殺されそうになった時。

「あー…」


なんだか、お腹が痛い。

あの弁当を食べた時から、ぐるぐると、お腹の中が回っている様な感覚だ。

なんというのだろうか、これは。

具体的な言葉に治すのならば、内臓を、棒を突っ込んでかき回されている様な感じだ。


僕は、授業中でありながらも、席を立つ。


「先生、お腹が痛いので、ッ保健室に行ってきます」


と、一応報告するけど、先生は僕の方を見向きもせずに黒板に字を書いていく。

先生は僕にとっては存在しないものとして扱われているから、仕方がない。

それでも僕はちゃんと伝えたから、お腹を抑えながら保健室へと向かう。

まさか、あのくろの作ってくれた弁当が悪かったのだろうか。

…いや、多分、僕は席を外した。その時に、誰かが僕の料理に何か仕組んだのだろう。

あの時、呼ばれたのに、何もない、なんていう事はない。

きっと。そうに違いない。

それは、許せない事だ。

別に、僕は暴力を振るわれても構わない。

けど、くろが作ってくれた料理を台無しにしたのは、駄目だ。

…そう思っても、結局、誰がこんな事をしたのか、まるで分からない。

だから、結局は、僕は泣き寝入りする事しか出来ない。

とりあえずは、この腹痛を治す事だけに専念しよう。


僕は、そう思って保健室に入る。

そして、保健室で横になって、眠る事にした。

腹痛の薬は、飲まない。僕は、そんなものを飲んでも、体が効かない。

まるで、社会の常識が、まるっきり効かないみたいだ。

僕は、ぐるぐると、お腹が鳴る腹部を擦りながら、痛みでどうにかなってしまった頭で、思考をしていた。

息を整える、僕は、早く眠れる様に努力をした。

そして…僕は、放課後まで眠る事にする。


体の中の毒素が、全て抜け落ちる事を願って…。

そして…眠っている最中に、寝苦しくて、目を覚ます。

僕の顔面には、枕が置かれていた。

その枕は、人の体重が載せられていて、僕は、枕に圧迫されて、息が出来ずに、もがく。


「死ね、しね!!」


そんな人の声が聞こえて来る。

僕は、その枕をどうにかしようとするけど、体格が問題なのか、どうにも枕をどかす事が出来ない。


「ぐ、うっ…ぐううう」


僕の意識は、段々と薄まっていく。

喉奥から、行き場を失った空気が、ゆっくりと二酸化炭素と変わっていく。

僕は、もうじき、死ぬ。

そう思った、けど、急に、力が薄れた。


「ぷはっ!!」


僕は枕をどかして、息をする。

そして、状況を整理する為に周囲を見渡す。

近くの床には、顔面を歪ませた男子生徒がいた。

顔面を歪ませるとは…文字通り、頭部が異形に変形して、絶命していた。

その近くには…なんと、瞳が立っていた。


「真純ぃ」


嬉しそうな表情を浮かべて、彼女は、僕を抱き締める。

何故、彼女がこんな所にいるのだろうか、なんてことは考えない。

ただ、僕は彼女に救われた事に、感謝の言葉を述べるのだった。

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