第3話
「あなたも女性と初デートでしょう。もっといい店に連れて行ってあげたら」
吉郎の母親が今日、夜、女性と「S」で食事して帰るといったら、あきれたように言った。
「彼女のほうもホテルとかレストランとかで食べたいと思っているじゃないの。せめて居酒屋ぐらい、予約しておきなさいよ。相手もあなたにがっかりすると思うわ」
「わかっているんだけどね、母さん。でもオレまだ、彼女と付き合っているわけでもない。食事にお金をかけられるほど余裕があるわけでもない。ここは見栄を張らず、いろいろと彼女と会話するぐらいかなあ。」
「あんた、本当に彼女に気があるの。絶対にフラれるわ」と母親は吉郎をまるで人のココロがわからない冷酷な男性のように見た。
吉郎自身もこんなんじゃダメだと思うのだが・・・・・・。彼は"朋美に彼氏がいるのを知っている"し、その"彼氏と張り合う"つもりもない。
どうせ、朋美さんには彼氏がいるしなあ。
オレの今の経済力ではどう頑張っても、朋美さんがオレを選んでくれるはずがない。
そして案の定、朋美に言われる。
「風野君、あなた、もう少しいい店にしてくれてもいいんじゃないの。気が利かないというのか、女性の食事の好みを知らないというのか・・・・・・」
「言いたいことはわかります・・・・・・、でも、朋美さん、分かってください。俺はまだ正規社員じゃないんです。パスタとか、ピザならいけますよね?それで勘弁してくださいよ」
と吉郎は苦しい言い訳をした。
「やっぱり、経済力のない男性はこれだからねぇ」
朋美も声のトーンを落としていった。
「もし、あなたのことをラインやメールで知らなかったら、この店に連れてきた時点でアウトね。すぐに別れるわ」
「やっぱり、女性が男性を選ぶ基準は、経済力、お金ですか?」
「お金、それも一つの魅力かも。あなたはあくまでも友だち関係よ。交際相手とは見てないから。私が彼氏に求めるものはまた別だけど」
悔しいが、吉郎に力がないのも事実。
でも朋美は、吉郎のどのあたりが気に入ったのだろうか。
見た目、性格、学歴、年齢だろうか。
朋美ほどの美貌の女性となれば、男性を選ぶこともできるだろう。
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