閑話2「ランカンのとある一日」


元五英傑第一席・ランカン

ライオンの獣人の男、真っ直ぐな性格と民を思う気持ちが国民に愛されている。ジンに敗北後、始帝国ファウストの獣人の代表をしている。


そんな、ランカンの1日は朝早く始まる。


朝早く起きて日課のトレーニングとランニングを行い。

そのまま、獣人代表の館に向かう。


館に入り自室に向かう。自室の扉を開けると正面に大きな机があり、机の上にはこの都市での仕事に関する資料が置かれていた。


ランカンはその資料に目を向けつつ机の左にある扉を開けた。そこは脱衣所になっており奥にはシャワー室があった。


シャワーで汗を落としつつ今日の仕事を考える。


ランカンの仕事はそこまで多いものではない。獣人が増えたことで仕事は増えたが辛いものではなかった。


最初こそは共生国家の五英傑の1人として民には嫌われていたが、トワイロスの王女であったライラの働き掛けにより今は受けいられて来ている。

シャワーを終えたランカンは新しい服を着て机に座る。すると、自室の扉を開けて元五英傑第二席アークが入ってきた。


「おはようございますランカン様。やはりお早いですね」

「そんなことはない。この都市をより良いものにするためと考えれば容易いことだ」

「そうでしたね。それはそうと、これが今日届いた資料です」


朝届いた仕事の資料に目を通す。資料には、都市に来た獣人の戸籍作成の途中経過報告や移民の仮住居建設費用の見積もりなどがあった。


それらに、確認の印を押していく。2時間ぐらい資料の確認をアークと行い主な仕事を終える。


「終わったな。今日も街の巡回に行くか?」

「では、私も同行させていただきます」


ランカンはいつも仕事を終えると都市ツヴァイ全体の巡回を1日かけて行う。

なぜなら、少しの都市の変化を確認したり民の悩みを解決するためである。


ランカン達は館を出て歩き始める。

街は至って平和で子供の笑い声が聞こえるほどだ。ランカン達に会釈する人もいれば手を振って大きな声で挨拶をする子供もいる。

ランカンはそれに応えて笑顔を見せる


すると、前からジン配下の騎士達が歩いて来た。おそらくランカンと同じく街の巡回をしているのだろう。

ランカンとアークは道を開けて敬礼をする。

それに気づいた騎士の一人がランカンたちに話しかけてきた。

「これはこれは、ランカン殿。巡回お疲れ様です。そして、頭を上げてください。私たちに上下の差はないと言ったじゃないですか」


そう、ランカンはこの町では特殊な立場にいる。

元々ジンの配下では無かったが、この街で一つの種族の長をしているのだ。

普通は騎士より高い地位にいるべきだろう。


だが、ランカンがそれを固辞したため騎士たちも対等に接することとなったのだ。

それを嫌がる騎士は出なかった。

しかし、騎士たちはランカンより強くジンに使える騎士であるため、ランカンはいつも上の者に接する態度を取るのだ。


「あなた方騎士はジン様直属。私は後から来た新人も同然。それにも関わらずあなた方と対等などのあり得ないことです」

「ですが、ジン様が私たちは対等とおっしゃったのです。あなたは主の言葉に従わないのですか?」

「そういうわけでは…」


そこで、騎士がランカンに提案をする。

「そうだ!では、私たち懇親会として新しくできた銭湯に一緒に行きませんか?」

「それはいいですね!」

とアークが賛同する。ランカンも苦い顔をしながら賛同する。


「では、夕方の鐘が鳴る頃に銭湯の前に集合としましょう。その時間ならそちらの巡回も終わっているでしょうし」

「そうですね、わかりました」

こうして、ランカンとアークの騎士達との懇親会on銭湯が決まったのだった。



         *



「早めに巡回が終わりましたね」

「そうだな、騎士様達との約束もある。早めに向かうとしよう」

とランカンたちが銭湯に向かっていると前に見慣れた人影を三つ見つける。


「ライラ様たちではありませんか」

「あっこんにちはランカン様、アーク様」


そこに居たのは、この都市の人族代表ライラとその弟アンドレイ、護衛のエルドだった。


「皆様はどちらに向かわれていたのですか?」

「私たちは、最近できた銭湯のに行くんです。アンドレイも行きたいと言っていたので」

「それはちょうどいいですね、私たちも銭湯に向かっていたところです」

「では一緒に行きましょうか」


そして、ランカンたちは五人で銭湯に向かい始めた。

「ランカン様!」

「何ですか?」

アンドレイが大きな声でランカンに話しかける。

「今度稽古つけてくれませんか?」

「いいですよ、最近できていなかったですしアンドレイの腕前が上がっているといいですね」


そう、アンドレイはよくランカンに剣の稽古をつけてもらっているのだ。元々エルドが行っていたが、ライラの護衛など忙しいことが多く。できない日も多かったため、仕事が少ないランカンが度々相手をしていた。

そんな話をしていると銭湯の近くまで来たところで約束していた騎士たちと落ち合う。

そして、銭湯の前に着くと銭湯の前でウロウロしている者を見つける。

そして、ライラが名前を呼んだ。


「あれ?アーサー様にランスロット様じゃないですか、どうかされたんですか?」

銭湯の前にいたのはこの国の軍部代表であるアーサーだった。隣には副官のランスロットがいた。

アーサーは驚きで肩をビクッとさせてから振り向く。

「あぁ、ライラ殿たちでしたか。お仕事お疲れ様です。私はたまたま前を通ったので気になっただけですよ。それでは私はこれで」

と言いながらこの場を去ろうとするアーサーをランスロットが止めた。


「あなたが行きたい行きたいというから来たのですよ。皆さんと入りましょう」

「ちょっ!ランスロット!それは言わないでって僕言ったじゃん!あ…」

「ではアーサー様も一緒に入りましょう」


こうして、アーサーとランスロットも一緒に銭湯に入ることとなったのだった。



         *


女湯更衣室


「ランスロット様は綺麗な体をしてて羨ましいです」

と着替えているとライラがいきなり話し出す。

「そんなことはないですよ」

「謙遜されるとこっちは嫉妬してしまいます」

「私は腹筋が割れてたり筋肉質なだけですよ」

「それが、綺麗じゃないですか!それにお胸も大きいですし…」

「胸など重たいですし、邪魔な時が多いですよ?」


すると、アーサーが近づいてきた。

「ランスロット、その言葉は胸の小さな人を敵に回すぞ」

「そうなのですか?ライラ様失礼しました」

「いえいえ!私はランスロット様を褒めただけですよ」

「それは…ありがとうございます」

少しランスロットが照れたように見える。


「そんなこと言ってるライラちゃんの体型は可愛いじゃないか!」

と突然現れたのは「稚遊」ウカノミタマだった。


「ミタマ様!?なぜここにいらっしゃるんですか?」

「もう!ミタマちゃんでいいって言ったのに!まぁいいや、ライラちゃんの質問に答えてあげよう!答えは簡単、この都市がジン様の物になったからさ!」

と自慢げに話すミタマ。


すると、アーサーがミタマに指摘する

「それはそうと、ミタマ。ライラ様にベタベタしすぎだ」

「そんなことはないよね!ライラちゃん!」

「きゃっ!」

とライラの胸を突然触るミタマ。

「ライラちゃんの胸も揉めば大きくなるよ!」

と揉み始めるがアーサーの拳骨がミタマの頭に落ちる。


「コラ!ミタマ。そんなことしちゃダメだぞ!」

「ごめんよぉアーサーちゃん!」

とミタマがアーサーに飛び付こうとした瞬間ランスロットに捕まれる。

「ミタマ様、私たちは浴場へ行きましょう」

「ちょっ!ランスロットちゃん!はなして〜!」

ミタマはそのままランスロットに浴場まで連れて行かれたのだった。


「ふふっ私たちも行きましょうかアーサー様」

「そうですね」

そして女性たちは銭湯を楽しんだのだった。



          *



時は遡って男湯脱衣所


「さすが元五英傑ランカン殿!素晴らしい筋肉を持っておりますな!」

「そういうエルド殿は、その年齢でその素晴らしい筋肉は尊敬に値しますよ」

「二人ともすごいです!」

とお互いの筋肉を讃えるポージング大会が開かれており。アンドレイも二人を褒めている。


「アークは引き締まった体をしている。今も訓練を怠ってない証拠だな」

「騎士様たちは、無駄がなく究極の筋肉というべき体をしていますな!」

「私たちより上の騎士たちはもっとすごいですよ!」


とランカンも少し楽しくなっており男湯にいた一般人まで巻き込んだものとなった。

ポージング大会は湯に上がった後も続いた


その後、アンドレイに現状を聞いた着替えを終えた女性陣は呆れながらもアンドレイの話を楽しく聞きながら帰路についたのだった。

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