第7話

6.君と僕の終わらない世界



「っ……」


学校の玄関から出た瞬間、沈みゆく、1番明るさが際立つ太陽に目を焦がされた。


眩しさに目を細めて、影を手で目の前で作ると、学校の入口のところに誰かがいることがわかった。


それはやはり、朝見送ってくれた少女だった。



「君にも夢はあるの」


待っていてくれたのなら、遅くなって悪かったということを先に伝え、歩き出し、横に並びながら僕はそう少女に問いかけてみた。


どう答えてくれるだろうか。


少し考えて、少女はゆっくりと言った。


「たいせつなひとをまもることかな」


ちらと伺い見た少女は照れたような笑顔をして、人差し指で、頬をかいていた。


素敵な夢だなと思ってそれを伝えると


「ありがとう。うれしい」


と屈託のない笑みを浮かべた。


夕焼けに照らされた少女の笑みは、まるで天使のほほえみのような神秘さを秘めていた。


「あなたは」


少女が問いかける。


僕は一瞬迷った末、普段は人に言わない僕の夢を少女に語ることにした。


きっと少女は笑ったり、夢見がちなことを責めたりするようなそんな人間じゃない。


どこかでわかっていても自分の考えを話すことは怖い。


金木犀の香る空気を吸ってぽつぽつと話し出した。



その夜のこと。


少女と別れ、家族と晩御飯を囲んだ後、自分の部屋で学校から出された課題をやっていた。


この課題も何度やったかわからない。


この生活は終わることの無いロールプレイングゲームみたいだ。


課題が一段落した頃、僕はノートの新しいページを開いた。


考えているのはあどけない、それでいて、不思議な雰囲気を纏った少女のことだ。


考えがインクを伝って無限に出てくる。僕は夢中になって少女についてを書き出した。


詩のようなものから少女の見たままの仕草や表情なんかを一気に書き連ねる。


眠たそうなのに、その様子を見せまいと必死にあくびを噛み殺している様、綺麗な鼻筋、いつも見ている世界は同じはずなのに、宝石のように輝く瞳、穢れや絶望なんて知らない、知っても意に介さないような、その純粋そうな言葉遣いからとれる性格。


こんな感情になったのは夢を抱いたあの日以来だと驚き、同時に嬉しくなった。


この心を突き動かす衝動を運んできてくれた少女に感謝したくなった。


また明日も会いたい。


そんなことを強く思いながら、僕はベットに移動する間も惜しんで、机に突っ伏したまま眠りについた。

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