幼馴染のパンツに埋もれた俺
何かを思い出したようで、桜花は慌てていた。
「どうした、桜花」
「ご、ごめん、ショウくん! 悪いんだけど、直ぐそこのクローゼットの中に隠れて!」
「え? なんで……うわッ」
強引に背中を押され、俺はクローゼットの中へ押し込まれた。扉を閉められて、俺は動けなくなった。……いったい、どうしたんだか。
それにしても、この中、良い匂いがするし……頬とか腕になにか触り心地の良いものが当たっているような。頭の上にも何か乗ってるし。
……って、これ、桜花のパンツ!?
もしかして、このクローゼットって下着専用なのでは! 整理が追い付いていない箇所もあるようで、下着らしきものが地面にも散乱していた。なんてところに押し込めたんだ、桜花のヤツ。
暗くて確認しようがないけど、頭にあったものを掴んだ感じ――それぽかった。多分、俺は今、パンツかブラジャーを手にしている。感触的に多分だけど。
ドキドキしていると、桜花の部屋に誰かやってきた。誰だ?
『――大蔵さん、また勝手に来たんですか。いくら、わたしのマネージャーだからって無断で部屋に上がって来ないでください』
桜花の声が。
なんだか怒っているようだな。
相手は、マネージャーか。
『そういう契約だからね、桜花ちゃん』
『だからって、管理人さんに頼んで開けてもらうとか……』
そうなのか。アポなしで、しかもマンションの管理人さんに開けてもらって来たとか、それって……いくらマネージャーでもプライベートに干渉しすぎだろう。
声からして男っぽい。
まさか、桜花を狙っているのか。
『桜花ちゃん、君は世界一のVTuber『シズカ』なんだ。いつ誰が君の存在に気づくか分からない。現役女子高生だなんてバレれたら、大変だよ。だから、誰かが君を守らないと。それに、僕は君のマネージャーだ。別に問題はないだろう』
『困ります。わたしにだって生活があるんですから』
だけど、大蔵とかいうマネージャーは、深い溜息を吐いた。
『誰のおかげでVTuberをやれていると思っているんだい? 僕の紹介がなかったら、君は今頃、売れない三流声優として活動していただろうね』
『そ、それは……。中学三年の頃、たまたま街を歩いていたところスカウトしてもらって、事務所を紹介していただいた事には感謝しています。でも、最近の大蔵さんはちょっとやりすぎです! せめて家に来る前に連絡くらいは下さい。それが常識でしょう』
桜花は嫌がっていた。大蔵ってマネージャー、嫌われているな。いったい、どんなヤツか一度見てみたい。クローゼットの隙間から見えないかな……うーん。
お?
ちょっと見えそうだぞ。
扉の閉め方が甘かったのか、僅かに開いていた。これなら、外の状況が少し分かるかも。眼を最大限に動かしてマネージャーとやらの姿を捕捉する。
いた。
桜花の前に立つメガネの男。
二十代前後だろうか、黒髪をオールバックにしていた。アイツが大蔵か。なんだか、高額で商品を売りつける怪しげな営業マンって感じだな。
「……まったく、売れてからの君は随分と変わってしまった。だが、まあいい。どのみち、桜花ちゃんは僕がいないと生きていけないからね」
「大蔵さん、何を言っているんですか。意味が分からないです」
「まだ分からないか。桜花ちゃん、君を今から調教する」
「え……」
「僕色に染めてあげるって言っているんだ。さすがに中学生の時は我慢してあげていたけど、高校生ともなれば十分。良い肉付きになったねえ」
大蔵とかいう奴は、桜花のふとももにイヤらしい手つきで触れていた。しかも、スカートの中に手を入れようとして……アイツ!
「……や、止めて下さい!」
「やれやれ、頑なだなあ。でも、今すぐ気持ち良くしてあげるよ。ほ~ら、もうすぐ乙女の神秘に――」
俺は、強制わいせつの現場を証拠のため写真撮影。それから、クローゼットから飛び出て大蔵をブン殴った。
「てめぇ、桜花になにしやがる!!」
怒りのままだった。
普段の俺だったら絶対にできない鉄拳制裁。けれど、今は桜花を酷い目に遭わせようとした大蔵というクズ男がどうしても許せなかった。
桜花は、俺の大切な幼馴染。
泣かしやがって、絶対に許さん。
「ぐはぁぁぁっ!!」
ゴロゴロ転がって壁に激突する大蔵。頭を打ちつけ、気絶した。……こ、こんな上手くいくとは、クローゼットからの奇襲攻撃だったし、運が良かったな。タイマンだったら、逆にボコボコにされていたかもな。
「桜花、大丈夫か!」
「ショウくん……怖かった」
「お、おう」
抱きつかれて、俺は安心した。桜花が無事でよかった。もし仮に俺が今日、桜花の部屋に招かれていなかったら……襲われていたかもしれない。危なかった。
「……ショウくんがいて良かった」
「あんなヘンタイマネージャー変えてもらえ。明らかにお前の体目当てぽいぞ」
「うん、あんなサイテーな人だとは思わなかった。今までは普通だったんだけど、でも、最近はベタベタ触ってくるから、変だなぁとは思ったんだ」
なるほど、予兆はあったわけだ。
その後、俺がスマホに収めていた証拠写真が決定打となり、大蔵は懲戒解雇――つまり、クビとなった。
***おねがい***
続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。
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