LINK36 アンドロイドの想い

俺は時系列に整理をしてみた。


2022 晴海 科学の日アンドロイド博2022の写真 —西伊豆・五平荘に斎木、鷲田、城戸3人宿泊 —E-LAIイーライ研究室の生態AI研究が本格的に開始


2023 西伊豆・五平荘に斎木、城戸2人宿泊、この時『恋人岬』でプロポーズ(大鳳寺の晴広せいだい和尚 談)


2025 奈良井宿ならいじゅく・大鳳寺に2人で訪れ、城戸真莉愛がマリア像に祈る。もしかしたら飛騨・高山の飛騨国分寺にも訪問?


2026 盲目の真心が生まれる。—城戸真莉愛の死


2027 E-LAI研究室がNeoYURIに移設 —警視庁テロ・スパイ対策特別チーム・矢島特別顧問


2030 赤根月人(9歳)の偽装臨床実験 —スパイ矢島逮捕と生態AIを狙う犯罪組織をほぼ壊滅 —真心(4歳)に生態AIを寄生させ、斎木博士と真心が失踪(真心は五暁寺ごぎょうでらへ軟禁)


2032 犯罪組織の残党による報復爆破テロにより対テロチーム壊滅 —中尾重体、赤根隊長死亡 —赤根月人が父の葬儀中に声を取り戻す(生態AIが奇跡的に適正する。)


2041~2042

赤根月人の夢に真心の思念が入り込む。頭痛に苦しむ。


2042

斎木博士の足跡を追い、今に至る。


何か見落としはないだろうか。

いや、何か違和感を感じていた。

それは何だ。


真心の母親を巡る斎木博士と鷲田博士

NeoYURIへの研究室移設での慎重派スタッフの削減


削減で鷲田博士と城戸博士のみになった。


....ん? 鷲田博士と城戸博士!?


そんな馬鹿な!


「中尾さん、これおかしくないですか?」

「..... 」


「中尾さん! 何か隠してないですか? だって城戸博士は移設前に真心を生んで間もなく亡くなってるじゃないですか!」


「さぁな....」

「中尾さん! 隠さないで言ってくださいよ! 俺たちの事なんだ! 俺たちがリスタートするためには必要なんだ」


中尾さんは真心が寝ているのを確認すると声を少しばかり小さくしながら話し始めた。


「おまえ、E-LAIイーライ研究室で見つけた写真が何の写真かは知ってるだろう?」

「はい。写真には『晴海アンドロイド博2022』と書いてありました」


「そうだ。E-LAIイーライは世界屈指のアンドロイド開発チームだったんだ。そしてそこで開発されたAIはどの国のAIよりも自由な発想と創造性を持ち、その考えの柔軟性は素晴らしいものだった。彼らのその成果を医療技術に発展させたのが生態AIによる組織再生医療なんだ」

「アンドロイド開発チーム」


「人間の脳の素晴らしさはその計算力や記憶量ではない。その創造性にある。これは斎木博士の受け売りだがな。そしてどんなにAIを発展させても人間が違和感を感じてしまうのは、その創造性の差異にあるともいっていた。人間の脳情報をデジタル化して保存することは昔から言われていた。だがそれまではその脳の情報を完璧に再生するためのツールがなかった。月人、このAIが完璧に再生するためのツールとなり得たらどうだ?」


俺は背中に変な汗をかいていた。

それは人間の最もやってはいけない行為のひとつなのではないか。

それをまざまざと聞かされている。


「斎木博士と鷲田博士は亡くなった直後の真莉愛さんの脳の情報をデジタル化し、AIに移し替えたんだ。そして研究室で『マリア』という名のもと生き返らせ生態AIの研究に携わらせていた。ほんの数年で生態AIによる組織再生の成果が跳ね上がったのは、そういう事なんだ。盲目の娘のためを思う父親だけの力じゃない。真莉愛さんの想いがそこにあったんだ」


「じ、じゃ、そのアンドロイドはどこに行ったんですか?」


「そうだ。あの時、失踪したのは斎木博士、斎木真子そしてマリアの3人なんだ」


何てことだ。

まったく何てことだ。


「 ..お母さん....お母さんはどこに行ったの?」

涙を流しながら、真心は俺を見つめていた。

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