LINK30 封筒の中身
白川郷を出発ししばらくして真心が目を覚ました。
「『
「ああ。だけど、今回は何か違った。俺は彼女と話をした」
「何て言っていたの?」
「『俺を見ていた』と『俺たちに気が付いたものがいる』」
俺は最後に燐炎の言葉は伝えなかった。
『どうか、この子を守ってください』
この言葉だけは燐炎とは別の何かだ。
「それと真心が示す場所が『始まりの場所』だと言っていた」
「うん。
ここに来てまた大仏とは斎木博士らしい。
きっとそこに行けば斎木博士の居場所がわかる。
もしくはそこに斎木博士がいるのかもしれない。
俺は今回、山道を選ばなかった。
『俺たちに気が付いたものがいる』のなら、山道での検問は避けた方が良さそうに思えた。
白川郷ICから東海北陸自動車道に入り1時間ほど車を走らせ、考えをまとめると『ぎふ大和PA』にて中尾さんに相談をしてみることにした。
・・・・・・
・・
「なんだ? おまえから相談なんて珍しいな」
「中尾さん、牛久大仏に関して何か知りませんか?」
「牛久大仏ってのは、アレだろ。茨城県の観光名所で、高さは....すごく高い」
「そんなボケを期待してんじゃないんですよ」
「なんだ? おまえが『牛久大仏』について聞くから今わかる限り言ったんだろうが!」
「違いますよ。斎木博士と牛久大仏を結びつけるもの知りませんか?」
「やはり斎木博士を探してたのか。まぁ『城戸真心』を連れていればそうなるよな.... おまえ牛久の隣の市ってわかるか?」
「牛久の隣?」
「牛久のとなりってのは『つくば市』だよ。『つくば市』っていう場所は特別なんだ。国家産業の研究所がたんまりあるんだぜ。牛久っていうと大仏を思い浮かぶが、そんな『つくば市』のすぐ近くの場所『牛久』と斎木博士といったら、もう結び付くものはひとつしかないだろ」
「『生態AI』の研究所!! ....牛久大仏の近くの研究所だね」
「ああ、お前たちの『生態AI』の本格的な研究は東京で行われたが、その|礎《いしずえ
》になったAI研究所は、その辺にあったんだ」
「場所知ってますか?」
「もちろんだ。そこもテロ対警護対象だったからな。だがな、探している場所はきっとそこではないぞ」
「なぜ?」
「『生態AI』の研究所は牛久城跡の近くにあった施設だ。大仏からはかなり距離がある」
「なんだ! くそ!!」
「おまえなぁ、すぐに『くそ』言う癖直した方がいいぞ」
「こんな時に説教かよ」
「まぁ、落ち着け、もしもおまえが牛久のマクドで働いていたとしたら、お前、東京から通おうと思うか?」
「そっか!」
「そうだ。牛久に斎木博士が住んでいたか、もしくは宿泊する場所があった可能性は高い」
「さすが、捜査部部長だね、見直したよ。あと、もう一つ、『モンターニュ エ コリーヌ』って知ってる? 俺もうっすらと聞き覚えはあるんだけど....」
「馬鹿、それはイギリス王室や日本の皇室、そのほか世界各国の王族と言われる連中の物流を一手に担う今や公的機関のひとつといってもいいくらいの超がつく大企業だ」
「え? そんなに凄いの?」
「ああ、だからそこの重役から上の存在は一般には知られていないんだ。誘拐事件でも起こされたらとんでもないことになるからな。それがどうした? お前からそんな名前がでるとは....」
「いや、旅館に泊まった時そんな話題がチラホラでてね....」
そっか..山岡夫妻がそんな人だったとは....これは中尾さんにも秘密にしておこう。
おそらくあの紫のカードはそういう身分をはっきりと明かせない人が持つカードなのかもしれない。
俺は車に戻ると山岡さんに渡された封筒の中身を見てみた。
そこには暗証番号カードと手紙が入っていた。手紙にはこう書かれている。
『月人くん、真心さん、本当にありがとう。私たちは君たちの旅に神のご加護があることを祈っています。どうかご無事で....』
そして手紙の最後には山岡夫妻の本当の名が記してあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます