第6話

「大野社長。面談はどうでしたか」

「ミライナのエンジニアを集めろ。ミライナに問い直す」

「承知しました」

 巨大やコンピュータの集合体である超高層型人工知能「ミライナ」はもはや人間には理解が及ばない論理回路で答えを導き出す。

 元原からミライナのエンジニア統括部、部長である阪田に連絡を入れるよう伝えた。

 無人タクシーには、法定速度ギリギリまで速度を出すよう命令を出しストライクファミリー本社に戻る。ミライナの予測不可能な答えには皆が驚き、対応に追われる事になる。

 その準備を我々はしなければならない。

 ストライクファミリー本社に着くとそこには阪田が待ち構えていた。

「社長。ミライナに問い直すというのは本当ですか? 最近量子コンピュータに論理回路を変えたばかりで、思考に不安定なところがあります。もし万が一、誰も考えもしない事を言い出したら誰にも止められないんですよ?」

 確かにそれは言えている。何故ならミライナは世界中のストライクファミリー社系列の無人工場とネットワークで繋がっている。もし、論理回路が暴走しこちらの承認を待たずして未知のツールを作ってしまったら世の中がひっくり返る程の混乱を巻き起こすかもしれないのだ。

「それでもやるしかない。量子コンピュータの思考解像度は従来の一兆倍というじゃないか。ここは一か八か賭けようじゃないか」

 阪田の顔が不安で曇る。その気持ちも分からなくもない。だが、フィクションではない現実を操縦しているミライナが世界の全てを決める。それが我々ストライクファミリーが作ってきた世界なのだ。

「もう、何が起こっても知りませんよ! 近藤! 藤本! ミライナ本体に行くぞ」

 阪田は半ばヤケクソになりながら、社屋へと戻りだした。阪田の部下もタブレットを素早く操作しながらあとに続いた。

 我々もあとに続き、地下四階にあるミライナ本体へと向かった。

 七重のセキュリティゲートを通過し、巨大なサーバーラックがあるAIミライナと対面した。

「大野社長。お帰りなさい。私は超高層型AIミライナです。御要望は何でしょうか」

 ミライナのカメラが私を捉え話しかけてきた。ミライナと話せるのは最高権限を持っている私だけだ。

「バージョン2.3です。量子コンピュータ型のミライナを動かすのは初めてなので、どうかお気をつけて」

 阪田が耳打ちする。私の個人開発で始まったミライナは今では神にも近い存在となっている。そんな超高層型AIに指示が出来るのは私だけだと思うと全身が震えた。

「ミライナ。君が出してくれた長期計画書は素晴らしかった」

「ありがとうございます。光栄です」

「しかしな、少子高齢化対策のプランに問題があると倫理委員会からお達しがあった。慎重にプランを練り直して貰えないか」

 ミライナは黙り込んだ。ミライナは今プランを考えている。一体どんな未来をデザインするのか。現場に緊張が走る。

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