第三十九話「帝国へ」


始帝国第二都市ツヴァイ

王城の城門付近でジン達が終戦会談に向けて帝国へ向かう準備をしていた。


「おはようございます。ジン様」

「おはよう、アルトリア」

ジンが馬車の前に着き、アルトリアが出迎える。


「この度ジン様と共に帝国に向かう者達です」

そこには騎士が20名、都市長が二人とアーサー。アーサーの補佐でランスロットが並んでいた。


都市長はルインとアポロンがいる。


都市長「女帝」ルイン

腰まである赤い髪をハーフアップにしている女性。薄紫の瞳で花のレースがあしらわれたシルバーホワイトの腰まであるスリッドの入ったドレスを着ている。強気な見た目をした女性。


都市長「太陽神」アポロン

炎のように揺らぐ赤い髪に紅の瞳を持つ活発さを見せる小柄な少年。いつもは腰巻きだけだが、今回は会談に参加するということで、

ドレス要素のある半ズボンとシャツにベストを着ている。


「おはよう二人とも」

とジンが二人に声をかけると


「おはようございますジン様」

「ジン様おはよう!!」

とルインは優雅に、アポロンは活発な返答をする。


そして、アーサーが馬車に乗り次にジンが後にルインとアポロンが乗る。周りの騎士にランスロットが指示を出す。


「じゃあいってくるよ」

「いってらっしゃいませ」


とアルトリアに別れを告げてジン達は帝国への向かい始めた。



         *



ジン達の帝国へ向かう道中の馬車内

馬車の中では四人が最近のことに関して話をしていた。


「そういえば、みんな。これは大事な話なんだけど」

とジンが話し出すと全員黙って聞く姿勢になる。


「おそらく連絡が来てると思うが、十二使徒と呼ばれる勢力が現れた。情報が少なく、大天使だということしかわからなかった。ツヴァイにあった文献にも記載はされてなかったそうだ。しかし、十二使徒に関しての情報はあるらしい」

「情報が少ないけれど、情報はあるらしいというのはどういうことでしょうか?」


ルインが丁寧に質問をする。


「僕も冒険者から情報をもらっただけなんだけれど。その後調べた結果、ほとんどの国には確かな情報がないみたいなんだ。だが、唯一聖法国には秘匿された情報があるらしい」

とジンが説明するとアポロンが質問する。

「じゃあ!次は聖法国を攻めるんですか?」

と勢いよく話し出した。


「いやそれは無しだね。他国を敵に回すし、メリットも情報だけでしかない。その情報もどの程度かわからないからね」

その言葉に全員が賛成した。


「それで、その大天使はどれほどの強さなのでしょうか。私たちの基準での大天使の強さと考えてよろしいのでしょうか?」

とアーサーがジンに質問をすると、ジンは少し考えてから答える


《ONRY. WORLD》の中で天使は特殊なものも除いて九段階の階級がある。


熾天使セラフィム

智天使ケルビム

座天使スローンズ

主天使ドミニオンズ

力天使ヴァーチュズ

能天使パワーズ

権天使プリンシパリティーズ

大天使アークエンジェルス

天使エンジェルス

の九つで上に行くほど強くなっていく



「僕の力を制限した状態での攻撃をかわせたり、攻撃の威力を考えると。大天使というのはただの呼称だと思うね、おそらく主天使ドミニオンズぐらいの強さだと考えていいと思うよ」


「全力の都市長なら勝てると?」

「いや、一瞬だけでの予想だから当てにしない方がいいと思うけど、頭の隅に置いておくといいと思うよ」


「「「わかりました!」」」

三人がしっかり答える。


すると、馬車の前方が騒がしくなる。

「何か起きたみたいだね」

「そうですね、ランスロットの声が聞こえるので盗賊か魔物が襲ってきたのでしょう」

とジンの疑問にアーサーが答える。


「一応、ルインは外に出て状況の確認と、いらないと思うけど手助けしてきて」

「わかりました」

とルインが静かに馬車の戸を開けて出ていった。



           *



ルインが馬車から出るとランスロット達が盗賊の相手をしようとしていた。


「ルイン様、どうかしましたか?」

ランスロットが馬車から出てきたルインに気付き話しかける。


「ジン様に念のため援護するようにと言われましたので手伝いに来ましたよ」

「それは助かります。情報を得るために生捕にしたいのですが、相手が弱いばかりに手加減するのが難しいので手間取っております。私の力不足だと恥じるばかりです」


「何を言ってるのですかランスロット。あなたは十分仕事をしてますよ。今回は相手が弱いのが悪いのです」

「ご配慮ありがとうございます」

「では、ここは私に任せてください」

ランスロットはすぐさま騎士達に命令を下しルインの通る道を開ける。


ルインが騎士の道を歩き終えると、扇状に馬車を囲む者たちがいた。

その者達はルインが出てきたことによりより一層下卑た笑みを浮かべる


「ゲヘヘヘ、綺麗な姉ちゃんが出てきたぞ!おまえら!なんだなんだ?この馬車の野郎は女一人生贄に出して自分は助かろうとしてんのかい?最低な男だねぇ!」


と相手方のリーダーのような者がジンのことを馬鹿にするようなことを話すがルインは我慢して聞く。


「あなた達は雇われたのですか?」

「さぁどうだろうねぇ」

男は答えない


「そうですか」

「なんだい、姉ちゃん。最後の言葉はそれだけかい?まぁいい!やっちまいなお前ら!」


男の掛け声で周りの男達がこちらに襲いかかって来た。

しかし…


『止まりなさい』


ルインの言葉で男達がピタッ止まる。

「こりゃなんだ!体がうごかねぇ!」

と叫んでいる。


『黙って跪け』


次のルインの言葉により男達は喋れなくなりそのまま跪く。すると、そこに馬車から降りたジンが近寄ってきた。

「さすがだね、ルイン」

「ありがとうございます」

ルインが跪き感謝の言葉を放つ。


「じゃあ情報収集もルインにお願いしようかな」

「わかりました」

ルインは立ち上がって盗賊達の方に向き直す。


『なぜ、私たちの馬車を襲った。誰に頼まれたか言え』


ルインの絶対王命により盗賊が情報を話そうとしたその時

「俺たちを雇ったのはばあてひjanふきめりならrxgdvひiふgvぬしづgeくしめるきtぬてにtふちwぬちgやgひj7」

と奇声を上げて、盗賊達の顔が赤く膨らむ。まるで水風船のように。


「「ジン様後ろへ!」」

アーサーとルインがジンを守るように前に出た。そして、


バァァァァアアアアアン!!


顔が破裂し、血が宙を舞い周囲を真っ赤に染める。しかし、ジン達は魔術で防壁を張ったため汚れることはなかった。


「口封じをされたか」

「申し訳ありませんジン様」

ルインが恭しく謝罪した。

「気にしなくていいよ。情報を得られなかったのは大きいけれど、元々情報もないまま行こうとしてたんだ。結果は変わらないさ」


こうして盗賊から情報を得ることはできなかった。

ジン達は帝国への歩みを再開した。

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