第5話夏の国の話

悪魔協会…今日も夏の青空の下で悪魔たちが活動している

その中の一室に悪魔の頂点、アークデーモンがいた

アークデーモンは基本的に事務処理なのだがたまに室内を出て育てている野菜を見に行ったりする

そう、アークデーモンは野菜を育てるのが趣味である。夏野菜を中心に育てているらしい

アークデーモンが部屋で作業してるときにドアの音が鳴った

アーク「ん?誰だ」

ロード「アタシよー!アークちゃん!」

入ってきたのは不死の頂点、ヴァンパイアロードだった。今では副代表の一人だ

いつも明るく元気で不死とは思えないほど活発的。おしゃべりも上手いためたまに説得したり言いくるめるときがある

ヴァンパイアロードは怒るととても怖いため部下たちはヴァンパイアロードをなるべくご機嫌を損ねないようにしてる

アーク「なんだロード?まだ私は処理中だぞ」

ロード「遊びに来たわけじゃないわよー。今日の午前中の懺悔人の懺悔が終わったわよ」

アーク「そうか。確か今日は3人。まあまあの数だな」

ロード「そうよね。ピークがあるかわからないけどたまに数十人とかいるからねー。ほんと多すぎるわ」

アーク「とりあえずこの総本山の他にもこの国には数カ所悪魔協会はあるのだがな」

ロード「でも不思議と総本山のほうばっかり集中しちゃうから…困っちゃうわね」

アーク「ここのほうがしっかり懺悔してくれるからな。当たり前。と言ったところだろう

ロード、たまには他の協会にも出張してどうなってるか確認してくれ」

ロード「ほんとは気が向かないんだけどなー。わかったわ。一応アークちゃんの右腕だもんね」

アーク「そうしてくれ。さて、私は畑にでも行くかな」

アークデーモンは椅子から立ち上がり外に出ようとしてた

ロード「あ。アタシもいきたーい」

アーク「だめだ。ロード、お前はきゅうりを収穫しようとしたらきゅうりじゃなくて根っこから引っこ抜いただろうが」

ロード「えー!あれはやり方わかんなくてそうなっただけよー!」

アーク「でもだめだ。悪魔協会の中にいて他のことしろ。いいな」

そう言ってアークは部屋から出た

ロード「んもう!アークちゃんの頑固ー!…でも、デスちゃんがいたらどうなってたんだろ…」


夏の国アマリリス。いよいよ夏のシーズン一歩手前まで来た

夏の国らしくこの国に住む人たちが夏に向けて色々準備をしている

祭りのこともそうだが暑いので熱中症対策、冷房完備、色々である

そんな中、今日もアマリリス高校はいつもどおりの学校生活があった


昼過ぎ…光とあいりとこうみは3人で食事をとっていた

あいり「なんだか最近悪魔協会の人が道を歩いてるような気がするんだよな」

唐突にそんなことを言い出した

光「悪魔協会の?なんでだろ」

こうみ「…恐らくだけど、悪魔協会って普通に人外が多いから警備の意味で回ってるんじゃないかしら」

光「なるほど!警備か~」

あいり「らしいな。夏は犯罪が多めだから多分だが警察と連携してるのかもしれないぞ」

光「じゃあピットちゃんとかシェリルさんも警備してるのかな」

こうみ「…かもね。まあそれで収入が得られればいいんじゃない?」

あいり「お金にならんと話にならないからな」

あいりは箸で野菜を掴み、そのまま口に入れた

あいり「しっかし、悪魔協会はハロウィンだとかなり盛り上がりそうな団体だよな」

光「わかる!…けどアークデーモンさん乗り気になさそうな感じするなあ

ヴァンパイアロードさんは明るい人だからハロウィンパーティしてくれそうだけどね」

あいり「ちょっとピットフィーンド通じて相談してみるか?」

光「いいねそれ!ヴァンパイアロードさんでも良さそう!」

あいり「面白そうだな!後はタイミングよく相談できればの話だな!ははは!

…こうみ?お前ちょっと口数少ないが、どうした?」

光「そういえばこうみちゃん、ちょっと元気ないね」

元々こうみは口数少ないが、今日は変にいつもより少ない

こうみ「…ん、なんだか頭がぼーっとするのよ」

光「ちょっとおでこに手を…あれ?結構温かいよ!」

あいり「マジか!…ほんとだ熱いレベルだぞ。保健室行ってこい?」

こうみ「…う、うん」

こうみがそう言って立ち上がり少し歩いたらフラッとなり倒れそうになる

光「こうみちゃん!大丈夫!?」

あいり「まずいな!こうみ、おんぶしてやるから保健室に行くぞ!」

こうみ「…ご、ごめん、姉さん、光…」

あいりはこうみを背負って、光と共に保健室へ向かうのであった


保健室…ここの先生は天使だがそれなりに歳の行ってる人だが優しくいい人である。女性である

ここは夏の国で天使は暑いのは苦手だが、暑いとは言わずしっかり診察をしてくれる

光とあいりはこうみを連れて先生の診断を受けていた

先生「ふむ、これは風邪ですね…。それに38.0℃もあります。早々に帰宅するのがいいですね」

あいり「そうか…わかりました。こうみ、もう帰ったほうがいいぞ?」

こうみ「…でも、あまり早退したくないわ…」

先生「それはだめです。あなたが風邪だとウイルスが周囲に撒いてしまって他の生徒にうつる可能性があります

あと最近変なウイルスが他の国で発生してちょっと大変なことになってるんですよ?

他の人にうつさぬようにマスクをあげます。そして無理強いするのはやめてください。早退をおすすめします」

光「そうだよこうみちゃん。無理しないで?」

こうみ「…わかりました…」

こうみは早退することになった


学校の玄関…

光「歩ける?こうみちゃん?」

こうみ「…大丈夫、お水飲んだら少し歩けるようになったわ」

あいり「無理しないで家帰ったらちゃんと寝とけよ」

こうみ「…言われなくてもわかってるわ。じゃあね2人とも」

こうみはゆっくりと帰っていった

光「こうみちゃんが熱だなんて珍しいなあ」

あいり「ああ見えて真面目だからな。熱なんて誰でも起きる風邪だしな」

あいりはそう言うと光のほうに振り向く

あいり「でな、光。アタシは今日部活動がある。残念だが一緒には帰れない」

光「そっかー。わかった。一人で帰るね」

あいり「済まないな」

2人がこうみが消えるまで見送ってた


放課後…

光は一人で帰っていた。いつもだとこうみとあいりがいたためちょっと寂しい

他の子でもよかったかもしれないが、変なことに他の生徒とは違う方向だ

すぐに帰る気持ちにはならず自転車を引きながら歩いて帰ってる

光「はぁ、久しぶりだなー。恐らく明日こうみちゃん登校しなさそうだし…

いつも喋る人がいないとこんなに寂しいなんてなー…」

光はなんとなく大通りの道を歩いた。ここは人、車、バイク、自転車が多い

同じぐらいの年齢らしい集団を横切った。仲良く談笑してる

あいり、こうみに少し依存してるのかもしれない。寂しさが更に深まった

光「どこかのお店にでも行って寂しさを紛らわそうかなー…」

そう思うとふと、声をかけられた

?「おやおや、お嬢さん。今日は一人で下校かい?」

その声を聞きその声のほうに顔やった。そしたら知り合いだった

光「あ!ピットちゃん!それにアークさんも!」

声の主はピットフィーンドだった。そしてアークデーモンもいた

ピット「珍しいな。光が一人でここにいるなんて」

光「一人も何も…!アークさんもいるなんて!」

アーク「私はただ暇つぶしとピットがどうしてもいきたい場所があるからついてるだけだ」

光「なるほど…」

アークデーモンはいつもの悪魔らしい服装ではなくおしゃれな服装をしてる

ピット「で、いつものあいりとこうみはどうしたんだ?喧嘩でもしたか?」

光「違うよー!実は…」

光は事情を説明した

ピット「なるほど。風邪で早退。部活で一緒じゃない。寂しかったんだな」

アーク「たまにはそういうときがある。寂しいだろうがな」

光「そうなんだよね…」

光は少しため息をついた

ピット「お!そうだ光、よければ一緒に私の買い物に付き合ってくれ!」

光「え?買い物?」

ピット「そうだ!限定品が欲しくてな!ここへ来たんだよ!」

アーク「たったそれだけのために私もついてきてる」

光「いいね!じゃあピットちゃんについてくよ!」

光の顔が明るくなった。3人はショップへと向かった

そして光はふと思った。アークさんって結構腰が軽いんだなと…

そのショップというのがお菓子売り場だった

光「チョコレートの…お店…?」

ピット「そうだ。ここで期間限定があってな。それを買いたかったんだ」

光「へー!…で、アークさんも?」

アーク「別に私は何も買わぬがな」

ピット「だからついてきてほしかったんだよ。さあ入るぞ!」

なるほど。ピットだと子供に見えてしまうから一応大人の付添いという形でアークデーモンと一緒かもしれない

店内に入ると様々なチョコレートが売っていた。子供用から大人用まであった

ピットがほしいのは期間限定濃厚ミルクバフチョコレートというチョコだった

ピット「これこれ!いやーようやく買えるぞ!」

光「これほしいの?だってシェリルさんに頼めば買えるんじゃ…」

ピット「あのな光。シェリルはお菓子に厳しいやつなんだ。こういうの買いたいって言っても

絶対だめです!って言われるのがオチだ。だったら自分でこっそり買うしかないんだよ」

光「あー。だからアークデーモンさんと一緒なんだね」

ピット「そういうことだ」

アーク「もう一度いうが私はそれだけのために付き添ってるんだ」

光「…お疲れ様です」

でもそんな私服で来るなんてアークデーモンさんも顔には表してないけどノリノリだったんじゃ…と光は思った

光もせっかくなので期間限定品チョコを少しだけ買うことにした。予算内の金額なので大丈夫だ

3人がレジに並ぼうとしたら…

ピット「ん!レジ混んでるな!ちょっと時間かかるかもしれないな!」

光「ありゃ。結構並ぶね…ってアークデーモンさんも期間限定品買うの?」

アーク「私のではない。ヴァンパイアロードが甘味が好きだから少し買ってやるだけだ」

光「なるほど…」

しかし長蛇の列だ。少し待たないとだめみたいだ

アーク「光。」

光「ん?何?」

アーク「なにか、私に質問したいことがあるか?」

光「質問!?ん、んー。えーと…」

唐突に言われてちょっと考えたがすぐに口に出した

光「好きな食べ物って、あるの?」

アーク「野菜だな。実際悪魔協会の裏で野菜を育てているからな」

光「あいりちゃんと一緒…。嫌いな食べ物は?」

アーク「基本腐ったものは嫌いだな。納豆とかな」

光「まああれは好き嫌いはっきりしてるし…好きな動物は?」

アーク「好きというわけではないが鳥になりたいと思ったことはある。我が父デーモンロードは空を飛べた」

光「お父さんすごーい。趣味ってあるの?野菜育てるのが趣味?」

アーク「そうだ。最近では部下がわかってきてくれて手伝ってくれてるよ」

光「よかったね…。困ったことはあるの?」

アーク「特にないな。仕事で行き詰まったことはないし部下がどうこうという問題は特にない」

光「…へんなこと言うけど、その胸で困ったことは?」

アーク「それもないな。ただ道行く人がたまにじーっと見られるときがある。特に男はな」

光「見られても大丈夫なんだね…」

ピット「おーいそろそろレジ前だぞー」

光「あ、ごめん!」


3人はようやく買えた。ピットフィーンドはご満悦の表情だ

ピット「いやー!ようやく買えた!ありがとな!光!」

アーク「待て。その前に私にお礼というべきだろ?」

ピット「おっと済まないな!アークもありがとよ!」

光「悪魔協会の上下関係ってどうなってんだろ…」

とりあえずアークデーモンが上なんだろうが敬語を使ってない限りよくわからない

光「で、この後どうするの?」

ピット「悪魔協会に行ってのんびりチョコを食うつもりだ!」

光「え!そこにわざわざ行って食べるの?」

ピット「さっきも言っただろ?シェリルに怒られるからな。悪魔協会のほうが安心して食べられるんだ!」

光「あそこで安心とは言えなさそうだけど…」

やはり悪魔協会に行き慣れてるから一応落ち着くのだろう

光「わかった。でも私、日が暮れてきたからおうちに帰るね」

ピット「おう。じゃあな光。また会おうな」

アーク「今日はピットのわがままに付き合ってすまない。今度ゆっくり話そう」

光「うん!ピットちゃん、アークさん!ばいばい!」

光は止めてた自転車に乗り、そのまま帰っていった


夜…光は夜食ということで期間限定品チョコを食べてた

光「ん、んんー!美味しいー!なにこれ!濃厚な味してすっごい美味しい!

サクサク感もたまらないしチョコも値段の割には分厚い!

えー!もっと買えばよかった!」

ふと気がつくとあっという間に食べてしまった

光「あー美味しかった。…明日、こうみちゃん来るかなー。心配だけど、大丈夫か

…そうだ!さっき行ったチョコレート店。調べてみてまだ売ってるか確認しよ!

…今日までだった」


夏の国アマリリス。気温が高いせいか夜も暖かめ

冷房が必要な季節がやってきたようだ


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