第17話 5月31日:春の運動会(本番):玉入れ

約1か月の練習期間を経て、いよいよ運動会当日がやってきた。


五月晴れの良いお天気だ。


両親は ちゃっかりとA組の保護者席についていた。

 もちろん護衛つきで。

それでも 一応お忍びと言うことになっているので、入場行進の時の敬礼は無し。

お忍びの国王夫妻に敬礼しないので、今回は本部席への敬礼もなし(笑)


それでも国旗を運ぶ4人は 1年A組の保護者席の前を通る時だけ、国旗を持ち上げていた。



そして いよいよ「玉入れ」

開始の合図とともに 僕は籠ごと姿を消した。

代わりに かごを持って走り回る虚像を走り回らせた(笑)


僕本体は、かごの入り口を僕の背中にぴったりとつけて ゆっくりと人をよけながら移動しつつ、物理で投げ入れ可能なクラスの籠と位置を、ランダムでキサラギとムサシに送った。司令塔を他のクラスからマークされないための配慮だ。


準備期間の説明で言い忘れたけど、投げ込む玉の個数に上限はない。

ただし 規定のチームカラーの布で既定の大きさの玉を各クラスごとに手造りしなければいけない規則だった。

だから 玉入れや騎馬戦の肉体訓練だけでなく、玉作りもHRの重要な課題だった。


いやはや 男女の区別なくお裁縫。運針が苦手なんて言い訳が通用しない。

一つでも多くの玉を作るために たとえゆっくりでもいいから確実に規定サイズの規定の重さの規定の形の玉を作らなくちゃならない。

 うー 指先がしびれちゃったよ。

 針をつまむのに 力をいれすぎたのかな・・・

 幸か不幸か、肉体運動もたっぷりしてたので、肩こりはすぐにほぐれたけど・・・


というわけで1年A組の面々は、腰回りや胸ポケットならぬ胸袋や背負い袋にぎっしりと詰め込んだ玉を抱えて集団で突進しては、他のクラスの籠に入れて回った。

 ちなみに 自分のクラスの籠が満杯になるとその組の生徒は全員退場である。

 そこらあたりは 魔法教師たちが腕を振るって差配した。

 ピーと笛が鳴るたびに 一クラス分の生徒たちが一斉に観客席まで引き戻されるのは見ものだった。


 うちのクラスのメンバーで五つのクラスを早期退場させることに成功した。

1年BD組と2年BDE組だ。


 予想通り1年E組には強力な防護魔術使いがいた。

 3年生たちは さすがに学年で団結して 5クラスの籠を守っていたので手を出しにくかった。


ここまで来ると、さすがに籠を背負って走りまわっている僕の姿が虚像だと3年生たちが気づいた。

そこで 3年生たちが 一斉に1年CE組の籠めがけて襲ってきた。

それに2年生も追随する。


すると1年E組の連中が、自分達は物理で1Eの籠を守るから、E組の玉を僕たちA組でよそのチームの籠に入れてくれと言い出した。すると1Cも 同じ事を言って自分達の玉を差し出してきた。


A組はすでに自分達の玉を使い切っていたので、ありがたくC組とE組の玉を頂いた。

僕はまず2年A組の籠の防御を崩し、級友たちはそこに一斉に玉を投げ込んだ。

そして次のターゲットは2年C組、こっちは僕が防御を崩すと、待っていたかのように3年生たちも狙い撃ちにし始めたので 瞬く間に籠がいっぱいになって2Cも退場


最期は僕が指示した3年の魔法使いめがけて1Aの生徒たちが突進して、彼女がひるんだ瞬間、3年生の籠の一つを僕が魔法でひったくって1Aの生徒の真ん中に置いたので、僕たちが預かった1Cと1Eの玉の残りを底にぶち込んたところで試合終了の笛が鳴った。


集計の結果

 1A 6000点

(一人200個づつ玉を持って走り回ったかいがあった、僕も自分の分は結界を破る時にちゃっかり相手の籠に自分の分を転移魔法で投げ込んでおいたから)


 1B・1D -1200点

(各チームの籠には1200個しか玉が入らないのだ。連中は1ACの籠を狙っていたけど、僕は1BDの玉だけは 1Cの籠からはじいておいたので、1点もとれなかった。ざまぁみろってんだ。学年の団結心ないやつらめが)


 1C 0点

(僕たちが頑張って彼らの玉を2年生の籠に入れてやったのだけど、C組の籠の中に入っていた2・3年生の玉の数とで±0になったw

1Cの男子は 貴族男子が裁縫するかとほざいて玉作りをさぼったらしい。

それで1Cが持つ玉の数は200個しかなかった)


1E 90点

(彼らは玉を全体で1200個作ったらしいが無駄うちをしてしまって、僕たちに預けた玉は1000個。僕たちは それをしっかりと敵に投げ込んで得点してあげたんだが、

最期の最後、E組の守護者がばてて、自分達の籠に910個の玉を入れられたらしい。さすが3年生!)


2B・2D・2E ー1200点 

 (先手必勝とばかりに 僕たちが攻め落としたからね)


2A・2C -1200点

 (2AC:3ACで、魔法を使った玉のつぶしあいをやったので かごに入れられた玉もないけど、

  自分達の玉も残らなかったそうだ。

  そんな戦い方があったのか!?? と僕たち1年生は腰を抜かした。

  そこに僕たち1Aが、1CEの玉をもって乱入したわけ)


 先輩方曰く、「さすがに1年生の玉をつぶすのはかわいそうだと思って手加減してやったが、来年は覚悟しとけよ!」だって・・・

 コ怖い 来年が怖い(ガクブル)

 って 来年も この種目をやるのかよ?!


3A・3C 0点

 2ACに攻撃の的を絞って玉のつぶしあいをしていたので、自分達の籠は守り切ったけど、自分達の玉も全滅してしまった。


 総合成績で振り分けられた1年生と違って、2・3年のAC組は魔法に特化した学生たちのクラスらしい。

 そして今の3年生は 昨冬に行われた校内魔法大会で、1点差で下の学年に負けた雪辱を晴らそうと、打倒2年!に燃えて、AC組対決に特化したそうだ。



3BDE

 この3クラスは、最初から1年と2BDEを狙っていた。

 そして 機を見て機動的に動いた結果、3クラス合同で1Cに200個、1Eに910個、2Cに1200個の玉を投げ込んだ。


というわけで 学年別成績は

 同士討ちの1年生:6000ー1200x2+90=4890点


 謀略に失敗した2年生:-6000点 (ざまぁw)


 連携と私怨の3年生 :2310-1200=110点


わーい!緒戦は1年生が勝ったぞ~!


それにしても3年生と1Eの守護者の防御魔法は強かったなぁ。

僕なんか 自分のクラスの籠一つを守るのに精いっぱいだったのに、

3年の守護者は籠4つを守り切ったのだから。


ちなみに 3年生の守護者が最後に崩れたのは、僕たち1Aの突撃にあわせて、2ACの魔法使いが全員一致の総がかりで僕が狙った籠のひったくりに力を合わせてくれたからだそうだ。

 試合中は全く気が付かなかったけど 先輩たちありがとう。


 にしても 他人の魔法の発動に合わせて、その力を強化する魔法を放つってやっぱり先輩たちはすごい!!


 そして 僕がひったくった3年生の籠は3Eの籠だったそうだ。

3年生たちは各クラスで協定を結んでいたので、3BDE組で勝ち点110点を33点づつわけあい、端数の1点を3年生の守護者が所属する3Aにゆずったそうだ。


 そうか 協力体制って、点数の配分まであらかじめ決めておくのか!と 僕たち1年生には目からうろこであった。


ちなみに 今年の玉入れで使った玉は 各クラスで保管して次回に持ち越してよいそうだ。もちろん 既定の出来栄えを維持できるように補修はしないとだめだけど。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る