第196話 出し物

「それでは早速我がSクラスの出し物を決めたい。何か意見がある者は居るかい?」


 クリスが教卓の前に立ち、そう発言すると、クラス中で手が挙がる。


「では、ゴルド君」


「やはり無難に喫茶などはどうでしょう? 我が学園はかなり混雑しますので休憩所という意味でも良いのではないかと」


「ふむ、喫茶だね。候補として書いておくよ」


 黒板に白い文字で喫茶と書かれる。


「他に何か意見がある者は居るか?」


 喫茶という無難な意見が出たというのに未だ挙がる手の数は減らない。次から次へと出てくる案に取捨選択を交えて黒板に残されたのは、一番最初に出ていた喫茶、それから演武、演劇、お化け屋敷であった。


「よし、これくらいだね」


「喫茶は喫茶でもコスプレ喫茶とかのが良いんじゃねえか?」


 候補が出揃ったところでギーヴァ先生からそんな言葉が飛んでくる。


「コスプレ、ですか」


「ああ。ただの喫茶とかより良くねえか? 最近、黒の執行者も話題になってることだしよ。黒の執行者の面とか付けて喫茶店してたら面白そうじゃねえか」


 喫茶に入ったら全身黒ずくめの奴等がウロチョロしてるのを想像してみる。うん、地獄絵図じゃねえか。


「なるほど、そう考えると確かにありですね」


 今の説明のどこでありだと感じたんだよとツッコミは入れたくなるが、黒の執行者の仮装という一点を除けば普通の喫茶よりも面白いのではないかとは思う。


 クリスが喫茶の上にコスプレを付け足す。


「私は演武が良い。カッコいいから」


「私もだねー。コスプレ喫茶も可愛いとは思うけど」


 カリンとライカは演武が良いらしい。二人とも武術にはある程度精通していそうだし、さぞカッコよく披露することができるのだろうな、なんて想像を働かせてみたりする。


「私はコスプレ喫茶ですね。可愛らしい衣装着てみたいです」


「ふむ、我が守り人にふさわしい衣装というものをこしらえなければな」


「私は演劇ね。せっかくのSクラスの能力者たちなんだしそこを全面に出せるような奴が良いわねー。クロノは何が良い?」


 リア様にそう振られ、少し考える。コスプレ喫茶はさっきも言った通り別に蟻ではあると思う。演武は俺もエルザードで学んだ武術を生かせると考えればありなのかもしれない。演劇も特に否定する材料がないし、何よりリア様がやりたいと仰っている。


 そしてお化け屋敷は隠密の能力の子たちが活躍すればさぞ恐ろしいお化け屋敷が出来てこれまた良いのではないかと思ってしまう。


「難しいですね。どれも魅力的なものばかりですし。強いて言えば演武ですかね」


「演武ね~。クロノらしくて良いわね」


 俺らしい? それって誉め言葉として受け取ってもよろしいのでしょうか?


「取り敢えずこの四択で多数決をとってみるか、それともSクラスらしく各選択肢の代表が戦って決めるかい?」


 クリスの予想外の提案にクラスの皆が一瞬呆気にとられる。その後すぐにクリスがニヤリと笑みを浮かべる。


「冗談だよ。今からそんなことを始めたら準備する時間が無くなるしね。さ、多数決で決めよう」


 結局、挙手制で多数決を採ることになり、演劇が選ばれる。


「コスプレ喫茶も良いと思ったんだけどな~」


 ギーヴァ先生が残念そうに言う。まあ、無しではなかったけど。


「じゃあまずは台本を考えていこうか。どんなのが良いだろう?」


「やっぱり能力を使うとするんだったら戦闘はあった方が良いよね。それにヒロインは絶対いた方が良いし」


「だったら昔の勇者様の魔神封印を再現してみたら良いんじゃない?」


「それ良いね。少し話を作りかえてやる必要があるけど。台本を考えてくれる人は居るかい?」


 物語の大筋が決まったところでクリスがそう投げかけてくる。


「それなら私が考えますよ」


 クリスの投げかけに答えたのはガウシアであった。


「ありがとう、ガウシアさん。頼んだ。後は配役だけど……」


 そんなこんなで学園祭の出し物が決まっていくのであった。 

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