第6話春の国の話

人見轢沙子…やはり夢を見ていた。いつもの、巫女が出る夢…

しかし、今日は違った。いつもだと背景が白かったが今日は雲の上にいるような場所だった

轢沙子「あ、あれ…?なにここ…?」

轢沙子が周りを見渡す。雲の上だがまるで普通の地面に立ってるかのような安定した場所

しかし逆に言えば雲の上に立ってるだけで周りは何もない。そして巫女がいた

「轢沙子ー。本当はお前の居場所はここなんだぜ」

「私たち、ずっとあなたを待ってるんですよ」

轢沙子はそう言われて困惑する。こんな天国みたいな場所が?私の居場所?

轢沙子「よくわからないわよ!私、ちゃんと居場所があるもの!」

轢沙子は否定する。しかし

「…あら?長い間地上に居ちゃったから地上が自分の居場所だと思っちゃったの?」

轢沙子「ち、地上って言われても…ここが本当の居場所って言われても…」

「ふっ、やはり記憶が飛んでるな。思い出せないみたいだ」

「ここにいれば、もっと安心して暮らせるんだけどなー」

巫女たちが笑い合う。なんだ?なぜこの夢ははっきりしてる?そして誘うように場所を変える?

意識が遠のく…轢沙子はいつの間にか真っ暗な視界になってしまった

そして巫女の発言を聞く


「あー。やっぱり完全に記憶喪失してるなこれ」

「どうしたら私たちは地上に行けるでしょうか?轢沙子さんを戻したいです」

「…まず、私たちを現世へ移動する手段を考えないといけないわね」

「私を地獄から天国へ移動させたお礼をしたいしな」

「誰か封印を解いてくれないかなー?」


ジリリ!!

また目覚まし時計が鳴る

轢沙子「…」

今回の夢は全く意味がわからなかった。本当の居場所?何を言ってるのだろう

そもそも自分はこの国の生まれでこの国で育って…轢沙子はふと思った

轢沙子「あ、あれ…そういえば過去のことがちっとも思い出せない…」

まだ覚えてる過去はリリと仲良くなったことだ。しかしそれはまだリリが独身時代だったとき

それ以前がわからない。過去を全く記憶をしてない生き方をしてたのか?

しかし、轢沙子は言う

轢沙子「もう、夢で人生左右される生き方はこりごりだわ!私は私!元気に出勤するのよ!」

轢沙子は気合を入れて準備する


轢沙子は出勤途中、もう夢を思い出さないようにしていた。あんなの、考えても意味がない

そう決心しながら駅まで歩くと友人に出会った

轢沙子「あ、由美子にカイ、おはよう」

由美子「おはよう轢沙子」

由美子が元気に挨拶したが

カイ「…やっほー、轢沙子…」

カイが今までにないほど元気がなかった。何かあったのか?

轢沙子「どうしたのカイ…?元気ないじゃない?」

そう言うと由美子が説明した

由美子「あのな。カイは昨日ヌクギに怒鳴られまくってな。そのダメージが今も残っているんだよ」

轢沙子「出た…ヌクギさん…あの大声出す人…」

確かに轢沙子もヌクギに会ってその大声には困っていた

話を聞くと相変わらずカイは働かないためヌクギが抜き打ちで自宅に訪問して説教してたらしい

カイ「…ほんと…あの人…大きらい…」

今のカイはボソボソ言うぐらいしか気力がないようだ…

轢沙子「うん…あの人、ガチで説教したら絶対心に傷つけるような言い方しそうだわ…馬鹿でかい声だし」

由美子「だから今カイは凹んでるんだ。とりあえず元気付けようとちょっと散歩してたとこだ」

轢沙子「散歩ぐらいで気分晴れるのかしらね…」

カイ「大丈夫よー…カイ、明日までに治すわー…」

由美子「そういうことだから、じゃあな、轢沙子」

カイは珍しく由美子と手を繋ぎながら歩いていった。恋人繋ぎである

轢沙子「…ヌクギさん…やり方が強引すぎる気がするわね…」

何度も言うが妖魔って大変な種族だなあ。と思いつつ轢沙子は職場へと向かった


会社に着くと、上司が喜んで出迎えてくれた。とても心配してたらしい

上司「轢沙子くん!元気になったかな?」

轢沙子「はい。元気になりました。有給休暇の申請、ありがとうございます」

上司「それはいいんだよ。轢沙子くんのために仕事もあるからな!」

轢沙子「お騒がせして申し訳ありませんでした。今日は頑張って仕事します」

上司「おう!頼んだぞ!」

轢沙子は仕事を持って自分のデスクへと腰を下ろす。そしたら同期のエルフの人も来たようだ

エルフ「轢沙子さーん!心配してたよー!」

轢沙子「ごめんね。私、もう大丈夫だから」

エルフ「よかったー!元気が一番よ!轢沙子さんの元気が顔がまた見れてほっとしたよ!」

轢沙子「心配かけてごめんね」

エルフ「うん!やっぱり轢沙子さんの笑顔見てると私も頑張れる気持ちになる!」

轢沙子「嬉しいこというわね~」

しかし表向きではそう言ったが…心の中ではこう思った

『私のあの夢は、本当に夢なのか?』

そう思ったが今は関係ないと、張り切って轢沙子は仕事をした


昼…轢沙子はなんとなくとある部屋の前にいた

その場所は「カウンセリング室」

別にもう忘れようとしてるのだが、カウンセリングすればちょっとは解決するんじゃないかと思いここにいる

轢沙子「うーん。カウンセラーと相談すればいいのかしら。けど、こんなことで相談するのも…」

そう言ったらカウンセリング室のドアが開いた

ガチャ。そこから身長の低い男性が現れた。恐らくホビットであろう

男性「あ、もしかしてカウンセリング希望の方ですか?」

そう言われると轢沙子は戸惑う

轢沙子「い、いやそういうわけじゃないけど…」

男性「いいですよ?今空いてますから、カウンセリング、受け付けます」

轢沙子「え?あのー…うん、入ります」

男性「どうぞ」

カウンセリングする予定はなかったがカウンセリングを受けることになった

轢沙子と男性は椅子に座り話す

男性「どういった内容ですか?」

轢沙子「あのー…私…ちょっと夢で悩んでいるんです」

男性「夢ですか。どんな夢ですか?」

轢沙子「変なんです。その夢は巫女がいつも出てきて、私のことをこっちに来なよーとかそろそろ気づいていいんじゃないかとか。

あと、今日見た夢はまるで天国にいるような場所でした。巫女がまるで私を誘って、どこかへ連れてこうと…」

カウンセラーの男性は少し考えたあと、発言する

男性「気にしなくていいですよ。夢は夢ですから…そういう夢を見るからって精神がおかしくなってるわけではありません

それに、本当に精神が参っているなら幻聴や幻覚、色々な症状が出てきます。あなたはそういう症状になってますか?」

轢沙子「…」

そういえば鬱病らしいことにはなってない。幻覚と幻聴。それにもなってはいない。ただ…

轢沙子「私、とあるニュースを見て発作みたいなことがあったんです。それで休んでしまって…」

男性「発作…ですか?」

轢沙子「はい…」

男性「たまたま、ですよ。衝撃的なニュースを見て発作する人はおかしくありません

あなたは突拍子もないニュースを見て混乱してしまったのでしょう。トラウマ、というものがありますか?」

轢沙子「…いえ、ありませんね」

男性「恐らく衝撃的なニュースが原因です。大丈夫ですよ。私だって嫌なニュースは見たくありませんから」

カウンセラーは笑顔で答える

轢沙子「なるほど…わかりました。なんだか、気が軽くなりました」

男性「よかった。でも、一応もしまた精神的な症状が出てしまったら、遠慮なく私のもとに来てくださいね」

轢沙子「はい。ありがとうございます」

轢沙子は笑顔で答えた


夕方、轢沙子は仕事を終える。上司は良い仕事ぶりに大いに喜んでいた

帰るときに、轢沙子はふと思った

轢沙子「あ、ちょっとだけ遺跡に行こうかしら…。またあの壁画を見て発作起きないか…」

ほんとはやってはいけないだろうが、試しに。という理由で遺跡へと向かうことにした

ノコヤミシティの場所にある遺跡と向かうと…

轢沙子「…あれ?遺跡に人がいて入れない…?」

遺跡には数人もの調査隊であろう人たちが入り口にいた

轢沙子「そうだ。なんか4つの国の遺跡を全部調査するっていうニュース聞いたわね…」

調査隊の話を盗み聞きすると「ここはこうだ…」とか「実はこうなんじゃないか…」などと言った発言が聞こえる

轢沙子「うーん…入ろうとしてもどうぞって言ってくれる雰囲気じゃなさそうだし…今日は諦めるか…」

せっかく来たが入れないため諦めることにした。そしたら声が聞こえた

由美子「お?轢沙子じゃないか」

振り向くと由美子とカイがいた

轢沙子「あら?2人ともここへ来たの?」

由美子はともかくカイが相変わらず顔が暗い。まだ傷ついてる様子が伺える

由美子「ああ。まだカイが落ち込んでるから遠くに行こうとしてここまで来たんだ」

カイ「ほんとごめんね…由美子…。轢沙子…本調子に戻れなくて…ごめん」

由美子「大丈夫だ。大丈夫」

由美子はカイの肩を抱いていた。いつもの轢沙子だといちゃつくなと言いたいが今日は言えなかった

轢沙子「うーん。そうだ。この近くに美味しい魚料理出す居酒屋があるけど行く?」

由美子「お!いいなそれ!なあカイ、魚とか食べて気分治そうぜ」

カイ「うん…そうしたい…」

轢沙子「じゃあ決定ね。ついてきて」

3人は居酒屋へと向かう


カイ「美味しーい!この魚!このイカリング!このたこ焼き!全部美味しいわ~!」

カイを慰めるためにとにかく海産物中心のメニューを頼み、ほとんどカイに食べさせていた

食べていくうちに美味しさでカイの笑顔が戻った感じである。由美子はほっと一安心した

由美子「やっぱり食べたほうが人間、気分が治るもんだな…、轢沙子、ありがとな」

轢沙子「いいのよ。友人が落ち込んでる姿をあまり見たくないからね」

轢沙子はのんびりビールとおつまみを。由美子もちまちまと別の料理を食べてた

由美子「実は天使協会に行こうか考えてたんだがな…アタシみたいな亡霊でも行けるか悩んでたんだ」

轢沙子「天使協会?あまり興味ないけど」

由美子「まあアタシは亡霊だから悪魔協会のほうを支持するほうだが…悪魔協会は今の状況じゃ違うしな」

轢沙子「行っても大丈夫じゃないの?よく知らないけど…」

由美子「天使協会も悪魔協会も知らない人は一切知らない協会だしな」

轢沙子「確かに。悪魔協会は罪人が償いをする場所。天使協会は有り難い言葉を貰うとこだっけ?」

由美子「そうだ。だから天使協会に行くのは違うかなって思ってた」

轢沙子「こういうときはカウンセリングとかいいんだけどね」

由美子「実はな、アタシ悪魔協会に関係ある人と手紙でやりとりしててな。アマリリスにいるんだがその人はとても良い人なんだ」

轢沙子「その人悪魔なの?」

由美子「不死だ。アタシもその人が作ったサークルに入っていて、知る限りでは結構な数の人がいる」

轢沙子「不死ねー。不死って実際会うだけじゃ判別がわからないっていう種族だからね」

由美子「ああ。でな、アマリリスにある悪魔協会総本山は、かなり規模が違うらしいからな」

轢沙子「総本山っていうから絶対大きいんでしょうね」

由美子「写真で見たがこの国の悪魔協会が小さく見えるぞ。総本山は本当にでかい。そして怖い」

轢沙子「怖いのね…。その総本山の人たちも怖そう…」

由美子「けど実際そうでもないらしい。特に、代表のアークデーモン、副代表のヴァンパイアロードは良い人らしいな」

轢沙子「名前からしてすでに強そうじゃない…」

由美子「実際強い。で、過去にもう一人だけ副代表がいた」

轢沙子「え。副社長、みたいなのが2人いたの?」

由美子「そうだ。名前がデスだ。その人もアークデーモンの片腕。なんて呼ばれてたんだが…」

轢沙子「過去形?呼ばれていた?」

由美子「ある日突然死んでしまったらしい。死因は一切教えてくれなかった」

轢沙子「死因がわからない死…」

由美子「とりあえずそんなことで悪魔協会は少し気が沈んだ状況があった。でも今は回復してるぞ」

轢沙子「ふーん。たとえ悪魔協会でもそういう時期があったのね」

由美子「そういうことだ。まあ全部手紙でのやり取りだけどな!」

カイ「ねえねえ由美子に轢沙子、もっと海産物料理頼んでいい?」

轢沙子「元気になったわね。いいわよ。どんどん食べて!」

由美子「すまないな轢沙子、アタシも料金出すからな」

轢沙子「私たちも色々食べましょう」


居酒屋に出たときにはカイは元気いっぱいになり笑顔になっていた

カイ「たくさん食べて満足だわ~!」

轢沙子「よかったカイが笑顔になって…」

由美子「轢沙子ありがとな。感謝しきれない」

轢沙子「別にいいのよ。友人のためだもの」

由美子「カイ、そろそろ帰ろう。今日は轢沙子も一緒だぞ」

カイ「うん!」

3人は仲良く駅へ向かいそれぞれの場所へと帰った


夜…轢沙子は久しぶりにお腹いっぱいになって過ごしていた

轢沙子「ほとんど由美子の話だけど悪魔協会…色々な人生を送ってるとこなのね…

誰か妖怪サークルとか作ってくれないかしら…妖怪はいるけどあまり会ったことないし…

…あ!そうだ。ネトゲしないと!全然浮上できなかったから光ちゃん怒ってそう…

…その前にログインパスワードってなんだったっけ…」


シダレカ、今は雨が降っているが翌日には止むらしい

しとしと降る中で轢沙子はログインパスワードはなんだったか思い出していた

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