こんにちは、佐古間です。
遅ればせながら拝読できましたので、感想(といえるかわかりませんが)を書きにまいりました。
最初に拝読した時、その密度に圧倒され驚きました。
雨が降っていて、本棚と机のある部屋で、男女が会話をしている場面の繰り返し。正直「いつ終わるのか……!?」と逆にどきどきしながら読みました。
初読で噛み砕くのに少し時間を要しまして、何度か繰り返し読んでいたのですが、読むほど味わい深い作品だな、と感じた次第です。
同時に東と南の要素はこういう方向性の事を言うのね、と非常に納得致しました。
同じ部屋の、同じ男女の、雨の日を切り抜いているようにも、同じ雨の日の、似たような部屋の、様々な男女を切り抜いているようにも見えます。
同時に、同じ日の事を違うように書いているのか、違う日の事をそれぞれ描写しているのか。
前後の描写が一切なく、無慈悲なまでに「雨が降っている」「本棚と机のある部屋」「二人の男女の一言だけの会話」しか書かれていないので、余計にその一場面がどういう一場面なのか?という想像が膨らむのだな、と感じた次第です。
正直に、最初に読んだときは様々な男女の雨の日を描写されているのかな、と思って読んでいました。
読み直していくうちに「同じ男女で同じ部屋かも?」と思い、続けて読むうち「もしかして同じ日かも?」というような。
ただこの辺りは作中に何の手掛かりもないので、あえて色々な読み方ができるように書かれているのかしら?と思った次第です。
読むたびに顔色を変えるので、どこか掴みどころがなく、不思議な印象を受けました。
手を変え品を変え描写されていく中で、詩的な表現が含まれ始めるにつれ、なんとなくうっすらと話が展開しそうな期待感を抱かせるところも秀逸だな、と思った次第です。
「もしや最後何か話が続くかも?」と思わせておいて、やはり変わらず雨が降り続ける。期待した分落とされてしまうのですが、ある種良質な「うんざり感」といいますか。こちらにまで雨音が聞こえてきそうな雰囲気が徹底されているな、と感じました。
その分、読後の達成感もひとしおでした。
長々と失礼いたしました。
とても面白かったです!
作者からの返信
感想ありがとうございます!
私としては東南東の王道作品みたいな感じかなと思ってます。南は香り程度で、東としてもシンプルで読みやすいので、まあ普通かなという感じです。ここからもう一段階南を入れると、ぐっと書きにくく読みにくくなります。
「良質なうんざり感」というのは、本作を楽しむ肝になると作者の私は設定しています。飽きを楽しむ、楽しめる飽き、と私は言語化しています。「良質なうんざり感」とおよそ同じですね。
佐古間さんは感想で本作の舞台設定についてあれこれ推測されてますよね。同じ日の違う男女? 違う日の同じ男女? 同じ日の同じ男女? みたいな。
で佐古間さんは察していると思うんですけど、作者としては設定はないんですよね。読者それぞれが推測するのは自由ですけど、作者としての設定はない。
また「作者に設定はない」と読者が察することができると、この舞台設定を推測するのに本気になる必要はないな、と感じられてくると思います。
そして「良質なうんざり感」があると、舞台設定への推測が「飽きを楽しむための手慰み」になってくる感覚があると思います。
これは「景色をぼーっと眺めていて、その景色の中にある物についてあれこれ推測したりして、その時間を楽しむ」っていうのと似てると思います。
推測に本気になる必要はないけど、その変わり映えしない景色を飽きつつも楽しむ手慰みとしての思考、ですね。
それって楽しいよねー、みたいなのが本作の執筆思想のひとつです。
世の小説の情景描写って「見飽きた景色を、見飽きないように文章にする」という思想があると思うんですけど、本作は「見飽きていない景色を、見飽きるように文章にする」みたいな思想があると思います。情景描写とは違う、“景色の表現”といいますか。
それって楽しいなという気持ちもあって書きました。
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手を変え品を変え描写されていく中で、詩的な表現が含まれ始めるにつれ、なんとなくうっすらと話が展開しそうな期待感を抱かせるところも秀逸だな、と思った次第です。
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これは私としては意識してませんでした。
というのも文章の順番については(ごく一部を除いて)、表計算ソフトでランダムに入れ替えたものをそのまま採用しているのです。なので大まかな流れについては、私の意思は入っていません。
なので各文間の揺らぎが「詩的」と判断できるくらいに大きすぎるのか(それならば私の反省点です)、読者として佐古間さんが無意識に「変化を拾いたい」と思っているかのどちらかだと思います。
後者ならそれはそれで面白いなあと思います。景色をぼーっと眺めているだけでも、我々は勝手にストーリーを作りたがるものですからね。
楽しんでいただけたようで良かったです!
ありがとうございます!
東南東……なるほど、北とは全く違う切り口のお話だなぁと思いました。タイトルがカッコいいですね。「or」というところが、何を示しているのかとても興味が湧くタイトルだと思います。
繰り返されるリフレインが、止まない雨を示しているようで、とても詩的なお話だと思いました。
自分には絶対書けない領域ですねこれは……! エンタメ的な面白さではない、興味深いというベクトルの面白さでした。勉強になりました!
作者からの返信
感想ありがとうございます!
「or」の先は設定していませんので、自由に解釈してもらえればと思います。
それとタイトルに「東西南北」を入れるのは完全忘れてしまってました。いや、正規の参加作品ではないのだからいいんですけど……完全に忘れてました。投稿したあとに気づく。
ありがとうございました!
編集済
こんにちは! 水木レナです。
こちら、どこかで拝読した記憶があります。
実験的な東というのはわかりました。
が、分析などはおっつきません。
少々堅苦しく始まる冒頭が、手を変え品を変え、繰り返されているように思えるのです。
長髪の男と短髪の女、という始まりのところは、もうちょっとなにか言葉の選択方法があるんじゃないか、などと考えた後、別の表現になった同じシーンをすぐに見て、あ、そうだよね、こういう言い方もあるよね、というのがずーっとずっと続きました。
そして、部屋の中の男女はどこへもゆかず、ただ雨の音を聴き、なにがしかを思うのですが物語にはならず、そのままラストまで動きません。
拝読していて、いろいろなパターンと思考が考えられるのはわかったけれども、同じシーンばかり見ているのはどきどきしないなあと。
読むことに価値があるとすれば、こちら自分もやってみたいなあ、と思えるのでおもしろかったです。
お好きな冒頭を選んだら、物語を始めましょう? と立ち止まった男女に問いかけたくなる作品でした。
あるいは、こちらは並行世界の一部分を並べてみせているのかなとも思いました。
いろんな男女がいる、それぞれに思惑もある。
好きか嫌いか、気分はどうか、そんなことを話しているなあと。
ずっと雨は降り続いているようだけれどそれは一瞬のことにすぎなくて、物語は始まらない、そんな印象を持ちました。
作者からの返信
感想ありがとうございます!
色々なパターンで本作を咀嚼しようとしてくださってありがとうございます。
作中世界的な設定はこちらでは用意していませんので、色々な楽しみ方をしてもらえればと思います。
どきどきしないことに意義を持たせた作品ですね。
ありがとうございました!
東南東、なるほどと思いました。
自分の中で東や南のイメージがあんまりはっきりしていなかったんですが、明らかに北ではないし西が目指す方向でもない、そして抽象的な感覚はありつつも重きを感じるのは技法の方なので、なるほど東南東という感じです。
作品を読んでいて、真ん中くらいまで来て「つまりこういう作品だよな……」という、一種の飽きが来たのですが。
それ自体が、降り続く雨にうんざりする感じが表現できているんだろうなと感じました。
web小説として出すには不利な一方、作品として存在する意義が確実にある作品なんだろうと思います。
「長編小説のピンポイントでちょっとマネしてみたいな……」とも思って、そう思ったということは東の作品としては大成功なんだろうなと思います。
創作意欲のすみっこを突っつく、意義のある作品を読ませていただきました。
ありがとうございます。
作者からの返信
感想ありがとうございます!
雨の表現を目標として「飽き」を手段として利用したのではなく、「飽き」の表現を目標(のひとつ)にした作品ですね。「飽き=悪」とするのは北特有の発想ですが、飽きには飽きにしかない魅力があると思います。
本作は六年前の作品を加筆修正した作品なのですが、当時は30文でした。今回出すにあたって50文にしたのです。
空何さんが真ん中あたりで飽きを覚えたということは、30文だと飽きたくらいで終わったはずですが、50文なので飽きている時間がしっかり確保できたということでしょう。
そういう意味で20文の追加は正解だったなあと思います。
(おそらく北向きの)挑戦の演出として真似したいと思われたのは、私は東として大成功とは思いません。
北に演出を提供するために東は存在しているわけではありませんので。
もちろん演出として参考にするのは自由ですけどね。
ありがとうございました!
個人的に南の方角に興味があるので、こちらの作品も拝読してみました。
東南東だとこのようになるんですね。文字数を合わせるのが、大変だったのではないでしょうか。
同じ一瞬を切り取ったようにも見えるし、時間軸通りに出来事を並べたようにも見える、不思議な作品でした。
他の方のコメントも軽く拝見しました。私も「飽き」を感じはしましたが、それよりも「この箇所のこの表現が好きだな」みたいな感じで、表現を楽しむ気持ちの方が個人的には勝りました。
現在の方角企画参加作品へのご感想でお忙しいと思いますので、ご返信はお気になさらず。
作者からの返信
感想ありがとうございます!
手法的な話をすると、本作は「内容が同じ」「語順が同じ」「文字数が同じ」「見どころのある言い回しをしない」「同じ言い回しを二度使わない」という条件で五十文生成しています。
このうち「見どころのある言い回しをしない」「同じ言い回しを二度使わない」が技術と作業量を求められるもので、苦労しました。
反面「文字数が同じ」は手間ではありますが、一定の文章技術があれば苦労するようなものではないと思っています。
ですので作者としては
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他の方のコメントも軽く拝見しました。私も「飽き」を感じはしましたが、それよりも「この箇所のこの表現が好きだな」みたいな感じで、表現を楽しむ気持ちの方が個人的には勝りました。
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は妥協を突かれた心地です。特定の一文が輝いてはいけないという方針の作品なので、このように感じさせたのは数を生成するなかで表現に逃げて数を稼いでしまったということなのです。実際執筆時にはそういう感覚もありましたから。推敲時などでも見どころを削ぐ作業は行ったのですが、削ぎきれなかったところですね。
「この箇所のこの表現が好きだな」というのは相対的な性質を持っていますから「この箇所のこの表現が好きだな」と思わせないのはすごく難しいのですが、やっぱり追求が足りなかったなというフィードバックにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
本作は第一回の方角企画にちなんで投稿された作品(≠参加作品)なのですが、南に興味を抱いて本作も読んでくださったこと、とても嬉しく思います。
カクヨムではもう一作東南東の作品(「四季(前展)」)も投稿していますので、こちらも良ければどうぞ。