第35話 ダメージ
流衣は携帯を握りしめたまま黙って身を硬くして後部座席にいた。
自分の両隣にいるのも前にいる二人も知らない。運転している男は以前に道を聞かれた男で、見た事はある……けど知らない。
誰も知らない男達に囲まれ、男臭い密室に閉じ込められた流衣は、漠然とした恐怖が身体中に染み渡るのを感じる。
いつも抱えているレッスンバックは車に押し込められた時落としてここに無かった、拠り所が携帯しかない、何かに
「楽勝だったじゃん」
助手席の男が声を出した。
「アイツが妨害に来っかと思ったよな」
右横の男が答えた。
「って事はアイツのこと連れ回してるって事だよな、やるじゃん大樹!」
「まだ分かんねぇだろ、はしゃぐなよ」
安原が運転しながら走り屋のふたりを諌めた。
「おい梶、んとにこのままフェリー埠頭まで行っていいのかよ」
安原が流衣の左隣の男にバックミラー越しに話しかけた。
「は? 泉ヶ岳に行くんじゃねーの?」
助手席の圭太が不思議そうに聞いた。
「んな所行くわけねえ。奴を迷わせる為に言ったまでよ」
梶が可笑しくて笑うのを堪えた声で言った。
「ナイトスキーで混んでっとこに行くっつうから変だと思った。でもフェリー埠頭ってのも聞いてねえんだけど」
以前の出来事を彷彿させる場所に対して、マサは怪訝な顔をした。
「寄り道な」
梶が言った。
「はあ?」
「時間稼ぎに決まってんじゃねーか、お楽しみの為のよ」
「樺の町小学校で今田達はスタンバイしてるしな」
梶と安原が続けて答えた。
「オレらが最初に言ってた場所じゃん? だったら何でそう言わねえんだよ!?」
「お前らがうっかり漏らさねえようにしただけじゃねーか。へへっ」
相変わらずの人を馬鹿にした笑いをする梶。
信用してないと言われたと同じマサと圭太は、ムッとした顔になったが抗議の声は上げなかった。
「赤嶺の案だけどな」
ふたりのパッとしない表情を見た安原は、計画を走り屋達に話さなくて正解だったと思い、その場を凌ぐ為に
「その赤嶺って会った事ねえけど信用出来んのかよ?」
マサが名前だけしか出て来ない赤嶺に不信感をいだく。
「信頼だあ? けけけ、阿保ちゃん?」
「お前らヤサグレてんのになに夢見てんだ」
梶と安原が言った事に、マサと圭太は前後で顔を見合わせた。
「どう言う意味だよ」
「……赤嶺の野郎はな、相当奴を恨んでる男だ。奴がスペインに留学中の現地のコーチから付けたれたあだ名まで探ってやがる、自分じゃ手を出せねぇから、高みの見物してやがんだよ」
「一対一じゃ負けっから? ショボっ」
自分達のことを棚に上げて貶す圭太に、安原は苦笑いした。
「……信頼なんかねえよ、けど自分の代わりに奴を制裁させんだから、騙すわけねえだろ」
もし嘘なんかついた日には、梶にどんな目に遭わされるか分かってるはずだと、安原は思っていた。
「等価交換っつうやつだ、なあ?」
梶はニヤニヤしながら流衣を見て同意を求めた。
同意を求める梶の目付きが蛭の様で、流衣は気持ちが悪くて目を逸らした。
目を逸らされた梶は、流衣の顎を片手で掴み自分に引き寄せ舐めるように眺め回した。
「へぇ……ただのちっせえ女だと思ったけど、お前よく見たらいい女じゃん」
流衣は梶の視線が怖くて、顔を背けようとしたが、掴まれた顎はびくともしなかった。
「へへっ、必死に抵抗しちゃって、可愛いじゃねぇの、その顔であいつのおしゃぶりしてんのかと思うと、想像してるだけでゾクゾクするわ」
流衣が必死に視線をズラしていると、その嫌がる素振りに梶は興奮し始め、流衣の身体を服の上から触り出した。
「ちょっと味見しとくか」
——嫌ッ!
驚いた流衣は叫ぼうとしたが声が出ず、咄嗟に梶の手を押し除けようとしたが、その腕をマサに捕まれ抑えられた。
「なに嫌がってんだよ、普段やってんだろ、泣き黒子には触らせてる癖によ」
——泣き黒子……臣くん!?
腕が痛い、そんなに捻ったら腕の筋がおかしくなっちゃう! やめて!
さっきから言ってる“あいつ” が一臣の事を言ってるのだと流衣が分かるのと同時に、
梶の手はどんどんエスカレートし、流衣のブラウスを制服のスカートから引き抜き、勢いよく前を開けると、ブラウスのボタンが飛び散り、肌着のインナーが露わになった。
マサに抑え付けられている流衣は、抵抗しようにも身体は動かず、声も出なかった。
「ん〜? 何だこのスカート。どうやって脱がすんだこれ」
梶がジロジロとスカートを眺め回した。
大きいスカートを何回も折り返しているせいで、フォックが見当たらなかった。
「まあ、制服プレイってのも悪くねーか」
脱がすのを諦めて、スカートの中に手を突っ込み下着に手をかけた。
——いや!
そんなとこ触らないで!
やめてやめて、こんなの嫌ー!
恐怖から本能が働き声が出ない。
逃れようと身を捩っても、マサに掴まれている流衣の腕は微動だにせず、抵抗とは程遠い物だった。
「おーい?」
安原が声をかけると、梶の動きが止まった。後ろからサイレンが聞こえる、皆に一斉に緊張が走り、マサは掴んでいた流衣の腕を離し、その隙に流衣ははだけたブラウスを急いで元に戻した。
安原は車を停めて救急車を先に行かせた。
「脅かすな〜」
気持ちに余裕が無いせいなのか、救急車のサイレンを警察だと思い聞き耳を立てた圭太が、ホッとしたかおをした。
「……何で邪魔した?」
梶は中断されたと恨みがましく安原を睨んだ。
「つーかさ、車でやると動きでバレんだろ、今のがパトカーだったら絶対止められてっから。
安原の諫言に言い逃れできない梶は、拗ねた様に頭をかいた。
「チッ。外でやろうにも寒くて立つもんも立たねーしな、ラブホ空いて無いのかよ」
お預けを食らい、不貞腐れた顔で梶は言った。
「空いてねーよ、クリスマスだから」
安原が返した。
「クリスマスは昨日じゃん?」
圭太が不思議そうに質問した。
「おめえ馬鹿? 昨日はイブだろ」
マサが圭太に向かって話した。
「クリスマスの本番イブじゃねーの?」
またしてもしれっとして圭太が話した。
「セックスする大義名分なんだからどうでもいいんだよ。赤嶺の言う事聞かねーで明日にすりゃ良かった」
梶は不貞腐れて腕組むと座席の背にドンともたれた。
「日本中のラブホでカップルがヤリまくってんのかよ」
「そういや、10月生まれはクリスマスベビーなんだってよ」
「やっべぇ、日本中で仕込み中かよ!」
圭太とマサが言い合って大爆笑した。
さっきから聞こえている淫らな話が、流衣には不潔極まりなく耳を覆いたくなった。それらが全て自分に降りかかってくることも想像できる。
ただ、今の状態をみると、自分に押し寄せる
「フンッ」
梶は笑うふたりを見てせせら笑ったあと、流衣を凝視した。
「へへっ、後でたっぷりと可愛がってやっから楽しみにしとけ」
淫らで下品な笑いを浮かべた梶から、流衣は顔を背けた。
4人の男に囲まれてる上に走ってる車の中、いま逃げるのは不可能。逃げるチャンスがあるとしたら車から降りた瞬間しかない。でも目的の場所には仲間が待っていると言っていた。頭をフル回転させて考えたが思考が定まらない。
そんな中で、なんとか逃げる為の隙を見つけようと、流衣は勇気を振り絞り声を出した。
「あ……あの……」
「あん?」
梶が驚いて声を出した流衣をジロリと見た。
流衣は流衣は静かに息を呑んだ。
「なんで……こんな事……」
梶に覗き込まれた流衣は、蛇に睨まれた蛙のように固まりながらも震える声で喋った。
「奴をぶ潰す為に決まってんだろ」
梶は少しだけ真顔になった。
「潰す……?」
「黙り込むまで殴ってやるんだよ、抵抗できない様にしてな」
「奴って……」
一臣の事だと分かっていても今一度聞き直したかった。
「なにとぼけた顔してんだよ! 藤本だよ、お前の彼氏だろうが!」
理解出来ない表情の流衣を見て、隣のマサが切れた。
「……違う」
流衣は彼氏と聞いてドキッとした。
「は? しらばっくれてんじゃねぇよ。お前らが毎日2ケツでチャリ乗ってんの、こちとらしっかり見てんだよ!」
「……違う、彼氏じゃない」
「ふざけんな。嘘ついて逃げようったって無駄だかんな」
「嘘じゃない。あたしの自転車が壊れたから、送ってもらってるだけなの」
「はああ?」
「ふ……藤本くん、同じクラスで友達で……」
一臣の想いを知らない流衣は自分の片思いだと思っている。それ故に彼氏という名詞を訂正した。
「ブフッ!」
梶が突然吹き出して笑い出した。
「あっの野郎ただの運び屋かよ!」
釣られてマサも笑い出し一臣をただの足代わりに使われてると言った事で、流衣は自分が失言したのだと悟った。
「やってもいねぇ女のアシになってやんの!」
運転しながら安原も笑う。
「つー事はあいつ童貞じゃね⁈ バチクソおっもしれー!」
「ギャハハッ」
——あたしのせいで、臣くんが笑われてる、いやだどうしよう……。
一臣と梶達の因果関係を知らない流衣は、自分が言った事に対して一臣が笑われている事に酷いショックを受けた。
「へへぇ、なにかじゃあ、おまえ処女かよ?」
流衣の身体を下から舐める様に視線を動かして、いやらしい意味で言葉を使う事に躊躇しない梶に対して激しい嫌悪感を覚え、執拗な視線にナメクジに這われた錯覚に陥った。
「おもしれえ……へへへっ。目の前で手をつけてねえ女がヤラレるとこを見ながら、オレらに殴られて沈んでいく泣き黒子。……ウヒャヒャ、楽しくなって来たぜ」
乗って来たのか、梶は体を揺らして陽気になった。
そんな梶を横で見てゾッとする流衣は、未だに疑問が解けない。
——何でそんな酷い事するの?
臣くんが何かしたの……?
「どうして……」
流衣は言葉に詰まった。いつもなら思った事をつい声に出してしまうのに、いまは出そうと思っても声が出ない、言葉を覚えたての赤子の様に、辿々しく喋るのがやっとであった。
「気にくわねぇからよ」
「気に……?」
——気に食わない……って、それが理由……?
「素直に殴られてりゃいいのに反抗すっからよ、
あいつが沈黙するまでやらなきゃ気が済まねえ」
流衣は梶が言ってることが理解出来きずに、頭の中が混乱した。
そして梶は更に信じられない発言をする。
「へっ、信じらんねーって顔してんな。心配すんなお前は殴らないからよ、ただし、大人しくオレら8人の相手したらの話だがな。ぐへへっ、二人とも絶対助かんねぇからよ、せめてお前は諦めて楽しめや」
それは、死刑宣告を受けたのと何ら変わらないほど、流衣にはショックだった。
「ハハッ」
それを聞いたマサが笑った。
自分もいい加減酷い人間だが、こいつほどタチが悪くないと思った。
「なに笑ってやがる」
ゴッ!
言うと同時に梶の手が出た。その拳は流衣の前を通ってマサの顔面に当たり、マサは痛みで顔を抑えた。
「気に食わねえなら降りなクズ」
そのまま車の扉を開けて、走行中の車からマサを蹴って突き落とした。
——!?
突然の出来事に流衣は固まった。
「ヒィッ!」
マサは開いた扉に必死になってしがみつき、転がり落ちるのを防いだ。
「うわ!」
驚いた安原が急ブレーキをかけた。
走っていた新港に向かう県道は、田んぼの中に津波で運ばれたボートや自転車などが放置されたまま、月のない暗闇の道に車の通りはなかった。勢いよく止まった車から手が離れてマサは後ろに転がったが、怪我はなく直ぐに立ち上がった。
「なにすんだよ、突然!」
圭太が後ろを振り返って叫んだ。すると梶は蹴りを入れた足を伸ばしたまま、開いたドアから逃げようとさせないために、流衣の膝の上にドンと置いた。そして後部座席に横に座った状態で不機嫌な顔を圭太に向けた。
「ああ? 調子に乗んな “泣き黒子” 潰してぇって言うから、一発かましてやったんだ、オレを笑うならお前らから殺すぞタコども」
梶は自分を侮る行為を敏感に感じ取り、そこに容赦しなかった。
マサは梶の言葉を開いた後部ドアの前で聞き、生唾を飲み込んだ。
「どうすんだ?」
そのマサに運転席から安原が振り返って聞いて来た。
「いや待ってくれよ、マサはそんな事してねえじゃん。だろ?」
助手席の圭太が、今の現状で自分が一人にされたら堪らないと、慌てた様にマサに確認を取る。
「ああ、あんたに笑ったんじゃねえ……」
逆ギレした梶の怖さから、視線を合わせられずに否定したマサ。
「ふん? ……まあいいや、乗れ」
流衣の膝の上から足をどかし、梶はマサに促した。
マサは元の位置に座りドアを閉めると、車はまた動き出した。走ってる車から人を蹴落とす所作を見た流衣は、次々と起こる今までにない衝撃の出来事に固まって動けなかった。
——……この人達、友達じゃないの?
なんでこんな事するの……お前らから殺すぞって本気? 普通じゃない。
奴も助からないって、殺すって意味なの?
その時、座席の下から振動がした。
さっき腕を掴まれた際に落とした流衣の携帯が、着信を知らせるバイブレーションでその存在を知らせた。
流衣はギョッとして、直ぐに座席の下から携帯を探り寄せたが、確認するよりも早くその携帯を梶が取り上げた。
「やっ! 返して!」
流衣は携帯を取り戻そうとしたが、その動きはあまりにも非力だった。
梶は着信の名前を見てニヤリと笑った。
〈藤本一臣〉
携帯には一臣が登録した状態のままで名前が出ていた。
「へへへっ、お前の旦那じゃん。っと〈おともだち〉だったか?」
流衣は心臓が耳に聞こえるほど高く鳴っていた。
——臣くん……!?
だめ、だめ、切って、携帯切って、お願い!!
「よお、泣き黒子、ひっさしぶりジャーン?」
——あ……。
流衣の願いも虚しく、梶が携帯を受けてしまった。
「くくく、調べ上げてやがんな藤本、いや、ポリバレント、カミーニョさんよ」
流衣は絶望感からかボンヤリと意識が遠のく感覚に陥り、無意識に現実逃避した。
——ポリバレント……って英語だ、なんて意味だっけ……カミーニョ……は知らない、スペイン語かな。コーチから付けられたあだ名なのかな、スペインであだ名をつられるほど、慕われてたんだ……臣くん……。
「屁理屈こいてんじゃねえ」
梶の声色が変わった事で流衣はハッと我に帰った。
「おい梶」
安原が名を呼び梶の意識を向けさせると、サイドからゴソゴソとなにかを探し当て、梶にポンと投げてよこした。梶はそれを見た瞬間ニヤリと笑った。
「……気が効くじゃねーか、へへへ」
安原が渡したもの、それはサバイバルナイフだった。武器を手にした梶はテンションが上がった。
「金属バットが効かねえなら、これしかねえだろ」
安原は前を向きながら応えた。
それを真横で見た流衣は悲鳴をあげそうになった。
「ポポポポーン、ビーンゴ・ターイム!」
梶の狂気を感じさせる陽気な声が、流衣の心に恐怖心を植え付けた。
——この人達本気なの? 臣くんを本当に殺す気で……!
嘘だ……なんでそんなことするの?
『流衣!』
——臣くん。
梶からマサに渡された携帯が横切る瞬間に一臣の声が聞こえた。
「おい彼氏に、“助けてー!” って言えよ。あ、彼氏じゃねーのか、お前らまだやってねーんだもんなあ? ハハっ」
マサが一臣を馬鹿にしながら、流衣に携帯を向け、話せと促した。
——うそ……やだ、臣くんが殺されるなんて、そんなのやだ。
『流衣……そこに居る?』
——うん、居るよ。
流衣の頬に一筋の涙が伝った。
『必ず行くから、だからもう少し我慢して』
——うん、会いたい……でも
「……来ちゃダメ」
流衣は涙を拭って答えた。
——臣くんは来ちゃダメ。
『流衣!?』
“ふたりとも絶対助からねえから諦めな”
——絶対助からないならひとりでいい。
「……あたしひとりで大丈夫だから、だから、だから、来ないで! この人達の言う事聞いちゃダメ!」
「このアマ!」
梶は余計な事を言った流衣の口を塞ぎ、その勢いで座席の背もたれになって押し付けた。
『乱暴するな! 流衣は関係ない放せ!』
「調子に乗んなよ藤本。オマエに決定権ないだろーが」
一臣の叫び声が聞こえ、マサが答える最中、流衣の口を抑えた梶の手は流衣の鼻をも塞ぎ、息が出来ない苦しさで流衣は悶えた。
「んだと!? オレをおちょくる気か!」
マサの顔がみるみる紅潮して、憤慨してるのが分かった梶は、ニヤけながら流衣から手を離し、携帯をもぎ取って一臣と会話をし出した。
「オレに会いたいだろ? カミーニョ」
梶の卑劣で下品な言葉遣いを一臣が聞いてると思うだけで流衣は苦しくなった。
——やめて……。
臣くんが殴られてる所なんか見たく無い……。
そんなの見るくらいなら……嫌な事されても我慢するから……お願い……。
一臣の声は聞こえない、やたらに一臣を煽っている梶の言動を聞いて流衣は思った。
——この人達……臣くんを怒らせたいんだ……。
でも怒らないから、思った通りにいかないから、余計に頭に来て恨んでるんだ。
いつも冷静沈着で賢いから、決して煽りに乗らずに対応してるだけなのに、臣くんが自分達を馬鹿にしてると思ってる。
感情がないのは……表現できないのは知らないから……。
「お前の思惑は見当はずれだ、残念だったな」
——え!?
梶は通話を切ると手を払うように携帯を投げ、流衣に向かって話し掛けてきたので、心を読まれたようで一瞬ピクリとした。
「奴は必ず嗅ぎつける」
流衣はスカートの上に投げられた携帯を掴み
握りしめ、隠し切れない不快感を露わにして梶を睨んだ。
「そして奴は目の前に現れる。オレはその時の光景を地獄にしてーんだよ。それは女でも男でも構わねえ、奴のダチならな……分かるか? 自分のせいでダチがメチャクチャにされたら、男ならダメージ
100%、女なら1000%だ。おまえが泣き黒子を遠ざければ遠ざけるほど奴は後手に回り、罪悪感で溢れかえって苦しむ時間が長引くってこった、へへへッ、どうだ最高だろ?」
一臣を苦しめる事が目的だと言い放った梶の狡猾さを滲ませたニヤけた笑いが、一臣を助けたい一心で放った流衣の言動が自分に取ってはプラスの事だと言い放ち、ことさらに一臣を追い詰めるのだと流衣に思わせた。
——あたし……バカな事したの!?
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
どうしよう……どうしたらいいの……。
自責の念に苛まれ考えがまとまらない流衣を他所に、車は予定通りにフェリー埠頭へ、街灯のない道を暗闇を斬るように走っていた。
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