甘くてとろけるようなキスを
50階へ到着。
最上階だったのか。こんな高いところから、よく俺の姿が見えたな。既に街が見渡せる風景が広がっていた。
「凄い場所に住んでるな、桜花」
「うん、ここ眺めがいいからね。それで選んでみたの」
「なるほどな。しかも最上階とは、最高じゃん」
「全部屋借りてあるから、お隣さんとかいないし、気にしないで住めるよ」
――え?
部屋を全部って……確かに、合計四フロアほどあるように見えた。ま、まさか――ガチなのか。こういう高層マンションの最上階って、一部屋でも家賃何百万とかじゃないっけ。有名ユーチューバーが言っていたのを覚えていた。
「な、なあ、全部ってことは家賃は?」
「思ったより安いよ。特別割引で家賃二百万円だし」
に、二百万円……。
とんでもねぇ家賃だな。
それを支払える桜花もスゲェ。
さすが超有名VTuberのシズカだ。
そりゃ、毎日『投げ銭』をゲットしているもんな。しかも、それだけではない。広告収入、ASMRやグッズの売り上げ、企業案件とか音楽活動での収入。その他、イベントなどで稼ぎまくっているはず。
「ぶっちゃけ聞くけど、VTuberの収入っていくらなんだ? いや、無理に言わなくていいけどさ」
「ショウくんになら教えてあげるよ。んと、月収で言うと三百~五百万円以上かな。月によって変わるからね~」
ということは、推定年収は三千万以上か。もっとかもしれない。その金額だけでヤベェや。そりゃ、こんな良いマンションに余裕で住めるわけだな。
展望台のような広い通路を歩き、部屋の前まで来た。
「凄すぎて他に言葉が出てこないよ」
「あはは。それじゃ、入ろっか」
玄関もこれまた広かった。
綺麗に整っていて、ピカピカだ。
足をつけるのが億劫になるな。
「お、お邪魔します……」
「そんな、かしこまらなくていいよ。今日から、ショウくんも一緒に住むんだから」
幅の広い廊下を歩き、すぐにリビングへ。そこは、オシャレな空間が広がっていた。なんか無駄にカッコいいシャンデリア。
ソファと五十インチ以上はある液晶テレビ。
「うぉ、窓が足元から天井まで……」
「強化ガラスなんだって。ここの眺めが最高で気持ちいんだ」
圧倒的な
街並みがどこまでも続き、海や山も望めた。素晴らしい景色だ。これは、高い家賃を払ってでも住みたくなるな。
「うん、良い場所だな。ここでVTuber活動をしているとか、最高の空間だな」
「夜景もずっと眺めていられるくらい綺麗だよ。ショウくんと一緒に見たいな」
この高さだから、夜もまた違った風景だろう。夜が楽しみだな。
それから部屋の案内をしてもらった。
寝室は二つあった。トイレも二つ。どうやら、スタッフなど関係者が来る場合があるらしく男女用トイレが設置されているようだ。
バスルームはひとつ。
二、三人は余裕で入れるジェットバスが豪快に設置されていた。大きすぎだろ!
それから、物置部屋とかもあって、そこには様々なブランド品が沢山山積みになっていた。俺でも知っている高級ブランドがゴロゴロと転がっていて驚いた。あれだけで、数百万分は優にあったな。
そして、キッチンへ。
大型冷蔵庫はもちろん、レンジやオーブン、食洗機やらIHコンロも完備。素晴らしいほど料理環境が整っている。
「桜花、料理するのか」
「たまにね。でも、最近は“ウーハーイーツ”も多いかな」
ああ、配達サービスか。
さすが金持ちは違うな。
そうか……俺はこんな豪邸ような環境で桜花と同居できるのか。ヤバすぎるっていうか、実感が沸かないっていうか。本当に良いの!? って感じだ。
最後に、桜花――いや、シズカの部屋へ向かった。そこには、VTuberの配信環境があって、俺は初めて見る光景に興奮する。
パソコンはもちろん、複数のマイクとかカメラなど機材がたくさん設置されている。音響機器とか収録現場で使うようなガチのヤツじゃん。すげえな。配線がところ狭しと続いているし、これが配信環境。
ゲーム機もあっちこっちにある。
さすがの俺も興奮を隠しきれない。
「シズカの配信部屋かー! こりゃ驚いたよ」
「な、なんだか恥ずかしいね」
照れる桜花は、部屋に入ろうとして配線で足を引っ掛けた。なぜか俺の方へ倒れ込んできて、押し倒されてしまった。
ドンッと鈍い音が響く。
「いっててて……ん? なんだ、この柔らかいもの」
フニャフニャ形を変えているような。
「……そ、そこ、揉んじゃダメぇ」
甘い声を漏らす桜花。
えっと、もしかして……
あああああああ!!
不可抗力とはいえ、なんてところを揉んでしまったんだ。いや、だけど桜花が転んできたのだから仕方がなかった。物理的に支える場所が
「や、やわらか――じゃなくて、す、す、すまん!!」
「い、いいの。今のはわたしが転んじゃったから……あぁっ!」
また倒れてくるし。
……なんだか、桜花を抱きしめる形となり、俺に得しかなかった。どうせなら、このまま密着していたいまであったけど、さすがに悪いな。
「昔と変わらず、おっちょこちょいだな」
「うぅ……でも、良かった。ショウくんがいなかったら、ケガしてたかもだし、ありがとね」
「い、いや……これくらいお安い御用だ」
桜花の笑顔があまりに可愛くて、俺は心臓が鳴りやまなかった。ドキドキしていると、見つめ合う形となっていた。
「ショウくん……キスしよ?」
「え、でも」
「わたしに触れた罰として、甘くてとろけるようなキスを要求します」
「それは罰っていうか、ご褒美だな」
俺は、雰囲気に流されて、桜花のあの桜色の唇へ重ね合わせ――『ピンポ~ン』――と、チャイムが鳴って……って、来客!?
互いに驚いて、離れた。
俺以外に誰か来る予定があったのか?
***おねがい***
続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます