第4話

3.君と僕の終わらない世界



大学でもお喋りがとても得意とは言えない僕が驚きながらもようやく告げられた言葉は


「君も?」


の一言だった。



この世界には朝も昼も夜もある。


昼前もあれば夕方だってある。


無いのは1ヶ月という月日の長さ以上の日々だ。


1ヶ月を超えると、1日だってその先の11月になることはない。



何から話そうか、答えを出しあぐねた僕は、とりあえず名前とずっと僕の行動を見ていたことの確認をした。


その少女は


「そう、みてたよ」


そう言って笑った。


サイダーのような清涼感の声、炭酸がシュワシュワと弾けるように少女は笑った。


その言葉にできないような感情にそっと微笑みを浮かべて応じた。


こういう子のことを可愛いと世間は言うのかもしれない。


僕にはよく、わからないけれど。


それを隠すように、僕はうつむいた。



すっかり暮れた夜の世界。


僕はまた変わらない関係を続けるために家へ戻ることにした。


今度は家族とだ。


見た限り中学か高校の少女を何度も送っていこうとしたのだが少女が


「わたしはだいじょうぶ」


としきりに言うので大人しく引いた。


少女の言葉はなぜか頭の中で漢字ではなくひらがなの響きを放つ。


柔らかく、短文。幼い子が話す口調みたいだ。


僕のおよそ上手とは言えないコミュニケーション能力でやっと話せた中で印象的だったのは、少女もこの世界が終わらないことを知っていたことだ。


世間話のようなことも話したが、大抵は少女はにこやかに頷くばかりで、質問をした時には小首を傾げるだけで答えてはくれないということもよくあった。


それでも連続して続くこの世界のことを話せる相手ができたことにすごく安心した気分になった。


家に無事ついて少女と手を振って、お別れした後も、話したことを思い出していた。


またいつか会えるといいなと思いながら眠りにつく。

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