第三十一話「白」
「
リーシャが詠唱すると体から白い魔素が溢れ
上へ上へと溢れ出た魔素はそのまま形作られていく。
白亜の龍が空を登る
現れたのは純白の龍、流水の様なしなやかで美しい肢体、鉤爪はまるで美術品のように歪みひとつない。
天を穿つ輝きを放っていた。
「なんだと…」
ディザドはその光景に驚きを隠せない。敵として判断してなかった相手が危険人物になったからだ。
(ありえない…あの者の力量では私に届かないはず…だった)
そんなことを考えているとリーシャが行動を始めた。
「
白龍は口から光属性のブレスを放った。その輝きは街の端まで届いた。衝撃波は周りの家屋を歪ませる。
ディザドはブレスを闇属性の障壁で防ぎ、闇魔術で相殺し押し返そうとする。相当ブレスが強力なのかディザドの顔が大きく歪む。
「くそっ!なめるなぁああ!」
ディザドは障壁を消し闇魔術を一点に絞って放つ。
白龍にディザドの魔術が届くか届かないかのところで白龍のブレスが止まる。
それに合わせてディザドの魔術も掻き消えた
「ハァハァ…くそ」
ディザドは額からは大粒の汗をかき、肩で息をしている。
「お前如きに、私が負けることなど決して有り得ない!私は神に選ばれし人間なのだ!」
ディザドは闇魔術を展開。10本近い暗黒槍がリーシャに向けて放たれる。だが白龍の手で暗黒槍はあっけなく消えた。
「貴方は神になどに選ばれていませんよ。では神がいるなら神に勇気が欲しいと願えば勇気をくれるんですか?それとも、そのチャンスをくれるんですか?」
リーシャは空に手をかざす
「愛が欲しいと願えば相応しい恋人をくれるんですか?それとも、そのチャンスをくれるんですか?」
リーシャはディザドを見る
「スハラ先輩を助けて欲しいと言えば助けてくれるんですか?それとも、助けるチャンスをいただけるんですか?」
リーシャはスハラを見た。
「否、くれません。神が不平等になったら何を信じればいいんですか?私は神を信じても神頼みになってはいけないと思います。貴方は神頼みになって自分を見失った。それが敗因です」
リーシャはディザドに指を指す。
「天鱗の双翼」
リーシャの頭上にいた白龍は翼を広げる
その姿は神々しく美しかった。
ディザドは悔しくもそれに見惚れてしまい防御に遅れた。
翼から数千を超える白龍の鋭い鱗がディザドを襲う。
ディザドは遅れて障壁を展開する。流石は五大ギルドのギルド長の一人。一瞬で十数枚もの障壁を貼るが徐々に破られていく。
「クソクソクソ!!!」
障壁は最後の一枚となる。
「こんなはずでは!!」
そして、障壁が破られた。
「クソがぁああ!!うわぁぁあああ!!!」
ディザドは天鱗に押し潰され地面に倒れた。周りの地面は粉々に砕けている。
その後、白龍は魔素となり掻き消えた。
「ハァ…終わった……」
リーシャは疲れによって膝をついた。
スハラの元へ四つん這いで向かう。
「やりましたよスハラさん。私は約束守りましたよ」
リーシャはスハラを抱き上げて腕の中に包み込む。
スゥースゥー
「ん?」
どこからか寝息が聞こえる。
リーシャは誰かいるのかと周りをキョロキョロ見回すが誰もいない。
そうなると寝息を出す人は一人しかいない。
「まさか…」
リーシャは腕の中のスハラを地面に落とした。勢いよくスハラの頭は地面に落ちる。
「あいた!!あれ…私生きてる?」
スハラが目を覚ました。
「スハラさん…」
「げぇ!!!」
リーシャからは不穏な気配が漏れている。笑顔は雰囲気が笑っていない。
「『げぇ!!!』じゃないですよ!なんで生きてるんですか!?胸からそんなに血が流れてるのに!」
するとスハラが服の中を探ると中から出てきたのは酒瓶の残骸と瓶の破片が刺さったパンだった。
事の顛末を言ってしまうと、撃たれた箇所には乾いて硬くなったパンと赤ワインの瓶があった。ディザドの撃った銃は現代のものと比べると数十段階も威力は弱かった。
なので、瓶と液体で威力は減衰。硬すぎるパンにめり込んで終わったのだ。そして割れた瓶もパンに刺さった事でスハラは致命傷を免れたのだ。
「これが守ってくれたみたい」
「あっ!お酒は持たないでくださいってこないだ言ったじゃないですか!依頼中も酔っ払って、こないだ大変だったんですよ!」
「ごめんごめん!でも今回はこれで助かったんだからこれからも持ってていいよね?」
「スハラさん!」
「はい!」
リーシャの大声にスハラは正座をする。
「スハラさん…私は心配したんですよスハラさんが死んでしまったと思ったから」
「はい」
「悲しかったんですよ」
「はい」
「本当に…」
「はい」
「いきでてよかっだです!」
リーシャは涙を滝のように流している。
「先輩が死んじゃっだと思っでかなじくでかなじぐて!!!」
リーシャはズビズビ鼻を鳴らして大声で泣いている。
「ありがとうリーシャ。私を心配してくれて。ていうか、今先輩って言った?今まで頑なに言ってくれなかったよね?」
「いっでません」
「ねぇねぇ!」
「いっでませんがら!せんぱいもあんせいにしてくだざい!怪我じてるんだから!」
「あっ!また言った!」
と二人は言い合っている。
この時、私は戦いが終わったと思った。
いや、
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