第3話 光る森
「この宿の主人のバンカーだ。」
ララさんの用意してくれた朝食を食べていると一人の男が近づいて来て俺に握手を求めた。
「カイルです。
よろしく」
おれは差し出された男の手を握って答える。
「デニム。
村がこんな状態だからいつものようにパーッととはいかないが、一杯くらいなら後でおごってやる。
しくじるんじゃねーぞ。」
朝食を食べているデニムの頭を軽く叩いてバンカーさんはあくびをしながら部屋に戻って行った。
昨晩までとはうって変わって、デニムもルルさんも今朝は無口だ。
冒険前というのは皆こういうものなのだろうか。
軽い朝食を終えた俺達はブライ村長に見送られ村を出て北の森に向かう。
レンジャーとして経験のあるルルさんを先頭に森を進む事およそ30分たった頃だろうか。
「なにこれ、予定より早く見つけちゃったんだけど……」
ルルさんがゴブリンを見つけた。
昨夜得た情報から村からもっと離れた地点にいると俺達は考えていたが、ゴブリン達は今夜にでも村を襲える地点にまで近づいていたようだ。
「もう一日遅れてたらアウトだった……かもな。」
ゴブリンに見つからぬよう身をかがめてデニムがつぶやく。
茂みに隠れながら確認すると、ゴブリンの群れに恐れていた変異種が混ざっている様子はない。
「十数匹って話だったけど、二十匹近いわよあれ。」
眉を顰めるルルさんにデニムが笑顔で答える。
「でもついてるよ。
ゴブリンシャーマンくらい混ざっていても不思議じゃなかった。」
「今から二人にエンチャント魔法をかけますがいいですか?」
俺が提案すると二人は魔法の光がゴブリン達に見えないよう俺の前に壁になるように移動した。
「ガードアロー(防御・持久力アップ)とアタックアロー(攻撃・素早さアップ)の両方を一度に付与する事も可能ですが、魔力の消費を考えるとどっちか一方にした方が良さそうです。」
「じゃあガードアローの方を頼む。
普通の状態であの数を相手にしたら流石に途中で疲れてしまいそうだからな。
エンチャントの効果時間は?」
「3分はもちません。
あと、俺から200メートル以上離れてしまったらエンチャントの効果は消えます。」
一人で遠くにいてもマジックアーチャーは役に立たない。
エンチャントも含め魔法の射程がある以上、ある程度は味方に近くにいなければならないのだ。
「援護射撃はした方がいいでしょうか?
魔力の残量を気にしなければならないので、何発も撃てませんが。」
「ポーションはあるけど数は限られているし、いざという時に魔力切れで治療魔法が使えないのは勘弁だわ。
それにポーションだって高いんだし、なるべく節約したいのよ。」
デニムがうなずき、ルルの意見に続く。
「そうだな、魔力はいざという時のために温存しておいた方がいい。
けどなカイル、もし想定外の事態が起きた時には魔力をケチるなよ。
作戦を無視してもいい。
あくまで皆で生き残る事が最優先だ。」
「わかりました。」
俺は指先に魔力を集中し、魔力で光る指先で空中をなぞりルーン文字を描く。
描かれたルーン文字は光る二本の魔法の矢へと姿を変え、魔導弓の真ん中にはめ込まれた魔石を貫くようにセットされる。
「撃ち込まれた魔法の矢が光っている間はエンチャントが有効です。
奇襲をかけるタイミングでエンチャントをかけますので、合図をお願いします。」
デニムはうなずくと手のひらをこちらに向けて指を一本ずつ折り畳みカウントダウンを開始する。
(……4……3……2……1……今っ!)
俺の放った魔矢はデニムとルルさんの左右の肩にそれぞれ命中し淡い光を放ち、二人は物凄い勢いでゴブリン達に突撃していく。
俺も二人との距離が開き過ぎないように急いで走り出す。
こちらの突貫に気づいたのか数匹のゴブリンがこちらに顔を向けたが、その内の2匹はデニムとルルさんによってそれぞれ突き殺される。
続けて仲間に奇襲を知らせようと叫んだゴブリンの首がデニムによって切り裂かれる。
奇襲で仕留められたゴブリンは三匹だが、まだ十匹以上が残っている。
戦況はまだまだどう動くかわからい。
俺は近くの茂みに隠れ、焦る心を抑えながら二人の背後から援護のタイミングを測る。
デニムはルルの前に立ち数匹のゴブリンを一度に迎え撃っつように動く。
剣を振り下ろそうとしたゴブリンの腕が振り下ろされる前にデニムの剣によって切断され、脇を狙ったゴブリンが薙ぎ払われ、仲間の死体を盾にしようとしたゴブリンが死体ごと貫かれる。
一方ルルさんは一見すると防戦一方になって押されているように見えるが、逃げるように動きながら一匹、また一匹と隙をついてゴブリンを刺し殺していく。
この様子なら二人ならこのまま何もせずに任せておいても大丈夫だろう。
俺はほんの少しだけ安心し、あと何匹残っているのだろうと周囲を見渡す。
(あ!危ない!!)
俺の目はスリングを構えたゴブリンをとらえていた。
重装備で頭も兜で覆っているデニムはともかく、軽装のルルさんがあれに当たったらただでは済まない。
俺は慌ててサンダーアローを魔導弓につがえるべくルーン文字を空中に描く。
(間に合ってくれ!)
が、俺がサンダーアローを放つ前にダガーによってスリングを構えたゴブリンの目が刺し貫かれる。
自分を狙っているゴブリンの存在に気付いたルルさんがダガーを投擲したのだ。
(これで安心したらまずい。
他にもスリングでこちらを狙っているゴブリンがいるかもしれない。)
おれは魔導弓にサンダーアローをつがえたまま辺りを見回す。
ガサ……ガサガサ……
俺が背後の茂みの音に気付き振り返ると、そこには俺に飛びかかろうしているゴブリンがいた。
グゲゲゲェーッ!
(くそっ、サンダーアローの光で俺の居場所がバレたのか!)
俺は咄嗟につがえていたサンダーアローを放つ。
胸を狙った筈の雷の矢は脇腹に当たりゴブリンを感電させる。
(俺の魔力では急所に当たってなければ致命傷にはなっていない筈。
止めを刺さなければ……)
俺はルルさんが譲ってくれたショートソードを片手で抜き放ち、倒れたゴブリンに近づこうとした。
グギャーッ
どこに潜んでいたのかわからないが、もう一匹のゴブリンが俺に襲い掛かる。
俺は咄嗟にゴブリンの刃をショートソードで弾いて距離を取る。
(接近戦では、もう魔導弓は使えない!)
俺は片手に持っていた魔導弓を投げ捨て、両手でショートソードを構える。
デニムとルルさんはまだゴブリンの大群を相手にしていてこっちを構う暇があるとは思えない。
ここは俺一人で乗り切るしかない……。
自分の周囲を見渡すが他にも近くにゴブリンが潜んでいる様子はないし、サンダーアローで感電したゴブリンは暫く起き上がりそうにない。
(この一匹さえ倒せれば、生き残れる。
ゴブリンの持っている剣は手入れもされてないようだし背丈もない、剣の切れ味でもリーチでもこちらが上だ。)
だが、ゴブリンの持つ剣の刃の色を見て俺は青ざめる。
(……毒!)
明らかにゴブリンの剣には毒が塗られていた。
途端に抑え込んでいた恐怖が俺の身体を支配して、剣を持つ腕が振るえ出した。
(切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。切られたら死ぬ。)
そんな考えで頭が一杯になり、他には何も考えられない。
俺の怯えに気づいたのか、ゴブリンがニヤリとわらって距離を詰めてくる。
(違う!怯えたら死ぬんだ!
ここで怯えたら俺は確実に死ぬ!)
慎重に、そして必死に息を整え俺が腕の震えを抑え込むと同時にゴブリンが切りかかってくる。
キィン
ゴブリンの初撃を弾いた俺は攻撃に転じる。
「うおおおぉぉぉぉっっ!」
ゴブリンに向かって振り下ろした筈の俺の剣は空を切り、同時にももに鈍い痛みが走る。
(斬られた?!
毒の刃で!)
再び湧きあがろうとする恐怖を抑え込みながら、俺はゴブリンに剣を構える。
幸い毒は強力なものではなかったらしく暫くは動けそうだ。
とはいえ、早く治療しなければ致命傷になりうるのは確かな事。
焦る気持ちだけは抑えきれない。
歯を食いしばり焦りを悟られぬようゴブリンの方を睨むと、奴は俺から距離を開けて剣を構えていた。
そしてその顔に浮かぶ余裕を見て俺は全てを察した。
(この野郎っ!俺が毒で弱るのを待って殺す気かぁっ!)
怒りと焦りが俺の冷静さを吹き飛ばす。
「ふざけやがってぇぇぇっっ!」
俺が斬りかかるとゴブリンはひょいと逃げる。
「ぐあぁっ」
ももの傷に痛みが走り、追いかけようとする俺の足が止まる。
(くそっ!これでは余計に毒が早く回ってしまう。)
気持ち悪い汗が全身から吹き出てくる。
どうすれば、どうすればこの窮地から脱出できる?どうすれば?!
ギャアァァッ
再び俺から十分に距離を開けようと動いたゴブリンの胸に血まみれの剣が突き刺さる。
気が付くとデニムが傍に立っていた。
先ほどまでうるさかったゴブリン達の声が今は聞こえてこない。
「ふざけやがって……か。
凄い闘志だなカイル。」
「からかわないでくださいよ、デニムさん。」
助かった……俺はその思いだけで胸が一杯になっていた
「からかってなどいないさ。
今度チコに絡まれたら、その気迫を見せてやるといい。」
「いいわねそれ。
絶対ビビるわよあいつ。」
ルルさんが、サンダーアローで感電したゴブリンに止めを刺しながら言う。
「あいつは口だけだからな。
傷は浅いし大丈夫そうだな。
自分の傷を治せる魔力は残っているかい?」
デニムさんが俺の傷を確認しながら言う。
「ええ。
でもまずは毒消しからしないと。
『ロドゥムエィガリル!戻れ我が弓よ。』」
呪文の詠唱と共に俺の手に先ほど手放した魔導弓が飛んで戻ってっ来る。
これは自分の所有するマジックアイテムを手元に呼ぶ簡単な魔法だ。
俺は毒消しのキュアアローと傷を治療するヒールアローを生成し、ももの傷口に打ち込む。
幸い傷は浅かったらしくすぐに完治させる事ができた。
「へー、傷が治っても光ったまんまなんだ。」
珍しそうにルルさんが俺のももで光続けるヒールアローを覗き込む。
「ええ、魔法の効果時間が過ぎるまではずっと有効ですよ。」
俺は自分の指先を剣で少し傷つけて血をにじませると、もものヒールアローに傷口をかざして治してみせる。
「うわっ、すっごい。」
ルルさんが俺の真似をして自分の指先につけた傷を俺のももで治す。
「へぇ、光に近づいたものは他の人の傷でも治療してくれるのか。
面白いな。」
近づいてきたデニムさんが俺にナイフを手渡す。
「さぁ、最後の仕事を済ませてしまおうぜ。」
俺達は手分けしてゴブリンの鼻をそぐ。
倒したモンスターの一部を持ち帰る事によって、モンスター討伐の証とするためだ。
俺はこの作業を簡単に考えていたが、実際にやってみると存外うまく切り分けるのが難しい。
「冒険者の仕事でこれだけが、いつまで経っても慣れないのよねー。」
デニムはテキパキと慣れた手つきで鼻をそいでいくが、ルルさんは”モンスターの死体に触るのも嫌”って感じがはたで見ていてもわかる。
作業を続けながら不意にデニムさんが俺に話しかけてくる。
「よく逃げなかったな。」
「ああ、ゴブリンと接近戦になった時ですか?」
「そうだ。
意外に多いんだよ、ああいう時に逃げちまう奴って。」
そうか、逃げるっていう手段もあったんだ。
あの時はとにかく夢中で”戦わなきゃ”って気持ちで一杯だったけど、確かに自分の身を守る事を第一に考えるなら、そうすべきなのかもしれない。
……けど。
「あの時は俺、冷静じゃなくて逃げる事を忘れてただけですよ。。
でも、見方が傍で戦ってるのに俺だけ逃げるってのは違う気がするんですよね。
自分はゴブリンと戦わず、逃げ回ってただけなのに報酬を貰うなんておかしいじゃないですか。」
嬉しそうにルルさんがこっちを見る。
「ほら、あたしが言ったとおりでしょ。
カイルをパーティに入れて大正解じゃない。」
え?
「実を言うとカイルをパーティに入れようって目を付けたのはルルなんだ。
女の勘ってやつなのかな?
ルルのこういう勘はよく当たるのさ。」
「でも、俺って今回あんまり役に立ってないですよ……。」
デニムは俺に満足しているようだが、俺は今回の戦闘で自分ができた事に満足していなかった。
結局サンダーアローでゴブリンの一匹を感電させただけで、あとは最初のエンチャントのみ。
俺以外は傷を負わなかったから、回復魔法も自分の怪我の治療に使っただけだ。
単なる足手まといじゃないか。
しかしデニムの考えは違っていたようだ。
「”俺はこんな魔法が使える””俺はこんなモンスターに勝った事があるんだ”って自分 を売り込んでくる冒険者は多いが、例えそれが本当であったとしても腰の引けてる奴はいざという時に自分だけ逃げだす。
そんな奴に背中を預ける気にはならないのさ俺は。
カイルのようにいざという時にふんばってくれる奴こそ、俺は真の仲間だと考えている。
魔法の腕前だって、今はともかく前途有望とみたぜ。」
「え……。
ちょ、ちょっと照れくさいですよデニムさん。」
思いもよらぬデニムの褒め殺しにやられ俺は赤面する。
「その”デニムさん”っていうのはそろそろ止めにしないか?
デニムでいいよカイル。」
「そうそうあたしも”ルルさん”じゃなくて”ルル”でいいわよ。」
「わかった。
これからもよろしくデニム、ルル。」
俺は最後のゴブリンの鼻をそぎ落としながら、初めてパーティの仲間を親しみを込めて呼びつけにした。
しかし、俺を真の仲間と認めてくれるのならば尚の事、俺は彼等に忠告せねばならない事がある。
もっと覚悟が決まってからとか、もっといいタイミングでとか後回しにしようという考えもあったが、こういう時に後回しにしていい事があった試しがない。
逃げるための言い訳はいくらでも出てくるがそれは害でしかないのだ。
「デニム、ルル、俺を仲間として認めてくれるのなら、仲間としてその……ちょっと言いにくい事なんだが忠告したい事があるんだ。
いいかな?」
「パーティ内で下手な遠慮はない方がいい。
なんでも言ってみなよ。」
上機嫌のデニムがにこやかに答える。
(”なんでも”って言ったんだから怒らないでくれよ……)
「デニムとルルが仲のいい事はわかるんだ。
でもそれを人に見せつけるっていうか、例えパーティメンバーにでも必要以上にみせつけるのは控えるべきだと思うんだ。
嫉妬する奴もいるだろうし、反感を持たれて損をするだけじゃないのかなって。」
俺は勇気を振り絞ってもっとハッキリ言ってやるつもりだったが、いざ口に出してみると弱気が言葉に出てしまう。
「もしかしてカイルも嫉妬してたの?」
「え、ええまぁ。
少し……」
俺は素直に答える。
「やっぱうぶでかわいいなぁ、カイルって。」
「ハハハハッ。
ならカイルも恋人を作るといい。」
あ、いや、そういう事を言っているのではなくて……
「あたしの友達にもカイルみたいにかわいい子が好きな女の子が何人かいるから紹介してあげようか?」
「え!あ……
是非お願いします!」
己が欲望につられ、ついつい二つ返事してしまったが見事に話がすり替わっている。
俺が言いたいのはそういう事ではなくて……と思ったが、あっという間にいつものイチャラブモードに戻ったデニムとルルを見て俺は悟った。
(こいつら、俺の言った事を自分達の都合のいいように解釈してやがる。)
これでは幾ら言い聞かせても無駄である。
俺は二人の説得を諦めてうなだれる。
「17匹か~。
これだけ狩れば普通なら追加報酬を要求できるんだけど、今の村の状態を考えるとできないわよね。」
鼻を袋に詰めながらルルがぼやく。
「そうだな報酬が貰えるだけでもありがたいと……」
ドッッオオオオオォォォッ!
その時、デニムの言葉を遮るように轟音が森に響き渡る。
俺は音のした方向を振り返る。
「森が……光っている?」
遠くの方で森の一部が白い光に包まれていた。
広範囲の攻撃魔法か?とも思ったが光が収まっていくにつれ、その推測が間違っていた事がわかる。
破壊の衝撃による揺れや爆風もないし、炎が燃え広がっている様子もない。
「なんだったんだろう……あれ。」
「まずいな、大猿の縄張りじゃないかあそこは……」
デニムの言葉に俺は青ざめる。
光ったのは村の西の森。
大猿の縄張りの位置が正確にわからないにしても、光ったのがあれだけ広範囲なら大猿を刺激したのは確かだろう。
「急いで帰りましょう。」
ルルが駆け出し、デニムと俺が続く。
「済まないなカイル。
報酬は十分に分けると約束していたのに、もしかするとただ働きをする事になるかもしれない。」
例え報酬が出ないと知っていても、デニムに村を見捨てて帰るという選択肢はないのだろう。
「気にする必要はないよデニム。」
俺が冒険者になったのは守銭奴に仕えるためでも、守銭奴になるためでもない。
* * *
「森を見張れ!
もし大猿が来たら俺達に知らせろ!
二人だけで戦おうとするなよっ!」
案の定、村は大騒ぎになっていた。
村の門を走り抜けながらデニムはダニーとクリスに大声で指示を出す。
俺達が村に帰ってすぐに目指したのはゼベックの鍛冶屋だった。
「鎧は完成してるかゼベック?!」
鍛冶場のドアを開けてデニムが大声で叫んだ。
「ああ」
ゼベックが新品の鎧を指さしたのを見てデニムは金の入った袋を差し出す。
「後金だ。
足りない分は後で村長に言ってゴブリン退治の報酬から差っ引いてもらってくれ。」
「大猿とやる気なのかデニム?」
「ああ、場合によってはな。
こういう時のために注文した大型モンスター用の剣と鎧だ。」
「……後金はいらねぇ。
今回は前金だけで我慢してやる。」
ゼベックから剣と鎧を受け取り、デニムはそれを大急ぎでそれを身につける。
「いいかデニム。
その鎧は防御力を意識した分、重量が増している。
慣れないうちはスタミナ配分に気を付けろ。」
鍛冶場を後にする俺達にゼベックが叫ぶ。
「カイル、魔力は後どれくらい残っている?」
「エンチャント二回分は残っていると思うけど、それ以上は……」
「そうか……」
駆け足で村長の家を目指しながらデニムに残り魔力の心もとなさを告げる。
大量のゴブリンを相手にした後なのだ、デニムとルルの疲労も半端ではないだろう。
できる事なら大猿と対決するのは明日以降に魔力と疲労を回復してからにしたいが、もし興奮した大猿が今すぐにでも村の方に来たのならそうも言ってられない。
新しい装備を身につけたデニムが村長の家の戸を開けると、中に集まっていた村人達から歓声が上がる。
「その会議に俺達も混ぜてくれ。」
デニムは村人達の中に歩を進めた。
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