第15話 4月31日:ベランダバーベキュー
朝から 護衛のエドガーにくぎを刺され、おとなしく日向ぼっこをしていたら、
ご学友のムサシとキサラギがやってきた。
「なあ なあ 今日の昼めしはバーベキューにしようぜ」ムサシ
「どこで?」あかつき
「お前の部屋の前のベランダに釜を作ったらどうかと思うんだけど」ムサシ
「煙を見て 番兵たちが駆け付けてこないように事前申告が必要なのではないかな?」あかつき
「よくお気づきになりましたね。さようでございます」エドガー
「それって 当日の申告ではだめなんですか?」キサラギ
「できれば 前日までにお願いしたいところなのですが・・」エドガー
「今日の所は 受付くれるのかな?」あかつき
「内容によります」エドガー
というわけで ムサシ・キサラギと一緒にバーベキュー案を作った。
食材(肉・野菜)茶葉は ムサシ達がすでに用意していた。
かまどを作るための耐火れんがと鉄板・炊飯用の鍋・炭入れ用のバッカン・火ばさみも準備OK
「マキは多めに持ってきた」キサラギ
「このバーベキュー基本セットは どうやって準備したんだい?」あかつき
「兄貴から 入学祝いに一式そろえてもらったんだ。
2回目からのマキの手配は 自分でしろって言われたけど」キサラギ
「「持つべきものは 優しき兄上だな」」あかつき&ムサシ
「そういえば キサラギさんの兄上は 第一王子のご学友でしたね。
当時のことは 護衛の間でも引き継がれております」
カモンが遠い目をして言った。
「そういえば チイ
兄貴の時代は 安全規則でがんじがらめで、兄貴がそれに反抗するのに夢中になりすぎた挙句、卒業後ハニトラにひっかかったんで、チイ兄の時は、いろいろ規制がゆるくなったって」あかつき
護衛たちはいっせいに酸っぱい顔をした。
「だから俺は 兄貴のように反抗しないし、チイ兄みたいに自分の弱みを言えずにドジッたりせず、無事に予備校を卒業することを目指すつもりだよ」
アカツキは 護衛達の気持ちを
「僭越ながら そのお言葉通りになされますよう 心からお願い申し上げます。
そして 我々護衛も 御心に添いつつ安全を確保すべく全力を尽くす所存でございます」護衛たちは 一斉に膝をついた。
「わかった。これからもよろしく頼む」あかつき
「というわけで 今日の昼食のバーベキュー案はこれでいいかな?」あかつき
「さっそく 関係部署に連絡を回します。」エドガー
・・
バーベキューの準備は 僕たち学生3人で行なった。
教科書通りにマキも
点火までは ベランダでの護衛はブレッド(むさし付き)とグレー(キサラギ付き)が務めた。
食材が焼けだすころには、僕の護衛であるエドガー・マッタ―・カモン・ハンターも出てきて、総勢9人で バーベキューの昼食をとった。
マキを無駄遣いせず、煙も立てずに 炊飯・茶沸かし→バーベキューを一つのかまどで展開したことをほめられた。
野外炊飯の教科書さまさまである。
燃え残りのマキに砂をかけその上にジャガイモを置きさらに少しの砂をかけてさらに燃え残りのマキを乗せ砂をかけ・・バッカンの中で焼きジャガイモも作った。
これは 今夜のおかず用だ。
大変だったのは、煤のついた鍋洗いだ。
ムサシが率先してその役を買って出たのは良いが、
汚れた水をあちこち跳ね散らかして、壁や床の汚れを落とすムサシが下手すぎて
結局 僕とキサラギでその尻脱ぐいをした。
「おまえ 人のキッチンを使う時は、周囲を汚さない洗い方を身に着けてから名乗りをあげろよ」キサラギ&アカツキ
「ごめん。自分のキッチンでは、ブレッドが嫌がって 鍋洗いをさせてくれないんだ」ムサシ
「もしかして」あかつき
「もしかしなくても 君の想像通りだよ。
でもさ 練習しないといつまでたっても上達しないだろ?」ムサシ
「だったら それは ブレッドと話し合って自分のキッチンで練習してほしいなぁ」キサラギ
「あー そのあたりは ご学友同士の助け合いで実習訓練を積んで頂ければ・・」ブレッド
「こういうのは やっぱり自分の家で地道に 毎日練習するのが無難かも」あかつき
「だったら 王子様命令で うちの家令に一筆書いてくれないかなぁ。
鍋洗いの練習とそれに付随するキッチン掃除と洗濯の実習訓練を我が家で行うようにって。
でないと 台所係からも洗濯係からもストップがかかるのは目に見えてるんもん」ムサシ
「それが 君の願いながら、懇切丁寧に付き添ってノウハウを教えてくれる人をつけて、でも すべてのことは君自身にやらせるようにって 一筆書いてもいいけど・・」あかつき
「ぜひ 頼む!。 俺だって 粗雑な奴だと思われたまま一生を過ごしたくないんだ!」ムサシ
「仕方がないなぁ・・鍋洗いと床掃除と洗濯ハウツー本を君に貸すよ」キサラギ
「へー そういうのがあるんだ」ムサシ&アカツキ
「それ見て 1か月間 自分の部屋で鍋洗いとその後片付けをがんばってみて
来月の31日に その成果を僕たちに見せてくれるってのはどうだ?」キサラギ
「ぼくも そのハウツー本を見たいから、ムサシの自主練の見学にムサシの部屋に行ってみたいな。っていうか来月の休日はムサシの部屋で 昼食を作らないか?」あかつき
「えー 休日は野外炊爨で みんなでわいわいそろって食べたいよー」ムサシ
「そのあたりのことは 今決めなくても おいおいにしようよ。
それよりさ、焼きジャガの付け合わせ料理 教えてよアカツキ」キサラギ
「えっ? 蒸し鳥とボイル野菜が手っ取り早くていいんじゃないか?」あかつき
「だから その作り方!」ムサシ&キサラギ
蒸し器の下から数えて一段目に鶏肉、上段に野菜を乗せて蒸す方法をアカツキは二人に説明した。
ムサシ達は 蒸し器の存在そのものを知らなかった。
あわせて ドレッシング(酢油ソース)の作り方も教えた。
「酢:サラダオイル(オリーブオイル)=3:1 さへ覚えて置けば、あとはお好みで粉コショウを入れて 攪拌するだけって めちゃくちゃ簡単じゃないか!」ムサシ
「何も ボールに入れて攪拌しなくても、ドレッシング用の小瓶に材料を入れて蓋をきっちり閉めて振るだけでいいんだ」あかつき
「予備校に入学したら 身の回りのことを自分でできるようになれって言うなら
こういう日常生活に必要なことも 「基本のき」で実習教科に入れてくれたらいいのになぁ。」ムサシ
「姉貴情報なんだけど、昔、それをやったら、男子は 講師の女の先生をバカにして授業をさぼるし、
女子は 授業そっちのけでマウントの取り合いに終始して、授業そのものが成立しなかったらしいよ。
それで 各自の努力目標にしたらしい」キサラギ
「おかげで 野戦食が悲惨になってます。
しかも 軍にはいると調理法なんて覚えている暇ないですからねぇ」
天井からカゲの声が降ってきた。
「アカツキ王子が 卒業後、学生と軍の新人教育の両方で、調理実習教官になってくださるとありがたいんですが」カモンが小声でつぶやいた。
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