第5話

朋美はシャワーを終えると、さっそく、バーゲンで購入した安物の下着を身に着け始める。

黒いブラジャーを身に着け、下は赤いショーツをはく。

秘部の陰毛が下着から少しはみ出していた。

朋美は、右手で無造作にその陰毛を下着に突っ込む。彼女もかつては、オマンコの陰毛や脇の毛など気にして、カミソリで形を整えたりしていた。

だが、二十代後半になり、セックスする相手も幸一ひとりであること、また仕事が忙しくなったりすると、下着の色や恥毛の処理などどうでもよくなってきてしまった。

しかし、幸一のほうはというと、朋美のそんな女気のなさに少し不満があるらしく、「脇毛ぐらい剃ったらどうなんだ?」と二、三回、言われたことがある。

「朋美、こう見えてもオレだって見た目にはこだわっているんだ。ヒゲは毎日、剃っているし、散髪にも金をかけている。服装も気を使っているんだぞ。おまえも少しは・・・・・・」

そんなことをブツブツと言う彼を朋美はチラッと見て、心の中でため息をつく。


幸一、私に文句を言う前にあなた自身を変えてよ。

他の男性と比べて、あなたに魅力がまったくないの。


幸一は、確かにオシャレな恰好をしているように見えるが、背丈もそんなに高くないし、顔も普通。

その上、彼とデートで会話しても、つまらない世間話でいつも終わった。

つまり今の幸一には、見た目も中身にもコレといって惹かれるものがない。


洗面台の鏡の前で少し、ショートカットの髪をくしで整え、自分の体や顔の化粧などを確認する。

スレンダーで筋肉質な肉体。

仕事が終わったあと、家で筋トレをしているので、腹筋がしっかりと見え、肩幅も大きい。

胸はDカップ。

男性のように筋肉だけでなく、胸と腰回りにほどよく肉がつき、女性らしいエロさ、妖艶さもある。

顔は目が細く、キツネ目であるが、鼻が高く小顔であった。

カワイイ、童顔というわけではないが、キレイなお姉さんといった顔だろう。

短い髪と170cm近い身長が余計に朋美の印象をそうさせる。


一時は髪の毛を伸ばそうと考えたこともあるが、手入れが大変なことと、水で濡れてドライヤーで乾かすのが嫌なので朋美は、いつも美容室ではショートだ。


そして右手を挙げで自分の脇を見た。

男性がヒゲを二日ほど剃り残したように黒いものが、二ミリぐらい生えていた。


これぐらい、生えているだけでうるさいわね。

少しは海外のリゾートや、ビーチに連れて行ってくれるほどの金を稼いでから私に言ってよ。


朋美は、陰毛や脇の手入れをしていないからと言って、剛毛というわけでもない。自分では、一般的な女性よりも少し毛が多いぐらいだと思っている。むしろ幸一のほうが、毎日、ヒゲや胸の毛を手入れしているのだから、毛深いほうだろう。


朋美は、青い紺のジーパンをはき白いブラウスを羽織ると、バスルールを出た。

幸一のほうも体力を回復したらしく、上半身裸で陰部をタオルで隠し、冷蔵庫からスポーツドリンクを取って飲んでいる。彼の体は、


筋肉質とは言い難い、中肉の体つきだ。

最近では、中年太りというのか、少しお腹が前に出てきている。

顔は丸顔、髪型は現代風の少し長髪。


朋美は、今思えば、幸一のどこに惹かれたのかと思ってしまう。大学で言い寄られなければ絶対に付き合うことはなかっただろう。

六年以上付き合っているが、三十歳になった今でも結婚しないのは、彼の経済力の無さももちろん、幸一に何かが足りないからかもしれない。

「朋美、次の休みはどこかデートに行かないか?美味しそうな店があるんだ」

幸一は、朋美が思っている不満のことを全然わかっていないように話し掛ける。

朋美の頭の中は、風野吉郎の顔が少し浮かぶ。

「考えておくわ。店のほうは、また連絡して」

彼女は、幸一からミネラルウォーターを一本貰うと彼のアパートをすぐに出た。幸一は、吉郎のように金がないならはっきりと無いというタイプではないし、将来のために貯蓄するような考えもない。今、楽しければいいという考えだろう。

非常勤とはいえ、吉郎のほうが真面目で堅実のような生き方をしているように思えた。

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