第13話
1.才能世界とルリカ
眩しい光で、目が覚めた。
部屋の明かりとは違い、もっと鋭く、刺すくらいの明かりだ。
いつもの起きる日々と感覚が違う。体がとてつもなく重い。
ようやく
「気がつきましたか。あなたの名前を確認します。
今、昏睡状態から脱したところですよ」
僕はもうとっくに取り柄がないどころかもっとだめになっていたらしい。
気がつくと僕は病院に1人で居た。
親も知り合いもあの少女さえ、どこにもいない。
どういうことだろう。
昨日までの日々を上手く思い出せないまま、僕は独り、世界に取り残されたような気持ちになった。
近くして、僕の担当らしい先生が目の前に来た。
車椅子でしか動けない僕を、そのままでいいので聞いて頂けますか、と話し出す。
「才能を持たない人達の為に、国が行っている実験をご存知ですか」
僕はぼんやりと聞いていた。
何の話だ、と思ったが、ひどく昔にそんなようなニュースを見た気がする。
「この世界は才能を持つ者がほとんどです。持たない者は、ほぼいないと言っていい」
そう言いながら、先生はホワイトボードに才能を持つ者、それと持たない者の図を描き始めた。
「だが、稀に持たない者が生まれてくることがあります。そう、あなたのような」
「……」
そんな者になった覚えはどれだけ記憶を遡ったって無かった。
置いていかれる僕をよそに、話は続く。
「そんな者に救済処置としてとられた政策が、同じ才能を持たない人間の中で生活できる仮想世界を生きられるようにする、ということでした」
何を言っているのかわからない。
つまりどういうことなのか。
「つまり、死ぬまで夢を見させる、ということです。
自分と同じ、才能を持たない人間達の中で生きる権利を与えると」
つまり、才能を持つ人間の生きる世界と才能を持たずに生きる世界は違う。
仮に、才能の有る世界を才能世界とし、才能の無い仮想世界を無才能世界としよう。
その2つの世界を分けて、交わらないようにしているということか。
「こちらの世界はあちらの世界をプロジェクターなどで監視及び管理できますが。
基本的にあなたのいた世界から、こちらの世界へは繋がりを持つことはできません」
そして、その判断は親に任されたらしい。
僕の親は18で才能がないことがわかるとすぐに無才能世界へ送ることを望んだのだとか。
「あなたには才能が無かった。
ですが喜んでください。
あなたには才能が発芽した。
なのでこの世界を生きられる」
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