第5話
7
新日ネット新聞ビルの下層階にある「新日風潮社」の狭い編集室には、事務机を向かい合わせに並べて作られた「島」と壁際に並べられた事務机の間に、形ばかりの通路が作られている。その狭い通路の隅で、椅子を回して向かい合い、濃い顔の若い男性記者と新人の若い女性記者が話していた。
壁際の自分の机に肘を載せて、若い男性記者は知った風な顔で後輩の新人記者に語る。
「――そういう意味では仲間だしね。競って互いの足を引っ張り合っていたら、できないこともあるでしょ。でも、同じ方向を向いて、同じ目的に向かって走っているから、ライバルでもある。うーん、心のベクトルかあ、なかなか深いなあ。それ、いただき」
その先輩記者は後輩を軽く指差した後、椅子を回して自分のパソコンに向かった。
「同じ方向、ですか……」
そう呟いた若い女性の新人記者も、椅子を回して自分の机の方を向く。そして、机の上の薄型パソコンに手を伸ばして止まり、暫らく考えていた。
彼女は、以前に別の先輩の記者たちと蕎麦屋で昼食を共にした際のことを思い出していた。普段、同じビルの中で
「さん……32回? ってことは、ほぼ毎月送っていたのかよ」
近くに座っていた長身の中年男が落ち着いた様子で頷いた。
「ああ、『ドクターT』のあの論文は、2035年の7月から今年の2月まで、毎月、タイムマシンの発射日である23日より前に、上申書の添付データという形で司時空庁に送られているんだ。上申の内容は、もちろん、タイムトラベル事業の即時中止の要求。こんなに長い間送られてきていて、しかも、正式な行政文書に残す形で届いていて、司時空庁の奴らが読んでいないなんてことは、まずあり得んな」
以前の打ち合わせの際の話では、「ドクターT」はその後、総理官邸にも文書を送っている。合わせれば34回だ。明らかに異常な回数だった。その新人記者だけでなく、先輩記者たちも皆驚いていた。
その後、先輩たちは会話を続けたが、その間、彼女は必死に蕎麦を食べていた。先輩たちは既に天丼を食べ終わっていた。自分も早く食べ終わろうと必死だった。最後の一筋の麺を吸って口に取り込んだ後、何とか会話に加わろうと、咀嚼しながら無理に発言した。
「3年弱の間、『ドクターT』さんは、政府に対してタイムトラベル事業の危険性を訴え続けたってことですよね。モグモグモグ……」
懸命に顎を動かし、少し固めの蕎麦を噛んだ。
隣に座っていた彼女の上役の中年女が頷いて言った。
「そうなるわね。『ドクターT』がどうして、あの論文と同じものを34回も送り続けたのかは分からないけど、ただ、あれだけの量の論文を書くには、相当に長い年月をかけて研究を続けたはずよね。すごい執念だわ」
その隣の長身の中年男が険しい顔をした。
「それだけ、あのタイムトラベル事業の安全性に強い疑念を持っているということなのかもしれん……」
やはり、司時空庁が定期的に実施しているというタイムマシンの発射には、何らかの問題があるのかもしれない。その時、改めてそう思った。もちろん、先輩たちは疾うに同じ結論に達していたはずた。永山先輩も。その時に思ったのは、その程度のことだった。
だが、今、改めて色々と考えてみて、思う。先輩たちは競うように取材をしながらも、ああやって情報を交換し合い、互いに協力している。それは先輩たちが皆、同じ方向を見ているからこそ、できることなのかもしれない。真っ直ぐに、ただ一点を。彼女の上役である中年の女編集長は、それを「心のベクトル」と表現した。普段は犬猿の仲でありライバルでもある新聞社と週刊誌社の記者たちがこうして協働しているのは、その「心のベクトル」が同じ方向を向いているからだということだろう。少なくとも、後ろの席に座っている若い先輩記者の解釈によれば、そうだった。その説明を聞いて、過去の先輩たちの遣り取りを思い出しながら、新人記者の若い女は考え続けた。「ドクターT」もそうなのだろうか。何かの目的を真っ直ぐに見据えているからこそ、長い年月を掛けて研究を続け、あれだけの論文を完成させることができたのであろうか。「ドクターT」が1人であの論文を作ったのだとすれば、相当に難儀な仕事をしたことになる。本当に1人で作成したのだろうか。誰か支援した人間がいたのではないか。同じ方向を見ていた人間が……。
その新人記者の意識はある人物へと向かった。それは彼女が以前から気になっていた人物で、興味のある人物でもあった。あの昼食の時から暫らく日が経ち、その後の取材から判明した事実も多くなっている。彼女自身、取り入れた情報は多い。その中で、次第に絞られてくる人物たちの中で、彼女はその人物に直感的に疑念を持ち、関心を寄せていた。そして、それは決して悪い心象ではなかった。しかし、同時に、言い知れぬ不安と恐怖が彼女の脳裏を過ぎっていた。
編集室の掛け時計に目を遣った新人記者は事務机の上の立体パソコンから手を放すと、机の袖の深い引き出しに手を掛け、それを引いた。中には普段使っている虹模様のトートバッグが入れられているだけである。彼女はそのトートバッグに手を掛けたが、これから会う人物の地位と場所を考え、引き出しを閉めた。そのまま、足下に立てて置いてある合皮の黒い鞄を手前に引くと、膝の上に載せ、チャックを開けた。机の上から取った薄いパソコンを無理矢理に中に入れる。肩掛けのベルトを出してからチャックを閉めると、新人記者は意を決したようにベルトを掴んで椅子から腰を上げた。忘れ物がないか机の上を見回し、この季節にしては少し厚手のジャケットの裾を整えると、肩に鞄のベルトを掛ける。
後ろからその様子を見ていた濃い顔の先輩記者が彼女に尋ねた。
「あれ、どこ行くの」
若い新人記者は廊下の方へと歩きながら先輩に言った。
「私、ちょっと出かけてきます。調べたいことがあるので」
その小柄な新人記者は少し速足で奥の細い廊下を歩いていき、編集室から出て行った。
8
「AT理論が赤崎・殿所両名の頭文字をとって名付けられたなどと書いている三流紙もあるようだが、この点はいいかね」
田爪健三は、その右脇に抱えた大きめの不恰好な銃らしき物の先端を永山の方に向けたまま、少し下に傾けて、彼との対話を再開した。
永山哲也は両手を下ろし、自分に銃口らしき部分を向けている男の顔を真っ直ぐに見て答えた。
「はい。本当はAbandon and Takeの略ですね。放棄(abandon)と取得(take)。つまり、時間を『流れ』ではなく、空間の放棄と取得の交換現象として数学的見地から捉え直した。細かいことは解りませんが、そういったところだったと思います。とにかく、当時は画期的な新理論であったことは間違いないですよね」
田爪健三は口角を上げると、大きく頷いた。
「そうだとも。また、彼女たちが造った構造モデルの外形が反り返った帆と滑車の形に似ていたために、aback(裏帆に)とtackle(滑車)から取ったと言う者もいるが、そんなことはどうでもいい。ニュートン力学と量子力学の完全なる融合。それがAT理論だ。素晴らしい理論だよ。ある問題さえ無ければね」
「問題?」
永山哲也が聞き返した。
田爪健三は、今度は顔を険しくして頷く。
「ああ。それは、この理論が、そのあまりにも美しく凛とした骨格の中に幾つかの不可解な仮骨を含んでいたということだ」
「理論の中に、タイムトラベルを可能とする契機を孕んでいた。従来の量子物理学の領域では否定されていたタイムトラベルを。そういうことですね」
永山がそう確認すると、田爪健三は再び大きく頷き、そして、大きく溜め息も吐いた。
「そうだ。否定されていたタイムトラベルの可能性が出てきた。だが、お2人がこの理論を発表されたのが2014年。その当時は、この理論がタイムトラベルを可能にするなどとは誰も考えていなかった。この2人の大先生方もね。まったく可笑しな話じゃないか」
田爪健三は少し微笑むと、テーブルの上の計測器の平坦な部分に乗せた砂時計の砂が落ち終えているのに気づき、それを左手で逆さに返した。しかし、その瞬間も、永山哲也は不用意に動こうとはしない。彼はただ、そこに立って田爪を観察していた。
視線を永山に戻した田爪健三は、動かない永山を見てニヤリと笑い、また話し始めた。
「かく言う私自身も、その頃はまだ赤崎教授の研究室に入ったばかりだったから、この怪物のような難解さと女神のような美しさを併せ持ったAT理論というものを理解するのに必死で、その本当の価値と恐ろしさには、全く気付いていなかったのだがね」
「その時、博士はお幾つだったのですか」
「ああ、ええと。たしか政府防災隊を除隊した翌年だから、25歳かな。若かったよ。若かった」
田爪健三は苦笑いをしながら、首を横に振った。
永山哲也は更に尋ねる。
「その後、例の実験に成功したのですね」
「そうだ。理論は実践して見せなければ意味がない。殿所教授の言葉だよ」
永山哲也は、歴史的な事実関係は知っていた。しかし、それは表層的で片面的な情報に過ぎない。会社の資料室でAT理論やタイムマシンに関する資料を読み漁っただけの永山哲也は、そのことを十分に自覚していた。だからこそ、今、歴史の当事者である田爪健三が目の前で話す内容に、純粋に興味を持った。彼は黙って田爪の話に耳を傾ける。
田爪健三は永山の心情を知悉したかのように、ゆっくりと頷いてから再び語り始めた。
「我々は、この新理論の真性を世に示すために、目に見える形で、原因に基づく理論どおりの結果を実現する必要があった。だが、そう簡単にいくものではない。簡単にタイムトラベルなどと言うが、それは時間と空間の移転だ。まず、空間の移転が難しい。そして、時間。『時間』とは何か。まずそこからだった。それに、根本的な難題もあった。これら二つのエレメントの転換をどうやって知覚できるようにするか。この点は非常に難しい問題だったよ。我々は深い考察と議論、細かな実験を重ねた。そして、九十九折の長い道程を進んだ先は、分かれ道だった。さて、どちらに進むか……」
田爪健三は永山の眼を覗いた。それは永山が話について来ているかを確認する仕草だ。
永山哲也はすぐに言った。
「未来にタイムトラベルする方法と、過去にタイムトラベルする方法のうち、いずれをもってAT理論を証明するか、という問題ですね。それによって実験計画が違ってくる」
田爪健三は満足そうに頷いた。
「そうだ。我々は議論を重ねた。すると、現在から未来への時空間移動については議論の中でも争いとはならなかったが、『過去に行けるか』については大きく意見が分かれた。だから、AT理論が正しいと言うためには、『過去へ行くこと』が可能であることを証明する必要があるとの結論に達した」
永山哲也は首を傾げる。
「どうして未来に行くことは議論にならなかったのです?」
「AT理論の本質的な限界だよ。取得と放棄だ。取得の源泉に向かっても、証明としては意味が無い。知覚できないからね。理論値は全てゼロか無限大のいずれか。まあ仮定条件そのものを確定させることができない以上、計算すること自体に意味が無いがね」
永山哲也はもう一度首を傾げた。
彼の理解度を計り取ったかのように、田爪健三は含み笑う。そして静かに言った。
「かかったよ。実に7年もの歳月を費やした」
「実験そのものに、ですか」
「実験は理論の構築が前提となる。理論を構築し、実験して確かめ、その結果により理論を修正し、その修正した理論を、また実験で確かめる。その繰り返しだ」
「長いですね、7年は」
「そうでもない。私が『長い』と言ったのは、別の意味だ。感情的で感覚的な。7年というのは、何かの研究期間としては、ほんの瞬き程度の時間に過ぎない。我々は運が良かった。普通、もっと多くの時間と労力を費やすものだ。他人のね。科学の進歩とはそういうものだ。その幾人もの幾多もの苦悩と苦痛と犠牲の上に人の文化的生活は温座している。そのレコーダーも、さっきのイヴフォンとか言う通信端末も、全てそうだ。名も無き多くの人々の犠牲の結果だよ。我々は、その犠牲を食らって便利と快適を享受しているのだ。それを忘れてはいかん」
永山哲也は不満そうに皮肉を込めて言う。
「タイムマシンの恩恵は受けていないと思いますが」
田爪健三は短く笑った。
「直接にはそうかもしれんね。だが、今の君はどうだね。その事でこうして私に会い、インタビューをしている。そして、その記事を書いて会社に褒められる。もしタイムトラベルが実現したという事実が無ければ、今のこの事態も在り得ない。社長賞も特別ボーナスも無しだ」
「あなたに銃口を向けられることもね」
永山哲也は田爪をにらんだ。田爪健三は首を横に振る。
「いや、それは違うな。間違えている」
「どうしてです? 僕がここに取材に来て、ここに立っているから、あなたはその銃を僕に向けている。そうでしょ?」
田爪健三は嘆息を漏らした。
「いや。残念だか、それは違うようだ。起点に左右されない事実なのだよ、これは。そして、私のこの推論が正しいことは、今こうして証明されている」
「起点に左右されない……」
視線を外して少し考えた永山哲也は、驚いたような顔を上げて田爪に言った。
「まさか成功しなかったのですか。AT理論の実証となる実験に。AT理論が発表された2014年から7年後というと、例の仮想空間での実験の頃ですよね。あの実験がタイムトラベルの実現の出発点、つまり起点となった。まさか、あの成功は捏造なのですか?」
田爪健三は呆れたように笑いながら返した。
「馬鹿を言っちゃいかん。成功したさ。だがもちろん、それまでは失敗の連続だ。失敗、失敗、また失敗」
そして真顔に戻ると、暫らく黙っていた。何か過去の記憶を回らせているようだった。
やがて彼は、永山の顔を見て言った。
「しかし、諦める訳にはいかなかった。赤崎教授も殿所教授も、かなりのご高齢でいらしたからな。我々研究員としては、何としてもお2人がお元気な内に実験を成功させなければと必死だった訳さ。その意味で7年は長かった」
「どういった実験をなさったのですか」
永山がそう尋ねると、田爪健三は記憶を整理するように、一拍置いてから答えた。
「うん。とにかく何でもやった。危険な実験、大掛かりな実験。無能なうえに馬鹿でかい装置やら、やたら金ばかり食う設備やら、使える物は何でも使って。しかし、何の結果も出せないまま時間ばかりが過ぎていった。皮肉なものさ。時間の研究をしているのに、あらゆる物を浪費しても、大切な『時間』は掴めずにいる」
田爪健三は横のテーブルの上に目を遣り、そこに置いた砂時計を見つめた。暫らく砂が流れ落ちる様子に見入っていたが、再び永山が尋ねたので、彼の方を見た。
「成功のきっかけは?」
「実験に取り掛かって3年ほど経った頃だった。殿所教授の下の研究員が面白いことを言い出した。『おい、仮想空間でやってみよう』とね」
田爪健三は肩を上げて短く笑ってから、話を続けた。
「丁度その頃は、2018年だったかな、日本ではNNC社がニューラルネットの自己組織化と自己増殖を可能にしたバイオコンピュータの開発に成功したばかりだった。奴が言うには、その新型コンピュータを別の大企業が開発中の量子コンピュータに接続してハイブリットのデュアル・システムにすれば、非ノイマン型の並列処理が多次元で可能だと。そして、それを使えば、現実世界と寸分違わぬ完全な仮想空間でマクロ級の実験が自由にできるぞってな。我々の研究のスポンサー様が大枚を叩いて建造した最新型のバイオコンピュータと、そのライバル会社である大企業が開発中の大型量子コンピュータ。いずれ政府の直接管理になる予定だった二機の超巨大コンピュータを簡単に『いじってみよう』だと。この実に世間知らずで超楽天主義の学者馬鹿が……」
「高橋博士ですね。当時は高橋諒一研究員」
田爪健三は首を縦に振った。
「そうだ。そして女神は奴に微笑んだ。いや、我々全員に。時空間の逆送可能性に興味を示した当時のお偉いさん方のお蔭で、すんなりと国宝級の究極コンピュータを使う許可が下りたのだよ。当時はまだ政府の上級研究員でもなかった我々に対してね。それで、おカミの気が変わらないうちに早速取り掛かった。2年ちょっとの準備期間なんて、あっという間だったよ」
永山哲也は田爪の目を見て一つ一つを確認する。
「生体型コンピュータの『
永山の発言を遮り、田爪健三ははっきりと言った。
「発案したのは高橋君だよ。彼が思いつき、接続方法を検討した」
「しかし、彼には実現できなかったのですよね」
田爪健三は強い口調で言う。
「それは彼に失礼だ。実現できなかったのではない。実現させてもらえなかったのだよ」
「実現させてもらえなかった?」
永山哲也が聞き返すと、田爪健三は目を瞑って深く頷き、永山に概略を説明した。
「彼は天才肌の学者だった。その彼に政府の幹部連中がついていけなかったのさ。接続方法のプランをプレゼンしても、官僚共も、彼らが頼った他の学識者たちも、だれも彼の構想を理解できなかった。苛立った彼は少し無理をしてね。結果として国と企業に損害を生じさせてしまった。それで二機の巨大コンピュータの接続事業からは遠ざけられてしまったのだよ。官僚や企業家たちによってね」
永山哲也は目を丸くして尋ねた。
「無理をしたって、まさか、勝手に接続しようとしたのですか」
「まあ、そんなところだ。だが、彼の構想は正しかった。ただ、若干の修正と手段の追加が必要でね。私が補ったのは、そういった類のことだ」
「では、実際に作業されて、物理的に接続を実現したのは、やはり田爪博士なのですね」
田爪健三は再び大きく首を縦に振った。
「ああ。それは私だ。神経ケーブルの設計と育成から最終的な接続作業までは、全て私が実施した。なかなか面白かったよ」
永山哲也は少し興奮したように田爪に問いかける。
「タンパク質のコンピュータと金属のコンピュータを接続している仕組みが未だに解明されていないということですが、いったいどうやって……」
田爪健三は満足気な笑みを浮かべると、呟くように言った。
「そうか。まだ解からんかね。そうすると、仕組みが解からんシステムを使って、あの国の、いや、世界中の人間は生活している訳だな。愚かな連中だ」
永山哲也は少し早口になって訴えた。
「今では、インフラ制御から金融、医療、国防に至るまで、あなたが接続して始動させた『SAI五KTシステム』で集中管理されているのですよ。仕組みを解明するために分析しようにも、システムを停止させることが事実上できない状況なのです。万が一のことを考えれば、接続構造について博士が詳細を……」
田爪健三は抱えている銃らしき物の先端を永山の顔の位置に向けて言った。
「君は『SAI五KTシステム』について話を聞きに来たのかね。それも良かろう。但し、それを私が話し終わる頃には君の人生も終わるがね」
「……」
永山哲也は再び肩の高さまで両手を上げて動きも発言も止めた。
永山に大きな銃らしき物を向けたまま、田爪健三は言う。
「さあ、どうするかね。人類のために『SAI五KTシステム』の接続理論を私から聞き出し、この場で消されるか、記者としての好奇心を満たし、私の話を日本に持ち帰るか。まあ、前者を選択する場合、君が私の話を理解できることが大前提だがね。あまり意味のある比較だとは思えんな。悪いことは言わん。馬鹿のレッテルを貼られて死にたくなければ、後者を選択したまえ。永山君」
永山哲也は両手を上げたまま田爪をにらんで言った。
「これが選択と言えますかね」
田爪健三はほくそ笑むと、銃らしき物を向けたまま頷く。
「決まりだな。話を進めよう。君が理解力のある記者で助かったよ。見ての通り、この銃は重くてね。長く構えていると疲れる」
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