7日目 蝋燭
彼女の作る料理は、いつも缶詰を炒めただけの変わり映えのない料理で。
彼女のする掃除は、いつも部屋の隅に埃が残っていた。
ただ、外で風に揺れている洗濯物だけはいつ見ても綺麗だった。
猫は忙しなく動く彼女の後ろを
ととと
とついて回る。
寝返りをひとつうつ。
ベッド横にはサイドテーブルがあり、そこには水の入ったグラスが置いてある。
すぐ喉が渇くのだったらと、ここに置いてくれた。
中の水がキラキラと光っていて、それもまた綺麗だった。
綺麗を喉の奥に流し込む。
ひんやりとしていて気持ちいい。
彼女はそれを見ると、新しくグラスの中に注いでまた忙しなく動き始める。
立ち止まっていた猫もまた
ととと
と歩き出す。
気がつけば日は沈み、外に干してあった洗濯物は彼女に畳まれている最中だった。
電気のない家で、唯一蝋燭の光だけが周りを照らしている。
「、、、」
「あ、起きたんだ」
水を飲む。
彼女が注ぐ。
「そんなに喉が乾くの?」
「、、、」
また水を飲む。
また彼女が注ぐ。
猫が背中を伸ばしながらあくびをする。
またグラスに水が注がれる。
「もういい」
「ふーん、そう」
蝋燭の光がゆらゆらと揺れている。
部屋の壁に写っている影もゆらゆらと揺れる。
ぼーっとしばらくその様子を見ていると、ゆらゆらゆらゆら。
どうしてだろうか。
川の向こうを見てみたいと思うようになっていた。
家の近くにできた小さく美しい川。
あの先はどこまで続いているのだろう。
きっと海だ。
海まで続いているに違いない。
そう思うと、今まで重かった身体がなんだか軽くなったようだった。
水を一杯飲む。
「よし、海に行こう」
グラスから水が溢れる。
蝋燭のぼんやりとした光の中で、4つのまんまるな目がこちらを見ているのがわかった。
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