第5話春の国の話

由美子の家…朝に手紙が届いていた。不死亡霊活動サークル主、シェリルからだ

由美子「…お!シェリルさんの手紙だ!もう届いたのか!」

シェリルと由美子は文通相手であり元々由美子が気になり加入したサークルなのである

由美子「えーと何々…元気ですか。私は元気です。…みたいな手紙だな」

あと他に秋の国にいる牧もそのサークルに入っているのだが忙しいのか手紙が届かない

由美子「牧さんもそういえばアタシと同じ亡霊だし、色々喋ってみたいんだがなあ…

遺跡案内人なんだしシダレカに来てもおかしくはないはずなんだ」

由美子はそう思うと他にも手紙がないかチェックした

由美子「えーと…ん?見慣れない手紙が…。なんだこりゃ」

早速その手紙を開ける

由美子「…?カイじゃないか。元々携帯電話のアドレスあるのに一体?

たまには手紙でやり取りしましょってやつか。カイは可愛いやつだな

…待て、全然意味わからん文章だな」

そこには妖魔推奨委員会ヌクギさんへ。という手紙がかいてあった

由美子「うーん?ヌクギってあのよくわからん集まりの委員会の代表じゃないか?

そもそも間違えてるぞカイ。後でメールしておくか」

由美子はそれを見て、玄関に向かった

ジリリりり!!

轢沙子の家にいつもどおりにけたたましい目覚まし時計の音が鳴った

轢沙子はいつもどおりに目覚まし時計のアラームを止める

轢沙子「…」

しかし今日はあの夢を見なかった。巫女が話しかける夢…

よくわかっていない。夢を見るとき、見ないとき。不安定な夢である

轢沙子「今日は夢を見なかったわ…なんだろ…

前に夢を見なかったのはみんなででかけたとき…」

だが果たしてまたあの夢を見るのだろうか?

また夢を見て発作のような感じにならないか?

そう思ってると携帯電話から電話の着信音が鳴った

轢沙子「ん?誰からだろ?…あ、上司!」

気づいてすぐに電話をかけた

上司「もしもし轢沙子くん。おはよう」

轢沙子「はい。おはようございます」

上司「どうだ調子は?まだ悪い感じか?」

轢沙子「いえ、ある程度落ち着きました。大丈夫です」

上司「そうか?ただ、ちょっと轢沙子くんの状態を見て

上と話したんだが、今日も休んだほうがいいんじゃないかって話が出たんだ」

轢沙子「え?けど私もう大丈夫…」

上司「いやいや無理するな。一応今日は有給休暇って形で俺が出しておくから。今日も一日休んでいいぞ」

轢沙子「は、はあ…わかりました」

上司が自分で出すはずの有給休暇を申請してくれるなんてここ結構ホワイトだな?と思ってしまった

そう言えばここの会社はカウンセラーがいて悩みのある社員が相談することがある

そしてそのカウンセラーとの話は社長に直接届き悩みを解決する

だからここの会社はパワハラやセクハラと言ったものがなく安定して働けるのである

轢沙子「ありがとうございます」

上司「うむ。しっかり休んで明日元気になってこいよ。じゃあな」

轢沙子「はい。失礼します」

上司との連絡を終えた


というわけで今日は休み。一体何をしていればいいのだろうか

轢沙子「休みっていざあると何してようかしらね…」

轢沙子は考えてみた


夢…巫女の会話…


壁画を見て…発作が始まった…


私は…誰なんだろう…


轢沙子「…はっ!?」

いけない。悪い方向へと考えてしまった。これじゃあまた明日調子悪くしてしまう

轢沙子「…やっぱり外出したほうがいいわね。家にいると考え事が多くなっちゃう」

さてどこへ行こうか?リョクジシティにでも行くか?

轢沙子「だたリョクジシティに行くにしても特別用事はないのよね…」

たまたま付けてたテレビをふと目をやる

轢沙子「…フジサク工業地帯のCMやってる。ここって色々な企業がある工業地帯ね

そうだ!今日フジサク工業地帯に行ってみようかしら」

そうとなればさっさと準備しよう。轢沙子は支度をして家を出た


ガタンゴトン…電車に揺られ轢沙子はのんびりフジサク工業地帯へと向かう

やっぱり、というか朝ラッシュがないせいか電車は結構がら空きだ。しかも都会とは別方向

そんなこんなで轢沙子はフジサク工業地帯の近い駅へとたどり着く

轢沙子「ついたー。さて、どんな感じかしらね」

轢沙子は駅を降りると早速その工場風景に驚く

轢沙子「わー…工場がでかめね…」

フジサク工業地帯はユキノウエのオニキス工業地帯とどう違うのかというと

オニキス工業地帯はガラス製品を取り扱うことが多いがフジサク工業地帯は木材の加工中心である

全国様々な木をフジサク工業地帯に集めそこで加工をし、建築などに役立てている

木材の加工だから店もあり木の食器、スプーン、フォーク、インテリア…

どの木の加工品は日持ちが良く丈夫で壊れにくい。人気のあるグッズだ

轢沙子「さて…ちょっと工場をふらっとしてみますか」

轢沙子は工場周りを一周しようとしていた

ちょうど木造製品を作る一部の工場に行く。すると見学ルートという道があった

轢沙子「見学ルート?これ勝手に通っていいのかしら?」

けど大丈夫そうだ。轢沙子は見学ルートへと足を踏み入れる。平日の昼だからか人が轢沙子以外いなかった

見学ルートがちょうど中間地点まで行くと工場の作業現場を見た

轢沙子「うわー…すごい勢いで木材が加工されてるわ…」

とにかく音がすごい。シュルシュル!とかガガガ!とか色々な音がしている

こんな加工してる音をずっと聞いてると耳と頭がおかしくなりそうだ

轢沙子「加工する機械に人がずっと作業してるわ。あんなとこ近いとこにいたらどうにかなっちゃいそうね」

けど多少は防音対策はしてるんだろう。そうでなければうるさい音である

轢沙子「だいたいわかったわ…さ、次のとこに行きますか」

轢沙子は見学ルートから離れた

だいたい工場をぐるっと一周して心も落ち着き工場近くの公園へと向かいベンチに座った

轢沙子「いやー、ああやって働いてるのがいるのね…また工場あるけど一日じゃ絶対回りきれないわね」

座ってるとふと樹木に止まってる小鳥を見る。ピーピー鳴いてて可愛いものだ

轢沙子「…私もいつか、夢の内容に左右されずに生きていける日が来るのかしら」

そう思ったら突然大きい声が聞こえた

?「ちょっと!!あなた!!」

轢沙子は突然の声にびっくりする。その声のほうに振り向いた

そこには轢沙子以下の身長で褐色。青い髪、青い瞳をした女性が突っ立ってた

顔は険しい表情をしてる。何かしたのだろうか?

?「あなた!!そこで何してるの!!平日だからって働いてないなんて人としてどうかと思うわ!!

もっと…もっと妖魔としての自覚を持ちなさい!!」

…?彼女は突然何を言ってるだろうか?そもそも自分は休暇である。あと種族違う

轢沙子「あ、あのー。私、だいたい今日は休暇だしいつもは働いてるわよ?あと、私妖魔じゃなくて妖怪」

そう言うと彼女ははっとしてた

?「え!?し、失礼しました!!てっきり妖魔かと思って説教してたわ…ははは…」

彼女は笑顔でごまかそうとしてた。笑顔でごまかそうとしていいもんじゃない

轢沙子「う、うーん。何が言いたかったの?」

とりあえず轢沙子は話しかける

?「ごめんなさい!…実はこの辺で仕事に行ってない妖魔がいるんじゃないかと思って探したの!!

公園に行ってみてあなたがいたからもしかしたらサボり妖魔じゃないかって…

そしたら間違ってたわ!!ごめんなさい!!」

お辞儀して謝罪する。ところで彼女、声がバカでかい

轢沙子「妖魔?あなた一体なんなの?」

そう言うと顔を上げ、答える

?「私、妖魔推奨委員会代表安藤ヌクギと言います。妖魔をもっと働いてほしいと思い活動してるの。

もちろん、種族は妖魔よ。シダレカにも結構働いてない妖魔っているからね」

轢沙子「妖魔推奨委員会…そう言えば妖魔と言うとカイがいたわね」

ヌクギ「あ!カイちゃん!?ねえ、あなたカイちゃんの知り合い!?」

轢沙子「え?ええ。友人よ」

ヌクギ「あの子、働いてますか!?」

轢沙子「いえ…そんな情報聞いてないわね…」

ヌクギ「やっぱりそうね!!全然手紙よこさないからどうしてると思ったけど!!

直接また私が行ってまた説教しないと!!」

轢沙子「あ、あのちょっと声のボリューム下げてくれない?うるさすぎるわ…」

はっきり言って工場の加工の機械並かそれ以上にうるさすぎる

それにあまりにうるさすぎて樹木に止まってる小鳥が逃げてた

ヌクギ「はっ…!すいません…ついつい興奮しちゃって…」

ヌクギはちょっと冷静になる。ヌクギが轢沙子の隣に座り、話す

ヌクギ「私、妖魔推奨委員会の代表になって、あちこちの国に行って妖魔に話しかけてるのよ

もちろん、講演とかしたことあるわ。少しずつだけど働く妖魔が増えていったの。

でもね、まだ少ないの。働いてない妖魔はまだたくさんいるわ」

轢沙子「そうね…妖魔ってその場の支配をすれば何もやらなくともエネルギーを吸収できるって聞いたわ」

ヌクギ「そうなんです。だから、私は妖魔という本質から離れて、色々と活動してるの」

轢沙子「あなたいい方じゃない。私なんか働かないと駄目だしね」

ヌクギ「働く妖魔が増えればいいなって。思ってるのよ」

ヌクギはそういうとため息をつく。ヌクギの言ってることはある意味正しいかもしれない

ヌクギ「ごめんなさい、のんびりとしてたとこを私のせいで変にしてしまって…」

轢沙子「最初は驚いたけど今は平気よ。ヌクギはこの後どうするの?」

ヌクギ「この場所にはサボってる妖魔はいないから別の場所に移動するわ」

轢沙子「サボり妖魔を説教しに?」

ヌクギ「だいたいそんな感じです。では、そろそろ失礼します」

ヌクギが立ち上がり、歩こうとする。そして轢沙子のほうへ振り向いた

ヌクギ「休日、楽しんでくださいね!!」

またバカでかい声で発言し、走って去っていった

轢沙子「…嵐のように帰っていったわ…なんだったの…」

委員会代表は別にいいがバカでかい声はなんとかならないだろうか…


結局その後轢沙子は途中で飲食店を見つけそこで食べてフジサク工業地帯を去った

自分の家の最寄り駅を付いたころにはすでに夕方に近い時間になっていた

轢沙子「あのヌクギ…カイに用事があったらしいわね…由美子の店に行ってみますか」

早速轢沙子は由美子の店に行った。そこに行けば高確率でカイに会えるだろう

由美子の店に着いた。駄菓子屋さんなのだがそこは相変わらず子供で溢れかえってた

由美子は当然いたがやはりカイもいた。カイは子供と遊んでいる

轢沙子「おーい由美子ー。私よー」

由美子「ん?なんだ轢沙子か。どうした?駄菓子でも買いに来たか?」

カイ「あ!轢沙子やっふー!」

轢沙子「ちょっとカイに用事あるけどいいかしら?」

由美子「カイにか?いいぞ」

カイ「カイに?何かしら?」

轢沙子「カイ、今日ね、ヌクギさん会って…」

カイ「!! ヌクギさんに!?いけない!ヌクギさんどうしてた!?」

カイは子供と遊んでたが遊ぶ手を止めた

轢沙子「今日フジサク工業地帯に行ってヌクギさんに会ったんだけど…

ヌクギさん、カイに対してめちゃ怒ってたわよ。今度会いに行くとか言ってたわ」

カイはそのことを聞くとかなりつらそうな顔をした

カイ「あっちゃー…やっぱりそうよね…だってカイ、全く手紙送ってないもの…

ヌクギさん今度会いに行くのね。いけないわね…」

会計を済ませたのか由美子が近寄る

由美子「だいたいカイは間違ってアタシのとこに手紙出してるじゃないか。普通間違えるか?送り主の住所を」

カイ「そうよね…まずいことになったわー…」

いつも元気なカイがこの時はとても落ち込んでるように見えた

カイ「あ!そうだメールしておこ!あの人に怒鳴られるの凄い苦手なのよ~!」

由美子「いや、その前に手紙を…」

カイ「手紙じゃ遅いわ!」

轢沙子はなんだメルアド知ってるならそれでいいじゃないか…とは思った

由美子「…で、どうなった?」

カイの携帯電話にメールが届き、2人に言う

カイ「ごめん由美子、轢沙子!その他子供たち!!カイは帰るわ!!」

由美子「え?あ、ちょっと待てよカイ!」

カイが猛スピードで走り去っていった

轢沙子「やっぱり伝えなかったほうがよかったかしらね…」

由美子「いや、大丈夫だ。何れにせよ怒られる。返信メールの内容がだいたい想像付く」

轢沙子「妖魔って大変な種族ね…」

由美子「亡霊のほうが気楽ってな」

すでにいないカイを考えながら2人は会話した


夜。轢沙子は別に買う気はなかったが駄菓子を買って夜食にと食べてた

轢沙子「あのヌクギって人…いまごろカイを説教してるのかしら…

まだあの大声は頭に響いてる感じするわね。ほんとうるさかったわ

さて、明日の準備しましょう。明日は元気な姿を見せないと」

轢沙子は次の日の準備をして寝ることにした


シダレカの夜は今日は涼しめ

ちょっと曇ってきたから雨が降りそうだ

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