第13話 ルルタニア英雄譚
「これが大猿の指です。
確認してください。」
俺はブライ村長に塩漬けにした大猿の指の入った袋を渡した。
「指……か。」
「顔は潰してしまいましたので。」
村長はちらりと東風さんの方を見る。
たぶん東風さんが大猿の頭を潰したと思っているのだろう。
東風さんは、二つの椅子に尻を乗せて見下ろすように村長と俺のやり取りを眺めている。
「ま、いいだろう。
デニムから全ての報酬をあんたに渡すように言われているが、ゴブリン退治の報酬でさえ今の村にはきついのだ。
すぐには全額払うのが難しいため、残りは後払いにしたいがよろしいか?」
村長は金が入った袋を俺に差し出した。
「そういう事であれば、こちらから頼みたい事があるのじゃが聞いて貰えるかの?」
さっきから不機嫌そうにしていたべべ王が交渉に参加する。
村長に向かって『王である!』をしようとしたのを羽交い絞めにして止めた事をまだ根に持っているようだ。
「実は暫くの間この村に住まわせて欲しいのじゃ。
もし了承して頂けるのなら、逆にこちらから金を払おう。」
べべ王はそう言うとルルタニアのコインを一枚、机の上に村長が差し出した袋の横に置く。
ブライ村長はそれを手に取り暫く眺めた後に、机の上に戻した。
小ぶりではあるが金の含有率が高い事が一目でわかる重量、歪みも鋳型の跡も全く見られない造形、模様は単純ではあるものの隙のない正確な図案である事。
村長の表情からその全てを読み取り、このコインの価値を理解し驚愕している事が読み取れる。
が、彼はそれを受け取ろとはしなかった。
「これを頂く事はできません。
というより、こちらからもあなた方にお願いしたい事があるのです。
それを聞いて頂けるのなら、こちらも金などいりません。」
ブライ村長は未練を断ち切るように深く息を吐き、姿勢を正してから言葉を続ける。
「暫くではなく、ずっとこの村に住んで頂くわけにはいかないだろうか?」
村民が少なくなった今、それを少しでも増やすことが村長としての悲願だろう。
それに大猿一匹のために大半の村民が逃げ出す事になったのだ、再びモンスターの脅威によって村が壊れる事も恐れているだろう。
大猿も倒した召喚者達が村を守っているとなれば、どんなモンスターが発生しようと安心できるし、村の門番が素人同然のダニーとクリスだけでは村の安全などあってないようなものだ。
しかし、この条件をべべ王は飲むつもりなのだろうか?
「ええよ」
あっさりとべべ王は了承した。
「わしらの大切なクラン拠点はこのすぐ近くにある以上、わしらはどのみちこの周辺から離れる事はできん。
クラン拠点にいつでも行けるこの村にずっと住めるなら、それはわしらにとっても願ってもない事じゃ。」
べべ王の言葉を聞きブライ村長の表情が緩む。
国や世界の大事にのみ呼び出される召喚勇者が村を守ってくれるというのだ、これほど心強い事はないだろう。
「ところで、この村には旅商人は来るのかの?
わしらはこの世界でも冒険者を続けるつもりなのじゃが、街の冒険者ギルドにこのままでは行く事すらできぬと聞いておる。」
今それを口にするのか……
俺が危惧したとおり、ブライ村長はべべ王の言葉に訝しむような表情をみせてから口を開いた。
「なるほど、街へ行く旅商人の一行に混ぜてもらい、そのついでに街への一時的な滞在許可を貰いたい訳ですな。
念のために聞いておきますが、冒険者ギルドに登録したらそのまま街に住むという事は……」
「ありえんのぉ、それは。
わしらに長年努力して発展させてきたクラン拠点を棄てる事などできんよ。」
それを聞いてブライ村長は再び安堵の表情をみせたが、何かに気づいたように俺の方に向き直る。
「カイルさんはどうするんだ?
あんたはクラン拠点とやらに無縁だろうし、もともとゴータルートの街に住んでいたのではないのか?」
「俺にあの街に住む理由はありませんよ。
それから”カイル”でいいですよ村長。
これからは村民の一人になるんですから。」
街に自分の住まいがある訳でもないし、親父と喧嘩して家出同然の状態で冒険者となったのだ。
街の生活に未練などなかった。
この村で暮らせるのならば、いっそその方がせいせいして良かったのだ。
「そんな事よりおっさん、旅商人はいつ来るんだよ?」
痺れを切らした段が口を開く。
(こいつは礼儀を知らねーのかよ!)
俺は段を横目で睨んだが、ブライ村長はそれを気にしていないかのように何事もなげに段に答える。
「一か月後にこの地方の伝統のファルワの祭りがあり、皆で祝います。
そして、その祭りの前日にいつも旅商人がこの村に立ち寄ります。
その時に知り合いの商人に皆さまを紹介する事にいたしましょう。
それでよろしいですか?……すいませんがお名前を」
「俺は大上=段だ。
仲間からはジョーダンと呼ばれている。」
「ではジョーダンさん、そういう事でよろしいですか?
我々にできるのは商人に紹介するまでで、皆さまを信用するかどうかは商人達の判断となりますが。」
「構わないぜ。
俺はイザネって言うんだ、よろしくなブライ村長。」
差し出されたイザネの手をブライ村長が握り返す。
「こちらこそ、よろしくイザネさん。」
「そういえば、わしもまだ名乗ってなかったのぅ。
わしはべべ王、こっちのでかいのが東風じゃ。」
「……王!?」
べべ王の名を聞き村長が目を見開く。
”王”だなんて名乗られれば、驚くのが普通だ。
支配階級の人物に会う機会など田舎の村長にある訳がない。
むしろ、なんでこのジジイが王を自称しているのか訳がわからない。
「このジジイが勝手に名乗ってるだけだ。
気にすんなよ。」
『王である。』
段のフォローを台無しにするように、べべ王が胸を張って声を響かせる。
「は……はぁ?」
反応に困る村長を見て満足げにクスクス笑うべべ王。
なんでうまく話がまとまったところで混ぜっ返そうとするんだよ、このジジイは。
「あの、村に住む事が決まったのなら折角ですのでこれから我々が住む家を選びにいきませんか。」
東風さんの一声で、村長さんが我にかえる。
「ちょっと待ってください。
もうそろそろ昼ですが、昼食はどうします?
もしよろしければ、バンカーの宿で一緒にどうでしょうか。
家探しはその後でも構わないでしょう。」
「気かきくじゃねえか、おっさん。」
流石に俺は、村長に不遜な口を叩き続ける段の袖を引いて睨む。
「いい加減にしろよジョーダン。
さっきから村長に失礼だぞ。」
「そうか?
気付かなかったが、そういうもんかね。
すまねぇな。」
あまり反省した様子のない段に俺はため息を漏らす。
べべ王が最初から自分たちの本音をぶちまけるような交渉をしたのは正解だったのだろう。
この調子では段に隠し事ができるとは思えない。
「飯食うなら早く行こうぜ。」
イザネが待ちきれない様子で席を立つ。
そういや、こいつも礼儀とは無縁の性格だった……。
東風さんは礼儀正しいしべべ王はあんな性格だが、だからといって全く礼儀を知らぬ訳ではない。
必要な時に応じて態度を切り替えて対応できる。
この村での問題児はべべ王よりむしろ、段とイザネなのかもしれない。
* * *
バンカーの宿に着くと、俺達が来るのを知っていたかのように主のバンカーと妻のララ、そしてララの後ろに隠れるようにしてメルルが待っていた。
恐らくブライ村長がダニーにを使いにして昼食を作って俺達を待つように伝言したのだろう。
「ねー、誰が召喚勇者さまなの?」
俺達が挨拶をする前にメルルがララさんに質問をする。
ララは娘になにかを小声で囁き、おとなしくさせようとしたようだが段は既にその一言を聞きつけていた。
「俺達は勇者じゃない。
異世界から来た冒険者さんなんだぜ。」
段が身を少し屈めてメルルに言う。
「どおして勇者様じゃないの?」
メルルの言葉に段が困惑する。
「どおしてって言われてもな……。」
答えに詰まる段の横からイザネが顔を出す。
「俺達は勇者にどうやったらなれるかも知らねーしな。
この世界には勇者ってジョブがあるのか?」
「そんなクラスはないよ。
異世界から召喚される者達は全て勇者として召喚されるんだよ。」
イザネの問いには俺が答えた。
メルルがそんな事を知る訳もないし、子供を困らせても仕方がない。
「あの、お話は中でしてはいかがですか?
折角の料理が冷めてしまいますよ。」
「さあ、どうぞ中へお入りください。」
バンカー夫妻が俺達と村長を宿の中に招き入れる。
村長は夫妻に軽く挨拶をし皆を先導するように宿の戸をくぐり、俺達も後に続く。
最後に東風さんが身を屈めるようにしてドアに入ると、バンカーさんが東風さん用に椅子をもう一脚運んでくる。
「わざわざすいません。」
東風さんが軽く頭を下げるとバンカーさんは笑って答える。
「あんたみたいなデカい客は初めてなんで、こっちに不手際があっただけの事さ。
バンカーだ。」
バンカーさんが差し出した手を握り東風さんが答える。
「東風と申します。
よろしくお願いします、バンカーさん。」
「あたしはララよ。
よろしくね東風さん。」
俺達のテーブルに料理の皿を並べながらララさんが挨拶をし、皆がその後に続く。
「俺は大上=段だ。」
「イザネってんだよろしく。」
「べべ王じゃ。」
「王……?」
驚いて手が止まるララさんを見て、べべ王の目が光る。
『王であ……
させるかよ。
俺はべべ王の髭を横から引っ張って阻止をする。
「カイルよ、そこ引っ張らんでくれんか。
ちょっと痛いぞ。」
「村でバカな真似すんなって言っといたよなジジイ。」
気付くと俺とべべ王のやりとりを見て、メルルが向こうでクスクス笑っていた。
べべ王はそれを見て、なぜか満足そうな表情を浮かべる。
「そういえばあの子は、なんていうんだ?」
「娘のメルルです。
あの、その方は王族なのですか?
金のお召し物をしておりますし。」
イザネの言葉に我に返ったララさんが再び皿を並べ始め、それを見たべべ王がクスクスと笑い始める。
見慣れたくなかった見慣れた光景だ。
「その人が勝手に王を名乗ってるだけです。
気にしないでいいですよララさん。」
俺はうんざりしながら、ララさんの誤解を解いた。
* * *
「最初のボス敵はオークの軍団長マーガックだったのぅ。」
ブライ村長が4人に異世界での冒険の事を訪ねたのだが、その話は俺の知っているおとぎ話さえ超えたものだった。
東風さん以外は既にあらかた料理を食べ終わり、東風さんにララさんが新たな料理の皿を運んでくる。
メルルは目を輝かせて4人の話をバンカーさんの膝の上で聞いている。
「このマーガックというのが強いオークでのう、ルルタニアの歴戦の騎士団が皆でかかってもなんとか退けるのがやっとという有様じゃった。」
「そんな強いオークをどうやって倒したんです?」
村長の問いにイザネがずいと身を乗り出す。
「いくら強いって言っても、攻撃が単純なら見切って防ぐのは大した事じゃない。
気を付けなければいけないのは、あいつが物凄い力でラッシュをかけてきた時だ。
大抵の奴はそれに耐えられず、あるいは巻き込まれてやられていくんだよ。
だから俺はそれを練習して全部見切って防いでやったんだよ。」
イザネが丸盾を出して実演して見せる。
「あいつのラッシュにはパターンがあってな……。」
そう言うとイザネは盾を連続した攻撃を防ぐかのように順に移動させる。
「この次の突きのタイミングが難しいが、それさえ見切れれば全段ジャストガードで防げるぜ。
そしてラッシュで疲れて動きの泊まったマーガックの野郎にみんなで総攻撃すれば余裕で勝てる。」
「マーガックとの最終決戦にはキメラもいたから、それでも一人で相手するにはしんどいがの。
わしが囮になってキメラと雑魚オークを引き付けてこそ、可能になった戦法じゃったな。」
「キメラだって!」
べべ王の言葉に俺は目を見開いて驚いた。
キメラ退治なんて英雄譚でしか聞いた事がない。
ランクの高い冒険者ならば退治した者もこの世界のどこかにいるのだろうが、俺にとってとても手の届くような存在ではなかった。
「なに驚いてるんだ?
マーガックの方がキメラよりよっぽど手ごわかったぞ。
ヤギの頭が放って来る魔法は厄介だったが、あとは突っ込んで来るのをどうかわすか分かれば大した事ないだろ、あの程度のモンスター。」
段はさも当たり前の事のように話すが、ライオンの顔と四肢を持つキメラの突撃をどうかわしていいものか俺には検討もつかなかったし、それ以上の強さを持つオークなど信じる事もできなかった。
「次に相手にしたのはデア=マーデスという神に封印された魔術師じゃったな。
なんでも世界を自分の考えた理どおりに作り替えようと企んで、王を竜の姿に変えて神に反逆させたのじゃ。
その結果、神の怒りに触れ浮遊大陸に封印されたのじゃが、こいつが復活してルルタニアを襲ってきたのじゃ。」
「まてまてまて、その魔術師もお前等が退治したなんて言うんじゃないだろうな?」
俺は今度こそ自分の常識の範囲を超えない答えを望んでいたのだが、イザネは事も無げにその望みを砕く。
「倒したに決まってんだろ。
デア=マーデスはシーズン2のボスだったんだから。」
王を竜に変え神の怒りに触れた魔術師を倒すなど、俺の知っている龍退治の英雄譚を凌ぐ話じゃないか。
「手強い魔術師だから、封印を解くのを阻止して復活させないようにしようって計画もあったんだがな。
まぁ、そういう計画は大抵失敗して直接対決する羽目になるのがお約束ってやつだよな。」
段が言ってる事の意味が俺には全くわからない。
なんで封印が解けるのがお約束なんだよ?
普通は解けないように封印かけるものだろ?
しかもそれって神様のかけた封印なんだろ?
だいたいなんで、そんなに話のスケールがでかいんだよ?
「そうそう、デア=マーデスが龍に変えた王とも戦う羽目になったしな。
結局は直接倒す方が早いんだよ、ああいうのは。」
イザネの言葉で俺はようやく悟った。
ああ、こいつらは龍殺しの英雄なんてもうとっくの昔に超えてしまってるんだ……。
「すごい、すごーい」
話を聞いていたメルルがバンカーさんの膝の上で喜んで拍手する。
確かに子供は喜ぶよな、こういう話は。
しかも、その英雄級の人物が目の前にいるんだから。
だが俺は自分との差を認識させられて、とても喜ぶ気分にはなれなかった。
ブライ村長の方を見ると、まるで毒気を抜かれたような顔をしている。
頼もしい用心棒を村に引き入れたと思っていたのだろうが、それが計算外にとてつもな い存在だったので戸惑っているのだろう。
しかし気の毒だがもう遅い。
こいつ等はもうすっかりこの村に住む気になってしまっている。
「と、東風さんも食べ終わったようですし、おしゃべりはこのくらいにしてそろそろ皆さ んが住む家を選びに行きましょうか。」
気を取り直すようにブライ村長が話題を変える。
「えー!
まだシーズン2までしか話してないぜ。」
イザネは不満を漏らすが、もう勘弁してやってくれ。
村長さんの頭がオーバーヒートしちまう。
「『与えられし糧を我らの光とする事を許し給え』
まさにこの祈りの言葉のとおりでした。
食糧を育んだ環境や調理した者が多くの光を宿していると、それを食べた時に宿す事のできる光も大きくなる……この料理を作ったララさんもまた多くの光を宿していたのですね。
とてもおいしく、そして力が溢れてくるような料理でした。」
東風さんは食後のお茶を飲み干すとララさんに向かって、大袈裟に礼を言って席を立つ。
あまりに大仰な褒めようにララさんはすっかり照れた様子だが、東風さんは素直に料理の感想を言ったつもりなのだろう。
「おいおい東風さん、人の女房を口説くのは止めてくれないか?」
バンカーさんは苦笑いを浮かべていた。
* * *
「まいったな、人が住んでいない期間がしばらく続いたせいか少し痛んでいる家が多いようだ。」
数件目の空き家を覗いてブライ村長がぼやく。
「それに、埃も溜まってますね。
今日中に掃除するのは難しそうです。」
俺も村長に続いて口を開く。
「今日のところはバンカーに頼んで宿に泊まって貰う事にするが、それでよろしいですかな?」
「わしらは構わんよ。」
空き家の窓を覗きながら、べべ王が答える。
「今まで見た家の中じゃ、二件目の家が一番よさそうだったかな?」
「俺もあの家でいいと思うぜ。」
イザネと段は既に住む家の目星を付けていたようだ。
あと何件か回って、良い物件がなければその家に決めてもいいかもしれない。
「あれは、なんですか?」
東風さんが、村の広場に村民が大きな焚火の準備をしているのを目ざとく見つけて尋ねる。
「あれは皆さんの歓迎会の準備ですよ。
ささやかながら、我が村の新しい住人を迎える宴を開こうと思いまして。
ご迷惑でしたか?」
「迷惑どころか大歓迎じゃ。
なんというか、この村全体が大きなクランのような物なのじゃな。
ここに来る前はNPCのいない村や町がどのようなものか不安だったのじゃが、大きなクランと思えば納得がゆくわい。」
べべ王の答えに村長は不思議そうな顔をした。
この世界の常識が通用しない事は既に気づいているのだろうが、それでも言動がよくわからない事には変わりはない。
「なぁ、もう一度2件目の家を見に戻ろうぜ。
あれ以上よさそうなとこはなさそうじゃないか。」
せっかちな段が提案し、俺達は2件目に見た家の場所まで戻ろうとしていた。
「ここに居たのか親父!」
ダニーとクリスがこっちに向かって走って来る。
「どうしたダニー。
門番の仕事はどうした!?」
「ゲイルがまだ帰って来ないんだよ。
昼飯までに帰れって言っておいたのに、狩りに行ったきりだ。」
村長の顔が険しくなる。
「森の奥まで行くなと注意しておいた筈だが……。」
「暗くなったら探すのは大変だ。
丁度ここに召喚者達がいるんだから手伝ってもらえばいいじゃないか。」
ダニーの提案を受け入れた村長がこちらを向く。
「すいませんが、森に入って息子のゲイルを探すのを手伝ってはくれませんか。」
「構わないが、この森に出るモンスターはどんなのがいるんだ?」
段は当然のように尋ねるが、モンスターはデニム達とイザネが既に倒したばかりだ。
「いえ、遥か南東の方の沼にスライムがいるくらいですが……」
村長は段の質問の意図を測りかねている。
「近くにモンスターが出現しないのなら、特に危険はないんじゃないのか?」
イザネが首をかしげる。
「いえ、モンスターが居なくても子供が野生動物に襲われる危険はありますし、森で迷子になって村に帰れなくなっては一大事です。」
ああ、昨日は俺もこの村長さんと同じように、この4人に悪戦苦闘してたんだよなぁ。
がんばれブライ村長。
「そういえば、ルルタニアでも道に迷った部隊を探しに行ったら新モンスターに襲われて いたってクエストがありましたね。
同じようなクエストなのかも。」
「メデューサが初登場した時のクエストじゃな。
懐かしい。」
東風さんとべべ王のとぼけたやり取りにダニーがついに痺れを切らした。
「いい加減にしろ!
お前等がやる気がないのなら、俺とクリスで探しに行く!
お前等は、俺達の代わりに門番をしていろ!」
二人は踵を返して森へ向かって走り出す。
「あの二人だけじゃ心配だな。
俺もついて行くぜ。」
イザネはそういうと二人を追うように駆け出す。
「俺も行きますよ村長。」
イザネを追おうとした俺を東風さんが引き留める。
「人探しなら、複数に分かれた方が早く見つかります。
あの二人はイザ姐がついているから心配ないでしょうから、私とカイルさんでパーティを組んで探しましょう。」
「わかりました。
一緒に行きましょう。」
俺は東風さんと共にダニー達が向かったのとは別の方向に駆け出した。
「それじゃわしらは村の門番をしておるかの。」
「門番の代わりをするなんてクエストはルルタニアでもなかったが、どうやるんだ?」
べべ王と段のとぼけた会話が背中の向こうに遠ざかって行った。
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