9.かざはな


桜吹雪が舞う。


いっぱいに薄桃色が乱れ、手を伸ばした先を見ることもできない。

視界の隅に、かすかに金色を捉えた。

左肩だけマントがついたジャケット。

声をかけてみるが、反応は無い。

もう一度、今度は名前を呼ぶ。


白布が翻り、花びらを巻き込む。

手袋。

知らない、人だ。


白い縁の眼鏡の奥、表情はわからない。

口元が動いた。

声は聞こえない。

ごめんね、と言われた気がした。



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