第7話春の国の話

轢沙子はまた、雲の上にいた

夢なのか、現実なのか、それもわからないようなふわふわとした空間にいた

轢沙子「また…ここなの…そして現れる巫女たち…」

慣れたのかまだ慣れてないのか、また巫女たちは轢沙子に話しかける

「轢沙子~。思い出してくれよ。お前と私たち、ずっと仲良くしてたんだぜ」

轢沙子「だってそう言われてもわからないものはわからないわよ!」

「記憶喪失って、知ってますか?轢沙子さんはそれなんですよ。そして、天界にいたんですよ」

轢沙子「私、記憶喪失だなんて思って…思って…あ、あれ…?」

轢沙子の頭に異変が起きる。何か懐かしい雰囲気を思い出す。だが

轢沙子「…でも、あなたたちのことわからないし!あなたたちのせいで体調不良多いのよ!わかってるの!?」

そう言うと巫女たちは更に発言する

「…あと一歩ね。でもね、轢沙子、あなたは本当に私たちと一緒なのよ。それだけは自認してくれる?」

「それと、私が地獄に行ったとき、轢沙子は私のために地上に降りるって言ってくれたよな。それも感謝したい」

轢沙子「…ど、どういう…意味…なの…?」

そして轢沙子はまたふらっとなり視界が暗くなった


「記憶喪失、すごい難しい問題だな」

「こんなピンポイントで忘れるなんて、どうしたらいいでしょう」

「…そろそろ神かウリエルに相談に乗ったほうがいいかしらね」

「私たちだけで頑張ってるが、限界を迎えそうだな」

「ミカエルさんの人探しもなるべく早くしてほしいよ」



ジリリ!!

目覚まし時計が鳴った。ものの数秒で音を止める。そして起き上がり、轢沙子はまた考える

轢沙子「…記憶喪失…?仲良くしてた…?私が巫女のために地上を降りた…?」

あまり長い夢ではなかったが、それでもリアルな夢。巫女がこっちにおいでという誘い…

だが、轢沙子は言う

轢沙子「もう、考えるのやめよう。私は私なんだから。夢なんて、考えても意味が無いわ」

轢沙子は早速準備すると思ったら…。ふと、カレンダーを見る

轢沙子「あ。今日普通に休日だったわ」

今日は有給でもない普通の休日…そう思うと体が楽になった

轢沙子「うーん。じゃあ今日は何してましょうか」

ふとテレビをつけて番組やCMを見る

轢沙子「そういえば…遺跡めぐりみたいなことしてみようかしら…待て?発作とか起きないわよね?」

とりあえず前に壁画を見て発作を起きたことを思い出す

思い出してみたが特別何も異変はない。慣れたのだろうか。それとも自然と耐性が付いたのだろうか

あの時はアマリリスの壁画から発作が発生してたのだから、この国だったらまだ大丈夫ではないか

轢沙子「まあ、朝ごはん食べたら行ってみましょうか。ノコヤミシティの遺跡でも行くわ」

オフィス街のノコヤミシティでも遺跡はあることはある。轢沙子は行くことにする


外に出て私服でノコヤミシティへと向かう。まずは駅前に行く

歩いていると、顔馴染みのリリに会った

轢沙子「リリじゃない。おはよう」

リリ「あらぁ!轢沙子!おはよーぉ!」

轢沙子「今日は休日だけど、何してたの?」

リリ「今日はねぇ!町内会の仕事があるのよぉ!」

その言葉を聞いて轢沙子はおどろいてしまった

轢沙子「町内会??あなた町内会なんか行って大丈夫なの?」

リリ「何を言ってるのよぉ!私だって真面目に町のために働くことできるんだからぁ!」

轢沙子「そ、そう…なら、いいか…」

轢沙子は何が不安かというとそもそもリリがこういう性格だから何かやらかしそうで不安だった

例えば、暴力的なこととか…リリはパワーが人一倍違うため…。なんせ種族がエイリアンだから…

轢沙子「わかったわ。気をつけてね」

リリ「うん!轢沙子も今日はのんびりとねぇ!」

リリと別れた。しかしストッパーのネネがいたほうがいいんじゃないかと思ってしまう


ガタンゴトン…電車に揺られて轢沙子はノコヤミシティへと向かう

基本平日は、スーツを着て、朝のラッシュにもみくちゃにされて、会社へと出勤してるが、休日は違う

休日は電車内は人が少なく、普通に座れる程度だ。おまけに私服である

ノコヤミシティの中心部にある駅へと着いた

轢沙子「わぁ、何度も見てるけどオフィス街だけあってビルがたくさんあるわねー」

このビル、あのビル、ほとんどが会社である。平日は背広を着た会社員が多いが、休日は人が少ない

轢沙子「見慣れた光景だけど、休日となるとまた雰囲気が全然違うわ。ここまで人少なかったっけ?」

そう言うと轢沙子は目的を忘れそうになる

轢沙子「そうそう。ノコヤミシティの遺跡に行こうとしてたんだ。地図を見つけて…」

駅近くにあるこの街の掲示板と案内を見る

轢沙子「えーと…ここ近辺では遺跡が5つあるのね…意外とあるわ…まずは近くから行きましょうか」


ふらっと遺跡を巡ってみた。1つは中規模な遺跡がビルとビルの間にあり、特別なものはなかった

2つはこれは遺跡なのか!?というほどの小さい遺跡。軽く見てスルーした

3つは商店街のど真ん中にあり、そういえば前行ったわーみたいな形で終わる

4つはまあまあの大きさで中に壁画があったが心に来るようなものではなかった

そして5つ…

轢沙子「結局歩いたし何気にもうお昼ごはん時間になりそう。これ見て昼ごはん食べて帰りますか」

5つ目の遺跡は今まで見たものとは違う大きさだった。ノコヤミシティのちょっと外れにある

轢沙子「…そう言えば調査隊の姿が見えなかったわね。調査隊とは言え土日祝は休みなのかしらね」

そんなこと言いつつ遺跡の中に入った

遺跡の中は薄暗いがきちんとLEDライトで重要な部分が照らされていた。遺跡の最深部に行くとやはり壁画があった

轢沙子「この壁画…前に発作を起こした壁画と似てる…」

その壁画は巫女の壁画であった。天界へ行った人物と巫女が雲の上に行く壁画だった

轢沙子「…おかしい。今度は懐かしい気分だわ。変ね…」

発作ではなく心が何か懐かしい気分になる。頭も痛くない。自分はこの時代からいたような感じ

轢沙子「胸がドキドキしてきた。私恋とか関係ないけど、この壁画の人物にドキドキしてるわ」

やはりあの夢と関係してるだろうか?だが、あれはどうでもいい夢だ。関係ないとは思う

轢沙子「…ねぇ、私って誰なの?」

そうつぶやくと後ろから声をかけられた

?「おや…美人が遺跡を一人でいるとは珍しい」

轢沙子が反応して振り返る。そこには身体は甲冑みたいなものを着ていて赤色髪ロング、赤い瞳の女性が立っていた

その格好、ノコヤミシティではありえないような姿をしてる

轢沙子「? あなたは?」

そう言うとその女性が答える

?「自己紹介しよう。僕はデュラハン。高位悪魔、そしてシダレカ悪魔協会代表だよ」

轢沙子「悪魔協会代表?代表がなんでここに?」

デュラハン「それを言う前に君の名前を知りたいな」

轢沙子「私は人見轢沙子って言うのよ」

デュラハン「人見轢沙子…いい名前だ。女性でありながらかっこいい名前をしてる」

デュラハンがそう言うと轢沙子が見てる壁画へと移動した

デュラハン「僕はね。仕事の合間を縫ってここに来たんだ。ところで、壁画…そして巫女…面白いと思うよ。

僕がいたアマリリスは地獄に関連した壁画が多くて、巫女はあまりいなかった。

ただ、ヒダンゲは元々巫女の発祥の地だから巫女に関する壁画が多くてね。

ユキノウエに至っては特別なものはない。遺跡なんて関係ないと思わせる遺跡が多すぎる

不思議だよね。各国遺跡が確実にあるのに、こんなにも描かれてるものが違う。面白いだろ?」

デュラハンは壁画を見つつ笑顔で言葉を発していた

轢沙子「へえ。そうなのね。他の国の遺跡情報知らないのよ」

デュラハン「実は僕もアマリリスにいたころは遺跡なんてそこまで知らなかったんだけどね」

轢沙子「アマリリス出身なの?アマリリスって悪魔が多いのは聞くけどね」

デュラハンは更に答える

デュラハン「僕は総本山でアークデーモン様の元で働いていて、アークデーモン様とヴァンパイアロードさんの勧めで

僕がシダレカ悪魔協会代表になったんだ。つい最近…というより2年前かな。

まず最初にやったことは古臭いしきたりの廃止や悪魔協会自体の改装。そうでもしないと新しい時代についてけない。

全ての種族の共存をするなら、特に古いしきたりは無駄なんだ。実は総本山も一緒なんだけどね

そうしたらどんどん仲間が増え、懺悔人の数が増えた。やったことは満足してるよ」

轢沙子「なるほど。でも、そんな重要情報をまだ会って間もない私に言っていいの?」

デュラハンはその言葉を聞き、轢沙子の顔を見る

デュラハン「ひと目で君は強いと感じたからだ。僕だって一応高位悪魔だからね。君は妖怪。しかもただの妖怪じゃない。

何か強大な力を持つ妖怪だってわかった。普通にさっき言ったこと話しても良さそうだなって、感じたんだ」

轢沙子は驚く。この悪魔はただの高位悪魔ではなくひと目で判断できるとんでもない悪魔だと

轢沙子「…あなた、すごいわ。総本山のアークデーモンやヴァンパイアロードとは全然違うような気がするわ」

デュラハン「いやいや。あのお二人には敵わないよ。実力も何もかも、お二人のほうが上だよ」

デュラハンは笑いながら言う

轢沙子「まあ…いいわ。色々ありがとう」

デュラハン「僕は強い種族にひかれるときがあるから、今日の出会いはとても嬉しかったよ」

ぐ~…

轢沙子「あ、ごめんね。ちょっとお腹空いたからそろそろこの遺跡から出るわね」

デュラハン「なんだ空腹か。今日の出会いを感謝して何かおごってあげよう」

轢沙子「え!?いや、いいわよ」

デュラハン「気にしないで。僕の好意さ」

轢沙子「…うーん…わかったわ」

轢沙子とデュラハンはそのまま遺跡を出て、美味しい料理屋へと向かった

轢沙子はちょっと遠慮しそうになったがデュラハンが遠慮しなくていいとのことなので美味しい肉料理を頼んだ

ちなみにデュラハンは何も頼まなかった

轢沙子「あなた、何も頼まくていいの?」

デュラハン「僕は空腹がしないんだ。むしろ、食用としてるのは動物の血や完全栄養食品とかね」

轢沙子「そ、そうなんだ…」

高位悪魔となると食べるものも違うのか。そう思ってしまった

デュラハン「轢沙子」

轢沙子「ん?何?」

デュラハン「もし…なんだが…メールアドレスか電話番号…教えてくれないか…」

轢沙子「え!?う、うーん…まあ、あなたそこまで悪い人じゃ無さそうだし…いいわよ」

デュラハン「ありがとう」

待っている間に二人はお互いのアドレスと番号を交換した

轢沙子「でも私、今日は休日だけど平日は基本出れないわよ」

デュラハン「それはわかってるさ。僕だってそうさ。暇なときにちょろっと連絡する」

轢沙子「それでいいわよ。よろしくねデュラハン」

デュラハン「ふふ、嬉しいなあ」

デュラハンは笑顔になった。ただの出会い厨では無さそうだ


轢沙子「いやー美味しかったわ。ありがとうね」

デュラハン「大丈夫さ。君の美味しい食いっぷりは僕もそろそろ何かを入れないととは思ったよ」

轢沙子「だったら何か食べておけばよかったんじゃ…」

そう言うと後ろで声がした

悪魔「あー!デュラハン様!ここにいたんですか!」

振り向くと悪魔が慌てて来たような感じがした

デュラハン「おや?どうしたんだい?懺悔人が暴走したかい?」

悪魔「違うんですよ。犯罪が起きてしまって!デュラハン様がいないとまずい状況です!」

デュラハン「なんだそんなことか。わかった。すぐに僕が行こう」

轢沙子「犯罪?」

デュラハン「実は警察とシダレカ悪魔協会は提携してて犯罪があったらすぐにかけつけるんだ」

轢沙子「そうなの?すぐに行ってきなさい」

デュラハン「ああ!轢沙子。今日はありがとう。いつかシダレカ悪魔協会に来てくれ!ではっ!」

デュラハンと悪魔は早足で現場へと向かった

轢沙子「…なんだかとんでもなさそうな悪魔と友達になれたわね」


夜…轢沙子はネットでシダレカ悪魔協会についてのホームページ?を検索してみた

轢沙子「えーと…あった。へー綺麗な感じじゃない。まるで新築のような場所ね。

おまけに黒塗りでもなくて普通の一般人が入っても良さそう。

協会員募集…でもこれって悪魔とか亡霊とか不死じゃないと入れなさそう…でもない?

そう言えば古臭いしきたりは消したって言ってたから誰でも加入できる感じかしら?

あ、協会員のページ見ると意外と鬼とかドワーフとかいるわね。そしてデュラハンが代表…

こんな新しい時代に合わせた経営方針なら今後も安心ね。すごいわね」


シダレカの今日の天気は晴れ

夜は月が出ていて綺麗な空だった

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