第13話 入学式①

 晴れ渡った空。周りには初々しい制服に身を纏った学生たちが歩いている。その中にリア様と俺も混ざっていた。今日はメルディン王立学園の入学式だ。


 リア様と俺は既にここの学生寮に移り住んでいるのだが、流石に二人とも同じ部屋というわけにはいかない。おまけに男子寮と女子寮という風に建物すら分けられている。


 付き人としての使命を果たすために毎朝、早くに起きて女子寮の前でリア様を待ってから共に登校することに決めていた。


「……緊張するわ」


「頑張ってください」


 平凡な学生である俺とは違ってリア様は首席で合格された身。そのため、入学式では入学生代表としての挨拶をしなければならない。


 なのでこうして人一倍緊張していらっしゃるのだ。


 そうして俺とリア様は式場に入って、自分のクラスのプラカードが立てられている中の適当な所に座り式が始まるのを待つ。


 Sクラスが一番前で、順番にAクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスと並んでいる。


 他のクラスは椅子が沢山あるのだが、Sクラスだけ異常に少なく、20席ほどしか見当たらない。Sクラスってそんなに狭き門だったのか。


 辺りを見回すと、知らない顔だらけ。それもそうだろう。俺はエルザード家に居た時から貴族のパーティなどに出席したことが無い。


 追放されてからはそもそも人との関わりが殆ど無かったし。


 Sクラスの中でも最前列の席以外の席は殆ど埋まっただろう。そのころ合いにちょうど式が始まる。


「私はこのメルディン王立学園の学園長、レイディ・メルトキルと申します。まずは入学生の皆さま。本日はご入学おめでとうございます。あなたがたは本日より我が学園の生徒になります。しっかりと……」


 まずは学園長のありがたいお話からだ。俺が思い描いていた学園長の姿とは違い、まだまだ若そうな年上のお姉さんだ。


 淡々と学園の生徒としての心得などが語られていく。


 俺はこういう話を聞いているのはあまり得意ではない。まだ朝ということもあって口からあくびがこぼれそうになるのを先程から頑張って抑えている。


 横では新入生代表としてスピーチを控えて緊張しておられるリア様が居るのだ。俺がこんなところであくびなんてしてられない。


 そうして長い学園長の話を聞き終え、在校生代表のスピーチも終わると、次がとうとうリア様の新入生代表のスピーチの時間になる。


「次は新入生からの挨拶になります。リーンフィリア・アークライトさん、前へ」


 学園長がリア様の名前を呼ぶ。


「はい!」


 大きな声で返事をして立ち上がると、凛とした姿勢で華麗に壇上へと歩いていかれる。周囲からは流石公爵殿下のご令嬢ね、などの声が聞こえてくる。


「ご紹介に与りました、リーンフィリア・アークライトです。よろしくお願いします」


 パチパチパチと会場内に拍手の音が響き渡る。俺は心の中でリア様がんばれ、と応援している。


「まずは会場の皆さま、私達のためにこのような式を挙げていただき、誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼申し上げます」


 そう言うと、リア様は少し目を閉じて息を整える。


「私事にはなりますが、この学園に通うというのはある意味で夢でもあり、こうして制服を着られるようになったことに喜びを感じております。この学園に通っているのだという誇りを持って日々切磋琢磨していけたらと思います。学園長をはじめとした先生方、先輩方、これから迷惑をかけるかもしれませんが、ご指導の方よろしくお願いします。以上で新入生代表の挨拶とさせていただきます」


 そこまで言い切ると、リア様は深々と頭を下げ、それと同時に会場内に拍手の音が響き渡る。


 ゆっくりと明瞭に紡がれた言葉にはリア様が熱心に練習なさったであろう努力の痕跡が見えた。流石はリア様だ。


 壇上からゆっくりとリア様が降りてこられ、こちらに戻ってこられる。


「よかったですよ、リア様」


「本当? 良かったぁ」


 一仕事を終えたリア様に俺はねぎらいの言葉をかけると、ほっとしたようにリア様の緊張した頬が緩む。


「次にこの学園に入る特待生達を紹介します。では、特待生の3人、前へ」


 学園長の言葉に周囲は余りの衝撃にざわつく。


 それもそうだろう。この学園の特待生とは、試験など関係なしに入れる者、つまり圧倒的強者でなければ無理である。それも能力強度の順位が3桁以内の者でないと。


 それが3人もいるのだ。こんなことは魔神の軍勢が復活する前から考えても前代未聞であろう。


 どんな奴なんだろうと思っていると、ステージの横から3人の制服を身に纏った男女が出てくる。


 そして、俺はその3人の中の一人の顔を見て心底驚く。


 なんでがここに居るんだ!?

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