第2話 高校生
俺はまた目を覚ました。俺はUnknownの言う通りに高校生になったのだろうか。
高校生といえば俺が十八歳の頃になる。今から数えれば丁度十年前だ。
確か、高校生の時から既に俺は殺し屋をやっていた。最初に人を殺したのもその頃だった記憶がある。
だが今や、当時何を思って殺し屋を始めたのか、初の殺人に何を思ったかなどは全く覚えいない。
ふとすれば、先ほどから何も聞こえてないなかった音が急に元に戻る。
そして最初に聞こえたのは、俺を呼ぶ声と、多くの人間の騒めきだった。
「おーい。おーい! 聞こえてるかー? 自己紹介、自己紹介してくれー!」
「あ?」
「いや、あ? じゃなくて、自己紹介だよ! 大丈夫? 寝不足か?」
目の前には白のワイシャツに黄土色のセーターとグレーのスーツズボンに緑色のスリッパを履いた男性。
髪は殆ど白髪で、顔は壮年。恐らく俺より年上の男が俺のことを何度も呼んでいた。
ふと周囲を見渡せば、そこはすぐに『教室』だと言うことが分かった。
生徒は全員で四十人程度。男女比は男の方が若干多い。
「あ、あぁ……」
「また寝ぼけてんの? 聞こえる?」
白髪の男は俺の目の前に立ち、眼前で指を鳴らす。どうやらまだ寝ていると思われているようだ。
「大丈夫だ。目は覚めた」
「ってマジで寝てたのかよ! しっかりしてくれよ転校生!」
そんな白髪の男の怒鳴り声に、正面にいる男女生徒が囁く声が聞こえた。
「教室に入ってきた時にはしっかりしてたのに、人前で突然寝るって、どんな寝不足だよ」
「でもかなりイケメンじゃない? まるでモデルみたい……」
俺に対する第一印象と言った所か。
さて、自己紹介か。名前は今決めた。ここは高校だ。自然にした方がいいだろうな。
「俺の名は
俺は黒板に白のチョークで自分の名前の漢字を書きながら、名前を言って自己紹介をする。
「えっと、それだけか? 何か他にいうことは?」
名前だけではなく特技も言えと言うことか……。まぁ何でも良いか。
「特技は大抵のことなら何でも出来る。趣味はネットサーフィンと言ったところか」
「あーそう。ありがとう。じゃあ……みんな仲良くしてくれよな! じゃあ葛城君の席は、窓側の一番後ろの席だ」
「はい」
どうやら白髪の男。恐らく教師の掴みはあまり良くなかったようだ。もう少し考えるべきだったか。
「それじゃ! 今日は終わりだな。はい、みんな解散解散〜」
俺は席に着き、ふと時計を見れば時刻は午後五時になっていた。放課後だったようだ。
さて、異世界転生とやらはいつ来るのだろうか。
そんなことを考えていると、すぐに俺の所へ声を掛ける人間がいた。
金髪で翠色の瞳で、屈指の笑顔を俺に向けていた。
「葛城君! 僕は
「あぁ……」
「よっしゃ俺が一番乗り〜! みんな! 今日から入った新メンバー、葛城だぁ!」
そう天野が後方へ叫べば、ぞろぞろと三人ほど別の者が集まってきた。
次に名を名乗ったのは、黒髪ショートボブで丸縁メガネを付けた天野より大分低身長の女だった。恐らく天野が一六八センチ程度に対して、この女は一四五センチくらいだろう。
「いやいや新メンバーってなによ。グループじゃないんだから。あ、葛城君。あたしは
「そうか……」
どちらも笑顔が良く似合い、この教室のムードメーカーなのだろうか。
次に名乗ったのは、腰まで伸びた艶のある黒髪ロングストレートで、下には黒のオーバーニーソックスを履き、天野より若干身長は高いが、その高身長は出るところが出たスタイルの良さで補完していた。
「私は
「いや、なんでも」
「な……なによその反応は……! まさか私の身体をみて何とも思わない男がいるなんて……!」
そうか。神月は他の男にはそんな目で見られているのか。それならただ気味の悪さを感じる人間はいるが、まさかそれを評価として受け取る人間もいるとは。
ただ俺は別に女の身体に欲情はしない。ただの部位だ。人を殺し続けて、どうすれば静かに確実に殺せるのか。
そんなことを一日中考えていれば、そんな感情は忘れてしまうものだ。
「……良いスタイルだ。これでいいか?」
「な……は、はぁ」
そして最後に来たのは、茶髪の前髪が長いショートヘアで、神月とほぼ同じ身長の男だった。整った顔立ちで、後方の女子の目があることから、かなりモテる男のようだ。
「俺は
「俺は正直に言ったつもりなんだがな……」
「そう……ならいいや」
……。さてこの四人で終わりかと思えば、後から遅れてもう一人来た。
誰よりも図体が大きく、がっしりとした筋肉は盛り上がり、いわば巨人を髣髴とさせる大男が、ドシドシと床を踏みながらこちらへ来た。
「舐めた顔しやがって! うぜぇんだよ!」
こちらに来るや否や、まさかの俺に突然殴り掛かってきた。
突然の不意打ちに俺は咄嗟に椅子を後ろに下げて、男の拳を避けると椅子から立ち上がり、片手で椅子の背もたれを持ち上げると、そのまま椅子の足を男のこめかみに向けて投げた。
椅子は床に投げ飛ばされ、かなり大きな音が鳴ると、男は一撃で白眼を向いて倒れていた。
「あ……」
不意打ちにもどんな対処をすれば良いのか殺人の慣れのせいで手加減が出来なかった。
気絶する男を見てから自分の過ちに気が付いた。
「俺は帰る……じゃ。謝っておいてくれ」
「い、いま何が起きたんだ?
「すっご〜い……葛城君ってつよいんだねぇ」
さて、流れで帰ると言ったが、生憎今の俺に帰る場所なんてものはない。教室を出て校門を出て、帰るフリはするが、行く宛てが無い。どうしたものか。
そう俺は考えていると、頭の中で聞き覚えのある声が響く。Unknownの声だ。
『やーやージャック。改まって葛城君。初日からいきなり暴行とはやるねえ〜。なに? 殺し屋の癖ってやつかい?
まぁ、それはさておき、どうせ帰る場所が無いからどうしようとか思ってたでしょ?
安心しなさ〜い。明日の
「それは助かる。頼む」
『はい。じゃあ目を瞑ってぇ……次の日へGO!』
冷酷無比な殺し屋が高校生となって異世界転生したらこうなる Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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