第4話春の国の話

人見轢沙子は夢を見ていた。そう、巫女の出る夢

「轢沙子~。そろそろ私たちを気づいていいんじゃないか?」

轢沙子「え?う、うーん…」

轢沙子もだいぶ慣れてきたのか前みたく不安だったりおかしいと思ったりはしなくなった

だが、それでもまだよくわからない。こんなはっきりとした夢は見たことない

「ふっ、そんな変わらない轢沙子も私は慣れているがな」

轢沙子「変わらない私?」

「だって轢沙子さん、ずっと仲良しだったじゃないですか」

「それで、轢沙子はいつも肉ばっかり食ってたよな!」

轢沙子「まあ確かに肉好きだけど貴女達がよくわかってないわ」

「…相変わらずおもしろいこと言うのね。轢沙子らしいわ」

巫女たちはまた笑っていた。それは軽蔑でもなく仲がよかったのだから笑っているのだろう

轢沙子「ねえ?名前教えて?それじゃあわからないわよ」

「またか?もう一度言うぞ。私は$%#"T%っていうんだ」

また聞こえなかった。なぜ名前ははっきり聞こえない?

轢沙子「…なんで聞こえないの?」

「とりあえず、また私たちのところへ行きましょう。待ってますよ」

轢沙子「私たちのところって?待って…!」

巫女が遠のいていく…


ジリリりり!!

朝。またけたたましい目覚まし時計が鳴った。轢沙子は止める

轢沙子「…」

今回の夢ははっきり覚えてる。あの巫女たちと仲良しだったと。そして轢沙子の好物も知ってた

轢沙子「…不思議、あの子たち知らないのに何か懐かしい気分になる

そして今でも胸がドキドキして鼓動がうるさいわ…」

しかし、轢沙子は冷静になる。なんで夢ごときにこんな考えなくてはいけないんだ?

夢をよく見るというのは全く寝れてない証拠。体か精神が疲労しているのでは?

轢沙子「…とにかく朝ごはん食べて出勤しないと」

轢沙子は準備をする


眩しい朝日を見ながら轢沙子は駅へと向かう

夢に慣れてるせいかだるい気持ちはなくなった。ただ、謎が残る夢だった

轢沙子「いつまでこの夢見てたらそろそろ私精神科入院とかありうるんじゃ…」

そんな入院という心配事を考えながら轢沙子は歩いていく。すると

カイ「あ!轢沙子ー!」

轢沙子「あら?カイじゃない!朝から早く珍しいわね?」

いつの間にかカイが後ろから声をかけてた

カイ「カイね、リリの家にいって海産物届けてたのよ」

轢沙子「捕れたてを?いいわねそれ」

カイ「あ、よかったら轢沙子もあげようかしら?」

轢沙子「これから仕事だから別にいいよ」

カイ「仕事だったのね。じゃあ夜近くになったら届けてあげるわ」

轢沙子「いいの?じゃあお願いするわ」

どうやらカイは夜に轢沙子の家の前で置く気らしい

そんなことしたら盗難されそうな気がするが大丈夫か

轢沙子「あ、そろそろ行かないと」

カイ「じゃあ夜にね!あ、タイミング合えば携帯電話でメール入れていいからねー」

轢沙子「ええ、わかったわ」

轢沙子は忘れずにとカイにメールを送ることにした


今日も満員電車に乗られて行く

轢沙子「この国に女性専用車両とかないのかしら…」

あったらいいがそれはない。男女種族関係なく満員電車は一緒である

轢沙子「とりあえずちょっと痛いわ…胸も圧迫しそうよ」

轢沙子の胸はでかいためなんか変に興奮しそうな人間もいそうで不安

轢沙子「…もしも胸が小さくなったらこの鉄道会社に訴えようかしらね」

ただそんなことはないため仕方なく満員電車に乗られるのであった


会社に着き、朝礼が終わったら轢沙子は早速自分のデスクに向かう

そしたらエルフの人が近寄った

エルフ「轢沙子さんおはよ!」

轢沙子「ええおはよう」

エルフの人はまた轢沙子の顔を見ている

エルフ「…もしかしてまた夢見ちゃった?」

轢沙子「相変わらずよ」

エルフ「それ一体なんだろうねえ?私も夢見るけどそんな覚えてないから…」

轢沙子「恐らくちょっと疲れてるだけかもしれないわ」

エルフ「疲れてるか~…。休暇でもとってゆっくりしたら?」

轢沙子「その考えもあるわね。まあそこまで深刻な悩みじゃないからほっといてるわ」

エルフ「けどちょっと心配になってきたわ。カウンセラーに聞いたら?」

轢沙子「大丈夫よ。昼になればもう忘れてるから」

エルフ「うーん。そういうならこれ以上言わないけど…無理しないでね?」

轢沙子「ええ、ありがとう」

そう言うとエルフの人は去っていった。無理はするな。そう言われるが実際ちょっと悩んでいる

ただ、深刻な悩みでもないため無視する方針にする。心配かけてはいけないから

轢沙子「私は…一体なんなのかしら…。おっと、そろそろ仕事しないと」


昼過ぎ、轢沙子はようやく昼ごはんになった。今日はエルフの人と一緒だ

エルフ「昼ごはん何食べる?私ビーフシチュー!」

轢沙子「私は肉多めの弁当よ」

エルフ「相変わらず轢沙子さん肉食系女子だねえ!そこまで肉食べれないよ!」

轢沙子「あはは。特に好きなのローストビーフなのよ」

エルフ「わ~ますます肉食系女子!そりゃ昇進できそうだよ!」

轢沙子「なんかその話どうなってんのかわかんないけどね…」

二人は食堂で買ったそれぞれの食事を持ち椅子に座る

ここの食堂は毎日人気でいつも昼過ぎから賑わう食堂だ

エルフ「ここの食堂いつも美味しい食事作るから毎日飽きないわ~」

轢沙子「ほんとよね。変に外食するよりもここがいいわ」

二人は美味しく食事してた

ふと、テレビがちょうど付いてたので二人は見てた。番組の内容としては遺跡の話だった

轢沙子「…ん?アマリリスの遺跡…前やってたわね。続きかしら?」

エルフ「前に土偶みたいなのが出て盛り上がってたね?」

轢沙子はテレビを見る。

テレビの映像から壁画で一人の女性が天を仰ぐような映像が流れた

そしてそれを囲うように女性のようなものがかかれてた

轢沙子「………………!!??」

轢沙子は突然衝撃のような感覚に襲われた。そして鼓動も早くなる

一人の女性。囲う女性。そしてあの夢

一気に何か走馬灯のように記憶が流れた

轢沙子は一点を見るようにその映像を見てた

エルフ「…けどコメンテーターの話もあんまり理解できないねー

なんだか笑っちゃうね!って轢沙子さん?」

轢沙子はまだテレビを見てた。この感覚、一体なんだろう?

エルフ「ねえ、轢沙子さん。轢沙子さん!」

轢沙子「は、はぁ…はぁ…私は…誰…なの…!?」

何か胸が苦しい。ただの映像なのに。ただの壁画なのに

そして自分の存在が理解できなかった。頭がパンクする

エルフ「た、大変轢沙子さんが!救急車呼ぶ!?」

その言葉を聞いて轢沙子はふと我に返る

轢沙子「…いや、ごめん。なんでもないわ…」

轢沙子は少し疲れたかのように喋った

エルフ「…大丈夫?急にどうしたの?」

轢沙子「何もないわ…ちょっと化粧室に行くわ」

轢沙子はすっと立ち速歩きで化粧室へ向かった

エルフ「…轢沙子さん…」


化粧室の鏡の前…自分は一体何を考えてたんだろう?

轢沙子「はぁ…はぁ…一体…なんなの…」

テレビの映像を見ただけでこんな感じである

轢沙子「私…そのとき…あの壁画の女性を見て…うぅ…!」

またおもいだした。そう、夢の話。轢沙子はまた胸が苦しくなった

さっき見た壁画と夢のことと合わせてまた思い出した

『そろそろ気づいていいんじゃないか?』

『ずっと仲良しじゃないですか』

『変わらない轢沙子も慣れているがな』

『轢沙子らしいわ』

俗に言うフラッシュバック?いや、精神的な症状ではない

何かあるんだ。何かが自分を苦しめてるんだ。女性、夢、壁画…

轢沙子「はぁ…はぁ…もう、なんなの…」

しかしちょっとしたら落ち着いた。鼓動も早くない。頭がスッキリしてきた

轢沙子「はぁ、あの子に心配しちゃったから後で謝っておこう…」

『私は誰?』

よく見ると自分の顔が最悪だ。轢沙子は化粧室から出た


轢沙子は仕事に戻ると上司から呼ばれた

轢沙子「はい…なんでしょう」

上司「轢沙子くん…君…大丈夫?さっき聞いたけど苦しそうな顔してたじゃないか?」

轢沙子「大丈夫です。そこまで仕事には支障をきたしてません…」

上司「いやいや、何かの風邪か?もう今日帰っていいから。無理をするな?」

轢沙子「いえ…その…」

ここまで心配されたらさすがに帰るしかないか。と思った

轢沙子「わかりました…早退…しますね」

上司「うむ。そうしておけ」

轢沙子は上司の言葉に甘え、早退することになった

早退をしようとするとエルフの人が近寄った

エルフ「…轢沙子さん」

轢沙子「ごめんね。今日はなんか駄目みたい。明日になったら元気出すから」

エルフ「…うん。明日、また会おうね」

轢沙子「ええ。じゃあね」

轢沙子は会社を去った。去ったあと、上司とエルフの人が話してた

上司「…あんなに酷い顔をした轢沙子くんを見たことない」

エルフ「テレビを見て、苦しい表情をしてました」

上司「テレビを見て?何かトラウマなシーンでもあったのか?」

エルフ「いえ全くそんなシーンでもありませんでした。よくわからないです」

上司「うむ…何かトラウマでもなく、精神的に来るものだったのか…?」

エルフ「それも…わかりません…」


帰る電車の中、轢沙子はずっと考えてた

なぜ壁画を見ただけで頭に衝撃が来たのか

なぜ一人の女性の絵で胸が苦しくなったのか

…なぜ、夢が思い出したのか

全く理解ができなかった。やはり精神的に来てるんじゃないかと

轢沙子「熱でもあるのかしら…いや、そんなことはない…」

乗ってる電車の中で何度も頭に手を触ったりしてた。熱の感覚はない

轢沙子「…とりあえず今日はさっさと寝るしかないわね」

最寄り駅に着いたときにはさっきの症状は無くなってた


自宅へ帰る道、轢沙子はノロノロと歩いてた

もしかしたらまたさっきのことを考えてしまいそうだ。そんな不安もある

そこでふと道で夫婦がいた。リリと…旦那である

轢沙子「あら?リリと旦那じゃない?」

リリ「あらぁ!轢沙子じゃないのぉ!」

旦那「やあ轢沙子。久しぶりだな」

リリはともかく旦那がもう人間の形ではなく想像するエイリアン。という形である

元々リリの旦那はエイリアンでありよくわからないがリリが気に入ったらしい

まあ生まれてきた子がネネという人間の形をしたエイリアンなので安心してる

ただ…エイリアンがここをのんびり歩いていいものか…

こんなの見たら他の種族の正気度が減りそうである。そこが心配だ

リリは192センチだが旦那は2メートル超えだ。でかい夫婦である

夫婦でこんなにでかいのだからネネは将来どのぐらいの大きさになるのか…

リリ「どうしたのぉ?仕事はもう終わったのぉ?」

轢沙子「風邪っぽい症状でね。早退したのよ」

さすがに親しい友人でもさっきの症状を伝えることはできなかった

旦那「風邪か…俺は風邪とかならないがな。まだ小さいネネのほうが心配だ」

リリ「何を言ってるのよぉ。ネネは至って健康よぉ!」

旦那「はは、それもそうだ。しかし珍しい、妖怪である轢沙子が風邪とはな?」

エイリアンの旦那はまじまじと轢沙子を見た

轢沙子「ちょっと疲れてるだけよ。そもそもあんたこの辺うろついて大丈夫なの?」

その言葉を聞いて旦那は答える

旦那「え?いや、大丈夫!俺のことを変な目で見たのはいるが決して大事にはなってない!うん!」

リリ「私と一緒にスーパーに寄ったけど大丈夫よぉ!」

リリとネネならともかく旦那はエイリアンの形してるから余計気になる。他の種族の子供が見たらどうなるのか…

轢沙子「ふうん…。でもさっきカイから海産物届いたんじゃないの?」

リリ「それもそうだしプラスアルファで買い物行ってきたのよぉ!」

旦那「おう、今日は魚と肉の豪華な食事だな!」

轢沙子「だったらさっさと帰ったらいいじゃない?」

リリ「あはは!そうねぇ。帰ったらすぐに夕飯の支度よぉ!」

リリは元々料理が上手である。一応…

轢沙子「ま、とりあえずラブラブで良かったわ。じゃあね」

旦那「ああ。じゃあなまた会おう」

リリ「バイバーイ!」

轢沙子は夫婦と別れた


夜。轢沙子は夕飯を食べたらベッドで仰向けになってた

カイから海産物が届いてたのでそれを食べてた。たまには魚料理も悪くない

だが、今日はネトゲにログインできない。プレイに支障をきたしそうだ

轢沙子「また…あの夢を見るのかしら…わからないわ…」

もう今日はさっさと寝るに限る。轢沙子は電気を消して寝ようとした

轢沙子「こんな…困ることならもうあの夢は見たくないわ…」

不安になりつつも寝るこにした


『私は、いったい、誰なんだろう?』

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