第5話 試験当日
「ドキドキするな。今日で頑張ってきたこと全部が決まるんだもんね」
「リア様なら絶対にいけます。一か月隣で見てきた私にはわかります」
今日は学園の入学試験当日の朝。俺とリア様は今、学園の正門の前に立っている。そこらかしこが受験生で一杯だ。
学園の入学試験は大きく分けて二つある。まずは筆記試験。ここでは基礎知識から応用まで幅広く出るらしいが、公爵様の人脈で雇った家庭教師が非常に優秀だったためにリア様も難なくクリアできるだろう。
次に、実技試験。実はこれが一番入学試験の点数の大部分を占めている。
基本的にはトーナメント制で行われるらしいのだが、それではあまりにも運要素が強いためか敗者復活という制度もあるみたいだ。
「うん! 自信が湧いてきたよ! ありがとう、クロノ」
「いえいえ、お力になれたのであればそれ以上に嬉しいことはございません」
自信さえ取り戻せたなら後はいつも通りの力を発揮するだけだ。
リア様と俺は学園に入り受付で受験番号を貰うと、その足で試験会場へと向かう。
試験会場には既に多くの学生が試験を今か今かと待ち構えている。
ここに俺よりも位が低い人なんて居ないんだろうな。
俺は改めて自分の場違いさを噛みしめる。
そうして少しすると試験官が現れる。
「では、これより筆記試験を始める。不正行為はしないように。万が一そのような行為が見受けられた場合は即刻失格とし、学園から出ていってもらう」
それから何個か確認事項を告げると、ようやく筆記試験が始まる。
一問目は能力者の歴史に関する基礎的な問題だ。二問目も基礎的な問題だな。
そうしてスラスラと解答していき、遂に最終問題に突入する。
……結局最後まで基本問題しか出なかった。これならリア様も余裕で合格だな。
それにしても応用問題はどこに行ったのだろうか? こんな問題で人を選別できるとは思えないんだが。
俺は全ての問題を解き終わり、ミスだけ無いか確認すると、机につっぷして眠る。最近は勉強と使用人の仕事の両立で疲れていたのだ。これくらい許してほしい。
少しして肩をトントンと叩かれる。
「君、具合が悪いのかい?」
そこには心配そうな顔をしている試験官の顔があった。あまり目立ちたくはないのでスッと全て解き終わっている解答用紙を見せる。
「な、も、もう終わっていたのか。それは失礼。ぐっすりお休み」
試験官からまさかの睡眠の許しを貰った俺はいびきをかかないようにして仮眠するのであった。
♢
「クロノ、余裕そうだったね」
「そう言うリア様も余裕だったと言わんばかりのお顔ですよ?」
「まあね♪」
流石はリア様だ。自身の主の成功に思わず頬が緩む。
今は実技試験の会場への移動の最中である。
周りの受験者の顔を見ると、浮かない顔をしている者が多い。筆記試験でミスでもしたのだろう。
偉大な能力者の歴史の他に能力に関しての基本的な情報しか聞かれなかったから簡単だと思ったんだがな。
そうして実技試験会場に着いた俺達に早速試験のトーナメント表が配られる。トーナメント表の自分の番号はどれかと探していく。
あった。
俺の番号は『5』。相手の番号は『20』であった。
「そう言えばクロノは何番なの?」
「私は5番です」
「5番かー。5番、5番、、、あった。良かった私は80番だから大分遠いわね」
「それは良かったです。リア様とはできる限り当たりたくありませんでしたので」
初戦でリア様と当たらないということで一先ずは安心だ。
試験官からある程度の説明をされた後に実技試験が始まるのであった。
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