6

「根東くん、もう我慢しなくて良いんだよ?」


 ラブホテルの一室。そのベッドの上で、僕を囲むようにして陣取る三人の水着の美少女たち。


 一見すればただのハーレム。しかし僕と壬生さんの勝負を考えれば、四面楚歌に等しいこの状況。


 豊満な巨乳のおっぱいを持つフェロモン系の美少女、宗像さん。

 形の良い美乳を持つスレンダーで健康的な体をしている美少女、百崎さん。

 そして正面にいるのは、僕の彼女。黒髪の美少女、壬生さん。


 水着姿の彼女たちと違って僕は服を着ていた。はずだった。


 しかしいつの間にかボタンを外され、シャツを脱がされ、上半身だけ丸裸にされている。


 一体いつの間に?彼女たちはマジシャンか?


「根東くんって、実は体も逞しいよね。細いのに脱ぐと凄いんだ💓」


 —こういう体、好みだよ、と甘い声で囁く宗像さん。


 彼女が僕の体に抱き着けば、その豊満なおっぱいの谷間に僕の腕が挟まれ、幸せな感触に支配されてしまう。


 宗像さんはその綺麗な手で僕の胸板を撫でると、さらに下がってお腹、そして…


 それ以上はまずい!


 僕は宗像さんの手を掴み、それ以上の暴挙を止める。


「宗像さん、それはまずいよ」


「あら?なにがダメなの?本当は喜んでるのに」


 いや、それはもちろん、喜んではいるよ。君みたいな美少女にエッチなことしてもらえるなら、いくらでも喜ぶし、嬉しいよ!でもさ、いくら嬉しいからってやってはいけないラインってのものがあるじゃないですか!


「なんだよ、杏ばっかり相手にして。俺の相手もしてくれよな」


 そう言って僕に抱き着いてくる百崎さん。水着姿という、ほぼ裸も同然の姿なだけに、彼女に抱き着かれるとそのなめらかな肌が僕の上半身と直に接触して、彼女の体温と柔らかさが明確に伝わってくる。はあ、女の子の肌って凄いんだなあ。


「キスがしたいのか、それともまた尻でも触るか?どっちが好みだ?」


 それ、どっちもエッチな奴じゃないですか。


「それとも、次はこっちを触ってみるか?」


 百崎さんは水着の紐に親指をかけ、上下に揺する。そんなことするから、彼女のスライムみたいな綺麗な形をしたおっぱいが水着の中でたわわに振動した。その激しさに、百崎さんのおっぱいが今にもぷるんと零れ落ちそうだった。


「ダメだよ、根東くん」


 黒髪の美少女が僕の顔を掴んで自分の方へ振り向かせる。


「根東くんの彼女は私でしょ?私が一番好きなんだよね?エッチなことなら、私とするべきだよ」


 本当に、驚くほど整った顔をしている美少女だな、君は。


 このハーレムに近い状況に僕の心臓はドクンドクンと早鐘をうって止まらない。血流は大いに乱れ、全身が燃えるように熱くなる。


 正直な話、めちゃくちゃエッチしたい。


 今すぐこの美少女の唇を奪いたい。


 なんなら全員と交わりたい。


 普通の男なら、きっとそうするだろう。


 でも僕は普通ではない。


「壬生さん」


 僕は彼女の腰に手をおいて、話しかける。壬生さんの腰の触り心地はすべすべしてとても幸せな気分になれた。


「なーに?」


 まるで彼氏に甘える彼女みたいな仕草をしているが、僕にはわかる。これは演技なのだ。


 普通の男なら、きっと彼女の可愛いこの姿に興奮をエスカレートさせ、そのままキスしてしまうのだろう。


 でも僕は違う。なぜなら、僕には寝取られで興奮するという、壬生さんに対して強力に効果を発動するチートな能力があるからだ。


 …あれ、寝取られってチート能力だっけ?ちょっとわかんないっすね。


 ま、まあいずれにしろ、僕がこのドエロいシチュエーションにおいて理性を保っていられるのは、結局のところ、寝取られという常識外のエロスを知ってしまったことで、エロスに対する耐性ができているからだろう。


 ふふ、残念だったね、壬生さん。君の計画は完璧だ。きっと普通の男だったら陥落していたことだろう。


 だが僕には寝取られ性癖がある。僕を死ぬほど興奮させたいなら、こんなノーマルなエロではなく、NTRなシチュエーションを用意するべきだったね!


 …あれ、なんだか考えれば考えるほど、悲しい気分になってくるな。別に好きで寝取られ性癖を獲得したわけじゃないのに。


 もちろん、このエッチな状況に対して僕は人並に興奮はしているのだ。ただ、寝取られという特大の興奮を知ってしまったら、もう普通の興奮では満足できない、それだけのことなのだ。


 僕は改めて壬生さんを見る。


 目の前にいるのは、まさに完璧と呼べるような最高級の美少女だ。黒髪の美少女はその白い肌とは対照的な黒い水着を着用しており、ほんの少し顔を前に動かすだけでその柔らかそうな唇にキスできる距離にいる。


 美しい顔に加えて、綺麗でスタイルの良い体をしてる美少女。おっぱいの形も綺麗で、それでいて柔らかそう。丸みのあるお尻のラインもセクシーで欲情を煽るものがある。


 そんな彼女に向けて僕は言う。


「壬生さん、言ったよね。強引な方法でも良いって」


「へ?え、ああ、うん、言ったね。それがどうかした?」


 僕の発言の内容が予想外だったのか、一瞬、壬生さんのそのクールな表情が砕け、困惑の表情が浮かぶも、すぐに切り替えて僕を誘惑しようと蠱惑的な眼差しを僕に向ける。


「言質、取ったからね。僕がこれから何をしても、文句言ったらダメだよ」


「………え?」


 部屋の中には美少女たちが醸し出す妖艶な雰囲気に満たされていたのだが、僕のその言葉が切っ掛けとなり、急に空気が変わり始めた。


 やる。そう、やるのだ。


 壬生さんは勝負に勝つためなら覚悟を決めてやる人間だ。


 だったら、僕もその覚悟に報いなければならない。


 目には目を、歯には歯を。覚悟には覚悟を。


 僕も、やる。そう、やるのだ。


 僕は隣にいる百崎さんを見る。ポニーテールがよく似合う、鋭い眼差しが魅力的なスポーティーな美少女で、今は青い水着を着ている。


 僕はそんな彼女を強く抱きしめる。


「ふえ?」


 突然の事態に彼女の口から素っ頓狂な言葉が出たが、もうこれ以上彼女の口から言葉を漏らすことはできないだろう。


 僕は逃がさないように彼女を腕で拘束し、さらに彼女の口を奪って強引にキスをする。


「んん!んんんん!」


 やれ!さあ、やるんだ!


 僕は百崎さんの咥内を蹂躙していく。呼吸をする暇さえ与えることなく、激しくディープなキスをし、その口の中に僕の味を覚えさせていった。


「ふえ?」


「ええ?」


 突然の事態に壬生さんと宗像さんの方から驚きの声が聞こえるが、今はそれどころじゃねえ!


 攻略するのだ!キスしてハグしてキスしてハグしてキスしてハグして、そして陥落させるんだ!


「んんんん!ん!んん!…ん💓」


 いきなりキス、それもハードなディープキスをされたことで当初こそ百崎さんは僕の腕の中で暴れていたが、がっつりホールドしているので逃げることも抵抗することもできず、無抵抗のまま彼女は僕のキスで蹂躙されていった。


 やがてぐったり脱力すると、僕のキスを受け入れてくれたのか、自分から僕の口を舐めてくれるようになった。


 これは、いける!


 堕ちたのか、百崎さんはついには自分から僕の体を抱きしめるようになり、表情は蕩け始め、もっとして欲しそうな顔になっていった。


 だったらもっとするまでだ!


「んん、んんん、んー、ん💓」


 悲鳴に近かった声もだんだん甘くなり、彼女の頬は赤く染まっていく。


 一体どれくらいこの激しいキスをしていたのか、やがて百崎さんの呼吸が続かなくなったのか、「ふにゃあ」と甘く媚びた声を出してそのままベッドの上にばたんと倒れた。


「ふぅ、じゃあ次は宗像さん、君の番だ」


「へ?え、あの、ちょ、ちょっと待ってほしいかな?」


「ダメだ。さっきまで誘惑してのは君だろう?」


「え、うん、そうなんだけど、だって今の激しすぎ…きゃん!」


 おや、あのエッチなことは百戦錬磨みたいな宗像さんが怖気づいているのか?僕は彼女を抱きしめ、キスのスタンバイを始める。


 宗像さんは目をきょろきょろさせ、助けを求めるように壬生さんをちらりと見る。壬生さんは親指をあげて「頑張ってね」と後押しした。


「え!そんな!来沙羅、ひどい!」


「いや、だってあんなのもう止められないよ。無事に終われるよう祈ってるね」


「そんな、友達を見捨てるなんてひど…んんんん!」


 なんだか話が長くなりそうだったので、僕はさっさと宗像さんを攻略することにした。


 宗像さんの体を思いっきり抱きしめる。すると、彼女の豊満なおっぱいが僕の胸板に潰れて、たわわに変形した。へえ、おっぱいってこんな形するんだあ。すっげえ。


 宗像さんの唇はとても柔らかく、キスをすると僕の頭が幸せになる。当たり前だ、こんな超絶セクシーな美少女のキスだ。あらゆる男が彼女の唇を欲しているだろうよ。しかし、今は彼女の唇を奪ったことで得られる幸福感や優越感よりも優先しないといけないことがある。


 僕は彼女を抱きしめる腕に力を入れ、さらにもう片方の手を彼女の後頭部においてキスから逃げられないようにする。


「んん!んん!ん💓」


 くちゅくちゅと淫らな水音を鳴らしながら僕たちは激しくキスをする。彼女の抱き心地はとても良く、むっちりとした媚肉の触り心地がとても良いせいで、僕の興奮はさらにエスカレートしていき、キスの勢いも増していく。


 おや?


 宗像さんを抱きしめるとき、彼女の背中を触ったのだが、そのとき彼女の体がびくんと痙攣した。もしかしてここが気持ち良いのだろうか?


 へえ、宗像さんの弱点、見つけちゃったなあ。


 僕がそこを重点的に責めると、宗像さんの体がますますびくびくと痙攣していき、その大人の余裕を感じさせる妖艶なお姉さんフェイスがだんだんと蕩けていった。


「…もっと…ん💓」


 やがて宗像さんの抵抗はおさまり、むしろ自分からキスを求めてくるようになった。あの経験豊富そうなお姉さんが、まるで乙女みたいに自分から求めてくる姿はとても可愛く、なんだか愛おしく感じる。


 まったく、そんな顔されたら可愛がってあげたくなるじゃないか。


 しかし情けは無用。僕は勝たねばならないのだ。確かに強引かもしれない。でもねえ、壬生さんが強引で良いって言ったんだもん!もうこれ、全部壬生さんのせいだもん!


 僕は悪くない。壬生さんが悪いのだ。だからいっぱいキスするもん!


「ふにゃあ、もうダメぇー💓」


 やがて酸素が足りなくなったのか、ばたりとベッドの上に倒れこんだ宗像さん。お疲れさま、ゆっくり深呼吸して休みなさい。


 ふぅ、やってのけた。やってやったぞ!


 ベッドの上には今や二人の死体…いや生きてるよ?ぜえぜえと荒い呼吸をする二人の水着美少女がいる。


 そして三人目の美少女、僕の彼女の壬生さんを見る。


「す、すごい。脳細胞を破壊しすぎて突然変異でも起こしちゃったのかしら?」


 なんだかぶつぶつと小さい声で独り言を吐く壬生さん。彼女は僕をニュータイプかなにかと勘違いしていないか?それにしてもこんなにも動揺している彼女を見るのはこれが初めてかもしれない。


 僕が壬生さんの肩に手を置く。するとビクリと体を震わせ、彼女は僕を見上げる。


「え、えーと」


「見られるのはマズイからね。お風呂場に行こうか」


「あ、はい。いきます」


 なんだか壬生さんがすごくしおらしいな。壬生さんってこんなにも従順でいじらしい娘だったっけ?


 僕が手を掴んで引っ張ると、まるで無抵抗。彼女は僕に導かれるままにお風呂場へ入っていく。


 おや?このお風呂場、鍵つきだ。


 僕がガチャリと鍵を閉めると、壬生さんがビクッと反応する。


「ようやく誰にも邪魔されずに二人っきりになれたね」


「そ、そうだね。根東くん、今日はなんだか男らしいね」


「大好きな壬生さんのためだ。なんでもする覚悟だよ」


「そ、そうなんだ。私、愛されてるんだね」


「もちろん、そうだよ」


 僕は水着姿の彼女をそっと抱き寄せる。


「あ💓 」


「100回なんてケチくさいこと言わず、200回でも300回でもキスしてあげるよ」


「そんなにされたら、唇、ふやけちゃうよ?」


「しょうがないだろ、壬生さんがそういう勝負を始めたんだから」


 ——壬生さんが全部悪いんだから、ちゃんと責任取ろうね、と僕は彼女の耳元でそっと囁き、そしてキスを連続でお見舞いした。


 壬生さんは抵抗することなく、僕のキスをすべて受け入れてくれた。


 最後の方ではハアハアと呼吸を荒くしつつも、目を蕩けさせ、頬を赤く染めながら、


「根東くんの勝ちだよ…ん💓」


 と僕の勝利を宣告してくれた。


 ふぅ、やってやったぜ。


 あの成績優秀、スポーツ万能な才女の壬生さんに、勝ったぞ!やったね!


 それにしても長く、苦しい戦いだったな。おかげでなんかよくわからない汁まみれになってしまった。


 これ汗だよね?それとも唾液か?まあ体液なのは間違いないだろう。


 僕はお風呂にお湯を入れると、壬生さんをお姫様だっこで持ち上げ、優しくお風呂に入れてあげた。


「はあ、はあ、根東くん、一緒に入ろうよ」


「え、でも僕、水着ないよ?」


「別にいいよ。手を出さないならね」


 うーん、どうしよう?


 ぐったりとしつつも、お風呂に入って癒されつつある壬生さん。彼女に戦意はなく、完全に降伏状態だった。


 そうだな、勝負は終わったのだ。今はゆっくりお風呂に入って疲れを取ろう。もちろんエッチは無しだ。


 もちろん、僕だってやれることならやりたい。やりたいのだ。だが約束がある以上、それはできない。


 僕は鋼のメンタルを動員して服を脱ぎ、壬生さんと一緒にお風呂に入った。


「え、これが標準なの?どう考えても大きい…」


「うん?なにか言った?」


「う、ううん。なんでもないよ」


「そう?いやー、それにしてもいい湯だね」


「うん、そうだね」


 もしかしてお湯の温度が高かったのだろうか?壬生さんの顔がやけに赤く染まっている気がする。それにしてもなぜ彼女は僕の下半身ばかり見つめているのだろう?


 やがて下半身を見ることは止めたものの、それでもたまにチラチラ見てくる。


 ふむ。なんだか落ち着かないな。なにか話でもしようか?


「壬生さん、あのさあ」


「ふえ?え、ああ、うん、なにかな?」


「勝負の件なんだけど」


 僕は今回のキス勝負の話をする。もちろん、勝った時のご褒美の話だ。


「あ、ああ、そうだね。私、負けちゃったね。はあ、今回は本気だったんだけどなあ」


 ——負けちゃったね、となんだか悲しそうな表情をする壬生さん。


 それは負けて悔しいからなのか、それとも他の別のことなのか…


「おめでとう、根東くん。これからは瑞樹と杏、どっちともセックスし放題だよ。たとえエッチしても、他の男に抱かれに行くなんて言わないし、やらないよ」


 いや、そんな通話かけ放題みたいなノリでセックスし放題だよ、なんて言われてもね。


「あのさ、その件だけど、別に今すぐやらないといけないってわけじゃないんでしょ?」


「ん?うん、それはまあそうだけど、実はあんまり好みのタイプじゃなかった?」


「いや、好きか否かで言えば好きだよ。でもほら、僕には壬生さんっていう、一番好きな彼女がいるわけだし」


「うんうん、それで?」


 おや、通じない?彼女がいるから他の女の子は抱けないよって言いたいのだけど。


 普通の女の子なら、それだけで十分他の女を抱かない理由になるのだろうけれど、状況がちょっと特殊すぎるか。


 壬生さんからしてみれば、今回は本気の勝負だった。それだけに、せっかく勝ったのに報酬を受け取らないというのは、むしろ勝負を冒涜された気分なのかもしれないな。


 だからこそ、受け取りを拒否するというのは一番やってはいけないことのような気がする。


 それやったら、ガチで壬生さんに嫌われそうだ。だからきっと、将来のどこかの段階で百崎さんと宗像さんを抱かないといけない、そんな気がした。


「僕、一番最初に抱きたいのは壬生さんなんだよね」


「あら、そうなの?」


「そう、壬生さんが一番大好きだから、壬生さんより先に他の女の子を抱くのはちょっと違うかなあって気がして」


「ふーん、そうなんだ」


 —なら、仕方ないね、と壬生さんは微笑を浮かべて僕を見る。


 よかった、この答えは正解だったみたいだ。


 壬生さんは明らかに普通の女の子ではない。だからこそ、答えも慎重になってしまう。


「根東くん、そっちに行っていい?」


「え?うん、いいよ」


 そう言うと、壬生さんは水中を移動して僕の方へやって来る。彼女は隣にぴったりと寄り添って、


「抱かないんだ。じゃあ後悔するかもしれないよ」


 と恐ろしいことを言った。


 え、ちょっとやめてよ!なんで急にそんな怖いこと言うの!


 やがてラブホの休憩時間が終わったので、僕たちはラブホから出て行った。


「根東くん、また今度遊ぼうね」

「司、またな。今度はじっくり遊ぼうな」


 帰り際。宗像さんと百崎さん、そして壬生さんの三人は同じ方向に帰っていった。


「根東くん、今日は楽しかったよ、またやろうね」


 と壬生さんは僕に言う。その表情は、どこかサディスティックな顔だった。


 …あれ?あの三人って帰宅方向、同じだっけ?


 なぜだろう?妙な胸騒ぎがする。


 どくん。と心臓が嫌な音をたてる。


 一体これはどういうことだ?なにか、とんでもないことが始まろうとしている気がする。


 冷や汗が止まらない。


 そして夜。


 僕はやることがないので自室で受験の勉強をしていた。こんな日ぐらい勉強なんて止めればいいと自分でも思うのだが、しかし僕には壬生さんと一緒に大学に進学するという目標があるだけに、勉強も疎かにはできない。そんな時、スマホに通知音がくる。


 壬生さんだった。


『根東くん』


 うん、なんだろう?


『今日から一泊二日で、お兄ちゃんと、その大学の友達の的野さんと一緒に温泉旅行に行ってきます』


 え?


『ちなみに、杏と瑞樹も一緒だよ!』


 え?


 スマホに画像ファイルが送信されてくる。


 そこには壬生さんと百崎さん、宗像さん、そして以前見たことのある男性と、知らない男の二人、計5人の男女が写りこんでいた。


 びき。


 頭の中でなにかが壊れるような音がした気がした。脳にかつてない衝撃と痛み、そして壬生さんだけでなく、百崎さんと宗像さんが寝取られるかもしれないという恐怖に、僕の体は今までにない苦痛と、そして喜びを感じていた。


 さすが壬生さんだ。まさに最悪で、そして最高のタイミングで寝取られを仕掛けてきやがった。


 彼女は僕の性癖に対する理解がありすぎる。


 そして彼女から再びメッセージがくる。


『明日には帰るけど、瑞樹と杏、そして私、誰から土産話、聞く?』


 壬生さんの寝取られイベントの中に、新しいメンバーが追加された瞬間だった。

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