第2話冬の国の話

冬の国ユキノウエ。夜のクリスタルウィンターシティ

ここはユキノウエの首都。シダレカのような都会ではないが一応ビル群がある程度である

クリスタルウィンターシティのとあるビルで河合冬美はアルバイトをしてた

冬美「はーいおまたせしました!オムライスでーす!」

いつもの冬美とは違って接客スマイルで注文を持ってきた

客「ありがとうな!なあお嬢ちゃん結構美人だねえ」

冬美「ありがとうございます!」

客「接客態度もいいしなんだか推しの店員さんになりそうだよ!」

冬美「ありがとうございます~!では、次の仕事あるので~!」

なぜこのメイド喫茶のようなところで働いてるのかというと

ここの時給がかなりあるからだ。金目的の冬美にとってはちょうどいい仕事場だった

男がすり寄ってくるのでちょっと怖いが金のために営業スマイルをしてる

冬美はさっさと客から立ち去った

冬美(男に気に入られても全然うれしくないのよ…!)

冬美はどちらかというと女性に好かれたほうが良いと思っている

21時。閉店時間になり、冬美の仕事もそろそろ終わりである

店長「冬美ちゃん、今日はお疲れ様。拭き掃除したら着替えて帰っていいから

…それと、タイムカードはしっかり押しといてね」

冬美「はい、今日もお疲れ様でした」

冬美はテーブルの拭き掃除をして終わった後更衣室に向かい着替える

?「あ、冬美ちゃんお疲れ様!」

ふと気がつくと隣にいたのは同僚の同じアルバイトの子だった

種族は悪魔。悪魔は寒いのが苦手だが珍しくユキノウエにいる

冬美「ああお疲れ様。…はあ。今日も男が擦り寄ってきて気持ち悪かったわ…」

悪魔の子「あははー。ああいうときは適当に相槌うって去っておけばいいんだよ!」

冬美「適当に流してみるのもひとつの手ね。勉強になるわ」

悪魔の子「アタシも変な客がいて大変だからなあ…。何目的なんだろね?」

冬美「女性に好かれたほうがいいわ。男は嫌なのよ」

悪魔の子「女性店員さん多いからね。しかたないよ。もちろん女性客に好かれたほうがいいけど」

冬美「そうね。しかたない部分はあるわね」

冬美と悪魔の子は着替えてタイムカードを押し外へ出た

悪魔の子「うー!今日も寒い!じゃ、冬美さんまた今度!」

冬美「ええ、お疲れ様」

悪魔の子は去っていった。そして冬美はぼそっとつぶやく

冬美「…あの子、なんで胸がでかいのかしら」

そう、悪魔の子はバインであった


朝。今日もクリスタルウィンター大学はいつもどおりの人で賑わっていた

同じ種族で集まり登校学生。違う種族で集まり登校する学生。しまいにはボッチもいる

冬美は大学に行ってから友達に会うため基本、大学まで行くのは一人だ

冬美「昨日の疲れが出てるけど別に大したことないから普通に出れるわね」

?「冬美さん」

後ろから声をかけられた。振り返ると

冬美「…アルエル!」

アルエルだった。ちょうどアルエルも大学へ登校するところであった

アルエル「おはようございます冬美さん。今日も元気ですね」

冬美「おはようアルエル。…いや、ちょっと疲れてるんだけどね」

アルエル「疲れてる?何かあったのですか?」

冬美「いや、単純に昨日閉店時間までのアルバイトだったからね」

アルエル「アルバイトですか!いいですね…私はアルバイトできないんですよ…」

冬美「もしかしてあなたのお母さんに止められてる?」

大学生ならアルバイトして当然だがまさか母に止められてるのか?

アルエル「いえ…自信がないというか…私おっちょこちょいなので何かトラブルになりそうで…」

なんだ。そんな理由か。そんな理由なら自分だってそうだった

冬美「最初は誰だって自信がないわ。私だってそう。慣れよ。仕事なんて習うより慣れろ。だからね」

アルエル「なるほど…習うより慣れろですか。なら、私も自信持ってアルバイト応募してみます」

冬美「そうよ。その意気込みよ」

そんな会話をしつつ大学の中に入っていった

アルエル「では、今日は違う講義室なのでここでお別れです」

冬美「ええ。じゃあねアルエル」

アルエルは去った


昼。冬美は頭を抱えていた

冬美「はぁ~。なんでこんなに宿題のレポート出してんのかしらあの教授」

とある講義で最近授業態度がたるんでるからと言って教授がレポートを大量に出していた

しかもこれを出さないと単位の取得も危うい状態だった

冬美は真面目なのでレポートはしっかり提出してるがこんなに大量のレポートを出されたのは初めてだった

冬美「うーん…。今日はちょっとサークル活動は無理かしらね…」

今日は冬美の友人のギン子、ミサゲ、コーク、そしてアルエルはそれぞれ別の講義に行ってしまいバラバラだった

そもそも4人とも別々の学科であり必修科目があるとまず出ないとだめなため昼では会えない

冬美「今日はボッチね…。次の講義まで時間あるから図書館に行ってレポート作成でもしますか…」

図書館なんてめったに行かないが渋々行くしかなかった


クリスタルウィンター大学に併設された図書館…静かな雰囲気で一流大学なのでその本はたくさんある

冬美「レポート作成に便利な本あるかしら…あったら参考にしようっと」

席の場所取りをして早速本を探した

とにかく大きい図書館なので探すのも少し時間がかかる。吹き抜けで2階建てなので

目的の本を探すのにも大変だ。古い図書館なので検索機というのも無いのが欠点

冬美はゆっくり探してた

ふと、レポートとは全然関係ないとある本を見つける。タイトルは「天魔戦争の真実」

冬美「天魔戦争…?高校のころ学んだけどこんな本があるなんてね…?」

ちょっと気になったのでその本を手にとろうとしたら

アルエル「天魔戦争は、私たち天使にとってはとても罪のある戦争なんですよ」

突然アルエルがいた

冬美「アルエル…!?今日は二回目ね」

アルエル「はい。今日は図書館で本を探してたんですよ

そして終わったのでふらっと見回ってたらあなたがいました」

冬美「そうなんだ…、で、その天魔戦争がどうしたって?」

アルエル「…ここは図書館です。ちょっと外に出てお話しましょう」

冬美「ええ。わかったわ」

さすがに図書館なのでここで喋ると注意されるので2人は外に出た


外に出て大学内のベンチ。もちろん冬美はレポートも持って外に行く

アルエル「…そうですか。大量のレポート大変ですね。私もレポートをやってました」

冬美「あなたも大量のレポートを?」

アルエル「天使学科はそういうの多いです。まあ慣れてしまいましたけどね」

冬美「天使学科ってそういう…。悪魔学科でも一緒なのかしら…」

アルエル「それはどうでしょうね。…さて、本題に入りますがよろしいですか?」

冬美「ええ、いいわよ」

アルエルは今まで会った中で真剣な顔をした

アルエル「今から1000年前に始まった天魔戦争…天使と悪魔とその他の種族が戦った戦争とよばれます

天使は悪魔との決着をつけるため戦争を勃発。悪魔もそれに応じて天使と戦いました

戦争を続けるうちに次第に他の種族も参加。天使側には人間と妖怪などが、悪魔側には鬼や亡霊など…

しかし、戦争は長引いてどんどん戦死が増える一方でした」

冬美「そこまで詳しくは教えてもらえなかったわね」

アルエル「さて。冬美さん。天魔戦争の勝利者はどちらかわかりますか?」

冬美「ええ。天使でしょ?」

アルエル「そのとおりです。では…どのようにして勝ったと思われますか?」

冬美「どのようにって…そこまで教えてもらえなかったし調べてないわ」

アルエル「…そうでしょうね。確かに教えてもらえません」

アルエルは更に神妙な気持ちで語る

アルエル「天使はその時の司令官ウリエルの命令のもと、神の力を使い世界の半分の大陸を水没させました」

冬美「す、水没…!?」

冬美は驚愕した

アルエル「しかも、これまで味方についてくれた種族ですら用済みとなったのか味方の陣地、大陸ですら

水没させました。当然、敵である悪魔側の陣地もほぼ全て水没。その時の死者は数十万、いえ数百万とも言われています

水没のせいでほぼ絶滅してしまった種族がいました。獣人です。しかしハーフアニマルがいるのですから

完全には絶滅はしてないですからね。しかし、罪のない種族ですら水没で大半は死亡したと言われています

…これに参ってしまったのか残った悪魔側はついに投降。これで天魔戦争は終わったと言われています」

冬美「ひどい…天使は悪魔より外道なの!?」

冬美は言った後はっとしてしまった

冬美「あ…ごめん…種族差別しちゃって…」

アルエル「いえ、いいんですよ。天魔戦争の本当の話を聞いた人はそう思っている種族は少なからずいます

天魔戦争が終わり、水没した大陸はもう一度浮上して、今の大陸になりました

けど、遅いですよね。みんな水死してますし今更元に戻しても水死した人たちは戻りません

天使は怒らせるととんでもないことをしでかす。実際現在の悪魔でもそう思ってる人がいます

…これが、天魔戦争です。ごめんなさい。冬美さんに不愉快なことを言ってしまって」

アルエルは話を終えるとため息をついた

冬美「アルエル…」

アルエル「私たちはこの天魔戦争のことは罪に思います。私だって思います。ひどいですよね

一応長生きのお母様は天魔戦争には参加してませんが、もっと先祖から伝わりました

そして私にも…この話を聞いて、私は、天使なのに天使のことが怖くなりました」

冬美「アルエル…大丈夫よ。この話は驚いたけど、アルエルには罪がないじゃない」

アルエル「冬美さん…それでも、天使である私を信じてくれますか?」

冬美「当然よ。あの時慰めてくれたことを忘れてないわ」

アルエル「冬美さん。ありがとうございます。やはり、あなたとは運命だったんですね」

冬美「アルエル。決して敵なんて思わないから。もう、天魔戦争は忘れましょう」

冬美は笑顔でアルエルに言う

アルエル「はい!…ところでレポート作成大丈夫ですか?」

冬美は思い出した

冬美「あ!しまったー…」

アルエルは申し訳無さそうに謝る

アルエル「ごめんなさい!ついつい話が長くなってしまいました…」

冬美「いやいやいいのよ。レポートなんかすぐに片付けてやるわ」

冬美は元気そうにガッツポーズをした

アルエル「ふふ…冬美さんは元気でこちらも元気になります」

冬美「ねえ、アルエルって携帯電話持ってる?」

アルエル「携帯電話ですか?持ってますよ?」

冬美「なら連絡先交換しない?」

アルエル「ええ。いいですよ」

冬美「ありがとう」

冬美とアルエルは早速連絡先交換をする

冬美「後でこっちからメールしていい?」

アルエル「いつでもどうぞ。待ってますね」

連絡先を交換した2人

そして真実を知った昼過ぎ


結局今日はアルエルぐらいしか会えず自宅へと戻った

今日はサークル活動は冬美が大量の宿題のため中止…ということになった

冬美「…あの天魔戦争は…天使が怒らせると怖いってことがわかったわね

もしも天魔戦争のときに私がいたら100%死んでたのね…

怖いけど、今の天使は関係ないし、怖くなる必要はないと思うわ」

そう思うと冬美はレポート作成に取り掛かった。深夜までかかるかもしれない


今日のユキノウエの天候は晴れ。空が綺麗な夜だった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る