第101話 闘神祭 第1試合
『それでは、これより第二帝国学園VSメルディン王立学園の試合を始めます! それでは第一試合の選手はステージに上がってください』
「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ、ほどほどに頑張れ」
「頑張って、クリス君」
終始、ニコニコしながらステージに上がっていく。クリスが姿を現した瞬間、黄色い声援が会場中を響かせる。
「相変わらずの女性人気ね」
「顔も良いですし、才能も有りますからね。性格に難ありですけど」
対する第二帝国学園の方は強面の男であった。美少年という位置づけのクリスとは対照的である。
「そういえば噂の一年生はどなたなのでしょうか?」
「あの奥で偉そうに座ってる長髪の彼がそうよ」
見れば青い長髪の男が足を組んでドカッと座っている。どう見てもあれが1年生だとは分からないだろう堂々っぷりである。
「彼が先鋒に出てくると思っていたけど、意外ね」
「様子見ってところでしょうか?」
「どうかしら」
何にせよ、先程の事が奴が指示したとするのなら、せこい事を考えている可能性がある。
『それでは両者の確認が取れましたのでこれよりクリス・ディ・メルディン選手対ザイアード・アドルノ選手の試合を開始いたします。では、はじめ!』
その合図の瞬間、ザイアードと呼ばれた男がクリスに向かって走り出す。そしてクリスはというと、その光景をニヤニヤしながら見守っている。
「どうしたのかしら?」
余裕の態度を崩さないクリスを見て、リア様が首をかしげる。俺もリア様と同じだ。奴が何を考えているのかが見当もつかない。
やがてザイアードとクリスとの距離が人一人分となったところでようやくクリスが動き出す。そして、何があったのか、ザイアードは明らかに失速し、クリスの蹴りがその巨体に炸裂する。
観客はクリスの華麗な攻撃が決まったことに湧くが、俺から見ればあの失速は不自然なものであった。
封印の力でも使ってザイアードの能力を封じたのだろうか? しかし、ザイアードの方から能力を使用した感じはなかったが。
ステージを見ると、余裕そうな顔をしているクリスとしきりに焦ってあの1年生の方を見るザイアードの姿があった。
それはまるで悪事がバレた犯人のような慌てっぷりである。何かをしていたがクリスに看破でもされたのだろうか。
クリスは少しその慌てているザイアードの姿を見て楽しんだのちに、ザイアードに攻撃を仕掛ける。
それからというもの、最初の勢いがザイアードから失われ、終始クリス優勢のまま、試合が進み、とうとうザイアードは立ちあがれなくなる。
『勝者! クリス・ディ・メルディン選手!』
その一方的すぎる試合に観客は盛り下がることなく、寧ろ大いに盛り上がり、勝者であるクリスに大きな拍手が送られる。
圧倒的な試合というのもまた一興なのだろうか。
「おかえり、クリス」
「うん」
少し嬉しそうな顔のクリスに俺はこそっと違和感の正体を問いかけるために近付く。
「おい、さっきのなんだ?」
「やっぱり気付いちゃった? 別に大したことはないんだけどね。彼があの青い長髪の男から手助けしてもらってたみたいだから、面白くてそれを封印したら弱くなっちゃったんだよ」
やっぱり姑息な手段を使ってきていたか。しかし、さも当然かのように見破るあたり流石、隠密部隊の主といったところだろうか。
「まあ、次からは大丈夫だと思うよ。一回バレた手をもう一回使うなんて馬鹿なことはしないだろうから」
トントンと俺の肩を叩いて椅子に向かうクリス。
「次は私ね」
よし、と意気込んで立ち上がるセシル会長。
「頑張ってください、会長」
「うん、私だって強いっていうところを見せたいんだから」
前、三年生なのに一年生である俺達に負けて悔しいと言っていたセシル会長。闘神祭に出ている時点で十分凄いと思うのだが、どこか自信が無い所がある。
ぜひともこの試合で勝って自信をつけて欲しいところだが……
『次の試合はセシル・グラスバーン選手対メイル・ジェンナ選手の試合になります! 準備が出来次第、ステージにおあがりください!』
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