第7話夏の国の話
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悪魔協会総本山裏…
ここは庭でもあるが大きい畑になっている。基本的に野菜中心に育てている
たまにフルーツも植えたりするがアークデーモンは野菜が好きなので野菜がほとんどだ
協会員たちもアークデーモンも指導の元、しっかりと野菜を育てている
その育てた野菜はどこに行くかというとだいたいが販売店へと向かう。もちろん協会員たちで食べたりもする
だが、悪魔と不死と亡霊が多いのでアークデーモンのように好んで食べる種族は少ない
ヴァンパイアロードでもトマトぐらいしか食べないものである
しかし、そんな中不死のトップヴァンパイアロードは裏に存在するとある場所へと向かう
ヴァンパイアロードがそこに行くといつも明るい彼女が悲しい顔をする
ヴァンパイアロード「…デスちゃん…」
亡霊のトップ、デスの墓である。デスは元々悪魔協会副代表だったが、自殺をしてこの世を去った
ちなみに前にピットフィーンドが会ったデスは本物のデスであり、地獄へ行ってしまっている
罪というものは無いはずなのだが、地獄へ行ってしまったのはピットフィーンドでもよくわかっていない
墓を大きく、いつも花束をそえられている。いつの間にか少し墓が風化してしまっている
ヴァンパイアロードはその墓を見ると涙が出そうになる。とても信頼してた人だったからだ
ヴァンパイアロード「デスちゃん…アタシね…最近ヒューマンの子が気に入ってね…う、ううう…」
やはり泣いてしまった。ここに来るといつも泣いてしまう
ヴァンパイアロード「デスちゃん…!デスちゃん…!どうして…あなたは自殺してしまったの…?今でも信じられないわ…」
不死のトップでも涙と悲しみというものは存在する。それだけデスという人物は大きい人だった
だが、さすがにこれ以上涙を流すのはやめておく。アークデーモンなら多少はわかるが、他の協会員が見たら大変だ
涙を拭いて、ヴァンパイアロードは立ち去ろうとする。これ以上いたら余計涙を流しそうだ
そして彼女は立ち去る前にこうつぶやく
ヴァンパイアロード「デスちゃん…。まだ、アタシの心の中では、あなたがいるのよ…」
~
よく晴れた休日。光は決意をして悪魔協会へ向かうことになった
親には友達とお出かけすると言い、玄関を出た。普通に悪魔協会に行くというとほぼ間違いなく止められるからだ
待ち合わせ場所はピットフィーンドの館。こうみもあいりも館の場所はわかっている
自転車ではなく歩いて行った。早起き族の二人ならとっくに着いてるだろう
制服では無く私服で、制服ならわかりやすいだろうが念の為に学生証は持っていくことにする。必要あるかわからないが
ピットフィーンドの館に着いた。光はインターホンを押す
ピンポーン…
ちょっとしたらドアが開いた。出迎えてくれたのはシェリルである
シェリル「光さんおはようございます」
光「シェリルさんおはよ!あいりちゃんとこうみちゃんいる?」
その言葉を言ったらシェリルは笑顔で答える
シェリル「ええ。いますよ。今はリビングでピットフィーンド様といます。呼んできますね」
シェリルはリビングへと行った。ちょっと経つと3人が玄関まで来た
ピットフィーンド「よう光。既にあいりとこうみは来てるぞ」
あいり「光おはよう!じゃあそろそろ行くか」
こうみ「…ピットと喋ってたのよ」
光「うん!行こう!」
5人は悪魔協会へと向かう。もちろんシェリルも行くことになる
5人が悪魔協会に行くときに色々と話しながら歩いていた
あいり「なーシェリルさん。シェリルさんって不死なのはわかってるけどどんな種族なんだ?」
どういう質問なのかわからないが、シェリルは答える
シェリル「そうですね。不死の種族としてはロッティングコープスでしょうか。後でピットフィーンド様が話してくれました」
こうみ「…なんなのそれ?他にもその不死の種族っているの?」
シェリルは2人に顔を向けて話す
シェリル「他にもグール。とかレブナント。もちろんゾンビはいますし、ヴァンパイア…。サイデル…あ。あれは骨だけですね」
光「人間の形してるの?骨だけとか街に出たら大変じゃ…」
まるでその道筋の専門用語みたいな種族でちっともわからない。悪魔なら多少はわかるかもしれないが
シェリル「いえいえ、大丈夫ですよ。例えば骨だけって言ってもきちんと意思疎通できますから」
ピットフィーンド「ちなみにそういうヤツほど根は真面目なんだよ。元々不死って命令に忠実だからな」
光「じゃあシェリルさんも命令に忠実?」
シェリル「元々人間でしたけど、人間からですよ」
笑いながら答える。その言葉には嘘は混じってなさそうだ
こうみ「…会ってみたいけど、外見だけなら怖そうね」
あいり「そういうのが悪魔協会にいるんだな…」
あいりとこうみは微妙な顔をする
光「だったら、ピットちゃんの悪魔のようなのもたくさんいるの?」
光がピットフィーンドに向けて言う
ピットフィーンド「ああ。確かに私は高位悪魔だが、たくさんいるぞ。でも最近は定番の悪魔しかいないぞ。
一例を言うとグレーターデーモン。レッサーデーモン。サキュバス、インキュバス…まだまだいるからな」
あいり「名前だけで強そうなやつらだな…まるで普通に人間では太刀打ちできない…」
ピットフィーンド「と言っても普通の人間などに暴力を振るうのは禁止だ。あくまでももしもの場合は正当防衛のためだ
アークデーモンだって悪魔としては強大な力を持つ悪魔だが、基本その力は使わないぞ」
光「アークさんが本気出したらこの国滅びるんじゃないかな…」
ピットフィーンド「ははは。ま、だいたい合ってる」
あいり「…合ってんのかよ!?」
あいりはびっくりしながらツッコミを入れる
シェリル「でもそれはユキノウエ天使協会総本山も一緒ですよ。天使だって怒らせたら一つの国ぐらい滅亡できますから」
光「あ~…あの天魔戦争のことだね…」
悪魔と天使は怒らせたら大変なことになるんだなあ。と3人はそう思った
いつの間にか悪魔協会総本山に着いていた。相変わらず黒塗りの建物をしていて近寄りがたい
だが今日は勇気を出して入らなくてはならない。光は決意を固めて入ろうとする
光「…相変わらずの雰囲気だね」
あいり「怖いのか?いつもの明るい光らしくないな」
こうみ「…そういう姉さんだって足がちょっと震えてるじゃない?」
あいり「ち、違う!武者震いだぞ!」
ピットフィーンド「はいはい。そんなこと言ってないでとっとと入るぞ」
5人は悪魔協会の扉を開ける
そこには、黒い壁と薄暗い光がある懺悔の場所だった。横には謎の彫刻。前には懺悔するであろう広場があった
雰囲気としては何かを威圧するような場所。ピットフィーンドとシェリルは全然平気だが後3人はさすがに怖かった
ピットフィーンド「えーと。誰かいないか…。あ、いた」
ピットフィーンドが悪魔であろう人物に声をかける。その悪魔はちょうど暇だったのか携帯電話を使っていた
ピットフィーンド「おーい。そこの悪魔」
悪魔「ん?ピットフィーンドさんじゃねえか。それにシェリルさん。そのヒューマン共はなんだ?」
ピットフィーンド「ああ。実は今日噂の光と鬼たちが来てな。アークデーモンかヴァンパイアロードどっちかいないか?」
悪魔「光!?あの代表様と副代表様が言ってた人物か!わかった。すぐに呼ぶぞ」
悪魔はすぐに代表のどっちかを呼ぶために向かった
光「思ったより怖い…」
ピットフィーンド「大丈夫だ。すぐに慣れる」
あいり「つか慣れるもクソもない場所だと思うが」
シェリル「3人とも気を緩めてくださいね」
こうみ「…いや、できないわよ」
ちょっと経つと悪魔がアークデーモンを呼んできてくれた
悪魔「おまたせしました。代表様をおよびしました」
アーク「よく来たな光、それにあいりとこうみ。我が悪魔協会へようこそ」
光「アークさんこんにちは!ロードさんに言われて来たよ!」
あいり「あれ?いつの間にかアタシたちの名前を覚えてたのか?」
アーク「ロードのおかげだ。光はわかるしお前たち鬼姉妹はわかっているぞ」
こうみ「…そうなのね。私たちのことわかってくれてありがとうアークデーモン」
悪魔「えっ!?いつの間に代表様とはこんな関係!?失礼だろこのヒューマン!」
悪魔は言うがアークデーモンはそれを無視する
アーク「黙っていろ。ああ。ここの雰囲気はどうだ?威圧をするような場所だろ」
あいり「もしかしてこの威圧の雰囲気は術なのか?」
アークデーモン「そうだ。そうでもしないと駄目だからな。…お前は下がって次の懺悔人が来る支度をしろ」
悪魔「はっ!?わ、わかりましたっ…!」
悪魔は下がる。光とあいりとこうみがアークデーモンにタメで話すのがびっくりしたらしい
むしろ、仲がいいとされていて只者ではないと判断したからかもしれない
さすがに悪魔もこれ以上光たちに文句も言えず命令どおりに下がることになる
アーク「済まなかった。そろそろ懺悔人が来るから案内でもしてやろう」
こうみ「…ええ、お願いするわ」
ピットフィーンド「つっても私とシェリルでも案内できるけどな」
アークデーモンを前に5人は懺悔の場所すぐの扉へと向かう
廊下になっており、赤い絨毯。横の壁にはろうそくのようなものがあった。廊下に行くとすぐにそのろうそくに火が付く
光「わー!すごい!」
あいり「これも術なのかよ!ファンタジーそのものの場所だな!」
2人が嬉しそうにこの光景を見ていた
アーク「…いや、これは赤外線センサーを使ったLEDライトに近いものだ。自動的に反応するぞ」
光とあいりはズッコケそうになる。光は思った。ちょっとだけ近代建築なんだね…と
アーク「これも色々と謝礼金というので改装もできている。いつまでも古臭いのは時代に合わないからな」
そう言うと次々と部屋を案内する
アーク「食堂…当然ある。寝室も一応あって夜通しの場合はここで仮眠をする。トイレも当然あるぞ
倉庫…倉庫は見てもつまらないと思うがな。他にも談話室もあったりする」
紹介するうちに3人はほっとした表情になる
光「悪魔協会だからと言ってもきちんとした場所なんだね!」
アーク「ああそうだ。悪魔その他部下も一応人間の心はあるからな」
あいり「安心したぜ。もっと殺伐としてたかと思ったぜ」
シェリル「実際そうですよ。私も実はここで仮眠したときありました」
ピットフィーンド「私なんかシェリルに言えないことがあったとき談話室で時間つぶしてた」
シェリル「え?なんか言いました?」
ピットフィーンド「いやいや何も言ってない!」
アーク「さあ、2階に上がるぞ」
2階へと上がる
アーク「ここは基本的に部下は緊急事態以外は立ち寄ってはいけない決まりだ。私の部屋とロードの部屋、空き部屋がある」
ここもそうなのかろうそくに火が灯る。ああ、赤外線センサー…3人はすぐにそう思った
アーク「私の部屋を案内しよう。入れ」
アークデーモンの部屋であろう部屋の前に着く
光「え?いいの?」
光がそう言うとアークデーモンは無表情で答える
アーク「お前たちが男だったら入れさせないかもしれないが、大丈夫だ」
こうみ「…ほんとアークさん優しいわね」
5人はアークデーモンの自室に入る
光「わぁ…!綺麗…!それで広い…!」
その自室は綺麗だった。窓際に座るであろう机があり色々と物がおいてあった
クローゼット、棚、テーブル、そしてベッドと様々なものが置かれてあった
ピットフィーンド「最近模様替えしたか?前に来たときはこんな感じではなかったような気がするが」
シェリル「何言ってんですか。前からこんな部屋でしたよ」
アークデーモン「元々こうだったぞ。さあ3人。私の部屋を自由に見学していいぞ」
光「え?いいの?わーい!」
3人はちょっとだけ慎重に色々と見回った
光「わー!アークさんのベッドふかふか~!寝心地いいよこれ~!」
アーク「特注品だ。実は二人用だ」
あいり「お!これアロマか?良い香りだな!」
アーク「そうだ。悪魔だが血なまぐさいものは嫌いだからな」
こうみ「…これ珍しい花じゃない?オシャレなのねアークさん」
アーク「別にそうでもないが花も一応好きだ」
3人は見て回る。やっぱりアークデーモンは女性なのか色々とオシャレな部分が見える
3人を見てピットフィーンドとシェリルはこっちも楽しそうな表情を見せる
ピットフィーンド「最初は怖がっていた客が楽しそうにしてるな」
シェリル「私たちでもここに来るのはあまり無いですからね」
3人はまだ見て回る。いつの間にか最初に出てた緊張もほぐれてきた
光「クローゼットでかい!…あ、でも勝手に見ちゃいけないよね」
アーク「そこには私の下着や服があるぞ」
こうみ「…あら、これ電子ケトルじゃない。紅茶でも飲むの?」
アーク「そうだ。紅茶の他にコーヒーや緑茶も飲むぞ」
あいり「いやー!アークさんの机の前の椅子最高ー!ゲーミングチェアよりもいいんじゃないか!?」
アーク「ゲーミングチェアはわからないが良い椅子は当然。駄目な椅子はよくないからな」
なんだか調子に乗ってる3人である
ピットフィーンド「やっぱりアークって心の器でかいよな」
シェリル「そうですよね。3人をここまで気を許すなんて」
あいりはアークデーモンの椅子に座って色々見てた
書類ならわかるがパソコンもある。ここで色々とデスクワークするのだろう。ふと、写真立てに目を行く
あいり「…ん?この写真立て…アークさんとロードさんいるのわかるがアークさんの隣にいるもうひとりの女性はいったい…?」
あいりがそう思うと部屋のドアが開いた。ヴァンパイアロードだった
ロード「アークちゃーん!…ってあれ?光ちゃんたち?」
光「あ!ロードさん!私たち悪魔協会に来たよ!」
光がそう言うとヴァンパイアロードは笑顔になる
ロード「アタシの言ったこと実行してくれたのね!ようこそ悪魔協会へ!あいりちゃんもこうみちゃんもこんにちは!」
ヴァンパイアロードはそう言うとアークデーモンのほうへ向かう
ロード「アークちゃん。畑で部下がちょっと教えてほしいっていう話があるわ」
アーク「なんだそんなことか?仕方ないな」
光「そろそろ終わりかな?」
アーク「済まないな。だが、これで悪魔協会というのがわかっただろう?」
あいり「ああ!とってもいいとこじゃないか!」
こうみ「…アークさんのおかげで悪魔協会に関しての考えが変わったわ」
ピットフィーンド「わかるだろ?」
シェリル「皆さんが悪魔協会の想像が良いものであってよかったです」
アーク「おいシェリル、それは私が言う言葉だ」
シェリル「あ!そうでした。失礼しましたアーク様」
アーク除く、全員で笑いあった
悪魔協会の玄関へ帰る。懺悔人もいつの間にかいなくなっていて懺悔を聞くこともなかった
光「アークさんもそうだけどみんなで支え合ってんだなって思ったよ」
あいり「イメージとは違う、悪魔協会だったな!」
こうみ「…始めは怖かったけど、今では全然怖くないわ」
ピットフィーンド「悪魔協会の見方が変わってよかったぞ。また来ような」
シェリル「いつでも悪魔協会に頼ってもいいんですよ」
光「でも、いつもアークさんかロードさんいるわけじゃなさそうだけどね」
光が言葉を言うと後ろから声があった
悪魔「おーい!そこの集団!待ってくれー!」
5人は後ろを振り向くとさっきと同じ悪魔が来た
ピットフィーンド「なんだよ?」
悪魔「ピットフィーンドさんじゃねえんだ。ヒューマン!いや、光。これをアークデーモン様が渡せと言ってたぞ」
悪魔が取り出したのはアークデーモンの名刺だった
光「え?これを…私が?」
悪魔「ああそうだ。これはアークデーモン様に直接電話できる番号もある。何かあったら連絡してほしいとのことだ!」
光「いいの?嬉しい!アークさんすごい優しい!」
悪魔「気にするな。じゃあな光と4人!」
悪魔は去っていった
あいり「おいおい今度は連絡先かよ!」
こうみ「…すごいじゃない。光」
ピットフィーンド「へえ、アーク、そこまでヒューマンの光のことが気に入ったか」
シェリル「恐らくですけど…光さんの人間性に惹かれたのかもしれませんね」
光「嬉しいなあ。今度アークさんと直接話したいな!」
ピットフィーンド「もし悩み相談なら私でもいいんだぞ?」
光「じゃあ一緒に!」
あいり「いや私たちも!」
こうみ「…姉さんと私もよ」
シェリル「なんのやりとりですか?」
ピットフィーンド「いや、ちっともわからん」
5人は談笑しながら帰っていった
夜…光は自室でアークデーモンの名刺を見ていた
光「アークさん優しい人だなあ…上に立つ人ってこんなにも良い人なんだね…
でも…私なんかでいいのかな…だって私ただの高校生だし。何か術を使えるわけでもないし…
悪魔協会全域で私の名が知られてるってすごいことだなあ…あの悪魔のようにちょっと知らなそうなのもいるけど。
どうしよう私…悪魔協会に興味持っちゃった。こんなこと親に言ったら絶対駄目だろうし…
まあ…ゆっくり考えておこ」
アマリリスの夜
暑さもあるいつもどおりの夜だった
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