第106話 アルラウネ学院との戦い
長いようで短かった待機時間が終わり、俺たちの出番となる。対戦相手は予想通りアルラウネ学院であった。
しかし、俺の頭の中は先程クリスから伝えられた言葉で支配され、試合には集中できていなかった。
『グレイスからの情報だと最近、魔神教団の活動に少し怪しいところがあったんだ。それで色々調べるとさっきのギュスターブ君との接触が分かったらしくてね。もしかすると、闘神祭を狙ってるかもしれないんだ』
『……確かに奴等は能力強度を集めるのに執着しているし可能性は高いな』
『うん、だから父上に中止した方が良いかもしれないって言ったんだけどテロリストのせいで中止させられたってなると国として色々まずいからね。厳戒態勢を敷くことしかできないんだ。だからクロノにも手伝って欲しいなってね』
「クロノ? どうかしたの?」
リア様の言葉で俺の意識が現実へと引き戻される。
「い、いえ大したことでは」
「そう? なら良いけれど」
クリスが俺にだけ話したということは恐らく少人数での認識に留めておきたいという意志なのだろう。
あまりに大勢の者が辺りに目を光らせていたら相手にバレてしまうから。
誰に伝えるかはクリスが決める。だからこそ俺はリア様からの問いかけを誤魔化す。
「リア様、第一回戦頑張って下さい! リア様なら勝てます!」
「ありがと。じゃあ行ってくるわね」
そう仰ると、リア様はステージ上へと上がっていく。
『只今よりメルディン王立学園対アルラウネ学院の試合を始めます。第一試合はリーンフィリア・アークライト選手対ルーイ・ファーリア選手の試合になります』
その瞬間、会場中が歓声で沸き上がる。
「さっきの試合で中堅として相手選手を一発で倒していたルーイ選手ね。美人っていう事も相まって会場人気が凄いみたいよ」
なんの声援だと俺が首をかしげていると横からセシル会長が教えてくれる。
「なるほど」
先程、アルラウネ学院も先鋒、次鋒、中堅までで試合が終わった。その最後を瞬殺で飾ったのだから人気が出てもおかしくないだろう。
「でも今回は先鋒として出場するのね。確か実力としてはヘルミーネさんの次の筈だけど」
「最初から本気ってことでしょうね。いや~、楽しみだ」
さっきまでシリアスな雰囲気を出していたくせに、とニコニコしているクリスに心の中で毒吐く。
相変わらず感情の起伏が掴めない男だ。
まあ、クリスも魔神教団が何か仕掛けてくるとすれば閉会式の可能性が高いって言ってたし今はリア様の試合に集中するか。
そう思って俺はリア様の応援に集中することを決めるのであった。
♢
試合開始の合図と同時にリーンフィリアは能力を解放する。
「
リーンフィリアの体の周りを光り輝く鎧が纏われていく。
「不思議な能力ね。光が具現化するなんて」
神々しい光の鎧と剣を構えたリーンフィリアを見てルーイがそう零す。
「行くわね」
リーンフィリアはその場で地面を蹴り、光の速さでルーイへと詰め寄っていく。
「
ルーイも流石は優秀な学校の生徒である。リーンフィリアが光の速さで移動しているというのに、それを予測して技を繰り出す。
突如として岩の障壁がリーンフィリアの進行方向に立ちふさがると、リーンフィリアは怯むことなくその岩壁に光の剣を振るった。
ドガンッ!
「!? ちょっと、能力強度が20万にしては威力がおかしくない?」
「私も成長しているもの」
ルーイによって繰り出された岩の壁はいともたやすく光の剣によって切り裂かれ、その猛撃を一瞬の間すらも止めることはない。
そして、光の剣を大きく振り上げると、極大の光のエネルギーを集める。
「最初から全力過ぎない?」
「私は手を抜くのが嫌いなの。どこかの誰かのせいでね」
そしてそのまま光の剣を思い切り振り下ろす。
「
絶大な攻撃力を誇るリーンフィリアの奥義。それがルーイの頭上へと振り下ろされた。
ズガアアアアン!!!!!
会場中に響き渡る轟音。そしてステージ上には激しい地煙が巻き起こった。
少ししてその地煙の中から一本の大きな腕の様な物が伸びてきてリーンフィリアを捕えようとしてくる。
リーンフィリアは持ち前の速さを生かしてその腕の様な物を軽々と避ける。
「……強い」
「生憎だけど私も2番手としての意地があるからこれぐらいじゃ倒れてあげない」
そうして土埃の中から現れたのは大きな巨人に抱かれたルーイの姿であった。
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