第107話 岩の力
ルーイの体は岩の巨人に包まれ、あらゆる方向からの攻撃に岩壁の防塞が立ちふさがる。
リーンフィリアは死角へと一瞬で移動して、光のエネルギーを蓄える。
「覇光!」
リーンフィリアの全身を覆った極大の光は岩の巨人もろとも包み込むほどの大きさで迫っていく。
「巨人だけじゃ心許ないわね。
岩の巨人の前に数枚の大きな岩の防壁が現れ、リーンフィリアの攻撃に対抗する。
ドガンッ!!!!
凄まじい音とともに光が岩の防壁を次々と砕いていく。
そして、全ての岩壁を砕き終わった後、現れるのは大きな両腕を前に突き出した巨人の姿。
全身を覆うほどの大きな光を携えた剣を握りしめ、リーンフィリアは手を広げた大きな巨人の下へと突っ込んでいく。
そして激しくうねる二つの衝撃波がぶつかり合う一瞬、世界が止まったかのような錯覚を感じさせるほどの静寂が流れ、直後に轟音と共に新たな衝撃が発生する。
ズガガガガガアッと光のエネルギーと巨人の大腕が激しくせめぎ合う。
「「ハアアアアッ!!!!!」」
両者の勢いは止まることを知らず、その衝撃の波はステージを削っていく。
一見、二つの力は釣り合っているかのようにも見えるが、その勢力図に徐々に変化が生じ始めていた。
(岩が……溶けてる?)
リーンフィリアの光によって発生した熱はルーイによって生み出され強化された岩をも溶かすほどの熱量を持ち、やがて光の柱が巨人の手の勢いに勝っていくのであった。
巨人が光に呑み込まれる直前にルーイは巨人から身をひるがえし、脱出を図る。
するとそこから巨人の力に歴然とした格差が生じ、その瞬間に光の柱が岩の巨人を跡形もなく消し去ってしまった。
「……危なかったわね」
巨人を消し去るリーンフィリアの能力を見て、ルーイはあのまま逃げずにいたら戦闘不能になっていたであろうことを想像し、冷や汗を流す。
「流石にあなたがメルディン王立学園で一番よね? これ以上強い人が出てくるって聞いたら嫌になっちゃうんだけど」
「残念だけど、私は選考試合で準優勝よ」
巨人を消し去ったのちにふらりと立ち上がり、ルーイに答える。
「やっぱりその話は本当の事だったのね。ガウシア王女殿下や史上最強の王子、そしてあなたという強者が居る中で優勝した謎の存在。あなたの学園の人に聞いてもあんまり名前を覚えている人がいなかったんだけどどういうことなのかしら?」
そう言うと、ルーイは少し笑みをこぼしながら続ける。
「皆口々に言っていたわよ。真の優勝者はあなただって」
「それはないわ。優勝者はクロノ。その事実は変わらない」
「本当? 何か隠しているんじゃないの?」
「本当よ。今まで勝てたことがないもの。それにまだ本気を出してもらっていないし」
「それは言い過ぎよ。というか少し話しすぎちゃったわね。観客が飽きないうちに私も強いってところを見せなくちゃ」
そう言うと、傍から見ても分かるほどに力を蓄えはじめ、そのまま両手を地面に付ける。
「
そう言うと、ルーイの体を先程と同じ見た目の大きな巨人が包み込み、その周りには少し小さめの小回りの利いた巨人たちがズラリと岩の剣を携えて召喚される。
「さあ、行くわよ!」
次から次へと迫りくる岩の巨人を光の剣で消し飛ばしていく。しかし、巨人たちの背後では絶えずルーイが力を使って巨人たちを生み出している。
岩の能力者が優れている点は操れるものが至る所にある事だ。したがって、このように他の能力者ではなしえない程の数の兵士を生み出すという芸当もできるのだ。
しかし、数が居るとはいえそれはルーイを守る大きな巨人ほどの戦力を持っているわけではない。次第にリーンフィリアの殲滅速度がルーイの生成速度を上回っていく。
「チェックメイトね」
大きな巨人以外のすべての巨人を倒し尽くしたリーンフィリアは周囲を煌々と照らす光の剣をゆらりとルーイに向ける。
ルーイも負けじと小さな巨人を生成するが、生成された直後に光の剣によって消し飛ばされてしまう。
そしてルーイの目の前にはさらに力を増したリーンフィリアの姿が。
「あなた、この戦闘中に更に進化したの?」
「まだ未完成だけれどね」
ドンッという音が聞こえるほどの衝撃波がリーンフィリアから放たれ、光が一層輝きを増し、光の剣が徐々に形を変えていく。
「
「ハアッ!」
岩の巨人が両手を前に突き出し、止めようとするが今回は様子が違う。最早、成すすべもなく先端から崩れ去っていき、やがてその攻撃はルーイへと届くのであった。
「キャアッ!」
吹き飛ばされたルーイの目の前に光の刃が突き出される。
それを見たルーイは観念して手を上げる。
「降参よ」
『勝者、リーンフィリア・アークライト!』
その瞬間、会場が震えるほどの歓声に包まれるのであった。
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