第12話 非常識人里へ下る

「高くてなかなか手が出せなかったマジックポーションが、こんな素敵なしごきの道具に変るなんて知らなかったっすよ、ジョーダン先輩!」


 俺は宙に向かってヒールアローを放ちながらぼやく。

 魔法を何百発も連発するなんて経験は初めてだった。

 しかし、それがこんなにキツイとは。

 集中力が限界だ。


「もう降参かよ。」


 ニヤニヤしながら段が言う。

 くそ憎ったらしいな、このハゲは。


「そんなことないっすよ。

 まだまだこれからっす。」


「そうかそうか、そいつは……」


 フワァ~~っと段が大きなあくびをする。

 そういや、こいつは俺がひたすら魔法を撃つところを眺めているだけで何もしていない。

 退屈になってきたのだろう。


「……ところでお前が使える魔法って、どんなのがあるんだ?

 全部言ってみな。」


「ファイアアロー・アイスアロー・サンダーアロー・ヒールアロー・ガードアロー・アタックアロー・キュアアロー。

 あとは基本魔法の武器引き寄せと明かりの魔法くらいっすよ。」


 俺はつっけんどんに答えた。

 ただでさえ魔法の撃ちすぎで疲労しているのだ、会話にエネルギーを裂きたくはない。

 しゃべりながらマジックアローを生成するのでさえ、さっきまでの俺には難しかった事だ。

 一応特訓の成果が出てきたといったところか。


「アタックアローとガードアローはバフだよな?」


「アタックアローは攻撃力と素早さ、ガードアローは防御力とスタミナの上昇っすよ。」


 段が顎に手を当てる。


「なるほど、使えそうだな。

 武器引き寄せは昨日習ったが、明かりの魔法ってなんだ?」


 段が尋ねた明かりの魔法などは、こっちの世界では基本的でかつ一般的によく知られた魔法だが、ルルタニアとやらでは存在しない魔法なのだろうか?


「光の玉を生成して辺りを照らす魔法っす。

 武器の先に付けると便利っすよ。」


「なんだそら?

 そんなのランタンがあれば足りる事じゃねーか?」


「ランタンより明かりが強いの。」


「もしかして、目つぶしに使えるのか?」


「光に弱いモンスター相手なら使えますよ。

 普通のモンスター相手には目の前に光の玉を近づけないと効果ないと思いますけど。」


 この魔法を覚えたての頃、ふざけた友人に光の玉を顔の前に近づけられた経験がある。

 眩しくて俺は思わず目を背け暫くは瞼を開けるのに苦労したが、それ以上の効果はなかった。


「そっちは使えねぇか……」


 段はそう言うが、武器引き寄せよりよっぽど重宝される魔法だ。

 ダンジョンや夜間の冒険には必須と思っている者も少なくない魔法なのだが。


「そういやお前、空中に文字を描く時なでるようになぞってるが、宙に文字を刻むつもりでやってみろ。

 ちったぁマシになるぜ。」


 そういうと段はゴロンと横になって帽子を顔の上に被せた。

 こいつ昨夜は寝るのをグズってべべ王と一緒に騒いでいた癖に、もう昼寝を覚えやがった。


「了解。」


 俺は段の言う通り、宙に文字を刻むのをイメージしてルーン文字を描く。

 段は当てずっぽうで言ったのかもしれないが、マジックアーチャーの師匠からハッキリと文字を描いた方が威力が出るとアドバイスされた事もある。

 流石に文字を刻む事を意識しろなんて言われなかったし、むしろ丁寧に描く事を重視するよう教えられたが試してみる価値はあるだろう。


バチィッ


 生成中のマジックアローが音をたてて消える。

 確かに刻む事を意識した方が強いマジックアローを作れるようだが、だからといって雑に描くと途中ではじけ飛んで消失する。

 もしこのやり方でマジックアローを生成するのなら、いつもより丁寧にしっかりと描く事も意識する必要があるだろう。


「下手くそ。」


 あくび混じりの声で段が俺をなじる。

 音だけで俺の失敗を察したらしい。


「うっせえな。」


 段を無視して俺はもう一度マジックアローの生成を試みる。

 幸い俺は手先の器用さには自信があった。

 飾り職の親父から仕込まれた手先の技術がルーン文字を描く時にも応用できたのだ。

 ちょっと集中してやればこのくらい!


ブゥ……ン


 いつもより鈍い音を立ててマジックアローが生成される。


(よし!)


 俺はそれを魔導弓にセットし空に放つ。


シュッ……


 マジックアローは吸い込まれるように雲の向こうに消えていった。


「やるなじゃねーか。」


 寝たままの姿勢で段が言う。


「おう、こんなもんよ。」


「けど、放つまでに間がありすぎだ。

 もっとちゃっちゃと放てよ、ちゃっちゃと。」


 ガッツポーズを取ろうとした俺に段が冷水をかけるように言い放つ。


「わーったよ。」


 俺はあえてぞんざいに返事をすると再びマジックアローの生成から繰り返す。


 ……まてよ


 力強く刻むようにイメージしてルーン文字を描けば強いマジックアローを生成できるのならば、わざと撫でるようになぞるように弱々しく宙に文字を描けば弱いマジックアローを作り出せるのではないか?

 俺は早速試してみる事にした。

 弱く描きすぎると描いた文字が歪みマジックアローが形作られる前に崩壊してしまうため、ギリギリ崩壊しないだけ力を込めるよう気を付けながら丁寧にルーン文字を描く。


(よし。)


 俺は今にも掻き消えそうな弱々しいマジックアローを魔導弓にセットする。

 流石にこの掻き消えそうなマジックアローならば規格外の魔導弓でも強化しきれない様子で、いつものように極太の剣呑なマジックアローには変化せず、並みのサイズのマジックアローに変るだけであった。


(これなら狩りにも使えるかな?)


 俺はそう思いながらマジックアローを空に放った。


フシュッ…………ン


「なんだぁ?

 その気の抜けたような魔法は。」


 段が寝たままの姿勢で顔の上に被せた帽子を片手で持ち上げた。


「気が抜けたってなんだよ?

 わざと加減して魔法を撃ったの。」


「はぁ?なんでそんな事してんだ?」


「狩りの時に威力があり過ぎて魔法が使い物にならなかったろ。

 状況に応じて魔法の威力を調節できた方が便利じゃないか。」


 俺は段を覗き込むように状態を屈めて言った。


「それ、やめとけ。」


「なんでだよ。」


 段は上体だけを起こして首の後ろをかきながら俺に答える。


「癖になるんだよ変に加減するのが。

 いざ、最大出力の魔法が必要な時に全力を出し損なっちまう。

 やるにしても……そうだな加減して撃つ倍は全力で撃つ練習をした方がいいだろう。

 けどよ、お前に攻撃魔法なんて求められてねーから、そもそもそんな練習する必要すらないだろ。

 回復魔法やバフ魔法を加減しても意味ねーしな。」


「それってどういう意味だよ?」


 俺は段の言葉に少しムッとして尋ねる。


「いいか、攻撃魔法なら俺も使えるんだよ。

 イザネも東風も攻撃に参加できるから、魔法の威力が強過ぎるのならあいつらを頼ればいい。

 そしてべべのジジイは大盾装備の防御特化型の騎士だ。

 騎士だから多少は神聖魔法で回復ができるとはいえ、防御特化だからたかが知れてる。

 俺達のパーティの中で最も回復役に適してるのはお前なんだよカイル。」


 俺はハッとした。

 皆が桁外れに強過ぎるから、戦いの時に俺は皆を頼りにすればいいと考えていた。

 まさか、まだまだ未熟な自分にもう役割が与えられるなどとは考えてさえいなかった。


「まだ訓練も初日ですし、少し気が早いのではありませんかジョーダンさん。」


 傾きかけた日を背にして東風さんが倉庫の方から歩いて来た。

 段は東風さんの方に首だけを向ける。


「そんなことはねぇさ、東風。

 こいつは、あの弓に相応しい冒険者になるつもりなんだ。

 あのドラゴンズ・ドゥーム最強のレイドボス暗黒龍の素材を使った弓を使うのならば、適正レベルは180近辺……つまり俺達と同格になるまで鍛えなけりゃ釣り合わない。

 だから今からそのつもりで扱ってやるべきさ、むしろ。」


 本当に考えが足らなかった。

 俺はただ、自分に与えられた力にとまどい、それ持つに相応しい者になりたいと願った。

 だが、それがこの人達と同格になるという宣言になっている事にはまるで気づいてはいなかったのだ。


(今更、吐いた唾は飲めないよな……)


 そんな風に思い悩んでいた俺の顔を覗き込んで、からかうように段が言う。


「ほれ、みてみろよ。

 覚悟が決まってるせいか、ちょっとはこいつも顔つきがまともになってきたぜ。」


「おいおい、一日も経ってないのにそう簡単に顔つきまで変わるかよ。」


 俺は少し照れながら言った。


「ははははは。

 ところでジョーダンさん、カイルさんをお借りしてよろしいですか?

 いまから夕食の食材を採取しにいくのですが、カイルさんでないと食べられる野草や木の実の区別がつかないんですよ。

 そろそろ日も暮れそうですし、できれば今行っておきたいのですが?」


 東風さんの提案は最もだった。

 肉はまだ余っているのだが野草や木の実の類が不足していたのだ。

 午前中に採取した東風さんに知識がなかったのが原因だが、今ならまだ暗くないし俺が採取について行って植物の知識を東風さんに教えるべきだろう。


「しょうがねーな。

 カイル、今日は解放してやるからしっかり東風を手伝ってやれよ。」


 段はそう言うと、杖を支えに立ち上がりクラン拠点の広間のドアをくぐる。


「では、行きましょうか。」


 東風さんはさっそくクラン拠点を出ようとするが、俺はそれを引き留める。


「ちょっと待ってください。

 先にトイレ行ってきていいですか。

 マジックポーションの飲み過ぎでお腹タプタプなんですよ。」


 俺は段を追うように扉をくぐり急いでトイレを目指した。



         *      *      *



「先ほどから赤い実ばかり摘んでいますが、赤い実ならば全て食べられると考えていいのですか?」


 見つけた木苺を積みながら東風さんが俺に尋ねる。


「そんな事はありませんよ、赤くても渋くてとても食べられない実もありますから。

 鳥だったら渋い実も平気でよく食べてますけど、人はとても食べられないです。」


「なるほど、勉強になります。」


 俺は東風さんの方をちらりと見る。


(そういえば、さっき聞いたあの事について尋ねておこうかな)


 俺は木の実を積み終わって腰を起こした東風さんに話しかける。


「東風さんってイザネの弟子なんですか?」


「ジョーダンさんから聞いたんですか?」


「べべ王やイザネからも聞きましたよ。」


「そうですか。

 そうですね、弟子と言ってもいいかと思いますよ。

 イザ姐はそう思っていないようですが。」


「じゃあ、べべ王さんの言う通り俺の兄弟子って事になりますね。」


「あははは。

 確かに。

 でも私なんか不肖の弟子もいいとこですよ。」


「そんな事ないですよ。

 イザネは東風さんの方が自分より強いって言ってましたよ。」


 俺の問いに東風さんは少しだけ考え込んでから答える。


「そうですね。

 今の私ならイザ姐に勝てる可能性はあると思いますが、もしイザ姐が私と同じ忍者にジョブチェンジしたのなら勝てるとは思えません。

 忍者の戦い方を私に教えてくれたのもイザ姐ですし、あの人程には忍術を扱える自信もありませんから。」


「なんでもできるんですねイザネは。」


「センスがいいですし、経験もありますからあの人は。

 戦士にこだわりがあるから基本ジョブの戦士をやっているだけで、本当になんでもこなせると思いますよ。」


「こだわり?」


「あえて基本ジョブの戦士を極めてみたいんだとか。

 そのためにルルタニアでは結構無茶な事にも”練習だ”って言ってチャレンジしてましたよ。」


 東風さんはイザネの事になるとやたらと嬉しそうに話す。

 今でも恩を感じ、そして慕っているのだろう。


 もう少し話してみたかったが俺は暗くなってきた空に気づき、話題を切り替える。


「そろそろ急ぎましょう。

 少し暗くなってきました。」


「これはうっかりしていました。

 そういたしましょう。」


 東風さんは採取用の袋の口を結わえて閉じると、腰に下げて立ち上がった。


(暗くなる前に、もう少しハーブも集めておきたいな……)


 俺と東風さんは次の食材を探して森を再び彷徨い始めていた。



         *      *      *



 村にもっていく物資はポーション・マジックポーションを各自多数。

 昨日べべ王が作成した生活用品とルルタニアのコイン10枚。

 あとは、各自思い思いの物を少数。

 話し合いの末、最低限の品に抑えた結果であった。


 俺は筋肉痛の体に、特訓用のマジックポーションを山ほど背負って立ち上がった。

「昨日も言ったが村に入ったら変な行動はするなよ。

 村人に旅商人に紹介して貰えなかったら、ガチで街に入る手段消えるからな!」


 俺は村への出発前にみんなに念を押した。


「おいおい、俺達がいつ変な行動をしたよ?」


 それは本気で言っているのか段?


「物を口に入れたまま大声でしゃべったり、トイレで全裸になったり、人がうんこしてるとこ覗いたりすんのはやめろと言ってるんだよ!」


「つまんねー事を覚えてんのなおまえ。」


「そのつまんねー事を村人の前で間違えてもするんじゃねーつってんだよジョーダン。」

 俺は段にすごんで見せるが、段は”おー怖い”とわざとらしいリアクションをして俺をからかう。


「要するに、村のNPC相手に間違った選択肢を選ばなきゃいいだけの話だろ、ちょっと大袈裟過ぎないか?」


 イザネがあくび交じりに口を開く。

 一昨日徹夜したせいで、昨日は目が冴えてなかなか寝れず少し寝不足気味なのだろう。


「そのNPCとか選択肢とかって何です?」


 NPCという言葉は彼等の会話の中に度々登場したが、その正体がなんなのか俺は彼等の会話から未だに察する事ができずにいた。

 そしで、今ここで問いただしておかないと、なにかとんでもない間違いが起こりそうな嫌な予感がしていた。


「NPCというのは、そうじゃな繰り返し同じ事ばかり話したり、同じような役目をずっと続けてくれる者の事じゃよ。

 ここの世界にもおるんじゃろ?」


「いねーよそんな奴。」


 俺はべべ王の言葉に条件反射で即答していた。


「おいおい、じゃあPC(プレイヤーキャラクター)とモンスターと環境生物しかいないのかよ?

 NPCもなしでどうやって村が作れるんだよ?」


 イザネが尋ねる。


「だから、なんと言われようとNPCなんていないんだって。

 どうやってって言われても、それで村を作れてるんだから仕方ないじゃないか。」


 ああもう口では説明しきれない。

 不安ではあるが、実際に村を見てもらうしかないだろう。


「まぁ、いいじゃないか。

 NPCがいないのであれば、その分だけ悪戯できる奴が多くいるということじゃ。」


「だから、そういう事はすんじゃねーって最初に言っただろジジイ。」


 俺がべべ王を叱っているとクラン拠点の門が開き、最後の確認をしていた東風さんが姿を現した。


「おまたせしました。

 朝食の後片づけと、火の消し忘れを確認して参りました。」


 本当に東風さんだけが頼りだ。

 いや、イザネもまだ大丈夫な方なんだが問題は段とべべ王なのだ。

 山ほどの不安を抱えながらも俺は非常識人達を連れ、村を目指して出発した。



         *      *      *



「あれがリラルルの村だよ。」


 俺が指さした先には村の入り口と、そこに立つダニーとクリスの二人の門番の姿があった。

 二人はすでにこちらの姿に気づいているらしく、警戒しているようだ。


(東風さんは遠くからでも目立つからなぁ……)


「確かにNPCではないようですね。

 こちらを見て、なにやら警戒しているようですよ。」


 東風さんは自分が警戒されているとは夢にも思っていない様子だ。

 いや東風さんだけではない、べべ王も段もその恰好の異様さから近づいたら警戒されるに違いないのだ。

 三メートル近い大男と金の鎧を着て人面盾を持った王様かぶれといかにも怪しげなソーサラー。

 これが警戒されない筈がない。

 考えてみればこの四人の中で、まともに見えるのは普通のズボンとシャツを着ているイザネだけだ。


「俺がみんなの事を二人に紹介するから、くれぐれも余計な行動は……」


 俺は後ろを振り返り四人に話しかけたつもりだったのだが、そこには既に三人しかいなかった。


(べべ王はどうした?

 まさか、途中ではぐれた?)


 周囲を見回すと、リラルルの村……というより門番の二人に向かって軽快に走っていくべべ王が目に入った。

 おいバカやめろ!……と思った時にはもう遅かった。


『王である!』


 べべ王おなじみのセリフを聞いて、俺は思わず額に手を当てる。

 第一印象は最悪と考えねばなるまい。

 うつむく俺の耳にクスクスと二人を笑うべべ王の声が聞こえていた。



         *      *      *



「カイルなにしてたんだよ。

 デニムからだいたいの事情は聴いていたけど、丸一日経っても帰ってこないから心配してたんだぜ。

 そろそろ探しに行こうかって話になってたところだ。」


 ダニーは俺の後ろに隠れて未だにクスクス笑うべべ王を横目で見ながら言う。

 余程二人の驚くさまが面白かったのだろう、まだ笑ってやがる。


「この人達に、この世界の事を説明してたんだよ。

 丸一日かけて。」


 俺はべべ王をつついて黙らせながらダニーに答えた。


「ああ、うんそうか。

 大変だったろうな、それは。」


 ダニーは俺の苦労を察してくれたようだ。


「な、なんかあたしに用ですか?」


 ふと脇をみるとイザネにじろじろ見られてクリスが困っている。


「いや、お前本当に戦士なのかって思ってさ。」


「ただの村の門番ですけど?」


「そういう事じゃねーよ。」


 イザネはクリスの剣を指さす。


「お前、剣に引きずられて体幹が傾いてるじゃねーか。

 そんな奴は見た事ないからさ。」


 確かにクリスは重い剣を持て余しているように見えるが、それを初対面で指摘するのは流石に失礼というものだろう。

 俺は止めようとしたが、既にクリスがイザネにくってかかった後であった。


「あなただって、そんな重そうな武器を持ってるじゃない。

 ほっといてよ!」


 クリスがイザネのメイスを指さして言う。

 自分より小柄なイザネが自分より重そうな武器を持っているのだから、普通ならそう思うのが当然だろうが、相手が悪い。


「俺は逆に、普通の剣だと軽すぎるんだよ。」


 ヒョイとイザネが二本の指でつまむようにメイスを持ちあげて言う。


「この世界に装備のレベル制限もジョブによる武器制限もないのは知ってるけどさ、せめて自分が扱いやすい武器を持った方がいいんじゃねーかな。

 試しにその剣でちょっと素振りを……」


 怪力に驚くクリスにイザネは尚も話を続けようとしていたが、東風さんがそこに割り込んだ。


「まぁまぁイザ姐、それは後でもいいじゃないですか。」


 東風さんはイザネをなだめると、クリスとダニーを見下ろすように向き直り言葉を続けた。


「おおまかな事は既にお聞きしているようですが、我等はクランSSSRの者です。

 リラルルの村の村長様に相談したい事があってやって参りましたが、村長様のご都合はよろしいでしょうか?」


 本来こういう事はリーダーであるべべ王が言うべきなのだが、ふと後ろを見ると段と二人でなにかおしゃべりをしていた。

 よほどNPCとやらがいない村が珍しかったらしく興奮しているみたいだが、リーダーとしては落ち着きがないことこの上ない。


「あ、はいわかりました。

 では俺が案内します。」


 ダニーは東風さんに若干委縮しながら答え、クリスに村の警備を任せると村長の家の方へと歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る