第3話会社で
とある企業の総務課係長の堀江は鬼の堀江と呼ばれていた。
元は、業務部から始めて現場の叩き上げで、3年前から総務課へ異動してきて、係長としては2年目である。
現場を知っているだけに、書類の不備なぞはすぐに分かる。
ミスは二度までは許すが、三度目のミスには雷を落とす。
周りはパワハラだとは思っていない、普段が優しいので、堀江がキレているところを目撃した者は、よっぽど総務課を舐めたような書類を提出したんだ!と、納得する。
昼休み、総務課の部下や後輩を連れて中華料理屋へいく。ランチが550円で食べれるのだ。皆、仕事の話しばかり。堀江は興味なく新聞を読んでいた。
しばらくすると、料理が運ばれてくる。
「え~と、杏仁豆腐の単品頼んだの誰ですか?」
堀江は、
「あっ、杏仁豆腐はパパが食べるよ」
「……はい、分かりました。パパ」
し、しまった~。いつもの癖でパパって言っちゃたー!
「係長ってホンとすごいですよね?」
「な、なにが?」
「仕事はきっちり、前任の係長を飛ばし、家庭では、優しいパパ。理想的です」
「そ、そうか」
午後からの仕事前に、業務課の同期の大倉にLINEを送り、返事を待った。
すぐに返信が来た。
【今日、6時に三嶋屋で待つ】
【りょ】
「パパ係長、この書類チェックして下さい」
「林、パパを付けるな!」
「もう、総務課の半分は係長の事をやパパと呼んでいますよ!」
「……どうとでも、呼べ!」
17時半、堀江は会社を出て三嶋屋へ向かった。
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