで出た

彼女が代表室から出ると、ミカエルはもう一度深いため息を吐く。なんせ今までにない話を突然持ちかけたからだ

何気なくミカエルは机にあるミカエルとまだ幼かった写真を見る。どうしてヒューマンを好きになったのかしら?


ミカエル「…衝動的…蒼い衝動…。その人が来るのを待つのみね。…ところで冬美っていうから女よね?」


ユキノウエの秋。夏はそうでもないが秋のシーズンになると一気に風が冷たくなる

ユキノウエにいる虫や動物もそろそろ冬眠する温度はまで下がった。当然住んでいる人間たちも衣替え確定だ

秋の服を着た冬美は黙って天使協会総本山の門へといた。表情は曇っている

冬美「…アルエル…お母様に許可出すとは言ってたけど、こんな急に大丈夫かしら」

そう思うとちょっとだけ心配になる。もしかして駄目とか言われるだろうか。普通のヒューマンだから駄目だろうか

そもそも天使協会というものですら敷居が高いのに総本山である。他の国とはレベルが違う

もしもこれが悪魔協会だったらどうなってただろうか?そんなことも考えてしまう

しかし、その考察はすぐに終わった。アルエルがかけつけてきたからだ

アルエルが門にいる冬美を見てとびっきりの笑顔を見せた

アルエル「冬美!お母様の許可を出したわ!これで君は入れるわよ!」

彼女がそう言うと冬美は安心した顔になった

冬美「何から何までありがとうアルエル。…肝心のお母さんは大丈夫だったの?」

アルエル「ええ大丈夫。冬美の気持ちを見せればお母様も認めてくれると思うわ!」

冬美「そ、そう。じゃあ私は胸を張って行けばいいかしら?」

アルエル「そうよ。弱気にならないでね!弱い人間が嫌いなお母様だから!」

冬美「しかし弱くなっているからここへお告げを聞く人たち多いのに弱い人嫌いって…」

アルエル「お母様のそういうとこが適当な性格なのよ…さ、行こ!」

彼女は冬美の手をつなぎながら天使協会の門、そして玄関の扉を開いた

冬美「わぁ…!初めて来たけどこんな綺麗な場所なんて…!」

普通の教会に近いのだが、違うのは壁が綺麗で何か大理石でも使っているのだろうか

上を見上げればステンドガラスが綺麗でこれはいわゆる映えというものだろう

一般人が座る椅子も木製ではなくクッションがある椅子だった。長時間座っても大丈夫だろう

冬美は思わず写真を撮りたくなったが、今はそんな雰囲気ではないと感じ、我慢した

ふと、冬美は門から玄関までずっと手をつないでいたことに気づく。恋人繋ぎであった

冬美「ね、ねえアルエル、このまま手をつないでいいの?」

アルエル「冬美、そうでもしないと私たちの関係がわからないじゃない」

冬美「い、いいの?」

アルエル「いいのよ!早速お母様の部屋に行くわね」

アルエルに導きながら代表室へと向かう

その通路で部下の天使たちが冬美とアルエルを見て驚いていた。しかも手をつないで

「娘様の恋人?」「手をつないでる…」「代表様が見たら…」

そんな言葉が飛び交った。だがアルエルは無視をして、通路を通る

代表室に向かうとき、冬美は更に驚いた。エレベーターがある。階段ではない

冬美「エレベーター…!」

アルエル「そうよ。階段じゃお母様の部屋まで時間かかるし疲れるから…エレベーター使うわよ」

2人はエレベーターに乗り、上へと上がる

代表室の階まで着いた。2人は恋人繋ぎのままである

廊下を歩くたびに冬美は緊張と心臓のドキドキが増した。やはり母に紹介するとは言えど相手は代表。無理のない緊張である

いつも胸を張って生きている冬美は今回ばかりは不安要素も混じっていた

そして代表室に着く。冬美の緊張は最大まで上がった

アルエル「ねえ、冬美」

冬美「な、なにアルエル…っ!?」

冬美は唐突にキスされた。軽いキスだが、びっくりしたというより不思議と緊張がほぐれてきた

アルエル「大丈夫よ冬美。私がここにいるから」

冬美「アルエル…」

アルエル「冬美、大好きよ」

冬美「私もよ。アルエル」

恋の誓いを言った2人は代表室へと入る

ミカエル「…待ってたわ!ヒューマン!」

ミカエルが待っていた。しかも椅子に座らず机の前で立っていた

アルエル「お母様。冬美です。私の…私の…愛する人です」

冬美「こ、こんにちは」

いつの間にか恋人繋ぎはしていなかった

ミカエル「…」

ミカエルは黙って冬美の前まで来た。じーっと目を見て、前や後ろ、側面を見ていた

そしてミカエルは言葉を言う

ミカエル「…違う」

アルエル「…?お母様…?」

ミカエルがもう一度机の前に移動して2人に顔を合わせた

ミカエル「…違う。今までのヒューマンとは違う。目付きが良い。そして、何か強靭な心を持ってるわ。

ただの美人のヒューマンでもない。色々な経験、したのかしら?大学生よね?なのにここまで違うヒューマンは見たことない

あなたは本当に種族がヒューマンなの?」

冬美「は、はい。人間そのものです。あと大学生です」

ミカエルはその言葉を聞くと、少しだけ微笑んだ

ミカエル「…わかったわ。アルエルが好きになる理由がわかる。私は、構わない。…2人が交際するのを許可するわ」

アルエル「お、お母様…!!」

冬美「や、やったわね…!嬉しいわ…!」

アルエルは緊張がほぐれたのか涙を流した。そして冬美も自然とアルエルと同じ涙を流していた

ミカエル「2人とも。泣くのはやめなさい。あくまでも交際を許可しただけよ。特に冬美、アルエルに何があったら承知しないわ?」

そう言いながらも、ミカエルは徐々に笑顔になっていった

アルエル「お母様…!本当にありがとうございます…!」

冬美「私からも言わせてください!ありがとうございます」

2人は言うと、ミカエルが一気に砕けた話し方をする

ミカエル「…はいっ!これで代表の威厳おしまい!次はアルエルの部屋に行ったらどうかしら?」

アルエル「え?はい、わかりました」

ミカエル「はいはい。じゃ、私仕事あるからね。面接終わり!」

冬美「本当にありがとうございます…!アルエルをずっと守ってみせます!」

冬美が涙を拭いてミカエルに守る誓いを述べた

ミカエル「ふふふ。アルエルのほうが強いんだけどね。でも、気に入ったわ。私からもありがとう」


2人は代表室を出る。ドアを閉める。2人が顔を合わせて自然と抱き合った

冬美「やったわ…!嬉しい…!」

アルエル「私もよ…!冬美…君はお母様も認める本当に強いヒューマンなのね…!」

また泣き出しそうになる。だが、もう緊張から解放された2人には壁というものが無くなった

アルエル「ふふ…じゃ、私の部屋にいこっか?」

冬美「ええ」

2人はまた恋人繋ぎをしてアルエルの自室へと向かった。今度は力強い恋人繋ぎだった

アルエルの自室に着く。すぐにドアを開ける

天使協会が綺麗なら自室も綺麗だった。良い香りのする部屋、ゴミも散らかってなく綺麗に清掃されている

アルエルが自室に入るとベッドの上に座り冬美においでおいでと誘う

冬美はアルエルの側に座る。アルエルは笑顔になりながら言う

アルエル「嬉しいわ。お母様がもしも否定されてたら私、どうなってたか…」

冬美「私もあの時すごい緊張してたわ。でもこれでやっと私たちは交際できるわ」

アルエル「冬美…私は、君との出会いはきっと運命だと思うの。あの時、この人は普通ではないと思ったから」

冬美「そうなの?でも…アルエルにここまで好きになってくれたのも運命かしら?」

アルエル「ええ。冬美、ずっと一緒にいようね」

冬美「もちろんよ。アルエル、好きよ」

そう言うと2人は自然と見つめ合い、静かに口づけしようとした…が

コンコン!

自室のドアが鳴った。慌てて2人は離れ、アルエルはドアへと向かう

アルエル「はーい!?」

ちなみにこの声は若干怒っている声であった

天使「娘様。昼ごはんの用意ができました。娘様と一緒にいるヒューマンもいかがでしょうか?」

アルエル「昼ごはん?もうそんな…わかりました」

天使「食堂でお待ちしてます。失礼しました」

部下の天使が去る。アルエルは母と似たようなため息を吐く

アルエル「んもう。イチャイチャを止めるあのひとなんなのよ」

冬美「ははは…でも私もお腹すいたから行きましょう?」

アルエル「そうね。行きましょう」

2人は食堂へと向かう


食堂に着いた。ある程度天使たちが食事をするのだが、今日は冬美がいるため少し天使たちも緊張してた

テーブルにある椅子に座る。冬美は少し思ったことがある

冬美「ねえ、ミカエルさんは?」

アルエル「お母様、12時きっかりに食事する人じゃなくて遅くに食事する人なのよ。だから夕飯も結構遅れるの」

冬美「ふーん。あ、食事が来た」

今日の昼ごはんはシチューであった。そしてパンがシチューの側に置かれていた

冬美「わー…美味しそうね」

アルエル「いただきましょう」

冬美「ええ!いただきまー…待てよ。教会のように何か言わないと駄目とかないわよね?」

アルエル「それはないから安心してね」

冬美「よかった。いただきます」

冬美、アルエル、その他天使たちが食事をする。シチューがとても美味しい。冬美は喜んでシチューを食べていた

冬美「でも、このパン…調理師さんが作ったのかしら」

アルエル「それはお母様が作ったパンよ」

冬美「お母さんパン作れるんだ!?さすが母だから料理は得意なのね」

そう冬美が言うとアルエルは微妙な顔をした

冬美「…アルエル?」

アルエル「いや…実はうちのお母様、壊滅レベルで料理不得意なの」

冬美「か、壊滅レベル??」

アルエルがシチューを食べてたスプーンを置く

アルエル「あのね、例えばパスタを茹でるときパスタ自体を焦げさせるとかいうことするし…

そうめんやラーメンでも茹ですぎてヤワヤワになるほど茹でるし…

ハンバーグは思いっきり焦がすほど苦いハンバーグ作るのよ…。もちろん焼き肉もそう

白米ですらぐちょぐちょのまま炊き上げるし味噌汁に限っては味噌の分量間違えてしょっぱい味噌汁になるの…」

冬美「す、すごいわね…相当な下手く…いや、お母さんに失礼か…」

アルエル「でも唯一得意なのはパン。パンだけはなぜか美味しく作れるのよ。いつの間にかパン作りが趣味になってるわ

このパンもお母様が作ったパンだから。これだけは美味しいから安心してね」

冬美「そ、そう…じゃあこのパンをシチューにつけて…食べてみよう…美味しい!」

冬美は笑顔になった。シチューは恐らく別の料理人が作っただろうが、このパンは何か特別な味がするパンだった

アルエル「よかった。おかわりも普通にあるからどんどん食べてほしいわ。もちろんパンもね」

冬美「パンも大量に作るのね…わかったわ」

そんな美味しい料理を食べていた2人だった


そして、冬美はそろそろ帰ることになった。2人は手をつなぎながら門まで行く

本当だったら駅まで向かう予定だったがアルエルの仕事があったため、門まで。ということになった

アルエル「冬美…今日は本当にありがとう。お母様に認められたし、これからもよろしくね」

冬美「ええ、アルエル。2人でこれからもずっと一緒にいましょう」

そう言うとアルエルは冬美の頬にキスをした。冬美は全く動じず微笑みながらアルエルを見る

アルエル「…もう慣れちゃった?」

冬美「また、天使のキッスしてくれたの?この効果は何かしら?」

アルエル「ふふふ…秘密」

冬美「愛に関わるキッスだと嬉しいわ」

アルエル「それに近いわ。じゃあね」

冬美「また大学で会いましょう。今日はありがとう」

冬美は去っていった。アルエルは冬美が見えなくなるまでずっと門の前にいた

アルエル「…頬のキスはね。「思いやり」「親切」「優しさ」っていう意味があるのよ

そしてね。天使のキッスの意味で「ずっとあなたのもの」なのよ…」


ガブリエル「おや?娘様門にいて何してたんですか?」

急に声をかけられてアルエルはびっくりする。どうやらガブリエルはいつの間にかいた

アルエル「あっ!?ガブリエルさん!どうしてここにっ!?」

あまりにも急だったから変な発言をしてしまった

ガブリエル「忘れましたか?私、今日は別の天使協会への出張をして戻ってきました

ところで天使協会の中にいず、門の前で何を?」

アルエル「え!?いやいや、なんでもありません!ささっ、お母様待ってるでしょうから入りましょう!」

ガブリエル「はい?まあ、わかりました」

唐突にガブリエルがタイミング良く来たもんだからアルエルは若干パニックになっていた


ガブリエルが冬美とアルエルの交際を知るのは時間の問題かもしれない

そしてうるさそうである…



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