LINK29 白川郷
重要伝統的建造物群保存地区『白川郷』
この地域も
だが、やはり世界文化遺産にも指定されたこの村には国内外問わずあまりにも多くの観光客が詰め寄りすぎた。
その遺産に名を刻もうとする者、ゴミを捨てたり、何より村の人々の平穏な生活を脅かすほどの観光客の数に、ついに2035年には村への立ち入りには事前の申請が必要となった。
山岡夫妻の入村は既に『旅館ふせふじ』の女将が手配済みだ。
白川郷の合掌造りはその美しいフォルムと心落ち着く
このネソや縄で縛ることにより重い雪にも耐えうる弾力性のある屋根となっている。
かつて
白川郷に着くと集落を一望できる展望台へ向かった。
展望台から観る白川郷はとても素晴らしい。
「素晴らしい眺めですね」
田畑を吹き抜けるさわやかな風が黄金の穂を揺らす。
俺の目を通して見えるのだろう。
隣で真心が柔らかな表情でコクリとうなずいた。
山岡夫妻は手を握り合いながらその集落を見ていた。
「ここはね、私たち夫婦にとって大切な場所なのですよ。私は再出発を心に決めるときには、いつもここに来ていました。幼い長男が先に逝ってしまった時もここから再出発しました」
「そうね。ここは私たち夫婦の始まりの場所ですものね」
「山岡さん、なぜここに連れてきたんですか? あなた方が俺たちを旅に同行させたのは成り行きなんかじゃないですよね? 真心が寺でうずくまった時、聖子さんは『ごめんなさい』って言いましたよね。つまりあなたたちは誰かに俺たちを連れて旅することを強要されたんじゃないですか?」
着いて早々だったが、俺は疑問を直球で投げた。
「....すまないね。その通りだよ。ただ『強要』といった乱暴なものじゃない。私は自分の記憶を見せられた時に声をかけられた。それは女性の声だった。『あなたたちの始まりの地へ連れて行って』そして『始まりの場所』を探すように君たちに伝えてと」
「『始まりの場所』ってどこですか?」
「すまない。そこまではわからなかった。それ以降、彼女の声は聞こえなくなってしまった」
「..月人さん、それって....」
何かを言いかけた真心の瞳から涙が流れていた。
「真心、何で泣いている?」
「わからない。わからないけど涙が止まらない」
すると真心の
『真心の言う通りだな。やはり人の目で見る風景は良いものだ』
「
『「企み」などではない。お前を見ていたのだ。そして、もうわかった』
「『わかった』ってなんだ?」
『真心が示す場所へ行け。だが気を付けろ。おまえたちに気が付いたものがいる。 どうか、この子を守ってください....』
「な、なんだ? おまえ!」
真心の瞼が閉じると真心は気を失った。
な、なんだ。
俺たちに気が付いたもの?
それに何だ、最後の言葉は。
その
俺は真心を抱きかかえた。
「山岡さん、すいませんが、俺たちはここで自分たちの旅に戻ります。『始まりの場所』に行ってみます」
「ああ、大丈夫だよ。それより君たちには感謝をしているのです。何でもいい、困ったときには『モンターニュ エ コリーヌ』に電話を。きっと君たちの力になれると思う」
一封の封筒を渡された。
真心を抱きかかえ駐車場に着くとその様子に気づいた中尾が、真心を車へ乗せるのを手伝ってくれた。
「何があった?」
「
「
「とにかく、俺たちは東京へ戻ります。」
わからないことだらけだ。
『燐炎』とはいったい何なのだ......
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます