第12話 時間割:魔法実習

名札づくりを通して クラスとしての結束が高まった。


学園は 単位制である。


一応 入学試験はある。

これは主に 足切りを目的とされている。


入学後は、授業案内と基本的な時間割案が示される。


学業に自信のある生徒は、入学後 最初の1か月間で、基本的時間割に掲載された科目の最終試験に合格すればその科目の受講を免除される。


基本は 1時間で一科目受験なのだが、私は、どの科目もだいたい15分で答案を書き終わるので、余裕をもって 1時間で3科目づつ受験していった。


さらに 予科の時間(本来はできの悪い生徒のための補習時間)にも受験しまくって

入学後1か月間で 講義科目はすべて単位を修得した。

 学園の授業だけでなく その上の研究家の講義に至るまですべてクリア。


そこで 在学予定3年間は 実習科目と研究科の演習を中心に時間割を組んだ。


魔法科目に関しては、あかつき(真)の知識量は膨大だったが、なにしろ あかつき(真)は術に失敗して死んでしまうような人だったことに加え、私こと「あかつきNew」は魔法についてはド素人だったので、初歩の初歩の実習から受講することにした。


この「魔法実習いろはのい」コースには 貴族階級では魔術の落ちこぼれ、庶民階級では身分とは関係なく独学派(つまりお金がないので 図書館で勉強していた人たち)が集まっていた。


つまり HRのクラスわけではD組E組の生徒達だ。


私は王子なので、ほかの学生のように当日受講届を出しに行くのではなく

事前に受講希望を出して学園側の受講許可を取るように言われていた。

 主に警備上の観点から。


だから、「~いろはのい」コースの受講希望を出そうとしたら、

エドガーから「待った」がかかった。

そもそも 受講希望を学園に提出するには 自分の護衛の同意が必要って・・・


「一体全体なにを 考えているのですか?」


そこで 正直に話すことにした。

「最近 大きな魔術に手を出して失敗して自信をなくした。

 だから もう一度 初歩の初歩から実践を学びなおしたい」と。


「魔法に関して謙虚になるのは 護衛としてもありがたいと思います。

 これまで 王子は あまりにも独断専行が目立ち、

 我々護衛としても『王子が御自分の魔術の失敗で死んでも責任を負わない』と

 特別条項を契約書に入れていただいていたくらいですから。

 ですが このことを 学園の先生方が どのように受け止められるのかまではわかりません。

 どうか 気を引き締めて 受講希望を提出されますように」エドガー


「気を引き締めるって どこをどう引き締めればいいのさ?」アカツキ


「私の口からはなんとも」エドガ―



魔術実習に関しては、受講クラスが決まるまで、私は毎日 先生方から個別指導とテストを受けることになった。

 「補講1」1時限目が始まる前の授業 朝7時~8時

 「補講L]夜8時~9時


「補講1」で私の実力テストが行われ、その結果をもとにその日の課題を出される

「補講L」で 朝に出された課題の進捗状況をチェックされる


この形式で行われる魔術実習は とても有益だった。

 私(アカツキNew)にとっては、アカツキ(真)がため込んだ知識を、

 実際の体験として確認し自分の技術として身につけなおすことができたから。


補講担当の先生方の中には 幼いころのアカツキ(真)を指導した方もいらっしゃった。

その方々は アカツキ(真)と今の私との違いにもあっさりと気づいたが

「すべては 女神さまのお心ゆえに」と言う謎の文言で

今の私を受け入れ アカツキ王子として認めてくださった。

 もしかして 先生方の元に 神託でも下ったのかしらん??


というわけで 今のところ「魔法実習いろはのい」コースの受講は棚上げとなっている。



 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る